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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第7章 ひとつめの世界 ~愚王と愚王の娘と賢姫と元メイド~
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7-11 女王の憂鬱

連絡会議、と呼ばれる実務者レベルの調整会議が毎月王都で開かれている。

参加者は、会場を提供しているクリスティア王国のほか、日本、アメリカ、魔族領となっている。

通常は日本でいうと総務省や経産省の課長クラスが参加するが、今回はかなりハイクラスの参加者になっている。


日本からは総務大臣政務官と経済産業大臣政務官、およびそれに付随する人員。

アメリカからは駐日大使と東アジア担当の国務次官補、およびそれに付随する人員。

魔族領からは魔王本人と他数名という参加者だった。


なぜそんなことになっているのか?


それは王国側でめでたいことがあったからである。


「クリスティア皇太女殿下、ご婚約おめでとうございます」


そのめでたいことの中心として、会議に出席することになったクリスティア皇太女に、各国の代表が順に祝いの言葉を述べる。

シャーロット女王の後継者として、国を継ぐことが決まっているクリスティア皇太女の婚約が発表されたのだから、とりあえず祝っておいて損はない。という各国の思惑である。

例えそれが、飾りだと皆気付いていても。


対外的には、クリスティアが唯一の王家の血筋ということになっているが、実権はマリアという皇太女の元側仕えメイドの商人が握っていることは、暗黙の了解だった。

それを現王女も暗に認めているので、各国もおざなりのお祝いはしても、その視線は皇太女に影のように、は別に振る舞っていない、後ろに控えたマリアに向いていた。


ちなみに、皇太女の婚約相手は、隣の国の王族。三男で入り婿になる。

マリア曰く、「無能で御しやすいあたりがクリスにぴったり」とのこと。完全に自分の都合である。


「皆さま、お祝いの言葉をありがとうございます。これからも我が国と貴国らとで、友好的な関係が続いていくこと願っております」


死んだ魚の目をしているクリスティア皇太女が、昨晩マリアにしごかれた通りに返答する。

皇太女本人にしてみたら、結婚したくないからマリアに泣きついたのに、気付いたら別の奴と結婚させられてるんですけど!?という感じだが、マリアも一応クリスティアのことを思って選んだ結婚相手である。

同じくらい無能なのにしとかないと、間違いなくクリスティアは権力闘争の道具に使われるから。というのがその理由である。


クリスティア自身、別に好きな相手がいたわけでもなく、何かやりたいことがあるわけでもなく。

ただ、マリアの「言うこと聞いてる限りは死ぬまで面倒見てやる」という言葉で結婚を決めた、ボッチなポンコツ姫なのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はぁ」


女王は何度目かになる溜息をついた。


溜息の原因は、ポンコツであることが割と広く知られている皇太女の娘と、女王とは何の関係もないことになっている元メイドの娘である。


「どうしてこうなった」


皇太女は完全にマリアの操り人形。

皇太女自身がそれを良しとして、マリアにべったり懐いているので手の施しようがない。

一応、マリアもクリスティアを完全に道具とは見ていないようなので、姉妹仲は良好と思うことにできるのが唯一の救いである。


「まぁ、なるようにしかならんよ」


がははと笑った元辺境伯に慰められる。

ちなみに、現在は通常の伯爵になり、宰相として王城に詰めている。といえば聞こえはいいが、遅まきながらの夫婦生活を楽しんでいるだけである。

なお、マリアのことは娘として認知しているので、マリアも次期伯爵位を得ている。


「しかし、世間体が悪すぎるでしょう。なんならいっそあの娘(マリア)を皇太女に・・・」

「マリアが考えての今の結果だろう。この間、一緒に食事したときに王になる気はないのか聞いたら、自分が王になったらクリスティアは一生王城で飼い殺すしかなくなる。ならまだ王をやらせるほうがましだろう。と言っていたよ。あの娘なりにクリスティアのことは大事に思っているさ」


何しれっといい親子関係築いてんだよ、私はマリアと食事なんかしたことねぇよ、と心の中で思った女王だったが、意外なマリアの本音を聞けたので良しとする。


「というか、あなた、マリアにこっそりいろいろ便宜を図っていたようですね」

「それはもちろん。孤児院になどいれることになったのは、完全に我々の都合だからね。不自由しないようこっそり金銭支援や、身元保証してくれる貴族などには手をまわしたよ。もっとも、その辺りを辿って私が父だと気付いたようだが」


マリアが自らの才覚で今の地位を手に入れたのは事実だが、それに利用したリソースとして、辺境伯からの普通以上の支援があったのは事実のようだ。


「まぁ、マリアの立場に問題がでるようなら、私の娘だと公表して摂政にでもつければいいでしょう」


少なくともクリスティアに1人で政治を回す才覚はない。

女王は2人の娘が末永く仲良くしてくれることを願うばかりであった。

人物紹介を除くと、本日で100話目となりました。

特になにということはないですが、いつも読んでいただきありがとうございます。

拙い作品ではありますが、これからもよろしくお願いいたします。

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