第1話 束の間の平穏
第三位階上位
明けて19日目。
激戦の翌日とは言え、侵略者に休みはない。
敵が休み無く侵攻して来るからだ。
朝食をとりながらも、コアの報告を聞く。
先ずは、シャドーウォーカーおよそ5000体が全てシャドーハイカーに進化したとの事。
加えてバド・ユレイド3500体が進化、バド・アード合計4,000体と、ユレイド500体になった。
続けて、ピッド2万体が進化、ピルンドが合計24,000。ノルメリオが8,000体になった。
次に、プチモーム500体が全てモームへ進化した。
次からがコアのテンション的に本題で、先ずはチッピ。
およそ60体がチッピードと言う黄色い鶏冠の鶏になった。
そして30体がウォンクルと言う鷹の様な魔物に、10体程度がスピングと言うペンギンの様な魔物に進化した。
リーダーを呼ぶと、ウォンクルが飛んで来たので、リーダーは鷹っぽい奴に進化したらしい。
そしておそらくメインのチェス・ミニマム・ポーン達。
全員が、チェス・プチポーンに進化し、サイズも拳大から頭くらいに巨大化した。
そのサイズでチェス・プチクイーンになって貰うと、俺の腿くらいはある大きなクイーンに変化し、その砲口は豆鉄砲から明らかに殺傷能力の高い銃口に変わった。
なんだかんだ言って彼等の命中精度は高いので、頼りになる戦力に既になったかも知れない。
また、プチポーン達は1段階前のミニマム系にならなんでも変身出来ると言う事なので、残る4体は普段はちょっと大きいミニマムクイーンに変化して活動して貰う事となった。
これで進化は以上。中々の進展である。
おまけに新たにコアの機能を解放し、それぞれ1万Pで、地図表示機能と魔物生成をG級から出来る機能を得た。
更に俺自身もアップグレードだ。
『本日マスターが取得可能になったスキルは、『怪力』と『射撃』のスキルです。合わせて1000Pもあれば取得可能です』
「取得で」
やったぜ。
射撃は照準との違いがあまり分からなかったが、走ったり跳んだりしながらの命中精度が更に上がった様な気がした。
怪力の方はと言うと、これが割と劇的な変化で、牛の亡骸を持って運ぶ事が出来た。
当然ナイフの感覚も狂ったが、其処はナイフを振り回して慣らして行く。
と言う訳で、今日の予定は筋トレとナイフ捌きを中心にしつつ、勇猛大平原の殲滅だ。
◇
袋小路の森防壁上から、地図機能によって表示された地図を見る。
勇猛大平原にて、青い光点2,226個が蠢き、赤い光点が次々と消滅して行く。
遠くを駆け回る黒と白のチェス・プチポーン達は、流石の力と強大な防御力で、牛や兎を片端から殲滅していた。
牛は防御力に物を言わせて集団で囲い、槍で突いて足を破壊、下がってきた頭に砲弾をぶち込み、確実に仕留めて行く。
うさぎ等は酷い物で、砲弾を使うまでも無く血祭りにあげられる。
まぁ、進化し合体したプチクイーン達は、単体ならまだしもこの群れだ、十分な殺傷力のある攻撃も出来るし、もはやF級4〜5匹とE級1体程度の群れが相手なら敵無しである。
「順調だなぁ」
『順調です』
斑模様の草原を見下ろしながら、穏やかな気持ちでそんな事を言う。
この調子なら、夜までに勇猛大平原の殲滅は終わるだろう。
強くなったもんだ。
そんな事を思いつつ、コアの出した一抱えもある石材を動かす。
怪力スキルの修行だが、これが中々に効率が良い。
疲れ切ってはポーションを飲み、復活しては疲れるまで修行する。
このルーティンを繰り返していると、気付けば疲れるまでの時間が長くなって行く。
他にも、石工や木工のスキル上げに大きな物を動かしやすくなったり、照準と射撃スキルのおかげか走りながらの的当ての命中精度が上がったりと、段々と強くなっている自覚がある。
このまま平穏に鍛えて、後輩と同じC級とかになりたい物である。
そうと思っていると、コアが慌てた様に声を掛けて来た。
『っ、マスター』
「どうした」
コアが慌てる時イコールヤバい時だ。平穏なんて程遠いらしい。
果たして——
『例の鳥の魔物がE級相当の鳥の魔物を率いて現れました!』
「っ!?」
アイツが? それもE級を率いて?
『現在警戒中です、即時に戦闘が起きる気配はありませんが、どうしますか』
「……俺が行ってみよう」
……今回ばかりはマジで不味いかもしれないな。
◇
と、そんな気がしていたが、いざ転送されて会ってみると、鳥は好意的だった。
接近する俺に、鳥は嘴をパコンッと鳴らして歩み寄り、バシバシと嘴で擦り寄って来た。
「お、おおう、昨日はサンキューな」
ワシワシと嘴や首を撫で、それを迎える。
仄暖かい日和の中、そんな長閑な時間が少し流れ、不意に鳥が距離をとった。
……ゴマすってるのバレたか?
鳥はクエッと一声鳴いて、パコンッと嘴を打ち鳴らす。
すると後ろに控え、時折毛繕いしていた大きな鳥達5匹が前に出た。
以前も見たが、やはりと言うか不思議な鳥だった。
体が随分と大きく牛並みはあり、それを支える足は太く強靭そう。
そして特徴的な大きな嘴に、異様に発達し、毛の無い胸部の様な器官を備えている。
『マスター、地脈から得た情報と個別データからこの魔物はミルキールグオンの亜種ないし進化相当種族であると考えられます』
そのミルキールグオンとか言うのは何よ。
『ミルキールグオンとは、端的に言うと鳥乳を産出する家畜型魔獣です。これよりも一回り程度サイズが小さい筈ですが』
「そうか」
で、何なんだろうか?
そう思っていると、鳥はクエッと一鳴きし、パコンッと嘴を鳴らし、5匹の鳥達もパコンッと嘴を鳴らして、鳥が素早く去っていった。
後に残った5匹は、暫し西へ消え行くそれを見送ると、此方に振り返る。
んで、何? と思っていると、不意に鳥の1匹がこちらに近付いて来た。
鳥は俺の目の前まで来ると、両翼でその大きな胸元を押す。
滲み出て来たのは、桃色の液体。
そのまま胸をぐいっと差し出して来る。
『試飲を勧めている様です』
「だよな」
仕方ないので勧められるがままに胸元に手をやりその柔らかな胸部を撫でる様にして液体を掬い取った。
そのまま飲むと……甘い。
「何これ、すげぇ甘いミルク」
『どうやら鳥達は家畜化を望んでいる様ですね』
「そう言う事もあるのか」
コアが言うならそうなのだろう。
『新たにこの種をミルカルグオンと名付けます。念話で誘導してみましょう』
「頼む」
コアが声掛けをすると、鳥達は少し驚いた様に動いた後、誘導に誘われるがままに東進を始めた。
プチクイーン達も狩りを再開し、俺も修行に戻る。
まぁ、なんだ……信頼して貰ったらしいな。




