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第35話 幾重の道は二者択一

第三位階中位

 



 ゴブリン達を罠に掛けて洞窟に閉じ込め、全てのアイテムを鹵獲した。

 狩った猪を回収していた様で、肉もあれば荒いが布も、そして弱いがロープの様な物もあった。


 そこら辺はコアから聞かされて無いが、金属武器意外は思ってたくらいの文明レベルだな。


 尚、ハンマーや鶴橋含む、石を壊せる類いの道具は没収だ。

 入り口壊されたら困るからね。



 ゴブリンの数は想定よりずっと多い482匹。合計数は514匹。日間51Pである。

 現在の豆農場ではその半分も養えないので、拡張が急がれる。



『それでマスター、あの後一体何があったのです?』

「簡潔に言うと——」



 猪にぶっ飛ばされ南下し猪の群れにあって見つかり、戦ってたらゴブリンが来て、共闘して大型猪を狩り、そうかと思ったら猪と熊が現れてどうにか逃げ出した。


 そんな説明をしつつ、小鬼達の採掘場深部の広間に到着した。

 深部と言いつつも、ここから更に下へ降る道がまだまだ続いているので、相対的には浅いがな。


 正確には、ゴブリンが住んでいる居住エリアの最深部だ。



「——っう訳で、ここに罠を張る」

『理解しました』

「各通路を塞いで」



 そこまで言った所だった。


 ズドンッと爆発する様な音が聞こえたのは。



「っ! もう来やがった!」



 いや、少し遅かったくらいか? ゴブリンを避難させる時間も取れたし。



『直ぐに転送を!』

「頼む」



 ちゃんと広間の様子は見れた。本当ならどう言う罠を設置するか相談したい所だったが、仕方ない。後はコアにお任せで良いだろ。

 魔法陣が光る。



「横穴を塞いだら岩を使って擬似崩落させるんだ!」

『承りました!』



 光が爆発的に広がる中、更に大きな衝撃音が聞こえた気がした。





 数度の微かな浮遊感の後、数度目の着地。

 辺りは見慣れた……いやまぁ引っ越ししたばかりだからあまり見慣れて無いが、コアの前だ。



『おかえりなさいませ、マスター』

「あぁ、ただいま」



 ようやく一息付けるってもんだ。



「それで、どうだ?」

『現在エリアボスと見られる個体は、通路を真っ直ぐ進行中。広間到着まで残り4!』



 はやいなっ! 一本道だし、体が頑強だから罠なんて警戒してないんだろうな。



『広間へ到着、落石を開始します!』



 よし、どうだ……!?



『傷石、破石を交えて攻撃します!』

「やったれ!」



 いや、追加購入した方が良いか!? いや良いに決まってるだろ!?



「つい——」

『——あ』



 ……どうした? まさか……手遅れ?


 そう思った瞬間、ズズンッと小さな地震が起きた。

 …………嘘だよな。



『……エリアボス、逃亡しました』

「…………何が起きた?」



 あり得ないだろ。


 通路はそこそこ長いし、真っ先に逃亡を警戒して前も先も石で塞いだ筈だ。コアがそれを忘れる筈が無い。

 その上で、空間を埋め尽くす様に落石と爆弾の雨を降らせた。逃げ道は無い。


 普通なら終わりだ。



 それをまさか……まさかだ……。



『エリアボスは崩落の最中、右腕に収束させた闘気と見られる魔力を全身に行き渡らせ、強化された迷宮の壁を破壊、山を半壊させて洞窟から脱出しました』

「それは流石に冗談だろ」



 いや、コアが冗談なんて……偶に言うけど今この状況では言うもんか。分かってる。



「化け物かよ……」



 そんなもん、どうやって倒せば良いんだよ……?


 頭を抱える俺に、しかしコアは嬉々として情報を伝える。



『エリアボスは無理をした結果、腕部に爪の破損と甲殻のひび割れが起きています。骨や筋肉にも何らかの障害が残っている事でしょう。吐血していた事から、内臓器の損壊も起きている物と考えられます』

「確かに……これだけの事をやってのけたんだ。無傷とは行かないだろうな」



 今が最大のチャンスなんじゃないか?



「今行くべきか……?」

『……私はおすすめ出来ません。僅かにでも力を残していた場合……マスターの命を賭ける事になります』



 ……くそっ……日和ってんな。コアに行かない方が良いって言われて安心していやがる。


 ダメだな。ダメだ。冷静になれ。落ち着ける場所にいるんだ。せめて合理的判断を下せよ。


 そう、確かに、エリアボスが余力を残している可能性はある。

 意図的に残した場合は勿論だが、全力で最後の抵抗をする程度の余力でも、十分俺を殺し得る。


 勝利条件を履き違えちゃいけない。


 俺達の目的はエリアボスを倒す事ではなく、俺とコアが生き残る事だ。

 確実性の欠ける危ない賭けに、俺の命をベットするのは非合理的だ。おまけに主戦場は森の中。アドバンテージは敵にある。


 ただ一方で、これが最大のチャンスである事は間違いじゃない。


 化け物猪と戦い、ルー先生に目ん玉切り裂かれ、コアの攻撃で全身にダメージを負っている。

 未だかつて無い程に弱っている筈だ。


 今が最も、奴を倒しやすい状態なのは間違いない。


 だが……そう、今でなくとも良い筈だ。



 ——敵にポーションは無いのだから。



「……エリアボスはどの程度で回復すると見る?」

『野生下でありあれ程の強個体です、自己再生能力は保持していると思われますが……地脈の噴出孔を根城にしている可能性も考慮し、危険域を脱するには1日程度。活動するのに十分な回復には3日。完全再生には10日程度掛かると見られます。またその場合、真っ先に内臓器と武器である右腕を回復しにかかる物と予測され、眼球はそのまま失明する可能性が高いかと』

