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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第8章 みっつめの世界 ~全ての人が救われるのは稀~
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8-3 自衛官、マッドサイエンティストに会う

「なんで集められたんだろうな?」

「パワースーツで遊んでんじゃねぇ!って怒られるのでは?」


我が情報分隊はパワースーツの完熟訓練を行っていたところ、突然呼び出しを受けた。

決して、決して、アニメの名シーンを再現しようとしたりして遊んでいたわけではない。


ここまでパワースーツを使った感想としては、「歩兵」として機動力、火力が大幅に向上する反面、大型化による隠蔽の低下と行動時間の制限は如何ともしがたい。というものである。

ちなみに、作業用ではなくあくまで軍用として開発されたものなので、固定武装として両腕に30mm機関砲。そのせいでマニピュレーターはない。肩のパイロンにヘルファイアATMやハイドラ70をマウントできる。

射撃時の安定性を考慮し、四脚型も開発を行っているらしいが、その前にAH-64(アパッチ)から流用した武装とセンサー類をどうにかしろと思う。


とはいえ、行動可能時間、航続距離が車両には及ばないというのが現状で、一般部隊で主力兵器にできるかは微妙。というのが防衛装備庁の見解らしい。

どちらかというと危険地域での作業や荷役作業など、戦闘分野より兵站、民生分野での活用の方が有用だろうと言われている。


「特戦群としてパワースーツは使えそうかね?」


1人の男が部屋に入ってくるなり、挨拶もせずにそんなことを聞いてきた。


「状況次第でしょう。大きさと行動可能時間はネックですよ」

「小型化の研究はしている。最終的にはアシストスーツにも応用できる技術だと考えている。行動可能時間については、解決できていないわけではない」


解決できてるのかできてないのかどっちだよ。

隊内でマッドサイエンティストとか悪の科学者という愛称で呼ばれている(陰口を叩かれている)、防衛装備庁の技官である。


「技官、その話はあとで。諸君らに集まってもらったのはSAR(捜索救難)任務のためだ」


中央機動連隊長の双木一佐が部屋に入ってきて技官の話を遮る。

うわぁ、聞きたくねぇ。

俺らが呼ばれたってことは、間違いなく異世界でのSARじゃん。


「放射性廃棄物処理機構が運営する放射性廃棄物処分場で、地震とそれに伴う大規模な山体崩壊が起こった。これに巻き込まれた機構の職員3名との連絡が途絶している」


放射性廃棄物処理機構って最終戦争(ハルマゲドン)後の世界に処分場つくったとこだろ。

またあの世界行くのかよ。


「機構が普段使用している地下の転移場所は、トンネルの崩落により外部との連絡が途絶している。別の場所を転移地点として確保し、処分場に進出する必要があることから、我々中央機動連隊に救助の要請があった」


そもそも一歩踏み外したら被曝量がやばい世界で生きてるとも思えないけど、探しにはいかないといけないわけか。


「場所が場所なので、パワースーツによる捜索とする。捜索期間は72時間を限度とし、発見の如何に関わらず、制限時間経過時は撤退する」

「パワースーツの活動時間を大幅に超えていますが、補給処を設けるということでしょうか」


その場合、補給場所の往復を考慮する必要があるので、捜索時間はさらに短くなる。


「それについては解決の目途がついている」

「こんなこともあろうかと!そう、こんなこともあろうかと!!」


技官(変人)が嬉しそうに連呼している。


「現状、パワースーツはバッテリーを使用して稼働しています。これは魔素や魔石の代替エネルギーとして現状、最も調達、扱いが容易だからです」


それは知ってる。


「しかし、どうやらエネルギーを発生させるものならどうやら何でも代替可能であるらしいことがこれまでの研究で判明しています」


あ、なんか嫌な予感が。


「つまり!燃料棒が魔石の代わりに使用可能で、使用すれば原子力空母並の40年間燃料補給不要ということも実現可能です!」

「日本ではまず使えないし、装甲車クラスの兵器が原子力で動いてるとか撃破されたらやば過ぎるが、あの世界なら問題なかろう」


こいつらまじか。


「コクピットのNBC防護はNBC偵察車以上だから、向こうでの活動は安心したまえ」

「いや、背部に積む燃料棒の遮蔽は大丈夫なんですか」

「活動時間の心配がないのと、パワースーツの積載なら72時間プラスアルファ分の物資積載も問題無いので、補給部隊は随伴しない」


あ、こいつ露骨に無視しやがった。


「君らの他に新無人偵察機システム(FFRS)も展開し、先行偵察を行う。転移地点の確保は10式戦車が1個小隊とNBC偵察車1両で警備にあたる」

「トイレは降りなきゃ72時間も中にいたら悲惨なことになるんですが」


背部の燃料棒の遮蔽が不十分だというなら、パワースーツから出ると被曝するという素敵仕様ということになる。


「背部の遮蔽は大丈夫だ。安全地帯を見つけたら随時休憩を取り給え」


完璧とはいわねぇのかよ。

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