第2話 敵を知る
コアが対話している間に、ウェンティと言う種を観察する。
見た目は、正しく翼の生えた女。
足が猛禽のそれだが、手は少し爪が鋭い以外は人と殆ど同じだ。
顔立ちは整っており、綺麗な緑っぽい目に緑色のショートヘア、歳の頃は10代くらいに見える。
服装は、多少へたっているがゴブリンと比べると随分文化的で、武器としてこれまた良く整った……錆びた短槍を持っていた。
マルチタスクコアの説明を聞く。
『ウェンティーミナとは、旧神時代にハーピーからリメイクされた、腕の機能がより人間的に進化した古代種です』
「ほうほう」
『勇敢なる風の乙女を意味する名を持ち、女性しかいない事から、女性を意味するミナが省かれる傾向にあります』
「ふーむ」
意味ありげに頷いちゃいるが、神々様の御事情ってこったら疑問を呈する事も無い。
『旧神時代におけるオリジンウェンティーミナの戦闘力は、最低でも今のSSS級はあったとされていますが、定かではありません』
「ふへぇ」
天上人の言う言葉は分かりませんな。
オリジンウェンティがSSSで今がレッサーウェンティでE級。
SSSってどんくらいの数値かも分からんが、少なくとも俺等が匙を投げた水竜湖畔のA級よりは遥かに上だろう。
神話時代っておっそろしいんだなぁ。
何処か他人事、と言うかもう普通に他人事でそんな感想を抱き、マルチタスクコアの通訳を聞く。
『どうやら空腹の様です』
「飯出してやって」
何処に会話してるのか分からんと言った調子でキョロキョロしていたレッサーウェンティを、飯に促す。
「ますた、キュリンケッ」
『マスターは良い奴と言っています』
「成る程キュリンケ」
取り敢えずゴマをするの精神で、良い奴返しをしておく。
レッサーウェンティは出された熊肉の唐揚げを色んな角度から見た後、思い切って摘み、引き裂いた。
「おぉ……」
俺が隣で普通に食べているのを見た後、改めてそれを口に運ぶ。
果たして——びょっと尾羽が広がった。
口に合わなかったかと心配したが、次の瞬間、彼女は唐揚げを鷲掴みにして頬張り始めた。
どうやら無用な心配だったらしい。
◇
暫しの休憩を得た後、お腹を撫でて満足気なウェンティの話をコアが聴取した。
『どうやら、部族規模の物資不足をどうにかして欲しい様ですね』
「ほう」
確かに、服はよれてるし武器は錆びてる、飯を食う時は久しぶりにまともな飯にあり付けた見たいに貪っていた。
よくよく見ると、ウェンティは少しやつれていた様にも見える。
『飛行型の亜人は痩せ型の物が多いですが、このレッサーウェンティはそれにしても少しやつれている様です』
「その理由はどうだ?」
割と恵みの多いらしいこの辺りでは、珍しい話じゃなかろうか?
『はい、どうやらキョーや、キョーキヨーなる大型の鳥が数を増やし、広域に渡って縄張り争いが続いている様です』
「成る程」
『その中でも数十年前に現れたクァォン・ゲンギュなる強い鳥の個体がいる様で、群れを率いて縄張りを広げているとか』
「ふむ」
そいつだな。D級の鳥。
『それが縄張りを広げた事で、ウェンティ達は住処を追われつつある様です』
「ふーむ、仲間に出来ないか?」
『お待ちください、どうやら、最近はキョーの群れの襲撃が多く、負傷者も多く出て、彼女は一縷の望みを掛けて文明を与えてくれたゲララッハが向かったと言う東側へ飛翔したとの事です』
「……それって」
東側、此方側が空いていて、襲撃が西側からあったとすると……十中八九迷宮の誘引に巻き込まれた形ではあるまいか。
やべ。こう言う時侵略者ってつれぇわな。
『薬と食料と服や武装等の物資を提供する代わりに配下にならないか交渉した所、マスターは良い奴だけど強く無いとだめだと断られました』
「じゃあクァオンなんとかを俺が倒すと伝えてくれ」
『クァォン・ゲンギュ、貪り殺す者と言う意味を持つ名前です』
怖っ。いきなり怖いじゃん。
でもD級なんだよな。シャーガラーガを越えた後だと、行けそうな気がしてしまう。
何やらコアが話してる内に、彼女が此方をチラリと見て、何やら難しそうに頷いた。
『クァォン・ゲンギュを倒す事が出来るならば、部族が傘下に付く事に異を唱える者はいないだろうとの事です』
「まぁ、一兵卒だしな」
部族の何でもない1人に部族毎仲間になれって話を持ちかけるのは無理がある。
ゴブリンは族長のカリスマの成せる技だ。
まぁ、取り敢えず敵にならなければ良いんだ。
味方になれば御の字ってだけで。
こう言う時は、恩を売っておけば良い。
「取り敢えず、負傷者の救助と急場凌ぎの食料を送りに行こう」
『危険かと』
まぁ、そりゃぁな。
でも最悪クロがいれば、影に潜って逃走が出来る。
それに加えて——
「あったよな、100万。今日で」
『……ふむむ』
それが出来れば百人力よ。




