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庵字の秘密基地  作者: 庵字
スーパー戦隊最大の異端児『未来戦隊タイムレンジャー』
5/14

5.絶対に決まってはいけない必殺技

 ヒーローに必殺技は付きもので、タイムレンジャーも例外ではありません。こと、戦隊においては、構成メンバーが個別に所持している武装を合体させた巨大武器で怪人にとどめを刺すというのが定番です(近年このギミックは消えつつありますが)。タイムレンジャーにも、個人が持つ火器を合体させた「ボルテックバズーカ」という大型武器が存在します。このボルテックバズーカ、囚人を再び圧縮冷凍してしまうという必殺武器なのですが、実はこのボルテックバズーカで囚人を無事圧縮冷凍できた事例というのは、全51話の中でも三回しかありません。というのも、ボルテックバズーカから射出された冷凍弾を被弾しても、圧縮冷凍されるまでには数秒のタイムラグが生じてしまい、その僅かの間に囚人は「抑制シール」を自分で剥がして「最後の手段」として巨大化してしまうからです。

「冷凍弾の成分が囚人の体に行き渡るまで、どうしても数秒の時間がかかり……」など設定上の理由はいくらでも考察できますが、これはもうメタ理由からの考察が一番早いし納得できます。そうです、「ボルテックバズーカで囚人を圧縮冷凍できてしまったら巨大ロボの出番がなくなるから」です。前項にも書いたとおり、戦隊のメイン商品は巨大ロボ玩具ですから、そのロボの活躍の場を奪うような展開は許されないのです。

「じゃあ、そもそも等身大の戦闘で圧縮冷凍可能な武器を出さなければいいのでは?」という考えもあるでしょうが、そうなると今度は、「そもそも囚人の逮捕を目的とした戦隊が、等身大の段階で圧縮冷凍可能な武装を所持していないのはおかしい」ことになります。作中視点とメタ視点との板挟みの末、ボルテックバズーカは戦隊史上もっとも不遇な必殺武器となってしまったのです。タイムレンジャーも、三回目くらいを過ぎた辺りからはもう、「ボルテックバズーカ!」と高らかに叫びながらも、内心(どうせまた巨大化するんだろうな……)と忸怩たる思いを抱いていたに違いありません。

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