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大日本帝国産業本社52期同期21名、パニックになる  作者: 江古左だり


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11/13

(11/13)修羅場だ!修羅場!!

 その日のランチタイムは荒れた。

 中原が社食中に聞こえるような声でキレ散らかしている。もう腰を浮かしてテーブルをドンドン叩いて怒っている。


「何なのあの花沢ってヤツ!!!!」


 宮野カオリも太田美穂も首をすくねるばかりだ。


「あんたアタシの何パーセント契約取ってるっていうんだよ!!! 威張りちらしやがって!! アタシよりぜんっぜん仕事できないじゃん!! 仕事は結果が全てじゃん! 悔しかったら社長と直に連絡取れる仲になってみろっていうんだよーーっ!!!」


 そのままウワーッとテーブルにうっつぶして泣き出してしまった。打つ手なしである。


「死んじゃえーーーっ!!!!」


 テーブルをドンドン叩き続けた。さぞ悔しかったのであろう。ただ、確かに最近の中原は思い上がっているところがあった。『誰かが注意しなければ』と思ってはいたが、あまりに契約をとってくるので部長の小和田すら躊躇(ちゅうちょ)してしまっていたのだ。


 幸い、花沢は外出中だった。


 @@@@


 だが、一難去ってまた一難。最低最悪なことに今日は『同期会』だった。幹事は上条誠也と宮野カオリである。


 昼間の件は知れ渡っているだけに本社同期21名は大変緊張した。


 和風の居酒屋にたくさんの料理が並べられる。花沢と中原はテーブルの端と端に引き離された。2人をそれぞれ取り囲んで『何とか』接触させないように気を使った。


 花沢はいつも通りだ。笑顔で、気が利いていて、お皿なども片付けて、相づちもちゃんと打つ。


 対する中原は無言。ずっと酒をあおっている。『底無し』と言われているがそれにしても早すぎる。もうずいぶん前から日本酒に切り替えてるしだいぶまずい感じだ。


 とにかく今日は『2次会』とか絶対やらずにこのまま花沢と中原を取り囲んで、それこそ全員バリアーみたいになって一目散にここを離れるしかない。


 だが遅かった。


 @@@@


 同期会も1時間半を過ぎた頃だろうか。中原が『ゆらり』と立ち上がった。右手に並々と注がれた日本酒のコップを持っている。相当まずい。


 でも誰にも止められなかった。中原の表情が鬼気迫っていたからだ。


 左右に揺れながら真っ直ぐ花沢を目指して歩いた。日本酒がコップからこぼれるのもお構いなしだ。『ピシャッピシャッ』っと液体が畳にこぼれる音がする。みんながそれを避けようと右往左往した。中原が花沢の真横にペタンと座った。


 修羅場来ちゃった〜〜〜〜。ヤバイ!


 全員がその後に起こる惨事を予感して息をのんだ。中原が喋りだす。


「みっちゃんさぁ。昼間のアレ何? 冷たすぎるんじゃないの?」


 花沢が中原の方を向いて正座した。視線は合わさない。一言。


「別に冷たくない」と言った。


 中原の目から大粒の涙が流れ出した。畳にどんどん落ちる。


「冷たいよ! 何なの!! 中原さん、中原さん、中原さん、中原さんてひたすら苗字呼びで!! アタシがどれ程傷ついたと思ってんの!!!!」


 この段階で全員が『ん?』となった。修羅場は修羅場だけど何か思ってる方向と違くない?

【次回】『お前がどれほど下手を打ったかって話だよ』です。


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