第14話 神秘の儀式
第三位階中位
瞑想して治療して、また瞑想して治療して、そうこうやってる内に、気付くと寝てた。
コア曰く、幻痛毒の魂魄ダメージが未だ回復しきっていないのと、魔法使用の疲労が重なったからだとか。
既に手のヒリヒリは無く、概ね魂魄の治癒は完了したかと思われるらしい。
差し当たって朝の治療を終え、短剣を振り回した後朝飯を食い、報告を聞く事となった。
『昨日に引き続き報告が幾つかあります』
「聞こうか」
『先ずは……マスターが新しくスキルを取得可能になっています』
「ほう」
何かな? ワクワクすんぜ。
『幻痛系の対抗手段である痛撃耐性スキル。500Pです』
「高いが買う以外の選択肢が無い」
『耐性系スキルは適性にも繋がるので、比較的構築に掛かる費用が高いのです』
ピカッと複雑怪奇な模様を取り込んで、痛撃耐性スキルを得た。
レベリング方法は何か? 痛い目に遭えば良いんか? やだなぁ。
『次に、ゴブリン達の様子ですが……洞窟から出れない混乱もありましたが特に問題なく活動を再開しています。至って健康であり特に支援は必要ありません』
「良し。豆は?」
『回収し、撒き終えています。加工費として1DP。土地の再生に5DP消費しますが』
「実行」
コアに任せておけば問題あるまい。次だ。
『続いて、地脈から収集した情報ですが……袋小路の森南西の先に蟻の大型コロニーが存在する様です』
「潰しに行くか?」
『いえ、得られた情報によると……複数体の統率個体と数十万に及ぶ蟻の大群がいる様です。幸にして巣は山側に作られていますが、殲滅するには相応の作戦と戦力が必要です』
「ふむ、ゴブリンみたいに閉じ込める事は困難だろうし、駆逐すると生態系にも影響が出るか?」
『生態系の心配は不要です。現在蟻達は急速に数を増やしており、袋小路の森南西部は広い範囲が荒野になっています』
「害虫じゃねぇか」
そんな勢いで増えたら自分達も死ぬぞ? 明らかに生態系のピラミッドが崩壊し掛けてる。
駆除しないとヤバそうだな。
「目標を設定しよう。現在の最終目標は、袋小路の森のボス討伐。それ以外の目標として、蟻の駆除。その為の戦力拡充だ」
『では私は南西部の監視を重点的に行いつつ、北東部にちょうど良い獲物がいないか調べる事にします』
「優秀」
『お褒めに預かり恐悦です。当面は時間を掛けて数を増やしつつ、南東部の調査を行うのが良いかと』
ぐう有能。
獲物がいないとDPが稼げない。DPが無いと戦力拡充が出来ない。戦力が無いと蟻を殲滅出来ない。
ま、どの程度戦力がいるかはこの後の報告を聞いてから詰めれば良い。
あるんだろ? さっきから視界の端々に見えてるなんか少し変な奴とか。
『件の蟻についてですが、昨日中に上げた報告によると、シャープアントによく似た新種であるとの事で、命名権を下賜されました』
「報告……」
いやまぁ、してるよな。一度送り込んだ何かが全滅したって聞くし。
寧ろ密に連絡するくらいが丁度いいんじゃないか?
『下等生物であると言う事も考慮し、蟻の名前はサージェカントを提案します』
「何でも良いけど、長くない? 意味は?」
『急に増える蟻の兵士と言う意味です』
へぇ、的を射てる。
「縮めてサジェカントで良くない?」
『ではその様に。これからそれらの蟻はサジェカントと呼ぶ事に致しましょう』
名前があった方が便利だしな。
で、コアが心なしかるんるんと言った様子なので、もうすぐだろう。
『最後ですが……』
「ワクワクスルゼ」
『……蟻改めサジェカントとの戦いを経て、多くの個体が進化出来る様になりました……!』
「ヤッタゼ! 解説」
『はい! 先ずは此方をご覧ください』
そんな声と共に、ベットの下からひょっこり顔を出したのは、シャドー……ウォーカー?
