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刹那の風景 第三章  作者: 緑青・薄浅黄
『 ルリトウワタ : 信じあう心 』

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73/130

『 庭掃除 』

* 全てはフィクションです。


【 ウィルキス3の月30日 : セツナ 】



『セツナ大変かなって! 大変かなって思うよ!』


大変だと言いつつ、精霊のどこか楽しそうな声に

また何かしたんですか? と

眉根が寄るのは仕方がない事だと思う。


ギルドにも僕にも何も言わずに

闘技場以外のディスプレイを起動させる魔法を使い

僕が、精霊を呼び出す少し前からの記録と

この状況を、リアルタイムで中継していたのだから。


鳥を飛ばして、街の様子を見てみると街の中は

お祭り騒ぎだった。あの中を歩きたくない……。


オウカさん達は、魔法が使われた事を

知っていたようだけど、解除できないほどの

魔力で起動されていた事から

精霊がなにかしているのだろうと、思い当たり

好きなようにさせていたようだ。


奴隷商人が逃げたらどうするんですかと、告げても

一網打尽にして、牢屋に入れておいたと悪気もなく言うし。


あとは捕まえるだけだったから

特に困るという事はなかったけれど。


その辺りも全部見通して、行動しているところが

余計に質が悪い。


勝手な事をしないようにと、懇々と言ったのに。

全く理解していない様子に、精霊との付き合い方を

考えたほうがいいのかもしれないと、内心思ったが

それがきっと無理なのはわかっている……。


呼び出さなければ、問題ないのだろうけれど。

もう呼び出してしまったのだから、諦めるしかない。

精霊も、僕と同じく自由な心の持ち主なんだし、と

納得するしかなかった……。


とりあえず、彼女は無視して

聞かなかったことにしよう。

大変だとわかっているのなら

自分で何とかして欲しい。


いい加減、チェイルの問題と

水槽の中で、状況を知ることもできず

声が聞こえることもない場所に

蹲っている二人をどうにかしたい。


今はまだ大会の途中で、重傷者が多く

死にはしないと言っても、重傷者を放置もできない。

手が回らなくて、休憩に入っただけなのだから。


だけど、治療目的だけじゃなかったのかもしれない。

僕が一番、報復することを望んでいる彼等と戦う前に

僕を落ち着けようと考えたのかもしれない。


推測でしかないけれど、多分そんな気がした。

ある意味、ヤトさんの目論見は功を奏していると思う。


精霊が、この場所を浄化したことによって

僕が抱く(いだく)モノで、この場所を穢したくないと考えてしまうから。

あのような、美しい光景を見てしまえば躊躇してしまう。


だから……。


チェイルが、自分の罪を認識しそれを認めようとしたのなら

僕は、彼女を許していただろう。


アルトに手を出した二人が、心の底から謝罪するのであれば

僕は、彼等を今回だけは見逃したかもしれない。


しかし……。


精霊からつけられた、黒の輪が消えない人間がいたように

数日がたてば、今日の事を忘れて羨む人がでるように

人の本質というものは、そう簡単には変わらない。


変わろうと努力しなければ

結局は変わることなどできないのだろう。


変わるつもりがない僕が、何かを語ったところで

笑い種にしかならないだろうけど。




目をギョロギョロと動かして、未だに

逃げようと考えているチェイルに

どうしようもないなと思う。


座り込んでいる

彼女と視線を合わせるために、彼女の前に立つ。


僕の行動に、黒達もヤトさん達も僕に視線を落とし

観客席の冒険者達も、楽しげに話していた口を閉じた。


リオウさんが本当に小さい声で

「せっかく、こういい気分だったのに。あれよ。

あれだわ。観劇に感動して泣いていたのに

ジャックが余計な事を言って、一気にその感動が覚めた

時のように気分が悪いわ」とグチグチといっている。


リオウさん……その具体的な例えは

された事があるんですね……。気の毒に。


ヤトさんが呆れたように視線をリオウさんへと流し

オウカさんが「リオウ」と彼女の名前を呼んだ。


「お父様。セツナを迎え入れる発表が

 早すぎたのだと思います」


「すまない」


リオウさんが腰に手を当てて、オウカさんに詰め寄り

オウカさんがリオウさんに謝っていた。


「大会が終わってからの方が

 よかったと思います」


「確かに」


「まだ二人残っているし……」


「……」


オウカさんとリオウさんの会話に

オウカさんの妻であり、リオウさんの母親の

エリアルさんが、参戦する。


「過ぎたことを、言っても仕方ないでしょう。

 大会が終わってから、改めて場を設ければ」


やめてほしい……。

僕としては、このタイミングでよかったと思っている。

あの状態で、お祭りに突入なんて……。

考えただけでもぞっとする。


三人の会話は綺麗に無視することに決め

聞かなかったことにした。




僕に気が付いたチェイルが、地面の砂を

握りしめながら、僕を見上げる。


「貴方が、ここで全てを告白するのであれば

 貴方の対価を、別のものにしてもいいと思います」


「……」


「話しますか? 話しませんか?」


「あれが、す、全てです」


彼女が答えた瞬間に、腕と顔の痣が増え

そして、僕は完全に彼女から興味を失った。


「ひっ……」


自分の腕を見て、短く悲鳴を上げる。

エレノアさんとバルタスさんは深く溜息を吐き

アギトさんは、冷たい視線で見下ろし。

サフィールさんは、彼女に視線を向ける事すらしなかった。


「僕は全てといいました。

 貴方が、画策していた事を全て話してください」


「……」


「自分からは、話しにくいですか?

