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子連れの冒険者  作者: ポリ 外丸
第 2 章
94/110

第 94 話

「……全く、丁度良い時に来てくれたよ」


 すぐそばの執務用机に向かったサブリーナ。

 その机の上から数枚の紙を手に取り、戻ってくるとそれをエルヴィーノに差し出した。


「………‥」


 サブリーナから差し出された紙を、エルヴィーノは無言で受けとる。

 そして、そこに書かれている文章に目を向けた。


「……この資料を見る限り、事件と考えるには微妙なところだな……」


「その通り」


 ツシャの町にいた誘拐犯たち。

 彼らを始末し、トップの男を隷属化して尋問した結果、彼らの仲間がこの町でも同様の事件を起こしているとのことだった。

 そのため、帝国第一皇子の命を受けて行動している誘拐犯どもを始末するべくこの町に来たのだが、サブリーナから渡された行方不明者の一覧が書かれた資料を見る限り、事件と断定するのは微妙に思えた。

 と言うのも、魔物のいるこの世界では行方不明者が出るのは日常茶飯事だ。

 割合的には討伐依頼を受けた冒険者が多いのが普通で、去年の同じ月と比べると少し多いくらいで大して差がない。

 そのため、エルヴィーノは事件と考えるのは微妙に思い、そのまま口に出した。

 サブリーナも同じ考えだたらしく、エルヴィーノの答えに頷きを返す。


「しかし、増えているのが冒険者以外。だから、ギルドとして調査に動くべきか考えていたんだ」


 去年の同じ月と差がないなら気にならないところだ。

 しかし、行方不明者の割合が違う。

 冒険者は少し減って、それ以外の数が増えている。

 そのことが気になり、サブリーナも冒険者に調査依頼を出そうか考えていたところだったようだ。


「じゃあ、まず俺だけ動かすという選択をしてもらえるか?」


「あぁ、その方がこっちとしても助かる」


 この資料の数字だと冒険者を動かすべきか微妙なところ。

 そのため、エルヴィーノの提案に、サブリーナは笑みと共に受け入れた。


「報酬は?」


「……そうだな。俺の私情も入っているから、そこまで高くなくていい」


「それはありがたい!」


 エルヴィーノだけとはいえ、調査を依頼するのだから報酬を払うのは当然だ。

 そのため、サブリーナはどれほど払えば良いのか本人に直接尋ねることにした。

 エルヴィーノの話だと、その誘拐犯たちは結構な実力者という話だ。

 ならば、相応の金額を用意するつもりでいたが、エルヴィーノはそこまで報酬を求めていない様子だ。

 その


「じゃあ、こっちは結果だけ教えてもらえれば何も言うことはないよ」


「分かった」


 エルヴィーノの話だと、愉快犯たちは帝国第一皇子の命を受けてこの国に来ているということだ。

 捕まえたところで、今は内乱中の帝国では責任を追及しようにも交渉する意味がない。

 それならば、捕まえるよりも始末してしまうことが無難と言ったところだ。

 それをエルヴィーノがやってくれるというのだから、サブリーナとしては特に求めることはない。

 求めるとしたら、せいぜい結果の報告だけだ。

 そのことを理解しているため、エルヴィーノも頷きと共に返答した。


「この資料はもらって行っていいか?」


「あぁ、でも念のため事が済んだら消去しておいてくれ」

 

「分かった」


 先程サブリーナから渡された資料には、行方不明者の名前や住所が記されている。

 この資料から、誘拐犯たちが町のどこら辺に潜んでいるのかを予想するきっかけくらいにはなる。

 そのため、エルヴィーノはその資料を持っていく許可を求め、サブリーナはそれを受け入れた。

 しかし、その資料には被害者の個人情報が記されているため、エルヴィーノ以外の人間に見られないように事件解決は消去することを求める。

 エルヴィーノとしても、誘拐犯たちを始末できればこの資料に用はないため、事が済み次第、悪用されないために消去するとを受け入れた。


「では、失礼する……」


「あぁ、頼んだよ」


 多少の情報は手に入った。

 後は誘拐犯たちを見つけ出すだけだ。

 早速行動を開始しようと、エルヴィーノはソファーから立ち上がり、退室するべくドアへと向かって行った。

 そんなエルヴィーノに、サブリーナは声をかけて見送った。


「……奴ら、二手に分かれているのか? 面倒なことをしやがって……」


 資料から、町の東と西に若干被害者が多いように思える。

 そのため、エルヴィーノはもしかしたら誘拐犯たちは二手に分かれているのではないかと思えた。

 さっさと倒し、さっさと報告し、少しでも早く帝国に向かいたいところだというのに余計な手間を取らせられ、エルヴィーノは思わ誘拐犯たちにずイラっとした。






◆◆◆◆◆


「……行くぞ」


「「「「おうっ!」」」」


 日付が変わる夜中の時間帯。

 黒いローブを身に纏った5人が、音を立てないように町中を動き回る。

 そして、とある家の近くにたどり着くと、ローブのフードを深く被り、小さい声のやり取りと共に動き出そうとした。


「見つけた」


「「「「「っっっ!?」」」」」


 彼らが動き出すよりも先に、1人の男が音を立てずに姿を現し、5人の前に立ちはだかる。

 現れたのはエルヴィーノ。

 そのことに驚き、5人は一瞬声を失った。



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