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第15話 成長

第四位階下位

 



 今回の壮大湿地は、プチクイーン達の狩りに向かない地形である為、殲滅戦を行うのはシャドー達の役割だ。


 自然と狩りの時間は夜になる為、随分時間が余る。


 この機に、暫く会っていなかった連中と会ってくる事にした。

 ……血生臭いから抜け出した訳ではない。



 第三拠点を抜けて、疾駆スキルの強化に森を駆ける。

 今となっては走る速度も随分早くなり、木々を軽々避け……とは行かずに何度かぶつかりながら、勇猛大平原に出た。


 そこには、白波海岸での狩りを終え、色々な修行に励むプチポーン達が待っていた。


 今は、2万のプチポーン達が、草原の思い思いの場所で瞑想を行なっている。


 そのリーダーである2体の白黒ポーンと会う。



 2体は楽しげに槍を打ち合わせ、俺へ差し示した。



「分かってる。今度こそな」



 そう言って、俺はそこへナイフを打ち合わせる。

 カンッと平原に乾いた音が響いた。



「それじゃあ、頑張れよ!」



 ポーン2体を撫でて、その場を去る。


 今この2体と副官の2体は、水纏錬磨法による強化を受けているらしいから、近々進化するだろうと言われている。


 チェス兵達は着実に戦闘経験を積み上げているし、実際の所いつ進化が起きてもおかしくない状況との事だ。


 俺としても、昼夜問わず戦えるチェス兵達には期待値が高い。

 少しずつでも良いから立派に育ってくれ。


 ……嘘、直ぐにでも立派に育ってくれると嬉しい。



 そんな思いのまま、平行ジャンプ脱兎で高速で平原を駆け抜け、袋小路の森に入る。

 疲労は初級ポーションで回復し、延々と走る事少し、第二拠点を越えて袋小路の森に入り、今度はゲル増殖拠点を覗き込む。


 洞窟の中は、蠢く何かの……ゲルの群れで一杯だった。


 そこからヒョイっと飛び出して来たのは、ゲルコア。


 中央の球体を覆うようにゲルが連なり、形状を四足獣型に変えている。


 そうかと思えば、今度は鳥型に変形し、此方に飛んで来たので、腕を出した。

 鳥型ゲルコアは、猛禽の様に腕に捕まる。



「へぇ、空も飛べるのか」

『ゲルコアは既知の形状を再現する能力に優れていますから』

「既知の形状、ね」

『ゲルコアのデータベースは接触により連結され、捕食により更新されます。魔力の流れまで再現が可能ですから、捕食さえすれば何者にもなれると言えるでしょう』

「成る程」



 強い者を真似出来るなら当然強くなる。増してやそこに際限は無いと来た。


 そりゃ強くなる訳だ。


 ぷにぷにしているゲルコアを100人斬りならぬ100匹撫でし、次に向かったのは、グミの増殖拠点。


 走る事暫し、たどり着いたそこは、丸っこいグミの巣窟で、俺が覗き込むとグミ達はビョンビョン飛び跳ねた。

 夥しい数の跳ね回るグミ達は、こうなってくると悍ましいと言うよりも、勝利に沸いて風船を飛ばしたり紙吹雪を投げている様な光景に見えて来る。


 流石に何万も撫でてはいられないので、軽く手を振り、その場を後にした。



 続けて向かったのはスライムの増殖拠点。


 程なくして辿り着いたそこでは、スライム達が木の棒を持ち、コンコンとぶつけ合っていた。

 核を無くす為、器用さを上げる訓練をしている訳だが、一抱えもある大きなスライム達が木の棒で叩き合う活気ある様は、どうしてかとても頼もしく見えた。


 戦力的には全然な筈だが、集団が同じ目的に邁進する様は、その未来を想像させて来る。

 未来は確かに強いだろうが、今はまだまだな事をしっかり意識しておかないと、勘違いしてしまうかもしれない。


 そう、そうだ……プチポーン達も、十分な戦力に見えてしまっているが、まだまだ火力が低い事をしっかり意識しておかないと、後で後悔する事になるかもしれない。


 1体1体の弱さを、努努忘れない様にせねばなるまい。



 次は、中央の湖、メザグァームやアレイイールがいる場所。


 そこでは、ピラニアよりもデカい牙持つ魚と、太くて長いウツボの群れが犇めき合っていた。

 流石に30万もこんな大型魚がいると、湖の許容量も限界らしい。


 そんな大型魚の中を掻き分け、現れたのは更なる大型魚、グレーターサンダーイール。


 もはやそのサイズは怪物と言って良く、長さに至っては鯨とかそれ等くらいはある化け物だった。

 サンダーボルトも放てるし、おそらく、水中でこんなのと遭遇したら、俺では万に一つの勝ち目も無いかもしれない。



「デカくなったなぁ」



 大した事ないかもとか言う浅い思いを改め、D級と言う脅威を再確認しつつ、その頭を撫でる。


 噛み付かれたら一巻の終わりだとひやひやしながら、その意外と硬い皮膚に覆われた頭部を、暫し撫でた。



 次に向かったのは、鬼子幽淵。


 道すがら、最初に出会ったのは未知の少女だった。



「ゲラ! ……ますた!」



 てててっと駆け寄る少女は、歳の頃は10代の下の方と言った見た目。黒髪に黄色っぽい目をして、額に2本の角を生やしていた。

 ボロ布と木の枝の鎧の下には、しなやかな筋肉を感じさせる手足がある。若いが戦士の体だ。