いや、明らかにでかい。合体シャドーウォーカーよりちょっとだけ大きいぞ。
『シャドーウォーカーから自然進化した上位種、シャドーハイカーです』
「おお」
手をぶんぶん振りながら、ずりずりとベット下から這い出て来たシャドーハイカーに手のひらを差し出す。
ぴょいっと乗ってきたそれは、相変わらず重量がない。
手に憑かせると、黒が腕まで覆い尽くし、籠手の様な姿になった。
おそらくパワーも上がってる事だろう。
『小児程度のパワーがあり、出来る事はシャドーウォーカーと大して変わりませんが、下位の生命体の影から少しずつ生命力を吸い取れる様になっています。ランクはG級です』
「G級。良いね」
『また、複数の蟻を撃破、その影を捕食した事により、シャドーウォーカーが分裂して倍に増えました』
「マジで?」
やったじゃん。シャドーウォーカーめっちゃ使えるからなぁ。
シャドーハイカーになるとなんか生命吸える様になるらしいし。
『最初の1,000体は、1体につき10DPでシャドーハイカーに進化可能です』
「1体につき10……となると1,000で1万Pか……うーん」
これは少し惜しく感じるな。強くなるとは言え、現状ほぼ全財産だしな。
「自然進化ってのは直ぐに起きそうなのか?」
『普通は中々起きない物です。何かしらの条件を満たす事により自然と進化する事を自然進化と呼びますので、自然進化させるには条件を探さなければなりません』
「ふむ?」
条件。条件か……要は進化した奴としてない奴の違いって事だろ?
「戦闘経験は……」
『サジェカント戦で十分得られたかと』
だよなぁ……いや、進化って考えるから悪いんだな。単純に大きくなる為には何が必要で、コイツには何があった?
「……ポーション、毒、闇の属性石」
『それら全てが該当する物と思われますが、一番影響が大きかったのは闇の属性石でしょう』
だろうな。だけど値段がなぁ……。10DPの物を買って与えて10DPで進化出来る物を進化させるとなると、ほぼ無意味。
「なんかこう、安価で進化出来そうな方法ってない?」
そんな無茶振りに対し、コアは暫し考える様にゆっくりと明滅し、答えた。
『闇の属性石から純粋な闇属性の抽出。サジェカントの魔石から不純物の混じる闇属性と無属性魔力を吸収して水増しし、ポーションの影による生命エネルギーの補填を行う事で進化を促す……事が出来るかも知れません』
「物は試しだ。それに失敗しても分裂しそうなメニューだし、やってみようぜ」
素人考えだが、聞いた感じだと成功しそうだし、失敗してもなんか3倍くらいに増えそうだから一気にやってしまおう。
1,000DPで闇の属性石を100個購入。10DPで初級ポーションを30個買い、コアを中心にして円形に配置した。
与えたのは、サジェカントの卵から得られた砂粒程度の魔石30個ずつ。
シャドーウォーカー達は、その魔石を体に取り込み、初級ポーションを通した暗い緑の影の中、闇の属性石を中心に謎のカニダンスを踊り始めた。
一体何処で覚えたのやら……両の手でチョキを作って横移動しぐるぐる円を描く姿は……やべぇー儀式をしている様にしか見えない。
新しく生まれた1,000体は、広間の入り口辺りで先達の奇怪な踊りを見て、その真似を始めた……ジェリーを中心に。
やべぇ。しくじったな過去の俺。なんか定着してるぞー。ヤバいのが。
取り敢えず全て見なかった事にした。飽きたら辞めるだろ。
「さぁ、次の報告だ」
明らかに増えてるジェリーとか、フルーツみたいなのが成ってるバド・ユレイドとか、色々あんだろ?