 なら、僕が質問していきますか?」


彼女は、頷きもしなければ口を開こうともしないため

勝手に話を進めていく事にする。彼女にあわせると

ずっと終わる気がしない。


「チェイルという名前、偽名ですよね?」


「ど、どうして知って」


思わず返答した彼女の腕の痣は増えない。

彼女は慌てて、口を閉じる。


「魅了香と洗脳の魔道具を使って

 複数の人を、洗脳していたようですが

 何をするつもりだったんですか?」


チェイルの額から、汗が次々と流れ落ちている。

リオウさんが、動こうとしたのをヤトさんが

観客席にわからないように、止めた。


サフィールさんが、何かを言いたそうに僕を

みているが、後回しにしたようだ。


「リシアでは、魅了香を使用するには許可がいります。

 そして、洗脳の魔道具は所持することも禁止されている」


彼女がジリッと後ろへ下がり

僕から距離を取ろうとした。


「黙っていても、何の解決にもなりません。

 僕と貴方の間には、契約がなされています。

 このままなら、貴方は命を落とすことになりますが?

 僕は別に、貴方がどうなろうと興味はありませんけれど」


チェイルが、手首の契約の証をチラリと見る。


「破棄できませんよ」


「え?」


「僕が、構築式を正当なものに

 書き換えましたから」


「嘘……」


「一方的に、自分だけが破棄できる

 契約なんて、不公平でしょう?」


「嘘、嘘よ!

 書き換えることなどできるわけがないわ!

 あれは!!」


チェイルは、何かを言いかけてハッと我に返り

唇をかみしめて、言葉を飲み込んだ。


「あれは?」


「……」


「また、黙り込むんですか?

 僕は、嘘はついていませんから。

 どこにも、痣が浮かんでいないのが証明です」


彼女は、小さな声で魔道具の解除の呪文を

唱えているが、手首の証は消えることはない。


「なぜ、どうして、どうして、どうして」


消えない証に、顔色を蒼白にし

ひたすら、どうしてと繰り返す。


「どうして!」


「どうしてと言われても、ね?

