第17話 粉塵爆発
第四位階下位
『マスター、朝になりました♪』
ご機嫌なコアに朝を告げられ、魔力操作を取りやめる。
出された朝食に手を付けながら、血生臭い洞窟で、その報告を聞く。
『先ず、複数体が進化しましたのでご報告します』
「よしよし」
まぁ、知ってたけどな。周囲のドール達とかマリオネット達とかが変化してるのは。
『先ず、チェス・プチポーン達がチェス・リトルポーンに進化しました。ランクはF級です』
「マジか」
『マスターが良くご利用するクイーンは、マスター程の全長になります』
「十分だな」
多分コレでD級にも通じ得る戦力になった筈だ。
2,226体による一斉掃射は、作戦に組み込んでも良い攻撃力だろう。
『次に、ドール達がドールソルジャーに、マリオネット達がカースドマリオネットに進化しました』
「よし」
コレでE級。
ドール達は装備と相まって少なくともE級には負けなしだろうし、カースドマリオネット達の魔法は、同じくE級に勝てる火力を出すだろう。
流石にD級相手では心配が勝るが、元プチクイーン達の様に殲滅戦に出せるのは大きな進捗だと思う。
『次ですが、シャドーシーカーがシャドーストーカーに、シャドーワーカーがシャドーチーフに進化しました』
「よしよし」
シャドー達の進化はシンプルに嬉しい。
やはり、こうなって来ると、活動できるのが夜間のみと言うデメリットが大きく感じられるな。
近くに拠点が無いと、引き上げる時間も早くなるし。どうしようもない部分だが実に惜しい。
『続けまして、ユレイドがユガレイドに、バド・アードがアード・ドルドに進化しました』
「ふむ」
『アード・ドルドは実を付ける能力に特化していますが、更に進化するとユガレイド・ドルドに統一されます』
「成る程」
分岐はしたが合流するらしい。そう言う進化もあるのか。
戦力としては変化なしと言っても過言ではないが、取り敢えずユガレイド・ドルドにまでなれば、F級には負けなくなるので、殲滅戦にタンク役として出せる様になるのは大きいだろう。
足が遅いのは難点だがな。
『最後に、ペペルタ達がぺぺぺルタに進化しました。クアンダの素材を投入し続けたおかげですね!』
「やったな!」
確か200万以上いたよな? 大躍進だぞコレは。
『進化に伴い、地底湖の居住空間が大幅に不足しました。よって地底湖の拡大と、海水の濾過、投入を提案します。10万DP程度あれば可能です』
「実行!」
はした金では無いが、必要経費だ。
それにしても高いが、それだけ大きく成長したと言う事だろう。
『報告は以上です。続けまして、新機能解放の提案ですが……先ずは魔物生成のF級の機能を解放する事を提案します。10万DPです』
「実行」
まぁ、正直どの程度必要かは分からないが、要はいきなり戦力になる奴を生成出来る様になると言う事だ。
具体的には、F級のリトルポーンとかな。
『完了しました。コレにより、F級までであればスライド進化が可能になりました』
「ほう?」
『ピルンドやプチモースー等、それ以上の進化がシステム的に用意されていない種、進化の袋小路に入った種を、進化出来る種に変更させる事が出来ます』
「成る程」
進化、やっぱり用意されて無かったのか……。
……それに加えて、生産系を戦力系に変換させる事も可能っちゃ可能か。
取り敢えずは……言っちゃあ何だが、足手纏いを付いてける様にする事が出来ると。
『差し当たりピルンド達をノルメリオ・ガウルに進化させるのに22万DP、モルムやプチモースーをビッグモームに進化させるのに13,000DP、チッピードやスピングをウォンクルに統合するのに7,000DPですが』
「実行だ」
大金だが、これまた必要経費だ。
特に、飛行系のウォンクルの増加は、峡谷エリア突破のキーになり得る。
今後を見据えるなら、やらねばならぬスライド進化である。
『現在出来る報告は以上です』
全体的に見れば出費の多い報告だったが、良い進化報告だったな。
◇
大量進化と戦力増加に気を良くして、修行を続けていると、その時は唐突に訪れた。
『っ、マスター!』
「どうした」
時刻は昼を回った時間。
