第24話 万端と思え
第三位階中位
明けて翌朝。
——Bugiii--⁉︎
「またか!?」
猪の悲鳴から始まった今日、俺はこの世界に来て二度目の外出をする。
◇
軽く運動を済ませ、ナイフを腰に佩く。
「よし、そろそろ行くか」
日は既に登っている。絶好の探索日和だ。
『物資を確認。魔法符。ポーション。傷石4種。武器……問題ありませんね。体調はどうですか?』
「問題ないね」
『では、最終確認です。目的は情報の収集。高台からの視覚情報。外敵が集まるその他の原因がないかを調べ、可能で有ればそれを除去。何一つ情報を得られなくとも、1時間以内に帰還してください。また、万が一魔法符を消費した際も即座に帰還してください。その他想定外の脅威を発見した際も即座に帰還してください』
「OKOK。安全第一だ。俺も死にたくはねぇからな」
今森がどうなってるか、チラッと見て帰るだけだ。
俺も危険は冒したくない、が……ノルメリオとピルンドは猛禽に攫われたらアウト。ジェリー系はトロいし、核があるないに問わず熊とかに攻撃されたらアウト。ピグマリオンも同じ理由でアウト。
シャドー系は夜間だけで隠密能力は高いが、白狼みたいなのが他にいないと断ずるには俺達は何も知らな過ぎる。飛行能力を持つプチモースーは良いかもしれないが、結局鳥や肉食昆虫に襲われたらアウトだ。
以上の理由から、鳥や蛇なんかの小型生物を物ともせず、熊や猪と遭遇してもどうにか出来る人材が行くのが妥当だ。つまり俺。
ほんとにチラッと見るだけ。できれば30分も掛けたく無い。
だが、例の死骸放置事件以外に大型の獣を呼び寄せる原因があるなら、それをどうにかしないとD級まで現れ兼ねない。
D級に襲われて壊滅した後で、敵を引き寄せる原因はもう一つありました。じゃ遅いのだ。
これは必要な探索だ。
『予備としてルーセントソードをもう一つ買っておきましょう。ポーションも初級ではなくせめて下級、出来れば中級を用意した方が良いかと。傷石類も専用ケースを買っておいた方が良いのでは?』
「心配性かっ! ……取り敢えずルーセントソードと中級は買っとこう。専用ケースってのは?」
『ルーセントソードと中級ポーションで200P。専用ケースは、破石類自体が衝撃で起動する剥き出しの爆弾の様な物である為、それを保持する機能と射出する機能を持った魔道具です』
は? なにそれ重要じゃん。なんで言わんかったかね? 最悪お腹無くなってたじゃん。ぽんって弾けて。
『傷石類は通常、起動を念じた後の最初の衝撃で起爆します。ケースは一定以下の衝撃を緩和する構造を持ち、投擲型の射出機構を備えます』
「買いで。おいくら?」
『分類上は下級の魔道具。およそ1,000Pで購入可能です』
「良し、買い!」
1,000は結構高いが、要はナイフみたいな物だろう? 傷石類は安く買える攻撃アイテムなんだし、買っといて損は無い筈だ。投資の範疇だろう。
『型は如何しますか? 杖や銃等がありますが』
「へぇ……取り敢えず銃が好みかな」
『長銃、短銃等がありますが』
「携行性を考慮して小さい方が良いな」
『承りました』
ピカッと光って出て来たのは、拳銃。
鈍い輝きを纏うそれは、テレビやマンガで見る様なセーフティーだとかハンマーだとか良くわからん構造の物は無く、至ってシンプルなL字の拳銃だ。
握って見た感じ……不思議なフィット感。
ナイフ握った時もちょっと思ったんだが……これもしかして俺用にオーダーメイドで作られてるのかね?
ナイフをブンブンやってたおかげか、この銃も多少ブンブン振り回せる。
使えそうな気もするが……一応ちゃんと試し打ちもしておきたい。
『傷石と同程度のサイズの物ならなんでも射出可能です。グリップの底に触れさせる事で装填。最大5つまで投入可能で、その後は意識する事で撃つ弾を選べます』
「へぇ」
……思ってたより便利だな。1,000だっただけある。
試しに小石を装填して撃つと、目にも止まらぬ速さで飛んだ弾が壁にぶつかり、パンッと弾けた。
……石が砕ける程の威力って……人ならどこに当たっても大ダメージ必至だな。
毛皮を持つ獣でも結構なダメージになるんじゃないか? ……いやでも鎧猪には効かなさそうだ。
「……これは真っ直ぐ飛んでんのか……?」
『見た所4メートルまではおおよそ真っ直ぐ進んでいます。それ以降は様々な影響で大きく逸れ始めている様ですが、6メートルまではほぼ狙い通り当たるかと』
「どんなもんか分からんが……それも慣らして行かないとな」
何発か試し打ちした所で、傷石を込めた。
「さて、準備は万端だ。よな?」
『……手札を増やし過ぎるのも問題です。強敵と対面した時はとにかく直ぐに魔法符を使い、傷石を打ち込んで逃げてくださいね?』
「分かってる。任せろ。直ぐ逃げるぞ」
何だったらガサッと音がしただけで全力ダッシュするぞ。反応出来ればだけども。
あれだな、俺も不安だから準備万端か? なんてコアに聞いてるが、これコアの方が不安だよな? 聞いてたら終わらんぞコレ。行こう。
「それじゃあコア、転送してくれ」
『……そうですね。くれぐれも安全を第一に。本来ならマスターの命が最優先なのですから、くれぐれも妙な事はなさらず、何かおかしいと思ったら——』
「分かってる分かってる。大丈夫だ、大丈夫。チラッと見て来るだけだよ。寧ろ何かそういっぱい言ってるとフラグみたいになるから。一思いに行こうぜ」
別にコアが俺を信用してない訳じゃあない。ただ、それだけこの森が未知であり、既知の脅威が闊歩していると言う事だ。
一気に行こう。バッと行こう。そんでサッと帰ろう。
「直ぐ帰るから、な?」
『……分かりました。転送します。くれぐ……いえ、お気を付けて』
「おう、行ってくる」
『行ってらっしゃいませ。マスター』
地面に展開された魔法陣が光を放った。