 できるものは、できるんです」


「……」


「僕は、まだまだ経験不足ですし

 世界最強と言っても、ジャックの足元にも及びませんが。

 一つだけ、彼よりも優れた力があるんです。

 僕は、魔法に関してだけは彼よりも上なんですよ」


これは、絶対に胸を張って言える。

魔法の分野だけは、ジャックより僕の方が上だ。


「僕にとって、構築式を書き換えることなど

 息をするのと同じぐらい簡単なんです。密偵さん」


彼女は、驚愕の表情で僕を見て

ガタガタと震えはじめる。


「何処の国の密偵かは、ギルドが調べてくれるでしょう。

 だから、貴方に死なれるのは困るんです。

 最後の機会を与えてあげたのに」


チェイルが、ポケットから何かを取り出して

起動させようとした瞬間、オウルさんがそれよりも早く動き

彼女を取り押さえた。


オウルさんの動きが、黒と引けを取らない気がする……。

まぁ、当たり前といえば当たり前か。花井さんの子孫で

かなでが育てていたんだから。弱いはずがない。


サクラさんもリオウさんも、白のランクぐらいの

実力はありそうだけど、魔物との戦闘になれば経験不足が

足を引っ張りそうだ。対人戦は、魔法が使えれば

その辺りの冒険者じゃ多分歯が立たないだろうな。


「は、離して、離して!」


「右腕を落とすかい?」


オウルさんが、感情のない声で僕に問い

右腕を伸ばした体勢で、彼女を押さえつけた。


「嫌、嫌、嫌、嫌!!!」


どうするかなと、悩んでいると

チェイルが、精霊に必死な目を向けて懇願するように叫んだ。


「助けてください。精霊様、どうか助けてください」


余りにも厚顔無恥な、願いに観客席が殺気立ち

黒達も不快だという表情を隠さずに、彼女を見た。


僕はと言えば、どうしてそこに助けを求めるんだと聞きたい。

彼女に助けを求めるのなら、絶対に全て吐いたほうがいい。


『フフフ……』


『……』


『……』


『彼女、私を馬鹿にしているのかな?』


『いえ、本気で助けを求めているのかと』


『ちょっと、頭が可哀想なのかな……』


『いえ、切羽詰まって必死なんだと思います』


『なら、一度だけ機会をあげようかな?』


その顔は、絶対に助けようという顔じゃない。



彼女を離してあげて、と精霊がオウルさんに指示し

オウルさんは、チェイルから手を離すと

精霊に一礼して、一歩下がった。


「貴方は、何から助けてほしいの?」


この段階で気が付けばよかったのに。

精霊の審判の最中に、嘘しかついていないのに

その事に、一言も触れずに精霊が話を進めることに。


彼女は、ここまで追い詰められたことも

切羽詰まったこともないのだろう。


何時ものように、自分の容姿を利用して相手を落とすことも

魅了香を利用して、自分に興味を持たせることもできない。

元々、魅了香は、室内で使うものだ。屋外で使っても効果はない。


武力で逃げようとしても、黒達が居ることから逃げることができない。

時折、アルトの方へと視線をむけていることから人質にと考えて

いるようだけど、アルトは絶対に彼女の傍には近づかない。


「破棄を、契約の破棄を……望みます。

 腕を切り落とされたくないんです!」


「なら、死を選ぶしかないわね?」


「死ぬのも、嫌です……」


精霊の、冷たい視線に語尾が

かすれたように消えた。


「腕を失くすのも嫌。

 死ぬのも嫌。ならば、最初から契約など

 しなければよかったのに?」


「私は、彼に騙されて!」


『はぁ?』


うわ、やばい。

声が、女性の出す声ではなかった。


『切れちゃ駄目ですよ』


『……』


チェイルの、騙された発言に

観客席の殺気は強くなり。

黒達は、呆れを通り越して絶句していた。


自分の手に、痣が増えているのに彼女は気が付いていない。

もう、気にする余裕もないのだろう。


彼女の心の中に有るのは

助かりたいという気持ちだけ。


何処までいっても、自分を顧みることなく

他者に責任を押し付ける姿は、ある意味清々しい。


精霊が、わざとらしく溜息をついて

チェイルから視線を外すと、チェイルが

「お願いします。お願いします」と叫ぶ。


「精霊に願い事をするならば。

 対価が必要なのだけど? 貴方は何を差し出すの?」


「魔力を……」


「死んでしまうけど?」


「え?」


「私達に願うという事は

 そういう事よ。命を賭けるという事」


精霊が冷たい目で、チェイルを見下ろした。

チェイルが、忙しなく目を揺らしながら

必死に逃げるすべを考えている。


「祈り、祈りを捧げます!」


何かを思いついたかのように

彼女が声をあげる。


「いらない」


精霊の、反射のように返された声に

皆が驚いたように、精霊を注視した。


「貴方の祈りなどいらない」


祈られることが不快だという目をして

彼女を見て、すぐに視線をそらし何かを見つけて

ほんの少しだけ、口角をあげた。


「でも、そう……」


きっと、碌でもない事を考えているに違いない。


「貴方を真に愛する人が

 貴方を心から守りたいという想い。

 その祈りなら、対価として認めてあげる」


「私を愛する……」


精霊の言葉に、チェイルの目に希望の光が宿る。


『彼女の為に祈る人間が居るのかしら?』


楽しそうに、精霊がそう呟いた。


『……』


チェイルは、僕が彼女の取り巻き

の洗脳を解いたことを知らない。


そして、精霊は僕が洗脳を

解いたことを知っている。


洗脳を解いた時点で

彼女の恋人だと思っていた、男性達は

利用されていたことを覚えている。


彼女は、男性達と愛を重ねてきたと思っているが

男性達は、洗脳されていたことを知って

果たして、それが愛だと思えるのかな。


僕が、言える筋合いはないか。

彼女の弱っている心に付け込んだ僕が……。


一度、首を横に振り気持ちを入れ替える。



それにしても……。


『対価が愛する気持ちか……』


僕の言葉に、精霊とフィーが視線だけを

僕へと向ける。


『大切な人を深く想う

 愛の力は偉大なんだよ?』


『そうですか』


僕には、対価になるようなものだとは思えない。


『あ、信じてないかな?』


『……』


『セツナ』


精霊の優しさを含んだ甘い声で名前を呼ばれる。


『サーディア神は全てを慈しんでいるの

 この世界で生まれし者を、神は愛しておられるわ』


『……』


蒼露様に言われた言葉だ。


『貴方が、世界()を愛せなくとも。

 私達は貴方を愛している』


彼女が、愛を言葉にした瞬間

彼女から、キラキラとした優しい力があふれ出す。


『セツナは、お父様じゃないから

 浄化するほどの力は宿らなかったかな』


浄化の魔法より、ずっとずっと弱い光だけど

よく似たその光に、目を奪われた。


『私達の唯一の愛は、お父様に捧げられているからね』


唯一を愛する祈り(輝き)を魔力にのせて

浄化するのか……。愛の定義は恋愛だけじゃないんだな。


『誰かを想っての優しい想い(祈り)

 輝きとなって、力に変わるかな』


『魔力のようなものですか?』


『魔力とは別のモノかな。

 セツナが理解するのは、難しいかな?』


精霊だけが感じる力ということか。

意識してみることができるモノでもないし。


『その輝きは、時に精霊を惹きつけるかな!』


『ただ祈るだけでは駄目なの。

 全てを祈りに傾けなければ、輝かないのなの』


それは、とてつもなく難しい事じゃないかな。

邪念なく、純粋な一心の祈り。簡単に成せることじゃない。


それを、彼女が洗脳していた人に求めるんですか?


