第4話 鎧と話そう
第三位階上位
鎧の兄弟も虹貨を色々やってから、お決まりのテラス席に着く。
今回は朝だが、財宝の亜神様の仰る通り、影の義体でも問題なく日の元で活動が出来た。
「それデハ、改めマシテ、またお会い出来ましたネ! お兄サン!」
「おう、また会えたな、兄弟」
お兄さんと呼ばれると言う事は、弟分と言う事でよろしいか。
そんな皮算用を心の内にしまい、挨拶もそこそこに、早速2人で手を揃える。
「いただきます」
「いただきマス」
鎧のは相変わらずの健啖家で、肉を吸引していく。
肉肉肉野菜肉肉肉肉、鎧なのに肉食獣である。
或いはそれが強さの秘密か、配下共々良く食べる事。
「そっちはどうだった?」
そこそこに食った所で、不意にそんな問いを投げかける。
「もぐ? もぐもぐ……2つ目の世界は、岩だらけの世界デシタ」
「ふぅん」
「そこにはエリアボスがいたのデス!」
「ほう?」
小規模世界のエリアボスね。どんなもんだろ。
「敵は大きなゴーレムデシタ」
「ゴーレムか」
強いと噂のゴーレムね。
「ランクはD級とかデ、ルーセントソードやクリミナルチェインを囮ニ、ハンマーで手足を破壊シテ、なんとか倒せマシタ」
「へぇ、大変だったな」
C級の実力でもD級に対してなんとか倒せたって言うのか。
やっぱり人間だとモンスターより脆いとかあるんだろうかね。
もしくは……いや、考えてみれば俺達は最低でも一月前までは一般人だったな。
少なくとも怪力タイプのC級がハンマーでボコスカやる相手、ルー先生が囮にしかならない相手だ、俺がまともに勝てるとは思えない。
それこそ爆石をポンポン使うくらいしか攻略法は思いつかないな。
聞いた情報を頼りに、対ゴーレム戦の想定をしていると、白鎧が話し掛けて来る。
「そう言うお兄サンコソ、2つもエリアを支配したらしいじゃないデスカ」
「そうだなぁ」
「お話、聞かせてくだサイ!」
折角なので、勤勉な白鎧に、微に入り細を穿つ説明を始める事とした。
先ずは勇猛大平原で見た、リザードマン達の儀式だ。
「戦化粧デ同胞の血ヲ?」
「どうも竜や亜竜の血を浴びる代用儀式らしくてな、見てられるもんじゃなかったが、奴等にとっては合理的だったんだろう」
「それにしたっテ……」
言葉を飲み込む白鎧。
まぁ、そう言う文化もあるって事だな。
それに、そうだとして、俺達には然して関係ない話。
おまけの方の湿地帯に生息しているD級の群れってのが亜竜だろうと想像が着くってのが、心構え的にもありがたい。
そう、亜竜だ。俺達が今後相手する魔物は。
……亜竜ってなんだ。
「そういや亜竜ってなんだ?」
『亜竜は竜玉に類似する器官、亜竜玉や亜竜晶、亜竜石を保有する種族の事を言い、蜥蜴の類い等がおおよそD級程度まで進化すると亜竜化します。それを亜竜変と呼ぶ場合もあり、変じた種を亜竜変種と呼びます』
「ふむ」
じゃあ竜化した種は竜変種か。強そうでいけねぇな。
まぁ、強者は強者らしく強そうな名前でいてくれた方が、心構えが出来るってものか。
それから、月夜塚の話。
「うさぎの群れデスカァ」
「角うさぎな」
ブラザーは可愛いうさぎの群れを想像しているかもしれないが、実際には角うさぎの群れ、と言うか誘導ナイフロケットの火薬庫である。
まぁでも……D級を半殺しに追い込むウサギガトリングも、全身鎧だったら防ぎ切れて余りあるのかもしれないな。
怪力スキルもあるし、全身鎧を導入してみるのも良いかもな。
次に、はぐれ牛を狩ったら鳥にあった話。
「横取りされた訳デスネ、鳥ダケニー」
