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対話文法とか物語文法とか

 前回「対話文法」という言葉を書きました。

 これ、単純に言えば、「〜ですか?」という質問には、たぶん「はい」か「いいえ」が来るとかいうようなものです。もちろん、実際にはもっと複雑になりますが。

 文の文法でも確率を導入しているというような話は以前書きました。でもまぁ、それではあっても、入力された文を受理するかしないのかの基準になっていたわけです。それなりの強さで。

 対話文法でも、そういう強い文法を書いてもかまわないのですが、ちょっとさすがに書き難かったりもします。状況をいろいろ分割して考えれば、結構きびしいのも書けますけど。


 ところで、言語学が扱う最大の単位は、基本的には「文」です。文の並びには、基本的には言及しません。いや、まぁ、最近でもないですけど扱うこた扱いますけど。基本の考えとしては最大の単位は「文」です。

 文を越える単位を、じゃぁどこで扱うのかと言われても困りますが。まぁどっちかというと言語学よりも工学寄りでかなぁ。


 さて、対話文法とはちょい違いますが、文章理解においては、スクリプト理論というのがあります。これはある場面、たとえばファストフード店で買物をするとかいう場面を設定して、そこではどういう物があって、どういうことが起こるのかを書くようなものです。

 これ、あらゆる場面について書くってのは当然難しいわけです。もう量の問題として。まぁ、オブジェクト指向的に継承とかを使って、量を減らす工夫とかはあるわけですけど。

 でもスクリプトとして書かれた場面については便利なんですね。

 例えば、入力された文章においては何かが省略されていたとします。でも、常識としては省略されていることが、たぶん起こっていると考えられるような場合があるわけです。その際、スクリプトを参照すると、書かれていないけどたぶんあったであろうことを推測するのに使ったりできます。

 あるいは、出来事の前後の並びが妥当かどうかとか。

 そういうスクリプトや状況の並びそのものを文脈自由文法やn-gramみたいに書いてやることもできないわけじゃありません。大変ですけどね。

 むしろ、大量の文章から、何がどういう順番で書かれやすいかってのを計算してやる方がいいんだろうなと思います。これでも、何に注目するにせよ、組み合わせの爆発が起こり、計算するだけでも大変ですけど。更に、文の場合、単語を品詞にある意味抽象化して文法を書いてやりますけど、この場合、文かそこいらをどのように、そしてどこに抽象化してやればいいのかとか難しいですね。


 さて、ある意味でこの手の対話文法や物語文法のようなものの起源がどこかというと、古代ギリシアに求めてもかまわないのですが、あれはあんまり役に立ちません。

 実際的なのは旧ロシアのウラジーミル・プロップによる100話ほどだったと思いますがロシア魔法昔話の分析だろうと思います。ロシア・フォルマリズムより前の人かな。「プロップのファンクション」という呼称が有名です。

 これ、構造主義の時代に発掘され、ブームというか物語についての研究においては結構基礎として見られていたものです。

 プロップのファンクションのようなものが100個もあれば、世の中に存在する全ての物語を分析する基盤になるだろうとも言われています。

 プロップのファンクションは受理系の文法として扱っても構いませんし、あるいは生成系の文法(?)として扱っても構いません。ただ、問題は「ファンクション」という言葉です。ある意味、登場人物に注目していますが、それが果たす役割や機能(ファンクション)を見ています。これは、さらにある意味で、「意味」も見ているとも言えるでしょう。

 意味が入った文法というは便利です。プロップのファンクションもむちゃくちゃ強力です。でも、意味と文法は区別しようというのもあるわけです。


 グレマスだったかな、そのあたりのStory Grammarというのがあります。物語文法ですね。これは意味を排除して、普通の文の文法と同じような文脈自由文法で、物語の文法を書こうとしたものです。

 これも強力です。ただ、意味が入っていない分、プロップのファンクションみたいに直接物語の分析や生成に使うのは難しかったりします。受理可能かどうかは分析とは違うので、そっちには使えますけど。ただ、S->NP VPみたいなのがずらっと書かれているので、わかりにくいっちゃわかりにくいかもしれません。


 どういう例で説明するのがわかりやすいのかはわかりませんが。プロップのファンクションだと意味っぽいのが入ってるので、「伏線」のようなものもちゃんとフラグでも用意しておいてやれば、受理したり生成したりしやすいです。物語文法は、そういう意味っぽいものが入ってないので、そのあたりは別扱いでどうにかしてやらないというところもあります。


 対話にしても物語にしても、それをうまく扱ってやるのは、たぶんまだできません。はこだて未来大学とかでチャレンジが行なわれています。現在、どういう感じなのかというところですね。

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