『もしかして、古い伝承とかにある

 精霊の奇跡と呼ばれるような出来事とかですか?』


『……』


『……』


『あれ?』


『その事に、触れてはいけないかな?』


きっと、今回のようにやりすぎて

怒られた事があるのかもしれない。

いや、この様子だと怒られているんだろうなぁ。



こちらの話題を打ち切るように

精霊がチェイルに、静かに尋ねた。


「貴方を、愛してくれている人は誰?」


チェイルが、相手の名前を口にして

名前を口にされた青年が、精霊によって

転移魔法で、強制的に呼び出された。


戸惑ったように、周りを見て

精霊を見て、顔色を失くしながら精霊に跪く。


「貴方は、彼女を愛していて?」


「……」


精霊の問いに、青年は答えない。

答えない青年に、チェイルが手を伸ばすが

青年は、その手を叩き落とす。


叩き落とされた事に、チェイルは目を瞠って

彼を見ていたが、彼は、チェイルと視線を合わせず

ただ、拳を握りしめて頭を下げて跪いている。


彼は全ての気持ちを、自分の中に押し込めていた。

憤りも、哀しみも全て。そして、彼女を責めないために

無言を貫くことを選んだんだろう。


口を開けば、感情が溢れてしまうから。


「優しい子ね」


精霊が、そう告げ彼の頭をそっと撫でた。

青年が驚いたように顔をあげて、精霊を見つめる。


「大丈夫。貴方達の唯一が必ず見つかるから」


青年は、口を開くことなくただ頭を下げた。


『魂の綺麗な人間なのなの』


『彼女の傍に居るだけで、苛立ちが募るから

 すごくすごく、癒されるかな』


『……』



「どうして!」


彼を責めるように、チェイルが叫ぶが

精霊が彼を元の場所へと戻した。


「彼は、貴方を愛していない」


「そ、そんなはずは」


どうして、なぜ、とブツブツと俯きながら

チェイルが呟く。


「もういい?」


精霊が、綺麗に首をかしげてチェイルを見る。


「ま、まって、ください。

 もう一人、います。彼ならきっと」


チェイルは、違う男性の名前を口にするが

その彼も、祈ることを拒否した。もう一人、もう一人と

精霊に懇願しながら、次々に男性の名前を口にし

その度に、拒否されていくチェイル。


周りはもう、その作業といえる光景を

ぼんやりと眺めていた。


黒達も、冒険者達も精霊が彼女を

助ける気がないことに、とっくに気がついていた。

精霊の本気の怒りを買った事を。


気が付いていないのは、チェイル本人だけだろう。


拒否の言葉を聞くたびに

チェイルが顔色を失くしていく。


そして、体を震わせながら最後の青年の名を呼んだ。


「貴方は、私を助けてくれるでしょ。ね?」


「……」


何も言わない彼に、精霊が優しく口を開いた。


「許します。貴方の想いを。

 そして、彼等の想いを、貴方が伝えることを許します」


彼は、精霊に頷いてから、真直ぐ視線をチェイルにあわせた。


「チェイル」


「ノル……」


「君は、僕を愛してくれているの?」


「愛しているわ」


「なら、どうして……。

 僕を最後に呼んだの?

 僕が一番だって、何時も言ってくれていたのに。

 どうして?」


「そ、それは」


チェイルが、洗脳の魔道具を触るが

精霊が起動できないように封じている。


チェイルが、魔導具に触っていることに

気が付いたのか、ノルはその瞳を曇らせた。


「また、僕を洗脳するの?」


「え……」


「僕も、そして彼等もずっと洗脳していたでしょう?」


「ち、ちが、う」


洗脳という言葉に、サフィールさんが表情を消し

ゆったりと気配を消しながら、僕の傍へと来る。


声を出さずに「話がしたいわけ」と告げ

僕は、僕とサフィールさんの周りに結界を張る。


「あの契約の魔道具」


「八聖魔の一人、闇の魔導師の手が入っていました。

 サフィールさんから、頂いた資料の構築式と同じ

 組み方がされていましたから」


サフィールさんは、頷き元の位置へと戻った。

エレノアさん達が、視線を送るがサフィールさんは

誰とも視線を合わさなかった。



「チェイル。

 君の言葉は、嘘しかないんだね」


彼の声に、黒達はサフィールさんから視線を外し

意識をチェイルたちへと戻す。


「そ、そんなことないわ。ね?」


チェイルが、彼に愛していると言った時も

洗脳しているか聞いた時も、彼女の痣が増えていた。

そしてまた、痣が一つ増える。


ノルが、哀しそうに笑った。

闘技場に何とも言えない空気が広がる。


「僕は、洗脳されていたとしても君が好きだった」


「ノル!」


チェイルが、嬉しそうにノルを見る。


「君が、僕を最初に呼んでくれていたなら

 僕は、君のために祈ったよ」


「え……?」


彼が、顔を伏せ体を震わせてから顔をあげて

彼女を真直ぐに見た。


「僕は、本当に君が好きだったんだ」


「なら、私の……」


「だけど……」


チェイルが全てを口にする前に

彼が最後の台詞を口にのせた。


「さようなら。チェイル」


それ以上何も言わず

彼は俯きチェイルへ背中を見せる。

その背が、微かに震えているのは

彼はこの後、チェイルがどうなるのかを

正確に把握しているからだろう。


精霊が彼女を許さない事を。


精霊は、彼が落とした涙を誰にも知られないように

魔法で、消し去った。


彼女の為に、祈ろうとしていた彼も。

彼女の為に、口を開くことなく沈黙を選んだ青年も。

その他の、人達も……。チェイルの周りには優しい人が

集まっていたようだ。


『彼女には、勿体ない人間ばかりかな』


精霊が、微かな憤りをその声にのせた。


「どうして! どうして!

 私を愛しているって! 言ったのに!

 嘘つきは、貴方達の方じゃない!!

 信じていたのに!!」


チェイルが、叫びながらノルに近づこうとするのを

精霊が阻止して、ノルを元の場所へと戻す。


「自分の恋人達? を信じなかったのは貴方。

 洗脳? それは人の心を弄ぶ行為よ」


「……」


「貴方の言葉は、嘘ばかり。

 何度、私の前で嘘をつけばいいのかしら?」


「ま、まってください。まって!」


「精霊の審判で、嘘をつくことの意味を

 自分自身の愚かさを

 その身をもって思い知るがいい!」


精霊のその言葉と同時に、魔法が発動し

チェイルの体の痣が、すべて消え去った。

彼女は、腕を見てホッとしたように息をついた瞬間

青紫の、茨の蔓が彼女の腕や首、顔などに刺青のように

巻き付いていく。


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


チェイルは、自分の手を見て腕を見て

体中を震わせながら、悲鳴を上げる。


観客席も、そして黒達やオウカさん達でさえ

青褪めて、チェイルを見ていた。


黒の痣と形が変わっただけで

どう違うのだろうと内心首をかしげていると

フィーが教えてくれた。


『あれは、精霊の断罪というのなの。

 体中に茨の蔓が巻き付いているのなの。

 あれを刻み込まれるという事は、精霊に処罰されたと

 誰が見てもわかるのなの。神殿に入ることもできないのなの』


『そうなんですね』


『彼女は、知らないと思うけど

 彼女の国周辺では、精霊の断罪を受けた人間は

 拷問されて、処刑されてしまうのなの~』


『……』


『だから、フィー達も滅多に

 あの魔法を使う事はないのなの』


『なんだかんだと言っても

 精霊は、人間に寛大そうですしね』


んー、とフィーがゆるりと首を横に振る。


『お姉さまは、ずっと人間と関わって

 生きて来たのなの。精霊の中でも特に人間に

 優しい方になるのなの。契約者を見守っている

 精霊は、人間に甘いところがあるのなのなの~』


『なるほど』


『それに、セツナが特別だから

 セツナに、合わせているだけなのなの』


『……』


僕にあわせていない精霊の姿は

どんな感じなのだろうと考えてやめた。


きっと、僕は見ることがないに違いない、と

思いたい……。



精霊の断罪を受けた、チェイルは膝から崩れ落ち

両手を地面について、全く動かなくなってしまった。

そんな彼女を精霊は目に入れることなく、口を閉ざす。


『セツナ、止めを刺しなさい!』


うわぁ。本気で機嫌が悪い……。

この上に、止めを刺せとかどこの鬼畜だ。


『わかっているかなぁ?』


それはどういう意味ですか?


