宇宙の信号探査の矛盾
前回、「宇宙に飛び交う信号の」と書いておきました。
あるいは「宮沢弘の科学エッセイ」「感覚的な時間単位」[*1]では、こう書いときました。
『電磁波の利用技術はどんどん進歩していますよね。おおざっぱに言っ
ても、「アナログ→デジタル→時分割→スペクトル拡散」となってるわけ
ですよね。
でも、これを考えてみるに、電磁波の利用技術が高度化するほど、その
デコードは難しくなっているのではないでしょうか。スペクトル拡散になっ
ちゃうと、同じ拡散符号を利用しないと元の信号が復元できないわけです
からね。』
さて、実は、こういう記述自身に矛盾があることにお気付きでしょうか。
というのも「宇宙に飛び交う信号の」と言った場合、通信を行なう何らかの形での文明圏が存在するはずです。つまり、元々、文化圏外の者へ向けての信号ではないわけです。
また「スペクトル拡散」云々の場合、文明圏が存在する場合もあるでしょうが、単一の惑星で使っている電波が漏れてきているのかもしれません。この場合も、元々、文化圏(この場合は惑星)外の者へ向けての信号ではないわけです。
つまり、どっちにしろ情報工学や電子工学、物理を駆使しているにせよ、「規格を知らない相手など、始めから相手にしていない」わけです。
もちろん、「規格や信号をデコードできる技術水準」を期待しているという可能性はあります。ですが、これは言うなら「積極的な発信」ではないわけです。まぁ「消極的な発信」と言えるかもしれません。
それに対し、「電波を探知できれば、ともかくこっちがいることはわかる」ようにするという可能性もあります。これは、言うなら「積極的な発信」かもしれません。
地球では積極的な発信を試み、また受信も試みています。成果はわかりません。成果がわかるかどうかもわかりません。
「積極的な発信」については、あるいはそういうものを簡単には受信できていない理由については、指摘されているように、やはり「実は宇宙には脅威が満ちている」、あるいは「脅威が満ちていると想定されている」という可能性があります。でも、地球はこれだけ電波を垂れ流しても、まだ太陽系外からの脅威には遭遇していません。いや、まぁ、そう遠くない未来において、実は遭遇するのかもしれませんけどね。
でも、地球は脅威に遭遇していないということを敷衍できるとすれば、他の星系においても同じでしょう。すると、「大丈夫じゃん」となって、より「積極的な発信」を行なってもおかしくないはずです。
にもかかわらず、みつかっていない。これはどういうことなのでしょうか。
もしかしたら、「積極的な発信」であっても、要求している技術水準が高いのかもしれません。単純に考えるなら、充分な情報を送ろうと思ったら、その分、時間がかかります。誤り訂正とかのデータまで含めると、平文で送ってもバンバン、データが増えます。誤り訂正はなしで、繰り返すという方法もありますが、これでもそのまま時間がかかります。送ろうというデータが増えれば、その分、実際に送るデータもバンバン増えます。
あれ? だとしたらデータ圧縮を…… となるかもしれません。でも、それだと「消極的な発信」に近くなります。
そうすると、現実的な方法としては、「これまでに連絡が着いていない相手には、自分が存在するという信号だけを送る」ということになるでしょう。それでうまく連絡が取れれば、信号の規格を送り、もっと速く、もっと多くのデータを交換できるかもしれません。でも、相手がみつからなかったり、あるいはみつかっても、継続して「自分が存在するという信号を送る」ことになるでしょう。
あれ? でも、どっちみち「自分が存在するという信号」すら、まだ地球ではみつかってません。おっかしいなぁ。炭素系生物に限っても、化学進化から生物はあたりまえに現われるはずです。
そこで考えられる希望的な想定としては、たぶん3つあります。
一つは、産業革命とか以前の段階の文明・文化が一般的という可能性です。
二つめは、その段階にも達っしていないという可能性です。
三つめは、とことんひきこもっているという可能性です。
実際にはどういうことなのかはわかりません。ともかく「地球人以外にも電波を使う種族が存在する」ことを確認できないことには、このあたりの話は進みません。
早くみつかると面白いと思うんですけどねぇ。
*1: http://book1.adouzi.eu.org/n9931cp/16/




