第1話 進化する
第四位階下位
明けた翌朝、31日目。
夜を徹した祭りで、今頃ゴブリン達やノルメリオ、ウォンクル達は決戦場防壁の外側で目を覚ましている事だろう。
いやまだ寝てるかもしれない。
ともあれ、朝である。
『マスター、早速ですがご報告が何点かあります』
「おう、聞こうか」
そんな事を言いつつ、ご報告の内容達と共に、朝日を浴びに、第3拠点の外に出る。
海寄りの拠点と言う事もあり、遠くから海風が流れて来るのをそこはかとなく堪能しつつ、青空朝食だ。
朝から肉だが、構うまい。
白鎧は元気にやってるだろうか? 2度目の凶報は届いていない辺り、上手い事やってるんだと思いたいが。
そんな事を考えつつ、飯を食べる。
『昨夜のシャーガラーガとの一戦を経て、多くの個体が進化に至りました』
「よしよし」
初めてのC級との決戦だ。刎ねた首との戦いを勝ち抜いた皆の成長には、期待大である。
『先ず最初にドールソルジャーのリーダーが、ドールナイトに進化しました。D級です』
「よっしゃ」
目の前に立つ元ドールソルジャーが、サージ一式の剣を掲げた。
心なしか体格が良くなった様に見えるが、それ以外に大した変化は見られない。
『見た目に大きな変化はありませんが、戦闘能力が大きく増加しています』
「おおー」
大剣を軽々振るう様は、中々に頼りになりそうである。
ただし、バンムオンやゴルボルズ、グランサージが比較対象になると、どうしても劣って見えてしまう。
いや実際、D級でD級の装備してるから実質C級にも通じ得る筈だが、やっぱり不安だ。
『続けまして、同じく水纏錬磨していたチェス兵達ですが、一気に2段階の進化に至りました』
「ほう」
『チェスリトルポーンから、E級チェスポーンを経て、D級チェスビッグポーンです』
そうと言った次の瞬間、平原側から森を切り裂いて、俺よりデカいクイーンが4体、馬になって駆け抜けて来た。
変身解除したポーン達は、俺の目の前で槍をカンカンぶつけ合わせ、じゃーんと見せ付けてくれる。
身体がデカくなっただけじゃなく装飾まで立派になり、なんだかとても強そうである。
そして実際、全員の武装を解除した場合、うちで1番強いのは彼等だろう。
武装込みなら、なんだかんだでドールナイトが1番に違いない、むしろ装備的にそうであってくれないと困る。
「おおー、ナイス進化」
俺は騎士達にパチリとウインクしつつ親指を立てた。
これ、残り2万体がD級になったらコイツらの一斉掃射だろ? そう考えるとD級相手でも正面から勝てる戦力と言えそうだなぁ。
ワクワクをおかずに飯を掻き込み、次。
『続けまして、ウォンクル・ベルガがE級ウォンクル・ドンベルガに進化しました。マスターよりもやや小さいながらも巨大な猛禽です』
「良いじゃん」
良いは良いが、今日から鳥のD級がいると言う峡谷エリアを攻める予定の手前、残念ながら鳥達の前線入りは間に合いそうに無い。
非常に残念だが、鳥との戦いは状況次第にせよ、シャドー達の頑張りに掛かる事になりそうである。
『最後に、ゴブリン達がE級、ホブゴブリンに進化しました』
「お」
最初はガドライアから始まり、バンムオン、ゴルボルズ、シャーガラーガとの決戦を経て、ゴブリン達も遂に進化を迎えたらしい。
「服が必要か?」
『はい。住居の改善も必要かと。またこの機に武装の改善もした方がよろしいかと思われます』
「幾らだ?」
『武器はガラに作らせれば良いかと。現行拠点の整理と拡張、各服や防具の用意に、1万DPあれば良いでしょう』
「実行だ」
『はい、完了しました』
これでゴブリン達も僅かに戦力アップだ。
まぁ、E級の群れと聞けばそれなりに期待出来そうだが、実際にはDくらいないと不安なので、運用はあまり積極的にとは行かないだろう。
『進化報告は以上です』
「皆良く頑張ってるなぁ」
よしよしと、近場のクロを撫でて労い、俺も兜の緒を締める。
『最後にですが、マスターのランクがC級相当に上がりました』
「まじで!?」
全然D級のゴルボルズとかとも正面から戦える気がしないけどなぁ。
やっぱり人間は脆いのかね。
最後の最後に考えさせられる事を言われ、スキルレベリングに思いを馳せつつ朝食を進めていると、それは来た。
『マスター、峡谷側から魔物が急速接近中、空です!』
「っ、遂に来たか!」
思えば隣接してから10日以上経ってるし、来ない筈がない。
少し慌てて立ち上がり、峡谷側に視線を向けると、確かに、大きな影が空から此方に迫って来ている。
果たして——
『観測しました、E級相当、アーカイブに情報あり、レッサーウェンティーミナです!』
「なんて」
『ウェンティーミナ、ウェンティとも呼ばれますが、ハーピーの進化種族です。高知能種族故に対話が可能かもしれません』
そうこうやってる内に、此方へ接近するウェンティとやらの姿が見えて来た。
人間の女にそのまま翼を生やした様な、完全な亜人だ。
よく見ると、足が鋭い鉤爪になっている。
真っ直ぐ飛来したそれは、少し遠くに降り立った。
「キュッケ、ゲララハ、キーキュェ?」
『ゲララッハの知り合いか問われています』
やっぱゲララッハよ、なんか知らんがゲララッハの功績はデカい。