『セツナは別に、あの罰を酷いと

 思っていないことは、わかっているかな!』


あぁ……。確かに。


『この国に、仕掛けたのだから当然でしょう?』


『セツナは、私達よりかな』


精霊はそう言って、僕を見た。

精霊が僕を見た事で、周りの視線も僕へと集まる。

そろそろ終わりにするかと、ゆっくりと歩き

チェイルの傍に行き、膝をついた。


絶望に落とされたチェイルは、顔をあげることもできない。

チェイルの顎の下に、人差し指をあてゆっくりと彼女の

顔を持ち上げていく。抵抗する気力のないままチェイルが顔をあげ

僕と視線が合うが、彼女の瞳に光はない。


そんな彼女に、憐れみをのせた声をゆっくりと聞かせていく。

僕の声に、彼女がピクリと動いた。


「ギルド本部の、依頼掲示板の上に

 書かれている言葉があるんです」


サフィールさんが、ハッとして僕の顔を凝視し

手をパタパタと、自分の体に触れてメモ帳とペンを取り出す。

その様子をフィーが、呆れたように見上げ

精霊は、周りが気が付かないようにこっそりと

サフィールさんを見て、笑うのを堪えているようだった。


【 欲深き人の心と降る雪は

 積もるにつれて、道を失う 】


久しぶりの日本語だ……。


「この国の言葉に直すと……、となります」


一心不乱に、サフィールさんがメモを取っている。

ちょっと怖い……。オウカさん達も真剣に聞いていて

観客席にいる冒険者も、その意味を咀嚼しているようだった。


「意味は言わなくても、わかるかと思います。

 今の、貴方に相応しい言葉でしょう?」


僕の声に、僕の目に彼女を蔑む感情を見つけたのか

チェイルが、ギリッと歯をかみしめ

嫌な音を響かせながら僕を睨みつけた。


自尊心の高い彼女は

僕の言葉が気に入らなかったようだ。


それでいいんだけど。


誰の声も届かない状態でいてもらっては困る。

絶望に落ちるのはまだ早い。

止めを刺すのは僕だから。


「貴方が、貴方が魔法を解いたの?」


「はい」


「貴方のせいで!」


「僕のせい? 貴方の自業自得でしょう?

 アルトの物に手を出そうとした。

 彼等の心を踏みにじった。

 チームの仲間を利用した」


それの何が悪いのかと

チェイルの目が物語っている。


「そして、僕を自分のものにして

 何をするつもりだったんですか?」


魅了香の甘い香りが、纏わりつくようで気持ちが悪い。

息をすることで、肺まで甘ったるい感じがする。


魔法をかけてから、傍によるべきだった。


「貴方が、自分の欲を優先させた結果です。

 貴方の行いは、人として行うべき正しい道ではない。

 それは、精霊が貴方の身に刻んだその茨から証明できる」


精霊の怒りを思い出したのか

彼女に触れている指先から、震えが伝わってくるが

同情のような気持ちは一切わかなかった。


「僕は甘いとよく言われるんですが

 僕自身は、そう思ったことは一度もありません。

 

 貴方は僕を、御せるとでも思いましたか?

