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第5話 贄の谷

第四位階下位

 



 治療を終えたウェンティ達は、今回の惨状を受け、満場一致で一時的な拠点変更を受け入れた。


 故郷を捨てられない者もいるだろうし、あくまでも一時的な避難としておいた方が、納得しやすいと鑑みての説得だ。


 避難は直ぐに行われた。


 場所は第3拠点。案内が出来る最初の子を前に、始まる空の大移動。



 どうやら、あの乱戦下でも俺の戦果は多くの者が見ていたとかで、大量のキョーを仕留めた事や、クァォン・ゲンギュの攻撃を受け止めた事が信頼の評価に繋がった様であった。


 そんな訳で、第3拠点への避難は速やかに進み、およそ1万DPでウェンティ達に住みやすい住環境が整えられ、昼を回る頃には避難を終えた。



 改めて、コアがウェンティ達と交渉する。


 話は案外直ぐに纏まり、クァォン・ゲンギュを倒せるなら部族はその傘下に降るとの事。


 コアに曰く、クァォン・ゲンギュはもう数十年前から縄張りを少しずつ広めていた様で、ウェンティ達の他の部族は滅ぼされてしまったとか。

 彼女等のニュアンス的には、もうクァォン・ゲンギュを討ち取らないと安寧は無いくらいの気持ちらしく、それだけ部族内でも怪我人や死傷者を出している様であった。


 また、彼女等が飼育していたミルカルグオン10頭も新たに味方に加わった。

 クロによる崖ワープが無ければ遠回りでの1日掛かりの下山になっていたらしい。



 何はともあれ、第3拠点は安全だ。


 彼女等には柔らかなベッドでしっかりと休息を取ってもらい、万が一の白兵戦に備えて貰う事とした。


 まぁ、最悪先と同じ襲撃があったとしても、白兵戦に参加するのはドール達とチェス達になるだろう。



 悲壮な覚悟の割に、各自柔らかいベッドの上をぴょんぴょん跳ねて喜んでいるウェンティ達を少し眺め、俺は修行を再開した。





 各種修行に加えて有効だったナイフトレーニングを優先的に鍛え、夜が来た。


 最初はコアの報告からだ。



『それでは地脈から得た情報を報告します』

「おう」

『先ずは、今夜攻略するエリアについてですが、レッサーウェンティの生息していた山岳エリアと主にキョーが生息する峡谷エリアで別けられる事が分かりました』

「ふむ」



 このパターンだと、大体の場合は生息地で支配エリアが別れていて、キョーのボスは峡谷エリアを支配しているって感じだろうな。



『ご明察の通り、クァォン・ゲンギュの支配エリアは峡谷全域に及んでいますが、山岳エリアには殆ど侵食が進んでいません』

「山岳エリアの支配は幾らだ?」

『およそ4万DPで全て滞りなく支配出来ます』

「実行だ」

『はい、完了しました……元『風乙女達の安息地』も支配圏内でしたね』



 エリア名ね、となると、今回のは無駄足だったか?

 いや、足を先に運んでなかったらウェンティ達が全滅していたかもしれないし、今回もまた徳を積んだな。



『早速、元『風乙女達の安息地』に仮拠点を設置しましょう。1,000DPもあれば、キョーの襲撃にも対応した仮拠点が作れるでしょう』

「おう、頼む」



 まぁ、仮拠点って言うか日除け拠点になる訳だが。



『完了しました。では……』

「出発だな」



 前回は支配したエリアの中での活動だったが、今回は支配エリア外。


 下手をしたら死者を出す可能性もあるが……手をこまねいていたらあの襲撃だ。

 キョーやキョーキヨーならばともかく、クァォン・ゲンギュの攻撃は此方の誰かが犠牲になる公算が高い。


 仕掛ける側でもリスクはあるが、事逃走に限っては、うちではシャドー達が最も優れている。


 それに、昼行性のキョー達には夜間の襲撃が1番だからな。





 暗闇を滑り、峡谷エリアに入った。



『改めて峡谷エリアとそこに生息する鳥型魔物、キョーについて説明します』



 そんなサブコアの語り出しによると、峡谷エリアはまるで割れた皿の様に谷が幾つも連なったエリアとの事。

 風雨で風化した谷はどこも急斜面で、谷底には流れの早い小川がアリの巣状に流れている。


 雨季にはこれがもっと増水する為、大型の陸上生物は全く生息していないらしい。


 そんなエリアに生息するキョーと言う鳥の特徴が、これだ。



『見え始めましたね』

「ふむ」



 現れたのは、干からびた虫や小動物の死骸。


 それが尖った山肌の木や草あちこちに括り付けられている。


 ——所謂、早贄だ。


 キョーと言う言葉は、磔を意味するらしい。


 その磔と言うのは、悪さをしたウェンティが罪を悔い改めるまで四肢と翼を縛って木に吊り下げる刑罰らしいが、判定は割と甘めらしい。


 ともあれ、キョーは磔鳥を意味する言葉であり、キョーの早贄が見えたと言う事は、奴等の基本的な活動範囲に入ったと言う事だ。



 此処からは、慎重且つ大胆に、ローラー作戦で敵を探す。



 

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