第37話 束の間の夜
第三位階中位
時は流れ夜。
夕食にさっぱりジューシーな兎肉を喰らいつつ、コアの報告を聞く。
『多方面から情報を収集した結果、鹿の魔物は既にこの森に存在していない事が分かりました。白狼もまた、西部で確認が取れたのを最後に行方不明です。死体が発見されていない為、どちらも森の西部から何処かへ立ち去った物と考えられます』
「となると、取り敢えずの脅威はバンムオンだけになったか……」
横槍を入れられる事は無いが、猪の時みたいにぶつけ合わせる事も出来ない。
純粋な戦力勝負だ。
『敵は此方に気付いている事でしょう。バンムオンの行動基準が分からない以上、場合によっては行動可能になって直ぐに此方へ攻撃を仕掛ける可能性もあります』
「……取り敢えず、バンムオンが壁を破壊出来る事が分かった以上、上の連中も避難させた方が良いか」
『まるまる移動させてしまうのが良いでしょう。畑の移動は310P。ピッド達の移動は100Pあれば十分かと思われます』
「実行で」
これで万が一上が崩落しても死者は出ない。
『各員はDP節約の為歩かせます』
「池に落ちない様に橋掛けとこう」
『完了しました』
特にジェリーなんかは池に落ちたら自力で出られないしな。
『それからマスター。日が沈み切りました』
「お。ようやくか」
『早速シャドー達を動員しましょう』
「よし、頼む」
これでようやく猪を回収出来る。
全部の回収が終わるまで、俺は石工スキル取得の為に石の加工でもしている。
◇
花崗岩、石灰岩、大理石、深層うんたら堆積かんたら、良く分からんが、取り敢えず石をトンテンカンと加工し、シャドーウォーカーを作っていると、間も無く報告が来た。
『猪の回収が終わりました。シャドー達が帰還します』
「おう、お疲れ」
『獲物には幾らかの損壊が見られます。中でも最も大きな個体は魔石部分が欠損。バンムオンに捕食された物と考えられます』
「2番目に大きな個体はどうだ?」
『そちらは問題なく回収しました』
よしよし。何せD級相当の獲物だしな。食える部分があるだけありがたい。
それと……。
「剣はあるか?」
『此方に』
目前に現れたそれを拾う。
若干サイズの小さいその剣を掲げ、意味もなくその刀身を見る。一体どんな力を持つ剣だったのやら。
『詳細は不明ですが、感知される属性から雷と聖なる力を秘めた剣だと分かりました。事実上の聖剣の類いです』
「へぇー……聖剣」
そう聞くと強く感じるな。
っていうか雷って……最初の静電気それのせい?
『材質は魔鋼。しかし表面部分の属性適性が想定される値より低い為、おそらく芯に特殊な属性を持つ金属が埋め込まれている物と考えられます』
「そこら辺は良く分からんが、取り敢えずこれは大事な物っぽいし返しに行こう」
『……そうですね、そうしましょう』
担い手とか言って凄く大事にしてるっぽいしな。
『今から向かいますか?』
「早い方が良いからな」
『猪肉を手土産にしてはどうでしょう?』
「そりゃ良いな。未だゴブリンに夕食与えてないよな? 調理して渡そう」
そうやって信頼をコツコツ積み重ねる訳だ。監禁してるけどな。
『全猪肉の調理は132Pで可能です。例によって虫などに食われている為、マスターは食べませんよね?』
「食べません」
『ではゴブリン用に致しましょう』
すまないな、ゴブリン達。お詫びにポーションで栄養補給させるから許して。
「1番でかい奴の肉は影をシャドー達に食べさせてからピッド達に。2番目のはジェリー達。E級のはペルタ達に。内蔵は……ゴブリンが食う様だったら与えて」
『承りました』
「…………いや、2番目の奴の肉、一抱えくらい貰って良いか?」
『問題ありませんが、食べますか?』
「一緒に戦った奴とE級の奴にあげようと思ってな」
実際小柄な奴が居なかったら危ない橋を渡る事になってただろうし、その他の戦士達が居なかったら猪の群れと延々戦うハメになってた。そしてそいつらを育てたのがゴブ爺だろ?
礼もかねて良い肉を食ってもらおう。
『ではその様に』
「おう、ありがとう」
さて、それじゃあ早速行くとするか。
◇
奥の広間に転送して貰うと、俄かに周囲のゴブリンが騒めきだす。
それぞれの前にぴっと指をさすと、調理済みの猪肉と豆が葉っぱの皿に乗って出現する。
分かりやすくご馳走しますって示す為だ。
おどおどするそれらに構わず歩みを進め、都度それをやりながら、コアの指示に従い入り口側へ向かうと、最も入り口に近い場所に小柄なゴブリンとゴブ爺がいた。
騒めきから何か起きてるらしいと分かっていた彼等は、声を掛けるまでもなく此方を向いている。
『ゲラ! 出る、ない!』
「まぁまぁ、剣返すよ」
『おお! 剣! ありがとう!』
そうこうやってる内に、周囲のゴブリン達が膝を付いて頭を下げて行く。
……どゆこと? あれか? 天なる方的なアレがマジで正確に伝わってる?