 僕を御せるのは、僕の師であったジャックのみ」


正確に言えば、ジャックと花井さんのみ。

僕に命を、与えてくれた二人のみ……。


たとえ、神であろうと

僕を縛ることを認めない。


「覚えておいてください……」


自分でも、驚くぐらいの低い声が喉からもれた。

チェイルが、その声を聞いて顔色を変え

体の震えをひどくする。僕の声に反応したのは

彼女だけではなく、闘技場の時が止まったように

静まり返った。空気の中に緊張が満ちる。


「僕は、僕達の庭を荒らすものを絶対に許さない……」


「ひっ……」


僕から逃げるように、彼女が体を起こし

後ろへと倒れ、僕から距離を取ろうとする。

彼女から離れた指を少し眺め

香りを振り払うように、手を数回振った。


ここまで来たのなら、すべて駆除してしまおう。

僕達の庭を、蝕み始めた害虫を。


甘い空気をすべて吐き出すように、

息を吐いてから、精霊へと視線を向ける。


「僕の願いを……。

 対価は僕の魔力」


黒達やオウカさん達が、僕を止めようと動くが

精霊が、それを許さない。


「精霊の審判の範囲をハル全域に……」


チェイルから視線を外さずに、精霊に願う。


「審判の最中よ。対価は必要ない」


嘘だと一瞬思ったけれど。

今、ここで嘘はつけない。


精霊は、手を一度叩き魔法を行使する。


「僕は、ハルにいる全ての者に問う。

 沈黙は許さない。十秒以内に答えない場合は

 肯定とする。成人前の子供は対象外とするが

 答えても構わない……」


「大丈夫。私達は心を見る。魂の輝きを見る。

 意識がない者や、言葉にのせることができない者。

 理由がある者達の事は気にしなくて良い」


「ありがとうございます」


観客席の冒険者で、黒の輪が消えない者達が

視線を彷徨わせ始める。


「貴方達は、他国の密偵もしくは工作員か否か?」


静かに広がる僕の問いに、各々が答えを返していく。

「違う!」と元気に答えたのはアルトで

精霊が微笑ましそうにアルトを見て

多分、ミッシェル達の声が聞こえたのだろう

黒のチームがいる方を見た。


十秒が経ち、黒の痣の浮き出た者達が

武器を抜こうとしたり、人質を取ろうと動くが

そんな行動を許すわけがない。


指先一つ動かせない状態に

他国の密偵達が、冷たい汗を流しながら動きを止めている。

それは闘技場だけでなく、街の中にいる者達もだ。


「結構、入り込んでいるな」


ジャックが居なくなって

様子を見ている国が多いのだろう。

隙が無いか、何処まで入り込めるのかを

見極めている国もあるのだろう。


「僕達の庭で、自由に武力を使えるとでも?」


闘技場に居る密偵は、捕まると多分首を切られる。

物理的に……。前に、アギトさんとナンシーさんが

そんな事を言っていた気がする。


ハルに刻まれている魔法を駆使して

密偵や工作員を拘束し、転がしていく。


ハルは、ギルドを中心に魔力を流す道が

蜘蛛の糸のように張り巡らされていて

何処の場所からでも、魔力をのせることができた。


鳥を使えば、同じことができるけど

花井さんが構築した魔法を触ってみたかった。


「その魔法は……」


オウカさん達が、目を瞠っていることから

彼等は使えないのかな?


多分、かなで では使えなかったんだろうなぁ。

ものすごい、緻密な魔力制御を求められる。


リシアに関わる気がなかったから

この国の為に残した、花井さんの魔法を

深く探らなかったが、受け継ぐと決めた日から

リシアの事を、記憶の中から引きずり出して

色々と調べていた。


この国に刻まれている魔法も、その時初めて探った。

使う事は、そうそうないと思っていたのに

こんなに早く、使う事になるとは。


花井さんが刻んだ魔法は、とても繊細で緻密だ。

膨大な量の魔法が刻まれている。


多分、花井さんの時代は今の時代よりも

大変だったんだろうなと、魔法の構築式を

解析している時に感じた。


魔物が蔓延るこの世界で、建国なんて

花井さんは、どれだけ苦労してきたんだろう……。


花井さんの魔法と、かなでの魔法。

その構築式を見ているだけでも、面白かった。

歴史を感じることができて

その時代に何が必要だったのかが

手に取るようにわかって。


彼等がまだ、ここに息づいている気がして

少し嬉しくて、そして哀しかった……。



「私達が、引き継ごう」


オウカさんの言葉に、僕は首を横に振る。


「大会はまだ続きますし

 街の外でも、浮足立っていますしね。

 ここで職員の数が減るのは、良くないと思いますから

 僕が転移魔法で、牢へと送っておきます」


「この数を……?」


オウカさんが呟き、観客席を見渡している間に

魔法を詠唱し、発動できる状態にしてから

密偵達を、送る場所を口にした。


「闘技場にいる者達は、第二牢運動場へ

 街の中にいる者達は、第三牢運動場へ転移」


オウカさんは、ここで質問するのをぐっとこらえ

一度息を吐き出してから、僕を見た。


「色々と話を聞きたい」


「時間が空き次第

 いつでも話せます」


「よろしく頼む」


「はい」


オウカさんが僕に笑みを見せてから

小さく嘆息し、僕の足元にいるチェイルを見下ろす。


「どうするのかな」


新たな、黒の痣が出ている彼女を忌々しそうに眺めて

オウカさんが、僕に問う。


「対価を、別のものにしようかと思います」


「それで、いいのかね」


「別に、右腕が欲しいわけではありませんので」


「確かに」


「対価は、彼女が知りえる情報の全てをギルドに開示。

 期限は、10日間。10日経っても話さない場合は

 彼女の国に強制送還してください」


彼女が淡く光り、条件が上書きされた。

彼女が守っても、守らなくてもいいという条件に

オウカさんが、どういう意図があるのかと首をかしげる。


「それでは、彼女に都合がよすぎないかい?

 話さなくてもいいように聞こえるが。

 話さなくても、不履行にはならないのだろう?」


「ええ。そういう条件にしていますからね。

 それに、話さないならこの国に置いておく

 必要はないでしょう? 経費も掛かります」


「経費……」


ざわざわと揺れる会場を気にすることなく

話を続ける。チェイルが「帰れる」と小さく呟いた。


「話さなくても、死にますし。

 国に帰っても、死にますし。

 話すつもりがないなら、面倒なことは

 彼女の国に任せてしまうのが一番かと思います」

 

彼女はエラーナの人間であることは

もう知っていた。だけど、それをここで話すつもりはない。

それは、ギルドの仕事だから。


「彼女が、何処の国の人なのかは言いませんが

 精霊から断罪された人間を許す国は少ないのでは?

 特に、敬虔な神の国だったりするとどうなるんでしょうね。

 拷問の末、処刑なんてこともありますね」


僕の近くに居る人達が、信じられないものを見る目を

僕へと向けていた。


「話す気がないのなら、国の大切な税を

 使う必要などないでしょう。邪魔なだけですから」


チェイルを視線だけで見下ろすと

口元を震わせ、何も言えないぐらいに混乱しているようだ。

僕を見てはいるけど、その目に僕が映っているわけではない。


『私より、セツナの方が

 容赦のない気がするかな』


同じにしないでほしい……。

僕は、話せば死なないようにしているのだから。


『死ななくても、生きていくのは困難かな』


『その後の彼女の人生などに

 全く興味はありません』



精霊は一度瞳を閉じ

綺麗な眼差しを僕へと向け

「終わった?」と静かな声で僕に尋ねた。


精霊の前で、跪き頭を下げる。


「ありがとうございました」


「そう」


精霊が、手を一度叩き

かけていた魔法が解けていく。

淡い光がゆっくりと、滲むように消えていき

闘技場の人間も、そして街の人達も

儚い光に目を奪われていた。


「対価は後ほど」


「え?」


思わず顔をあげた僕に、精霊が華やかに笑う。


『え? 後ほどってどういう意味ですか!』


「貴方、まだ戦うのでしょう?」


「はい……」


『だって。対価貰っちゃうと

 姿を見せることができなくなっちゃうかな。

 話せなくなっちゃうし!』


「戦い終わってからにしてあげる」


『……』


「はい」


「感謝して?」


精霊に、これ以上はないというほどの

笑みを贈ってあげた。精霊と僕の笑い合う姿に

抑え込んだ、女性達の感嘆の声が届くのが

激しく忌々しい。


『怖い! セツナ!

