11.「スーパー戦隊」永遠なれ
さて、以上『未来戦隊タイムレンジャー』の魅力、設定上の妙について語らせていただきました。冒頭にも書いたとおり、タイムレンジャーが属するシリーズ「スーパー戦隊」は、大人のマニア層からはあまり顧みられることのない特撮シリーズだと思います。そんな中にあって、タイムレンジャーは独特の存在感を放っており、シリーズの中でも大人のファンが多い戦隊のひとつに数えられています。「大人のファンが多い」というのは、「設定が理にかなっていて、ドラマに魅力がある」ことの証左でもありますが、それは同時にメイン視聴層の子供の視点を置き去りにしてしまう危険性と表裏一体で、実際『タイムレンジャー』の玩具売上げはスポンサーを満足させるものではなかったと聞いています。では、だからといって、子供受けする「定番ネタ」ばかりを量産していていいのか、という問題も当然あり、こと、番組がスポンサー商品のCMに直結する、こういった特撮ドラマは常に、「作品」であり「商品」というせめぎ合いの中で毎年作られているのだと思います。
『タイムレンジャー』から数えること12年後、「スーパー戦隊シリーズ」36番目の作品に『特命戦隊ゴーバスターズ』という作品があり、これも「スーパー戦隊」の定番ギミックから大きく外れたガジェットを多用した、シリーズ異色作と呼ばれるものでした。
この『ゴーバスターズ』は、特撮面でも従来の戦隊とは大きな差別化が図られており、各メンバーが乗り込むメカのコクピットが、実際の戦闘マシンのような、計器がいくつも取り付けられた狭い空間であったり、小型メカが合体してもメンバーが一箇所に集まらなかったり(合体前のメカのコクピットに留まっている)、大掛かりになりすぎる2号メカとの合体は基地内で行われるなど、リアリティのある描写をコンセプトとしていました。このような従来の戦隊の方向性から大きく舵を切った演出を不安視する声もあったそうですが、それらに対して、特撮監督の佛田洋(第14代スーパー戦隊『地球戦隊ファイブマン』(1990年)よりずっとスーパー戦隊シリーズの特撮監督を務めている大重鎮です)は、「駄目だったら元に戻せばいい」という意味の発言をしていました。そうなのです、スーパー戦隊には、確固たる「帰る場所」「主軸となるスタイル」があります。駄目だったら基本に帰ればいいんです。実際、『タイムレンジャー』の翌年の戦隊『百獣戦隊ガオレンジャー』は「これぞスーパー戦隊」と言うに相応しい、堂々たる王道路線を貫き通しました(合体ロボの項で述べた「換装」を初めて取り入れた戦隊でもあります)。『ゴーバスターズ』の翌年も『獣電戦隊キョウリュウジャー』という王道路線の戦隊でした。
シビアな話をしてしまえば、『タイムレンジャー』も『ゴーバスターズ』も、翌年にすぐに王道に立ち返っていることから察せられるとおり、玩具売上げは不振だったようです。それでも「スーパー戦隊」はシリーズの節目節目で挑戦的な作品を送り出し続けてきましたし、その挑戦はこれからも続いていくでしょう。『タイムレンジャー』のような意欲作を送り出すことが可能なのも、いざとなったら「帰る場所」がスーパー戦隊にはあるからです。だからといって「安パイ」のみを送り出して手堅いヒットだけを狙わない、安寧しない、挑戦し続けるという魂。これが「スーパー戦隊」が何十年という長きに渡り愛され、作り続けられてきた理由なのでしょう。これからも、カラフルなスーツを身にまとった戦士たちが力を合わせて悪と戦う「スーパー戦隊」は歴史を刻んでいき、その時代時代の子供たちを熱狂させ続けていくと信じます。