ゴブリンも宗教的な思考を持てるんだな。
差し詰め俺は岩を出したり消したり出来て、食える肉とかを出したり出来て、安全な場所に一瞬で送り届ける事が出来る仙人とか聖人とかそう言う認識だろう。
思えば一般ゴブリンからして見ればそんな感じの事しかされてないし、こうなるのも宜なるかなと言ったところか。
逆に信仰していない小柄なゴブリンとゴブ爺は、方や共に戦ったからこそ直感的に俺が万能では無いと知っている。方や洞察力と知恵と経験で飛び抜けておかしな存在では無い……だろうと推測しているって感じか。
剣を取り戻してキャッキャッしてる小柄な奴は放っておいて、ゴブ爺としっかり目を合わせる。
『皆の者、耳を閉ざせ』
『耳、閉じる?』
『閉じる?』
『皆、耳、塞ぐ!』
『そう言う事じゃ』
伝達不足で尖った耳を折り曲げようとした連中を、小柄な奴が止めてやり方を教え、ゴブ爺が頷く事でちゃんと意図が伝わった。
僅かに無駄な時間が掛かった所で、ゴブ爺と会話する。
『……して、天なる方。これは如何なる意図でしょうか?』
閉じられた入り口を指差し聞くゴブ爺に、俺も一度入り口を指差した後、バツを作る。伝わるか?
「バンムオン」
『……ふむ、森を乱す者が入って来れない様に。と言う事ですな?』
頷くと、ゴブ爺の緊張が少し解れる。
『安全な住居、美味い食事……どうして我らにそこまでの慈悲を? 何も返せる事は有りませぬぞ?』
問われると困るんだなぁ。答えられんし。
少し考えた後、小柄なゴブリンの方に歩み寄り、ある事に気付いた。
……コイツ、剣持ってるから片方の耳殆ど塞がってないぞ。他の武器持ちは武器置いてんのに。確信犯だ!
取り敢えず、その剣を小柄な奴の手毎に握り、ゴブ爺を見る。
この剣がめっちゃ気になるのと、後ゴブ爺と小柄な奴の知能レベルと言うか何というか……まぁぶっちゃけ言うと、戦力に欲しい。
コイツらなら多分、一回進化するだけで背中を任せられる様な気がするんだ。ゴブ爺なんて既にE級で俺と同格って話しだしな。
ゴブ爺がもうちょっと若くて動ければ最高だった。
ゴブ爺は剣を見て、俺の腰に刷かれたナイフを見た後一つ頷き、その次に俺を見て小柄な奴を見た後、少し首を傾げてから頷いた。
『……うむ、分かり申した。そう言う事であるならば、我らも担い手も天なる方へ尽くしましょうぞ。何、安心召されよ。皆にはしっかりと天なる方へ尽くされる様に教育しましょう』
俺はコクリと頷いた。
……コイツほんと有能だよな。
誰に教わった訳でもないだろう天性の物で、畏怖と信仰を利用して、宗教的にゴブリン達を操ると宣言してる。
教祖の才能があるね。
まぁ、一部の知恵者が神秘性を利用して人を纏めるってのは原始の時代じゃ何処の世界でもある事なんだろう。
一応、ダメ押しに再度入り口を指差し、続けて自分を指差して、えぇー……。
「……バンムオン、ギィガ」
『っ』
これで伝わるか? 奴は俺が殺す。それまで入り口は塞がったままだぞい! みたいな。
ゴブ爺が沈黙したのに対し、声を上げたのは盗み聞きの小柄な奴。
『怖い奴! 倒す、担い手、一緒!』
俺はバツを作って首を横に振る。
死ぬ奴はノーサンキュー。せめてE級になって出直しな。
奴はC級に匹敵するとされるパンチを繰り出すからな。
『……これ担い手よ、耳を塞げと言ったであろう?』
『剣、持つ、耳、塞ぐ、なかった!』
置け。と思ったのは俺だけでは無かっただろう。
「まぁ、取り敢えずそう言う事だ」
伝わるとも無い独り言を呟き、一歩下がった。
地面に指をさし、手筈通り周りの連中にも同時に猪肉を出させる。
ゴブ爺と小柄な奴に一つ大きく頷いて見せ、ひらひらと手を振った。
魔法陣が輝く。
まぁ……万が一俺が死んだら、石を取り除いて外に出れる様にしておこう。
《8日目》
【出費】
転移 38P
ゴブリン転送 1,452P
引っ越し用岩処理 98P
畑移動の工事費 310P
ピッド住処移動の工事費 100P
ゴブリン巣の工事費 3,500P
金属回収 10P
金属加工 200P
