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12話

 まず結論を言えば、アバンドーズ家の暴走でシエロの家がやばい。

 一族郎党殺されるしれない、とのことだった。


「色々あったすえ、アバンドーズ家は今ではアナタの家より格上になった。その甲斐あってさらに上の家柄のほうから縁談があった。当主のバリー・アバンドーズはより権力を切望していたから破断になるなんてことは絶対に嫌だった。だから、君の家との縁談を初めからなかったことにするために、今ある力全部使ってすべてを闇に葬ると? え、短絡的っていうか、過激だなぁ。富裕層の人たちってそんなことするんですか?」


「皆がそうじゃないですけど…………」


「……暗殺、もしくは国家反逆罪などの罪のでっち上げ。でも、それを"今すぐ"にしないってことは、()()()()()()()()()()()()()()()?」


「そのとおりです」


 シエロは次のように教えてくれた。

 アバンドーズ家はシエロの祖父の『隠し遺産』を探しているとのことだった。

 若いころの祖父が見つけたとされる廃都の宝。

 祖父はそれを持ち出して、どこかへ隠したらしい。

 

「失われた都の宝か。お爺様が隠されるくらいだから、かなりの額になりそうだ」


「昔父が教えてくれたのを思い出したんです。祖父と一度飲んだときにって。もしその遺産それがあればきっと家を守れる。そう思うんです。もちろん、取り分は差し上げます。だから……」


「…………それがアナタの家を守る確実な方法なのかどうかはわかりません。ですが、そうですかぁ。宝探しですかぁ。わたしはそのへんの知識は疎いので。どうも……」


「祖父の日記……これを見つけたんです。これが唯一の手がかりです」


「日記だけですか?」


「日記の、このぺージ……。廃都のことらしいことが書いてあったんです。これだけじゃダメ、ですか?」


 廃都の情報はこれだけ。

 廃都は遥か先の『死の谷』と言われる場所にあったらしく、色々あって地の底へ沈んでしまったようである。


 地図も道具もすでに処分済みで、つまり再度おもむくには絶望的に困難であるということ。


 ────だが、マヌスからすればこれ以上ない品だった。


「全力を尽くしましょう」


「え、本当に!?」


「かなり高くつきますが、よろしいですね?」


「前金も用意してます。成功報酬はこれの倍。それに加えて財宝の一部を」


「けっこう」


 日記を受け取り微笑む。


「この日記をもとに、お爺様がどこにお宝を隠されたのかを探ってみます」


「よろしく、お願いします」


 小柄な身体を折りたたんで礼をする彼女の姿は、あまりにか弱くみえた。

 友達にも言えなかった、ずっと思い悩んでいたことを打ち明けられたことで感極まって、肩を震わせながら涙を流している。

  

 マヌスは席を離れ日記を机に置く。

 しばらくシエロをそのままにしてあげた。

 ことがことだ。こないだの聖女騒動よりも難易度が高いものになるだろう。

 そして数分経ったのち、彼女は事務所を出た。


 この依頼を完遂すること、それそのものが彼女とその家族を守ることにつながる。

 そう信じてマヌスはゆっくりと日記に目を通した。

 日記の中には入れないが、日記を中心に展開される『思い出の世界』へは入れる。

 廃都のことが書いてあるページと、その前後のページを探っていった……。



 一方、事務所から出てひとり帰路につくシエロ。

 ずっとつらい思いを抱え込んでいたとはいえ、あんな風に人前で泣いてしまうとはなんとはしたないと、頬を赤らめていたとき、


「シーエロ!」


「あ、ステラちゃんに、みんな!」


「ふふーん、みーっちゃった。あの事務所でなーにしてたの?」


「いや、その……」


「ちょっとステラ。そんな風に詮索するのはよくないわよ」 


「いいじゃん別に~。ねえ、マヌスって人に会いに行ったんでしょ? なに話したの?」


 マーテルがたしなめるも、ステラは新しいおもちゃを見つけたようにワクワクし、シエロを問い詰める。

 根負けしたシエロは、とりあえず落ち着ける場所へ皆と移動した。

 公園近くのこじゃれたカフェだ。

 テラス席で4人同じく温かいカフェオレを飲みながら、シエロの話を聞いた。


「なるほどね。お家騒動ってわけだ」


 ステラはミニスカートがまくれることなど気にかけないように、足を組んで前のめりになりつつシエロの話に真剣な面持ちを見せた。

 マヌスに話したからだろうか、口が滑りやすくなった自分の心の弱さにシエロはさらに落ち込んだ。

 ステラの姿勢を注意するよう咳払いしつつ、マーテルはシエロの背中をさすりながら慰める。


「ごめんなさいシエロ。辛い話をさせてしまって……」


「うぅん、いいの」


「ねえ、アバンドーズ家が悪いって言うんだったらワタシが出向いてやっつけちゃえば……」


「ルーチェ、話がこじれるからやめなさい」


「はーい」


「シエロ、アタシたちに協力できることはない?」


「ステラちゃん?」


「友達が困ってるのにこのままにしておけないじゃん!」


「ありがとう。その気持ちだけで十分だよ。でも、皆を巻き込みたくないから……」


「なに水臭いこと言ってるの! なにかあったらシエロちゃんも皆もワタシが守ってあげるから!」


「お、さすが学院最強は言うことが違うね~」


「ちょっとふたりとも」


 困惑するマーテルをよそにステラとルーチェがシエロへの協力に盛り上がる。


「アンタはシエロを助けたくないの?」


「それは……助けたいに、決まってるじゃない。でも、私たちになにができるの? 相手はすごい地位の持ち主よ?」


「わかってるって! そこでアタシが考えたのが……」


 ステラの妙案。

 それはマヌス・アートレータを出し抜くことだった。


「いや、それはさすがにやったらいけないんじゃないかな? わたし、依頼したのに」


「あのねー、その財宝とやらを見て、気が変わっちゃって横取りするかもしれないじゃん! 奪われる前に全部奪うの!」


「いや、そうと決まったわけじゃ……」


「ステラの考えはともかくさ。うん、ワタシはちょっと気になってるんだ。マヌス・アートレータさんがどういう方法でシエロのお爺さんのお宝を探すのかをね」


 実際、4人にとってそれは疑問だった。

 凄腕の探偵という風に見えない男が、どういう立ち回りをするのか。

 

「ねえ、ちょっとあの人監視しようよ」


「今から!?」


「さっき行ったばかりなのに!?」


「うん、面白そう!」


 ステラの提案にルーチェが同調。

 こうなってはふたりを止められない。

 余計なことをしないか監視するために、そしてマヌスへの申し訳なさを感じながらも好奇心を抑えられなかったシエロとマーテルも着いていくことに。

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