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大日本帝国産業本社52期同期21名、パニックになる  作者: 江古左だり


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12/13

(12/13)お前がどれ程下手を打ったのかって話だよ

 何より花沢がハッキリと慌てだした。あの沈着冷静な男が焦っている。


「いや……。中原さん。ここ会社の延長だからさ」


「会社の延長のわけないでしょ!! プライベートでしょ!! なに今!? 会社が時給払ってくれてんの!? 違うでしょ? 自分たちでお金払って無給で飲んでるわけじゃん! プライベートじゃん完全プライベートじゃん!!」


 中原がそのまま天を仰いで『うわーっ』っと泣き出した。


「だいたいさぁ。もう付き合って2年も経つのになんであんなに会社じゃ他人行儀なの!? アタシが会社でどれほどサミシイ思いをしてると思ってんの!? 社会のルールとかプライベートを分けるとかどうでもよくない!? いくら土日に甘えさせてくれても全然たりないよー!! 無給の飲み会くらいフォローしにこいよー」


 最後は声が尻すぼみになり『えっえっ。えっえっ』と嗚咽(おえつ)をもらした。


 上条誠也が宮野カオリに向けてかすれた声をだした。

「ねぇ……。今さぁ『土日に甘えさせてくれても』って言わなかった?」

「言った……」宮野カオリの茫然とした声が続いた。


「みっちゃんにはさぁ。仕事でお世話になっているわけー。今までのプロジェクトもぜーんぶみっちゃんが手弁当で助けてくれたわけー。そういうのはさー。アタシだってずっと感謝してるんだよでもさー」


『プロジェクトを』『全て』『手弁当で』『助けてきた』!?


 あっあー!!


 全員がガクゼンとした。今までの『中原の快進撃!!』


 そうだよ!! おかしいじゃん! 確かに中原の『営業力』はすごいけど、書類とかはポンコツじゃん!! でも、それら全てに『花沢光彦』という人が絡んでいたとしたら……。


 花沢が中原の腕を掴んで「もういい。もういいよ」と小さな声を出したがすでに遅い。お前がどれ程下手を打ったかは次の瞬間にわかる。


「でもその感謝とさー。人のこと『ゴリラ』って言った怒りとは別問題じゃん!!!!!」


 立ち上がりかかった原千里がペタンと畳にベタ座りした。あの日中原の隣で「ゴリラだってー」と笑った自分を思い出したからだ。


 花沢は崩れさっていた。

「ほんとごめん。本当にごめんなさい。調子に乗りました」


『ああー!』その場の21名は驚愕した。

『ゴリラ』!! あの会社で『ゴリラ』と言ったら中原以外いないわけじゃん!! なんで自分ら気づかなかった。


 だって中原と花沢って何の接点もないじゃん!! 共通点皆無じゃん!! てかどっちかというと水と油じゃん!!!


 どうあっても恋愛しなくない!?


 上条誠也は枝豆を落としたし、大倉敦士は飲みかけのビールを魂の抜けた人形みたいにゆっくり置いたし、太田美穂はトイレに立とうとしたのに尿意を忘れた。


 同期21名がただただ茫然と2人を見つめた。


「とにかく『中原さん』はやめてよー!! いつもみたいに『さりな』ってよんでよー!!」


 花沢が絞り出すような声になった。


「ごめん…………さりな…………」


 ここで上条が我に返った。花沢に鋭い声を出す。


「おいっ!! 花沢っっ」


 花沢がこっちを向いた。もうものすごく気まずそう。


「花沢っ説明しろっ」


「いや……。だから見ての通りなんだけど………」


 花沢が中原紗莉菜をゆっくりと指差した。


「オレと紗莉菜ちゃん。付き合ってるんだ……2年前から」


 同期21名が大パニックになった。

【次回 最終回】『王子様のように』です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読しました。 おお、あと一話、最終回。 会社ではみんな付き合っているの、隠したがるんですかね。私は大きい会社に勤めたことがないので、社内恋愛というものの非常に憧れがあります。廊下ですれ…
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