ゴブ餌用猪肉調理 152P
石工セット 5P
作業台 3P
テーブル 2P
椅子 1P
扉 2P
初級ポーション×30 10P
中級ポーション×3 300P
破石4種×80 800P
ルーセントソード×2 200P
支配領域拡大 4,000P
山脈支配 21,000P
地脈吸収量増加 1,040P
保存空間拡張(大) 10,000P
合計:43,223P
【収入】
地脈吸収 280P
生産量 1,090.3P
ゴブリン生産量 52.3P
その他生産量 60P
猪? ×2 140P
熊? ×2 120P
蛇? ×5 30P
鼠?(黒)×8 16P
兎?(脚)×3 18P
サジェカントの卵 8,000P
サジェカントの蛹 10,000P
猪軍の壊滅
猪?×147 9,555P
猪?(大)×3 1,500
巨猪? 950P
その他
小虫×47 4.7P
鼠?×12 9.6P
兎?×2 6P
合計:31,831.9P
所持DP:72,132.2P
【所持アイテム】
石塊(中)×350
石片
木材(小)
熊?の牙×14
熊?の爪×14
熊?の毛皮×14
熊?の骨×14
熊?の魔石×14
熊?(大)の牙×2
熊?(大)の爪×2
熊?(大)の毛皮×2
熊?(大)の骨×2
熊?(大)の魔石×2
猪?の牙×318
猪?の毛皮×159
猪?の骨×159
猪?の大甲殻×636
猪?の甲殻×1,749
猪?の魔石×159
猪?(大)の牙×8
猪?(大)の毛皮×4
猪?(大)の骨×4
猪?(大)の大甲殻×16
猪?(大)の甲殻×44
猪?(大)の魔石×4
巨猪?の牙×2
巨猪?の毛皮
巨猪?の骨
巨猪?の大甲殻×4
巨猪?の甲殻×11
巨猪?の魔石
猪主?の牙×2
猪主?の傷痕毛皮
猪主?の骨
猪主?の大甲殻×2
猪主?の壊れた大甲殻×2
猪主?の甲殻×8
猪主?の壊れた甲殻×3
蛇?の牙×21
蛇?の皮×21
蛇?の骨×21
蛇?の魔石×21
蛇?(大)の牙×6
蛇?(大)の皮×6
蛇?(大)の骨×6
蛇?(大)の魔石×6
鼠?(黒)の歯×55
鼠?(黒)の毛皮×55
鼠?(黒)の魔石×55
兎?(脚)の歯×18
兎?(脚)の毛皮×18
兎?(脚)の魔石×18
サジェカント(卵)の魔石 ×190,000
サジェカント(蛹)の魔石 ×100,000
サジェカントの牙×228,658
サジェカントの魔石×203,658
サジェカント(大)の牙×114,249
サジェカント(大)の魔石×114,249
サジェカント(女王)の牙×12
サジェカント(女王)の魔石×7
サジェカント(主)の牙
鼠?の毛皮×97
兎?の毛皮×32
初級ポーション×30
中級ポーション×3
バド・アードの実×40
プチモルムの繭×300
調理済み熊肉×4
調理済み大熊肉×30
調理済み大猪肉×30
調理済み猪肉×9
調理済み蛇肉×9
調理済み兎肉×9
鉄 10t
魔鋼 1t
火破石×10
水破石×10
風破石×10
土破石×10
使用済みルーセントソード×3
ルーセントソード×2
木工工具
石工工具
古びた鍛治道具
古びた炉
苔むした石家
苔むした砦
ナイフ
魔導投擲器(銃型)
制服一式
不要な肉類は餌に、3段階程格上の獲物の肉を食らう事で、多くの配下達の進化が大幅に早まった筈です。
袋小路の森の主、バンムオンとの戦いに備え、使える個体を増やす為に、魔石の使用を提案しましょう。
【兵力】
《?級》
プチモームの卵×500
《H級》
ジェリー×12,600
ペルタ×949,280
ピッド×9,030
バド・ユレイド×1,500
ピグマリオン×1,000
シャドーウォーカー×3,000
《G級》
ゲル×780
グミ×850
プチスライム×361
ペペルタ×5,370
グァーム×631
ピルンド×820
ノルメリオ×181
モーム
プチモースー×300
バド・アード×100
ユレイド
カースドピグマリオン
シャドーハイカー×2,001
《E級》
マスター
《その他》
ゴブリン?×514