昼食を済ませ、ルー先生指導の短剣術トレーニングをしている時の事だった。
『現在壮大湿地の南部近傍にエリアボスが出現、レッサーリトルヒドラで間違いありません!』
「南部か」
となると、打てる手がある。
「レッサーリトルヒドラ釣り寄せ作戦その二を試してみよう」
『承知しました。マスターを転送します』
何度かの転移により、壮大湿地南部に着いた。
そこは、広大な浅瀬が広がる湖畔地帯。
それがゆっくり迎合し、勇猛大平原の川へと繋がる。
そんな湖畔地帯からは、幾らかの木々に遮られながらも、遠目に巨大な影が見えた。
木陰に隠れ、様子を伺う。
三首の大蛇だ。
遠すぎて詳細は分からないが、おそらく首の太さは俺の身長の半分はあるか? 単なるサージナイフだとギリギリ切断出来るか否かのサイズ。
やはりと言うか、バンムオンを起動したサージナイフ、仮称バンムオンサージ的な技が必要そうだった。
そこまで確認した所で、釣り寄せ作戦その二と、入念に組んだ作戦の内一つ、出来たら使おうとしていた地形利用の作戦行動を開始する。
召喚したのは、5倍ルーセントソード。
「頼んだ」
その一声で、ルー先生は即座に湖畔を駆け抜け、ある地点へ向かう。
そこにある材料を、上手い具合に伐採し、コアに回収させるのがルー先生のミッションだ。
それから僅かに待ち、次いで召喚したのは、5倍クリミナルチェイン。
巨大な4本の鎖となったそれは、互いに巻き付いて形状を変えた。
3本の鎖はそのままに、4本目が3本と繋がって大きな胴を形成、尻尾を作る。
完成したのは、ちょっと小柄なレッサーリトルヒドラだ。
「頼んだぞ」
そう声を掛けるや、クリミナルチェインは真っ直ぐエリアボスの元へ向かう。
後俺が出来る事は、指定のポイントに付き、此処ぞというタイミングを待つだけ。
クロのシャドーウォークで高速で移動しつつ、コアの表示する地図を見る。
待つ事暫し、指定のポイント、『爆穂の機雷原』付近に到達した。
一方で、レッサーリトルヒドラも、クリミナルチェインの威嚇を受け、叫び声を上げながら此方へ接近している。
ルー先生は既に大量の爆穂の採取を終え、消滅している。
5倍ルー先生が消滅する程の莫大な量の爆穂だ、その威力は……少なくともくらいたくは無い。
釣り寄せ作戦その二を使った爆穂機雷原誘導作戦は、果たして——
パァンと弾ける小さな音と共に、始まった。
クリミナルチェインは浮いている為、爆穂を破裂させる事はなく、機雷原に突入したエリアボスは、その胴体で爆穂を破裂させる。
しかし、たかが傷石程度の爆発は、エリアボスには殆どダメージにならない。
エリアボスは次々と爆穂を破裂させながら、機雷原の過密地帯へと進行、遂にポイントへ到着した。
クリミナルチェインは即座に解けると、エリアボスの首一つをどうにか拘束する。
『行きます』
「やったれ」
それを合図に、降り注ぐのは無数の爆穂。
バラバラと散る其れ等は、エリアボスに当たると共に爆発し、濃厚な油分を含む粉と綿毛、種が飛び散って行く。
爆穂が連鎖爆発を起こし、エリアボスの周りが黄色い霧の様になってきた所で、俺は銃を構えた。
『やや左、そこです』
「っ!」
放ったのは、火の爆石。
果たして——
——ドォォォンンッッ!!
激しい爆発音。
ただ爆石がエリアボスに当たっただけではなく、大量に舞った粉と綿毛が粉塵爆発を起こしたのだ。
遠巻きなのに視界が真っ赤に染まる程の大爆発。
その炎を突き破って現れたエリアボスは、全身に火が付いていた。
——ギシャァァッッ!?
悲鳴が轟く。
エリアボスが派手に暴れ、浅瀬の水が飛び散るも、可燃性の油で燃えた炎はそう易々とは収まらない。
しかし、そこは流石のC級か、即座に浅瀬へ潜る様な移動にシフトすると、北上を開始した。
壮大湿地中心部や東部には、大きな湖がある。
そこへ近付けば近付く程、水深も深くなるし畔道も無くなる。
そう簡単には行かない訳だ。
まぁ、ともあれ、ファーストコンタクトは此方の勝利だ。
奴も得体の知れない何かから攻撃を受けた事には気付いているだろうし、暫くは臨戦態勢だろうな。




