第4話 襲来
第四位階下位
ウェンティ達が武装するのに先んじて、襲撃の現場に駆け付ける。
そこでは、中々に大きな鳥が大量に群れ、鋭い鉤爪を振り回して飛び回っていた。
流石に多勢に無勢と言う奴で、襲撃を受けたウェンティ達は地面に伏せて嵐が過ぎ去るのを待つ事しか出来ていない。
それどころか、奴等は的確に伏せているウェンティ達の柔肌に、鉤爪を突き立て皮膚を削り取っていた。
辺り一体には、キョーと言う名の鳥の羽が舞い、悲鳴が延々と聞こえている。
俺はそんな嵐の中に、突っ込んだ。
無策だ。だが闇雲では無い。
ナイフを振るう。
狙い違わず、横を通過しようとしたキョーの首を刎ねた。
次は此方へ攻撃しようとしているキョーの胴を叩っ斬る。
ナイフを振るい、それ一振り毎にキョーを一体仕留めて行く。
「クロ!」
この騒ぎの中聞こえているかは不明だが、その声に応えてクロが伸び、次々とキョーを捕らえては、俺がその首を刎ねて行く。
一方で此方を狙って突っ込んで来るキョーは、狙い通り、俺の硬化を越えられない。
此方は無傷、あちらは致命傷と言う圧倒的有利で楽な環境。それは唐突に変わった。
『キョーキヨーです!』
明らかに大きな鳥が複数、此方に向かって突っ込んで来る。
その鉤爪は、流石の俺でも受け切れないかもしれない鋭い代物。
回避と制服で受ける事に専念し、割と重い一撃を受け止めつつも、その首、全力で刎ねて行く。
暫く戦っていると、その声は聞こえた。
「キーキョークァ!」
「キョーギュ!」
「キョーギュ!!」
声と共にウェンティの群れが隊列を組んで、鳥の嵐の中に突っ込む。
その足の鉤爪で2体のキョーを捕らえては短槍でトドメを刺して、ダメージを負いながらも次の獲物へ襲い掛かる。
——捨て身の突撃だ。
敵もそれは然りだが、兎に角敵の数が多くウェンティ達が瞬く間に傷だらけになって行く。
中には、キョーキヨーの襲撃に合い、大きな傷を負って地面に倒れ伏す者までいる。
これはマジでやばい。
ウェンティ達は里を襲撃された為か、続々と戦場に入って来るが、敵も一向に数が減らず、寧ろ的がデカいウェンティ達が傷付き倒れて行く。
俺も必死に兎に角敵の数を減らしているが、焼け石に水だ。
——全滅しちまうぞ……!
そうと思った次の瞬間、それは起きた。
何かデカい影が見えた。
ウェンティかとも思ったのも束の間、ふと何か嫌な気配としか言えない何かを感じ、咄嗟に振り向くと同時に制服の前面を向けた次の瞬間——
——緑色の何かが光り、凄まじい衝撃に吹き飛ばされる。
「ぐぁっ!」
キョーを何体か巻き込んで、地面をごろごろ転がる。
「ぐっ、ゴホッ」
衝撃で朝食を戻しそうになるのを堪えて、下級ポーションを飲んで立ち上がる。
とんでも無い衝撃だった。2度はくらいたくねぇ。
そんな思いと共に、キョーを薙ぎ払いながら、その緑の攻撃の根源に近付いて行く。
だってさ、これが攻撃なら、2度とくらいたくねぇけど俺が行かなきゃウェンティ達がくらう訳だろ? それって死ぬじゃん。行くしかねぇ。
『ウィンドカッター系統の魔法攻撃です!』
「クロ! 受けるなよ!」
魔法攻撃と聞いて、直ぐにクロへ指示を出した。
シャドー系は魔法に大して強く無いらしいからな。
次々キョーの首を刎ね、滞空する大きな影へ近付くと、その声は響いた。
——クオォォンッ!!
飛来したのは、先と同じ風の刃。
今度こそ、それを脱兎で上に回避、着地と同時に脱兎で前へ直進、一息に大きな影へ接近し——
「バンサージッ!!」
——放った。
横凪に振るった斬撃は、しかしすんでの所で、緑色の光を纏った影に回避される。
僅かに爪先が飛んだ以外に、敵に被害は無い。
「くそっ!」
——クオォォンッ!!
咆哮が響き渡り、すわ攻撃かと脱兎で背後に離脱、何も起きないのを確認しながら、横を抜けたキョーを斬り捨てる。
大きな影、敵は、四翼の巨大なキョーだった。
明らかに異形。クァォン・ゲンギュに間違いあるまい。
『推定、Dランクです! クァォン・ゲンギュで間違いないかと』
「惜しいとこを逃したな」
そうこう会話をしながらキョーを切り払いつつ大きな影を探していると、唐突に無限かと思われたキョーの数が減った。
次第に視界が大きく広がって、遂にはいなくなる。
空には雲の様な大きな影が舞い、其れ等は北西側へと飛んで行った。
「……撤退した?」
『おそらく、ボスが危険を察知した為と思われます』
「ふーん」
まぁ、自然界では臆病なくらいがちょうど良いんだろう。
それよりも、治療、それと説得だ。
こんな戦闘をもう一回でもやって見ろ。今度こそ全滅だぞ。