「ははっ、まぁくれてやった様な物だな、縁も出来たし」
「縁デスカ?」
「まぁ、その後にちょっとな」
冗談に笑ってやってから、次、月夜塚を利用してゴルボルズの片割れを撃破した話。
「月夜塚を利用してやったんデスネ!」
「まぁ、使わない手は無いと思った訳だが、あそこまで上手く嵌るとは思わなかったな」
「それにシテモ、ゴルボルズ……強そうな名前デス」
「それは同意」
あれは上手く嵌ったもんだ。
あの後のプチクイーン達による月夜塚攻略戦では、既に殆どウサギロケットが死んでたから残党狩りだったし、上手い事敵の戦力を両方削れた訳だ。
その代わりDPは貰えないが、今となっては安いもんだ。
そして勇猛大平原最後の、決戦の話。
「鳥が味方ニ? ドキドキする展開デスネ!」
「まぁ、食われるかとも思ったけどな」
あの時、転移で引いていたら、ゴルボルズが力尽きるまでに最後の足掻きを許したかもしれない。
それで死者が出たかもと思うと、あの時鳥が来て、平原側へゴルボルズを引き寄せられたのは、中々悪く無い選択肢だっただろう。
そして武装が届いた話。
「バンムオンの遺志を引き継いだのデスネ……」
「勝手な話だがな」
勝手に殺して、勝手に力を引き継いで、そんで子供だけは守るからって? 笑えねぇ話だ。
ブラザーは遺志を引き継いだなんて言っちゃいるが、奴からしてみりゃ恨み骨髄だろうな。
決して美談では無い。
奪った物を利用しているに過ぎない。
それを忘れたら、いつか追い付かれて、あっち側に引き込まれてしまう気がするのは……きっと俺が弱いからだろう。
続けて、巨大蟹とイルカの話。
「イルカ達を助けたんデスネ……!」
「偶然な、徳を積んだとでも思ってるよ」
いや、偶然では無いか。
蟹達が精力的に活動していたのが陸上進出の為とすると、戦いが起きていたのは必然。イルカ達が友好的だったのが必然とすると、縁を結べたのも必然だろう。
まぁ、その上で徳を積んだと思っておこう。
いやー、侵略者の立場ってこう言う時辛いね。
最後に、グランサージの話。
「ゴブリンさん達は連れて行かなかったんデスネ」
「いやまぁ、適材適所ってな」
彼等の誇りを踏み躙る行為だったかもしれないとは思いつつ、無駄な被害を出さないのも指揮官の勤め。
ゴブリン達では有効な打撃を得られないと予測したからこその不参加である。
その後も色々な話をした。
新たに得られた情報は、世界支配後の事。
何でも、一つの世界を全て支配し終わると、数日後に招待状の様に次の世界の選択肢が現れ、選ぶと次の世界にコア共々転送される仕様らしい。
支配済みの世界に戻るには、幾らかのDPを払ってゲートを開く必要があるのだとか。
まぁ、いつになるやらと言う話だな。
そんなこんなで食事の話や配下の進化の話等を続けて、時間になった。
白鎧が差し出す手を握り、反対の手は拳を合わせた。
何の儀式か分からないが、白鎧の寂寥だけは感じられるそれに、俺も合わせて手を繋いでおく。
「それじゃあ、また、な」
「はい! また、必ズ!」
それを合図に、砂時計の最後の一粒が落ちた。
◇
『マスター、調子はどうですか?』
「……あぁ、ぼちぼち快調かな」
そんな事を言いつつ、手のひらを握ったり開いたりする。
——寂しさ。
……を、移されちまったらしいな。
なんてな。
自分の弱さに言い訳を付けて、今日もまた俺は立ち上がる。
「さて、今日の所は訓練に従事するかね」
『それが良いでしょう』
新しい武装が届くまで待ったり、その武装に体を慣らしたりしないと行けないからな。




