第4話 手札を試そう
攻略会議の内容は、武装の再確認。
1日の獲得DPが増大した為、100Pクラスの高額アイテムを湯水の如く使用できる様になったので、その確認等を兼ねる会議だ。
先ず最初に試したのは、スクロール。
対象は、袋小路の森北部の外壁から少し行った所にいる、熊や猪の生き残りだ。
そのランクは、推定FからE。
最初に試したのは、フレイムブラスター。
発動を念じると共に、放たれたのは火炎放射器そのものの炎。
凄まじい勢いを持って放たれた火炎は、一瞬の内に猪を包み込む。
自在に操れる火炎は数秒に渡って続いた。
後に残ったのは、表面が炭化し、しっかり絶命した猪の姿。
おそらく、と言うか正直な話、俺がくらったら先ず死ぬので、E級ではひとたまりもないだろう。
1番火力が低いらしいルー先生の火力が既にE級を易々退けるレベルなので、然もありなんである。
次は、トルネードスライサー。
生じたのは、小さな緑の竜巻。
それは出現と共に熊を呑み込み、それをズタズタに引き裂いた。
此方もフレイムブラスター同様ある程度の操作を受け付けるらしく、トルネードスライサーは熊をぶつ切りにした後、試しに地面に差し込むと、それを粉砕して土砂を噴き上げ消滅した。
威力は申し分ないが、100Pのスクロールはマジで乱戦下では使えないな。
次、ヴォルテクスジェイル。
生じたのは、端的に言うと渦巻きであり、そして洗濯機の様でもあり、回転する水の監獄は、捕えた猪を宙に持ち上げて延々とぶん回す。
ゴボゴボっと空気の泡が上に抜けて行く。
複雑に螺旋を描く水の球体は、数十秒後に弾けて消えた。
落下した猪は酷いありさまで、四肢が折れ、内臓もやられたか血混じりの水を吐いて絶命していた。
拘束がメインと言う訳でもなさそうだが、一方で攻撃がメインと言う訳でもない、微妙な結果だな。
多分D級には通じないだろう。持ち上げるくらいの事は出来そうだが、それだけだ。
次、クリミナルチェイン。
発動と共に生じたのは、4本の黒い鎖。
ぶっといそれは内3本が高速で動き、熊を縛り付ける。
最後の1本は、ルー先生みたいに意思を持っている事を指し示す為か、俺の前で棒人間を作り肩を竦めて見せる。
そのまま締め殺す事は可能かと問うと、熊はギチリギチリと締め上げられ、圧迫死した。
コアによると、鎖は何もしない状態だと、ルー先生の半分、5分程度持続するとの事だった。
次、マナウォール。
此方は実験として、生じた幅3メートル高さ3メートル全長10メートルの半透明な壁に、右腕を使った。
全力で振り抜いた拳は、半透明の壁を粉砕した。
壁は破壊された場所が粒子になって解け消える。
その威力は、ゴルボルズのまともな突進並みとの事。
やはり、右腕の攻撃力は相当に高いらしい。
一方壁はと言うと、設置した防壁とほぼ同程度の強度との事。
その数分後、壁はゆっくりと青白い粒子になって解け消えた。
次、サンダーボルト。
放たれた雷撃が熊を撃った。
ほんの一瞬だけのそれは、まさしく瞬きの一撃で、撃たれた熊を絶命させた。
熊からは白い煙が上がり、雷が直撃したと見られる部分は炭化、言外に威力の凄まじさを語っている。
コレは多分、ヴォルテクスジェイルで閉じ込めた所に撃つのが最適解だろうな。
次、グロウブースト。
植物の成長を加速させると言うそれを、1本の木に掛けて見た所、十分成長していた木が2倍近くに大きくなった。
とんでもない成長力に、ふと思い至ったのは、コレをユレイド系に掛けたらどうなるのかと言う疑問。
果たして、その答えはコアから齎された。
なんでも、進化失敗が引き起こされる可能性が高いですとの事。
十分な魂の成長があればその限りでは無いとの事だが、H級を一気にE級まで引き上げる様な力を持つ為、それに耐え得る魂で無いと途中で進化が暴走して暴れ出すか、ただの木になるとの事だった。
命を賭けるのは戦場だけで十分だ。余程切羽詰まらないか安全が確保されない限り、使う事は無いだろう。
次、ブレイドマーチ。
放つと共に現れたのは、鉄の剣やナイフらしき金属片の山。
それらは全てが意思を持つ様で、一息に猪に集うと、甲殻の隙間を狙った斬撃の雨を降らせた。
一つ一つのキレは明らかにルー先生に劣るが、それでも確実に猪を仕留め、その後は手持ち無沙汰にくるくると回る。
数十秒後には、金属片達は青白い粒子になって消滅した。
敵の数が多い時はルーセントソードよりも有効かもしれないが、持続時間とかを考えると……確実な事は言えない。
次、コールドストーム。
吹き荒れた青白い氷結の風は熊を一瞬の内に凍り付かせた。
冗談抜きで一瞬。
余剰のエネルギーが周辺の草木まで凍り付かせる。
草をバリバリ踏み壊し、凍り付いた木に軽く右腕を使うと、木がバリンっと割れ砕けた。
感覚的にはフレイムブラスターと同じくらいの威力か。
D級にどれくらい効くかは分からないが、少なくとも俺は浴びたく無い。
後に残ったピットドロップとルーセントソードは見るまでもない効果だ。
特にルー先生は、自由度の高さとそこから来る利便性に、感謝の意を表したい。
暇があったらルー先生に五体投地する機会を設けようと冗談が浮かぶくらいには感謝している。
改めて、次は破石の上位アイテム、爆石。
火の爆石は、轟音と共に熊を炎に包み、爆発四散した。
水もほぼ同じ挙動で猪を四散させ、風はまるで重機にでもはねられたかの様に熊の内蔵をめちゃくちゃに破壊し、土は飛び散る石杭が猪の鉄の防御を易々貫いてそれを四散させた。
結論を言うと、より上位のスクロールや石程、威力に対するコスパが良いのだと思われる。
少なくともD級以上を相手にするなら、コレくらいの装備は必須だろう。
『より上位の魔物程、魔法に対する抵抗力も上がり、傷の再生力も上がります。それだけ生命力が増大している証と言えるでしょう』
「そうか」
一息付きつつ、外壁上でコアと会話する。
やはり、ルー先生程の方がD級を一撃で仕留められないのは、魔法の抵抗力が付くD級くらいから、弱点への防御力を上げてくるからなのだろう。
もっと言えば、E級程度なら魔法への抵抗力、または適応力が低いから、簡単に首を落とせる。
対象が光るオーラの様な物を操れるレベルになったら、ルー先生でも手傷を負わせるのが精一杯と言う事だ。
そこでふと思ったのは、ルー先生に一体何枚までルー先生を重ねる事が出来るのか、だ。
「ルーセントソードは枚数を重ねるとエネルギーが増大するんだよな」
『ルーセントソードは重ねる事でエネルギーを増大させますが、そこに込められた演算力の総量は重ねられない為、エネルギーを付与し過ぎるとその維持に演算力を消費してしまう事になります』
「成る程?」
つまり、幾らルー先生と言えど、抱え込めるエネルギー量には限界があるのか。
「最大数は?」
『およそ5枚程度かと』
「ふむ、D級相手に今度それで試してみよう」
ワンチャン、D級の首を一撃で刈ってくれるかもしれないしな。




