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庵字の秘密基地  作者: 庵字
スーパー戦隊最大の異端児『未来戦隊タイムレンジャー』
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1.『未来戦隊タイムレンジャー』とは

「スーパー戦隊」と呼ばれる特撮シリーズをご存じでしょうか。

 1975年に放送開始された『秘密戦隊ゴレンジャー』を始祖に、毎年新シリーズが作られ続け(第2作『ジャッカー電撃隊』と第3作『バトルフィーバーJ』の間にだけ約一年間の空白期間がありますが)、現在まで放送が続いているという驚異の長寿テレビシリーズです。その暦年実に45年!(2020年現在)

 日本を代表する特撮ドラマには、他に「ウルトラマン」「仮面ライダー」という二つの金字塔がありますが、そのどちらもシリーズのテレビ放送は幾たびか途切れた空白期間が存在します。したがって、生まれた年代によっては、特撮番組の影響を最も大きく受ける幼少時に、この二つのシリーズに接する機会がなかった、という世代も存在します。過去の作品を再放送や映像ソフトで観たことはあったかもしれませんが、それらはあくまでアーカイブです。リアルタイムの放送を同時に追いかけて視聴した、「俺の・私のウルトラマン」「俺の・私の仮面ライダー」というニュアンスとは、また違ってくるものがあるかと思います。

 そこへ来て「スーパー戦隊」です。前述の通り、このシリーズは1975年以降、ほぼ絶え間なく放送が続いています。よって、一定年代以下の日本国民であれば誰しもが、リアルタイムで視聴した「俺の・私の、スーパー戦隊」を持っていることになります。まさに世代を超えた共通言語。こんな繋がりを持てるヒーローは「スーパー戦隊」だけでしょう。「数色のコスチュームに色分けされた集団ヒーロー」という構成は、パロディコントやご当地ヒーローなどにもよく使われていて、普段の生活から目にしやすいフォーマットでもあるため、そういった意味でも、もっとも日本国民に親しまれているヒーローと言えるでしょう。

 ですが、その偉業にも関わらず、「スーパー戦隊」は他の特撮ヒーローに比べて、特にハイエイジのマニア層での評価が低く、話題にも上りにくい傾向があります。現在、ハイエイジ向けに売られている特撮玩具においても、そのアイテムラインナップのほとんどは「ウルトラ」か「ライダー」で占められており、「戦隊」のハイエイジ向けの玩具というものはごくわずかです。実際、戦隊はメイン視聴層の「卒業」が一番早い特撮番組であるとも思います。カラフルなコスチュームや巨大ロボットの存在など、他の特撮番組と比較してリアリティを欠く虚構的な要素が多いことなど、理由は多々あるでしょう。ですが、それは同シリーズが「子供の視線、価値観に寄り添い続けている」ために起きることです。マニア層からの評価が低いということは、そのまま、スーパー戦隊のコンセプトがぶれていないことの証左でもあるでしょう。

 そんな「子供ファースト」が貫かれているスーパー戦隊ですが、さすがに何十年もシリーズが続いてくると、作り手側にマンネリ感が蔓延してくることも否めないかと思います。メインターゲットとしている視聴層は数年で入れ替わるのに、制作側は毎年毎年似たようなものを作り続ける。そんな鬱屈が爆発してしまうのか、火山に溜め込まれていたマグマがある瞬間、突如噴出するように、「スーパー戦隊」は時折、「子供ファースト」とはとても言いがたい、とんでもない異形の作品を生み出してしまうことがあります。

 さて、前置きが長くなりましたが、紹介するのは、長い歴史を持つ「スーパー戦隊」史上最大級の異端児です。


『未来戦隊タイムレンジャー』

制作年:2000年

媒体:テレビドラマ

原作:八手三郎

監督:諸田敏 他

脚本:小林靖子 他


主な出演者

浅見(あさみ)竜也(たつや)(タイムレッド):永井(ながい)マサル

ユウリ(タイムピンク):勝村(かつむら)美香(みか)

アヤセ(タイムブルー):城戸(きど)裕次(ゆうじ)

ドモン(タイムイエロー):小泉(こいずみ)朋英(ともひで)

シオン(タイムグリーン):倉貫(くらぬき)匡弘(まさひろ)

滝沢(たきざわ)直人(なおと)(タイムファイヤー):笠原(かさはら)紳司(しんじ)


~あらすじ~

 西暦3000年、千年の圧縮冷凍刑に処されることになったマフィアの首領、ドン・ドルネロは、部下の手引きによって、時間移動技術を悪用して刑務所の建物ごと千年過去へと逃亡を果たす。逃亡先の西暦2000年で思う存分に金儲けをすべくドルネロは、新たに「ロンダーズファミリー」と名付けたマフィア組織を結成、千年のアドバンテージを得ているオーバーテクノロジーでもって暴れ回る。一方、ドルネロを追ってきた四人の時間保護局隊員は、2000年で出会ったひとりの青年を加え、五人のタイムレンジャーとなり、ドルネロたちを逮捕すべく行動を開始する。


 結構ざっくりとしたあらすじ紹介になってしまいましたが、これには理由があって、『タイムレンジャー』の第1話(「Case File 1」)は実に情報量の多い話となっていて、子細に触れずに、いわゆる「ネタバレ」を避けた状態で視聴してもらったほうが楽しめると思ったためです。それは1話以降の話にしても同じことがいえるため、今回はストーリー内容に直接触れることは極力せず、『タイムレンジャー』がいかに既存のヒーロー番組との差別化が図られているかや、いわゆる「特撮のお約束」に合理的に説明をつけた設定上の妙といった、伝わりづらい凄いところをピックアップしてお伝えしようと思います。これを読めば、あなたも『タイムレンジャー』が見たくなる! はず。

 なお、本文中の考察はすべて筆者の想像によるものです。公式設定ではありませんので、あらかじめご了承の上お読み下さい。

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