 その笑みすごく怖いって思うかな!』


『誰のせいですか?』


『謝るから、謝るから!』


表と裏で、全く違う僕達の会話に

疲れた気がする……。


「お心遣い、感謝いたします。

 ありがとうございました」


最後、精霊が少し口元を引きつらせながら

消えたように思わせた。


『怒らなくてもいいと思うかな~』


『怒っていませんよ。

 ちゃんと感謝しています』


『なら、よかったかな』


彼女はふわりと笑い、僕に抱き付いた。

消えたように見えた精霊は、僕には見えていて

僕の傍にいて、引っ付いている……。


こうなると思ったから、嫌だったんだ!

そんな僕達を見て、フィーが楽しそうに笑っていた。


『次はどうするのかな?』


『この、証を消したいので

 彼の傷を癒すんです』


纏わりつく甘い香りを、煩わしく思いながら

呻いている魔導師の傍へと転移する。

アルトが慌てて、走ってこようとしたが心話で止める。


『僕の傍によると臭いよ?』


『げ! 最悪だ!

 俺まだ、鼻に残ってるのに!』


そういって、すごく嫌そうな顔をして

その場に留まった。



いきなり転移してきた僕に、副医院長が驚いたように

僕を見るが、場所を僕に譲ってくれる。


挨拶をすることもなく、魔導師に近づき

淡々とこれから、する事を話していく。


「今から治療魔法をかけますが。

 僕は彼を許すつもりはありません。

 酷い治療になると思いますから

 見たくない人は、目をつぶり耳を塞いでください」


「え……?」


副医院長が、小さく呟く。


「成人前の子供は、この状況を見ることはできず

 音も聞こえません。この光景を見ることができるのは

 闘技場にいる冒険者のみ。

 

