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僕が通う高校には、「社会貢献部」という名の、実質的な雑用係が存在する。活動内容は、地域のゴミ拾い、ベルマークの仕分け、そして校舎の屋上清掃。名前だけは立派だが、集まるのは僕のように進学のための内申点が欲しいだけの冷めた生徒か、あるいは断りきれずに押し付けられたお人好しだけだ。
七月の蒸し暑い放課後。屋上のコンクリートにモップをかけながら、僕は額の汗を拭った。
「あーあ。なんでこんなことやってんだろ」
独り言が、ぬるい風に溶けていく。視界の端には、いつもの景色があった。この街のシンボルであり、日常の一部になりすぎて誰も見上げなくなった巨大な異物。全長二百メートルを超える銀色の飛行船だ。
『シエル・ブルー』。それが、あの空飛ぶクジラの名前だ。ニュースでは「国際的な社会貢献プロジェクトの一環として、大気汚染の観測を行っている」とか言っていた気がする。船体の中央部分は蛇腹のようになっていて、まるで巨大なアコーディオンが空に浮いているみたいだ。
「おい湊、サボってっと先生にチクるぞ」
同じ部活の男子が、下の階へ降りながら声をかけてきた。
「やってるよ。あと少しで終わる」
僕は適当に返事をして、再び空を見上げた。
その時だった。西に傾いた太陽が、鋭い角度で飛行船のボディを照らした。銀色の船体がギラリと反射し、今まで見えなかった「何か」が浮かび上がった。それは、文字の羅列だった。特殊な塗料で書かれているのだろうか。光の加減が完璧に合ったその瞬間だけ、数字が浮かび上がっていた。




