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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第7章 ひとつめの世界 ~愚王と愚王の娘と賢姫と元メイド~
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7-10 さして意味もなかった騒乱の結末

「結局、あのバカどもは何をしたかったんですかね」


王城の庭に設けられたガゼボで、女王よりでかい態度で紅茶を飲んでいる元メイドが理解できないという風に言った。


「何をしたかったのかも分からない程度の計画しか立てられない無能だったということですよ」


辛辣な意見を述べつつ、新国王となった元王妃は紅茶を口に含んだ。


「なんですかこれは。お茶もまともに淹れられないのですかあなたは」


女王は後ろで控えるクリスティアに向かって叱責した。

元メイドにも何か言ってやれと促したら、紅茶はブランデーの割り材だと言って気にもしていなかった。

ちなみに、何もできないのだから家事くらいはできるようになったらどうだ、と女王に言われて現在クリスティア王女はメイドとして修業中である。


「まぁまぁ、始めは何事も失敗ですよ」


その叱責を同席している元辺境伯が諫める。


「とはいえ、いろいろ大変でしたな」

「ほんとですよ。連中の穴だらけの悪だくみなんかより、スキルとアビリティが無くなったことのほうが問題です」


ちなみに、お気楽な世界神が適当にスキルやらを廃止したのは、侯爵家での舞踏会が始まるころで、それに頼り切っていた騎士団長はなにもできぬまま、実は鍛錬を欠かさない暴力メイドに昏倒させられたのである。


騎士団長が昏倒してからはあっさりであった。

というか、素でも強いマリアの独壇場で、メイド無双といった感じに愚王側の兵力は制圧されてしまった。

その後、止める間もなくマリアが愚王と侯爵と娘に(毒入り)ワインを(無理矢理)飲ませてあげたので、遺書をでっち上げたり王妃がそのまま女王に即位したりした。


もっとも、愚王がもともと何もしていなかったこと、スキルやアビリティが突然無くなって、仕事ができなくなった人間が突然出たことによる混乱が大きすぎたこと、などによって、政治的にはさして混乱しなかった。


「それにしても、世界神は何をお考えなのだろうな」

「神の意志は我々にはわかりませんが、犯罪ギルドの考えも謎です」


女王は侯爵達が犯罪ギルドを通じて依頼していた、王都で警備を混乱させたり、王妃派の暗殺のために犯罪ギルドを通じて依頼された、依頼内容と依頼引受先が全て王妃側に情報提供されていたのである。


「犯罪ギルドの存在は知っている人間は知っているといったところですが、そのギルドマスターが誰なのかは謎です。一体どのような人物なのか・・・」


女王は元辺境伯と話しているものの、長らく王都に来ていなかった元辺境伯にはもっと謎だった。


「あ、それなら私ですので、おかまいなく」


紅茶を割り材にしてブランデーをガバガバ飲んでいた元メイドが突然口を挟んだ。


「は?」

「いえ、ですから犯罪ギルドのギルドマスターなら私ですので、お気遣いなく」


再びカップにブランデーを注ぎながらなんでもないことのように元メイドは言う。

というか、しれっと愚王の部屋にあった最高級品を持ってきているあたり、なんの遠慮もない。


「妙に変な情報に精通していると思っていましたが、そういうことですか。いつからですか?」

「犯罪ギルドを作ったのは私ですが?」


女王の問いに元メイドはしれっと何でもないことのように答える。


「確かに噂を聞くようになったのはそう昔のことではないですが、あなたクリスティアよりも2つ上なだけですよね?」


恐ろしい奴だなと思う女王だが、現状犯罪ギルドをどうこうするメリットもない。

むしろ、潰して暗殺者や間諜がそこら中に拡散するほうが問題である。


「あなたは私の味方ということで良いですね?」

「不利益にならない限りは」


商売のそろばんをはじく気安さで女王に応える元メイド。


「まぁまぁ、女王と対立することがあっても、まずは私に相談したまえ。間をとりなしてあげよう」

「いやですわ”お父様”、こっちに来てからずっとイチャイチャしてる相手と対立したときに本当に味方になってくださるのですか」


マリアの爆弾発言に元辺境伯は完全に固まっている。

なんでこいつ知ってんだよといった感じで冷や汗をダラダラかいている。


「あら、あなたいつの間にかそんないい人がいたんですね」


女王が完全に不倫を問い詰める妻の顔になっているが、それを見逃すマリアではない。


「いやですわ”お母様”、朴念仁なお父様にそんなお相手が何人もいるわけないじゃないですか。愚王(バカ)とまぐわってスカポンを産んだアバズレの”お母様”とは違うんですよ」


ニコニコと笑顔で2人の前に立つマリアだが、その「両親」である2人には獲物を前に舌なめずりする捕食者のそれにしか見えないのであった。


それを後ろで見ながら、死んだ魚の目をしたクリスティアは思うのだった。

なんでこんな家に生まれちゃったんだろう。と。

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