「最悪でも目ん玉だけは奪えた可能性がある、か」



 まぁ、上々だろ。


 つまり、攻勢に出れるのは3日以内。より早い方が良い。



『ただし……連日の戦闘から、エリアボスにもまた、無茶をしてでも外敵を殲滅しようとする理由がある物と考えられます』

「状況は未だ不明、か……情報収集が必要だな」



 敵を知り、己を知れば、百戦危うからずと言う。

 エリアボスの情報をより詳しく調べ上げる必要があるだろう。


 その為には、コアが頑張ってくれる地脈からの情報と……目視の情報が不可欠だ。



「例えばだが、支配領域を広げたら地脈から得られる情報が多くなったりしないか?」

『獲得可能な情報量が増加し、情報の精度が増す事は間違いありません』

「良し、なら、周囲の山脈を全て支配しよう。出来るか?」

『……21,000P程あれば袋小路の森を囲う山脈を全て支配可能だと考えます』



 流石に高い。が手は届く。



「実行だ」

『はい……完了しました。調査を開始します』

「それに並行してだが、俺を北西の山に飛ばしてくれないか?」

『……危険は承知の上、ですか…………』



 ゆっくりと明滅するコア。特に断る理由は無い筈だ。

 今が最も安全なのだから。



「頼む」

『もう少々お待ちください……はい、問題ありません。目標地点及び中継地点付近に高い脅威度を持つ存在はいません』



 なんだ、確認取ってたのか。流石コア、優秀。



『念の為アイテムを補給しましょう』

「OK、ルーセントソード2枚に破石を各種10個ずつ。後中級ポーションを2個な」

『完了しました。転送します』

「おう」



 今度こそ安全な“ちょっと見るだけ”だ。


 さてさて、森の北西部はどうなってるかね?





 他よりもやや高い最北西の山の上。


 南や東が海に面しているのに対し、そこから見えるのは広い草原と湿地帯だ。

 勿論反対側にも興味はあるが、今やるべきは森の調査。


 ちょっとだけの逃げ腰はここまでにして、森を見下ろす。


 北西の森は、北東や南東と対して変わらない様に見えるが、その実……木々が少し大きい様に見える。

 化け物が住んでいるのに、または住んでいるからか、妙に開けた空き地は殆ど無い。


 そんな森の少し北側。山の麓に程近い場所に、妙な……段差? があった。


 山の一部と言うには遠いその崖、そこから先が最も木々が大きく、それらは扇状に広がって見える。



『……おそらくですが、そこが地脈の噴出孔なのでしょう。その崖周辺にエリアボスが潜んでいる物と思われます』

「木々がデカくて見え辛いが……確かに崖の前辺りが少し開けてるか……?」



 まぁ、疑うまでも無いな。奴はそこにいるのだろう。



『北東部、特に崖に近い場所は、おおよその想定ですが、通常よりも30倍程度のDP要求がある様です』

「馬鹿高いな。本拠地って事だ」



 体感だが、崖周りだけだったらざっと……3,000くらいあれば行けるんじゃないか? だとしたら、その30倍だから……9万。

 貯めれば払えない額じゃ無いが、そこに至るまでの土地を線状に支配したとしても10万は行くだろう。


 そして、仮にこの森全てを支配できたとしても、以前脅威は存在したまま。

 やりやすくはなるだろうが、一定程度の支配をする前に此方がやられる可能性は十分ある。


 支配による長期戦はあまり勝率が高いとは言えない。

 寧ろリスクは時間を掛ける毎に増大していくだろう。


 何せ、奴はおそらく……成長している。


 コアは、奴が全身に闘気の様な物、赤いオーラを纏わせて迷宮の壁を破壊したと言っていた。

 だがどうだ? そんな事が出来るなら、猪に対して使っている筈だ。


 戦闘の様子は見れなかったが、やっていれば決着は一瞬だっただろう。


 つまり、猪の真似をしたんだ。



 時間はある様に見えて、タイムリミットは刻一刻と迫って来ている。



 逃げる事も考えない訳じゃない。選択肢としてそれは確かに存在する。


 だが……D級だ。


 E級と称される存在は、おそらく袋小路の森程度の規模の場所につき10匹程度は居て、D級は1〜2匹は居るだろう。


 つまり、運が良くない限りどこに逃げてもD級は居て、そうして逃げてる内に、少なくともここのエリアボスはC級になる。

 それがどの程度の強さかを俺は知らないが、奴は成長している。


 ——討てる内に討たなければならない。


 既に敵対し、確かに目を合わせているのだから。



 

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