第16話 殲滅作戦始動
第四位階下位
夜の帳が下りる。
這い寄る闇は、俺達の味方だ。
月の照らす暗がりを、無数の影が駆け抜ける。
到着した場所にいたのは、巨大な牙の、ワニの魔物。
ランクはF級。夜間の生気吸収で弱っているとは言え、心配は心配なので見届けに来た。
眠っていたワニを複数のワーカーが取り押さえ、闇に取り込む。
シャドーウォークとはまた違った暗闇の中で、生じるのは影のナイフ。
殺傷力はそう高くないが、F級やE級であれば通じるそのナイフが、無数に現れてワニをズタズタに切り裂いた。
『絶命を確認しました』
「Fは大丈夫そうだな」
そんな感想を残し、次。
暗闇を駆け抜け、あちこちでシャドー達がH級やG級の植物、魚、蛙と虫を狩るのを感じつつ、到着。
そこで眠っていたのは、亀の魔物。
ランクはE級。
果たして、集ったのはシーカー達。
甲羅が硬い事が特徴のその魔物、亀の頭部を無理矢理引っ張り出し、その首に四方からナイフを突き立てて、回転。
亀の首は容易に刎ねられ、素材が回収された。
この様子なら、狩りも特に心配ないだろう。
「コア、ナビを頼む」
『はい、右方向へ、結構です。そのまま直進してください』
コアの案内で、夜の湿地を滑り抜ける。
辿り着いた湖畔にいたのは、ワニの魔物だ。
サイズはクアンダに迫る、超大型。
あの恐竜ともまともにやりあえる身体能力を持つそのワニは、生気の吸収を受けて、今はぐっすり眠っていた。
そこへヒョイっと現れた俺は、何を言うでもなくサージナイフを振り下ろす。
『D級、沈黙。楽勝でしたね』
「まぁな」
弱ってるからこそだ。
こんなに楽だと、後が大変かもしれないと思うのは、やはりC級が控えているからだろう。
いや……恐怖や嘆きを謳う前に、やれる事をやろうか。
「次の作戦を開始しよう」
『袋小路の森北部山岳へ転移します』
◇
壮大湿地の殲滅に並行して行う作戦は、袋小路の森北部山岳の殲滅作戦。
コレは、新武装のドール達が十分戦力になると判断されたが故に立案された作戦で、本来はシャドー達による弱体化をやってから行う作戦であった。
それを態々敵が万全な状態で行う理由は単純で、早ければ早い程良いからだ。
もっと言えば、今は敵の気まぐれで安定しているだけ。
敵の気まぐれで激戦が始まる可能性は刻一刻と高まっているのだ。
そんな訳で、血生臭いドール達と、プチクイーン達の群れが山岳へ解き放たれた。
それぞれがコアの指示を聞き、的確に外敵を囲んでは始末して行く。
袋小路の森北部山岳は、大物が支配するエリアから離れている事から分かる通り、森の恵みも比較的少なく、必然的に敵も少なく弱い。
F級の熊や猪、狼が出る中、稀に見るE級は安全の為、強力な装備を持たせた者に狩らせる。
そうして、袋小路の森北部山岳に生息していた数少ない脅威は殲滅された。
両面作戦は無事終わり、夜が静寂に閉ざされる。
無事作戦も終わったので、このままエリアボスに向けた準備を進めよう。
「コア、防壁を」
『はい』
設置する場所は、壮大湿地東部に面する、袋小路の森北部山岳。
敵が攻めて来るなら、間違いなく此処からになるだろう。
『敵がレッサーリトルヒドラである事を想定し防壁はそれを越えられない程の高さと厚さに設定します』
「おう」
対エリアボス用に練った作戦通り、防壁と罠を設置する。
それすら食い破られる可能性は、バンムオンで履修済みだ。
5倍ルー先生や5倍クリミナルチェイン、マナウォール等の幾らかのスクロールを買い込み、備えとした。
夜明けまではまだまだ時間があるが、エリアボス戦に向けて出来る仕込みはここまでだ。
後は各々修行あるのみ。
幸いだ、夜は長い。
俺はひたすらに、魔力操作に打ち込んだ。