 その少女は、手前で止まると持っていた剣を地面に置き、改めて抱き着いて来た。


 俺はその頭を撫でる。



「担い手だな」

『はい、そうです』

「ますた」



 きゃっきゃっと無邪気な少女を抱え上げ、聖剣を拾って歩む。


 進む事暫く、聞こえて来たのは鍛治の音。



「ギィン、キー! エラン、ガラ! ますた」



 2人が武器を作ってるみたいな事を言って此方を見上げる担い手に微笑み、そこへ赴く。


 そこにいたのは、形や姿を変えたエランとガラ。


 エランは、小柄ながら筋肉質なお爺さんと言う見た目で、鎚を振るうには十分な肉体。

 一方ガラは、石の時と比べて一層ディテールが細かくなり、液体金属とかの様に動くその体は小柄ながら超筋肉質なおじさんと言った見た目になっていた。


 どちらからも老獪な気配が感じられる辺り、やはりガラは転生者で間違いないのだろう。


 そんな2人は今、ゲラの魔鎚を打ち直していた様で、焼き入れの工程を終えて、自然冷却している所だった。



「進捗はどうだ?」



 そう問う俺に、コア翻訳で帰って来たのは、絶好調の一言。

 親指をぐっと立てる2人に微笑み、親指を立て返す。


 どんな素材を鋼魂錬磨してどんな武器を作ったか知らないが、絶好調なら良きかなだ。


 正直言うと、工房の武装程期待はしていないが、それでも少しでも特殊な効果の付いた武具が作れるなら、ただの鉄の大剣を振り回すよりは余程有効だろう。


 俺はエランとガラと担い手、ゴブリン達に手を振って、その場を後にした。



 最後に向かったのは、そこから然程も離れていない第一拠点。


 その拠点の前には、何体かの配下達が待っていた。



 先ず見えたのは、スライムだ。


 それは、見上げる程の巨体。


 その大きさは、ゴルボルズを飲み込んで余りある。

 ちょっとしたサイズの池が意志を持って動いているに等しい。



「でっか」

『聞くと見るとでは受ける印象も違うでしょうね』



 コアの言葉に頷いて、試しに触れてみると、スライムボディは結構な粘度で腕を押し返す。


 これなら、それこそ弱ったクアンダ程度簡単に取り押さえる事が出来るだろう。


 このまま消化分解訓練を続けて、核が無くなった暁には、相応に頼りにさせて貰う事になりそうだ。



 続けて、その横にいた、コレまたデカい木の魔物。ユガレイド・ドンドルド。


 此方もまたでかかった。


 ぶっとい幹に、試しに抱き付く。


 魔力を感知すれば、その大きな生命力が流動しているのを、僅かに感じられた。


 冷たく硬い樹皮は、しかし何処か暖かく感じられる。

 広がる葉はそこらの木々よりも広大で、無数の根の足がわさわさと動いて移動する。


 何となくだが、森の主とかそう言った貫禄が感じられた。


 まぁ、D級との戦いに参加させられる程ではないが、此方もやっぱり弱ったクアンダくらいなら簡単に拘束出来るだろう。


 一つ哀れな点があるとすれば、その……葉っぱが結構禿げている事だ。

 その原因に目を向けると、それはゆっくり樹皮を伝って降りてくる所だった。



 巨大イモムシ。


 俺よりもデカい、事前情報により、そのぱんぱんに見える肉体の皮膚はかなり柔軟だと言う事が分かっている。


 地面に降り立った巨大イモムシは、回り込むと俺の前に来た。

 俺もしゃがんでそれを迎える。


 何と言うか、ここまで来ると怖いは怖いが、単に虫の怖さと言うよりクリーチャー的な怖さがあるな。


 そんな事を思いつつ手を差し伸べると、頭をぐりぐり押し付けて来たので、そのブヨっとした頭を撫でる。

 コレで牛の角が刺さっても受け止められるらしいから、D級は凄い。


 甘えてくるイモムシを暫し撫で、程良く満足したか腹が減ったか、イモムシはユガレイドに登って行った。


 うむ、強く生きろよ。



 タイミングを見計らっていたか、木を見上げる俺に寄って来たのは、ノルメリオ・ドンガウルとウォンクル・ベルガ。



「おう、久しぶりだな」

「クァー」

「わふ!」



 両者の頭や顎を撫でまわし、暫しの再会を喜んだ。


 ウォンクルはもう大鷲と言って良いサイズだし、ノルメリオに至っては俺よりもデカい巨体で、もう騎乗まで出来そうな見た目をしている。



 その後、第一拠点に詰めている、元チッピ集団やノルメリオ、大ハムネズミことピルンドに他、モームやバド・アード達と戯れ、帰還した。



 コアの言う通り、全体的に聞いていたより好印象のメンツだったな。

 そんな事を思いつつ、夕暮れの森を駆け抜ける。


 時折木に衝突するが、硬化スキルのおかげで殆ど痛くない。


 だが、それはそれとして特訓のつもりで避けて進んでいると、コアから声が掛かった。



『マスターがスキルを取得可能になりました。『回避』と『立体機動』。合わせて1,000DPです』

「取得で」



 そうと答えた次の瞬間、移動が随分と楽になった。


 何なら、避けていた木を蹴って、少しの高速移動まで出来る。



 自らと全体の成長を感じながら、第三拠点への道を急いだ。



 

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