 まぁ……見ない事をお勧めしますが」


近くから、喉を鳴らす音が響いた。


準備ができたところで、彼に魔法をかけていく

魔法が発動したと同時に、体中から引き絞るかのような

絶叫が響く。途切れることのない叫び。


動かない腕を必死に動かし、助けを求めるように

伸びる腕。痛みから逃れるように、暴れる彼を

周りの医師達が、体を震わせながら必死に抑える。


魔導師の姿に、顔色を蒼白にし震えながらも

医師達は、彼を離すことはなかった。


苦痛を訴える、喚き叫ぶ声。

凄まじい、悲鳴と

目を見開いて、涙を流しながら

やめてくれと懇願する姿に


見習い達は、涙を落としながら青褪め

その場へと、座り込んだ……。


観客席は、目を閉じ耳を塞ぐ冒険者が増えていく。

冒険者志望の子供達が、見ることができないと

聞くことができないと、知っていても

その子供の目を、耳を、塞ぐ冒険者が多かった。


それほど、魔導師の叫ぶ声は酷く

焼け爛れた皮膚が、再生していく様も痛々しかった。


残酷ともいえる、治療方法に

誰もが、声を失い、表情を失くしていた。


治療魔法の魔法陣が消えると同時に

魔導師が叫ぶ声も消え、落ちるように意識を飛ばす。


医師達が力尽きたように座り込み

見習い達は、蹲り泣いている。


しばらく沈黙が続き、そしてゆっくりとざわめきが戻る。

その声は、魔導師の体や顔を見ての驚愕を含む声。


魔導師の体に、火傷の跡など一つも残していない。

普通はここまで綺麗に、治ることはない。

彼等の声や目は、怯えも見えるが

それだけではない事が、少し意外だった。


副医院長が、見習い達の背中を順番に

撫でていき、落ち着けと声をかけていた。


座り込んでいた医師達は、立ち上がり

魔導師を見て、言葉を失いながらも

治療が必要な、冒険者の傍へと歩いていく。


僕は、契約の証が消えたことを確認してから

転移魔法を使って、チェイルの傍へと戻った。

僕を見て恐怖に顔を歪め

僕から距離を取ろうと必死になっている。


彼女には、絶対に目を逸らせないように

魔法をかけていた為に、全てを見ていたことになる。


「貴方も、あの方と同じような痛みを

 経験するかもしれませんね。楽に死ねないかもしれません」


僕の声に、チェイルは魔導師を見て自分の腕を見て

恐怖から、悲鳴を上げ意識を失った。

もしかしたら、自分に訪れるかもしれない未来を想像して

耐えきれなくなったようだ。


気を失ったチェイルを、オウカさんがギルド職員に

牢屋へ入れておけと告げ、彼女が連れていかれた。



クオードさんが、僕の傍へと立ち

「何をした」と厳しい表情で僕を見ながら問うた。


余り人に知られるのもよくない魔法なので

唇が読めないように、そして僕の周りの人以外に

聞こえないように、魔法をかけてから答えていく。


「治療魔法から、痛みを抑える記号を

 削除しただけですよ」


「あそこまで……苦しむものなのか」


「拷問に使う事もありますから。

 傷つけて痛めつけ、殺さないために

 治療しながらまた痛めつける。そんな魔法です」


「そうか……」


「治療魔法の構築式から

 記号を削除するのは難しいですが

 できる人にはできます」


「そうか」


クオードさんが、深く悩むような表情で頷く。


「善良な人を、痛めつけるかもしれない魔法を

 広めるつもりはありません」


僕を真直ぐに見て、クオードさんが苦笑を落とした。


「君が広めるなんて、誰も考えていないよ。

 治療魔法を、拷問に使うのが気に入らなくてね」


「申し訳ありません」


「セツナが謝る事はない。

 前例を作るべきではない。

 それを考慮しての行動だとわかっている。

 治療することへの対価も含まれているのだろう?」


「そうですね」


「もちろん、それだけでない事も知っている」


「……」


「しかし、それが必要だったことを

 冒険者達も理解している。もちろん私達も」


「そうですか」


クオードさんが、僕の背中を一度叩き緩く笑った。

その時、ふわりと空気が揺れ甘ったるい香りを感じる。

その香りに、眉間に皺が寄るのが自分でもわかった。


「申し訳ありません、少し離れます」


「大丈夫か?」


「大丈夫です」


何でもないと、首を横に振り

クオードさん達から、少し離れるように歩く。

鞄から、目的のものを取り出そうとして

グローブが目に入り、彼女を触った手で

鞄を触るのが嫌で、歩きながらグローブを外し

火の魔道具を起動する。


そのまま、火を消さないように

風魔法を使いながら空中へと浮かべ

グローブを、火の中に落とし跡形もなく燃やした。


火を空中に浮かべたまま、鞄から革の入れ物を取り出し

そこから煙草に似たものを一本取り出す。


それを、口にくわえ火に近づけて

火をつけた。肺からあの香りを追い出すように

別の香りを肺に入れ吐き出す。


煙が自分の周囲を揺蕩い、香りを上書きしていき

纏わりついていた香りが、消えていく。


気配を感じて、後ろを振り向くと

黒達が、驚いたように僕を見ている。


「……貴殿は煙草を嗜むのか」


「セツナよ。煙草はいかん。

 味覚がおかしくなる」


え? そこなんですか?

まず味覚? 酒肴らしいけど。


「アルトにもよくないわけ」


「煙草の香りとは違う気がするが

 煙草は、持久力を奪うぞ」


アギトさんが、正解を言い当てながら

アギトさんらしい意見が出た。さすが戦闘狂。


「お前も昔吸っていたわけ」


「すぐにやめただろう?」


アギトさんとサフィールさんが軽口を叩き

煙草はやめろと、二人が同時に口にした。


「これは、煙草ではないんです」


「じゃぁ、なんなわけ?」


ここで、アルトが僕の傍へと走って来て

「師匠! すげぇぇいい香りがする!」と僕の周りを

グルグルと回り始めた。


どうやら、魅了香の香りは完全に消えたようだ。

アルトが僕にジャレ付いているのを、黒達が

微笑ましそうに、見ながら説明を続けるように促す。


「これは、魅了香の香りを消すものです」


「魅了香の?」


「はい。あの香りは獣人族にとって

 ものすごい悪臭になりますから。

 それを消すために、作ったものなんです」


「へぇ。でも、吸う必要はないわけ?」


「確かにそうなんですが

 香りが、肺にまではいっている気がして

 気持ちが悪くて。薬草自体は

 体に害があるものではありませんので

 丁度いいかなと思いました」


植物を燃やす煙は、体に悪いと言われるが

この世界では、燃やして煙を吸っても

害のないものがほとんどのようだ。


その為に、香りを楽しむ無害の煙草がある。

煙草のように吸う人もいるし、お香のように燃やして

服や部屋に香りをつけて楽しむ人もいる。


それでも、料理人などは煙草も香り煙草も

吸う事はない。香りが残るために食材の微妙な

香りや味がわかりにくくなるらしい。


「……あぁ、香り煙草か」


「はい。同じような物です」


「……紙の色が、煙草に使われるものだな」


「手作りなので。

 次は、紙を変えておきます」


「……その方がいいだろうな」


香り煙草だと知って、アギトさん達は

何も言わなくなったが、バルタスさんだけは

やっぱり、やめろと言っていた。


普通に煙草を吸ったとしても

僕の体が悪くなることはないのだけど。

アルトには害になるだろうから、煙草を嗜むつもりはない。


その後、三度ほど吸ってから、浮かべたままの火にくべる。

香りが、周囲に広がりアルトが幸せそうに目を細めた。


「アルトがすごく幸せそうだな」


アギトさんが、アルトを見て笑う。


「悪臭は、ずっと付きまといますからね。

 少し苛々していたようです。それにこの香りは

 獣人族が好む香りなので」


「……珍しいものを持っているのだな」


「ガーディルやクットでは

 普通に魅了香に使われる薬草の香りが

 香水として売られていますから。

 それを消すために作ったものです」


ガーディルでは、アルトは外に出なかったし

クットは、ほとんど滞在せずに終わった。


「……そうか」


エレノアさんが、優しく微笑み

労わるように僕の肩を叩いた。


『確かにいい香りかな~』


『いい香りなの~』


『でも、セツナはそのままの香りがいいかな』


『蒼露の葉の香りの方が素敵なのなの~』


精霊とフィーは、香りは気に入ったようだが

僕が香りをつけるのは反対なようだ……。


観客席からは、獣人族の人達が「いいなぁ」と羨ましそうに

こちらを見ている。多分、魅了香の香りが漂っているのに

席を移動できないんだろう。


余りにも、耳を寝かせてこちらを見ているので

気の毒になって、革の袋から数本取り出して燃やし

その空気を、風にのせてそちらへと飛ばした。


香りが届いた瞬間、歓声が上がる。

獣人族の言葉で「ありがとう」という感謝の言葉が届いた。


興味を持っている冒険者が多いようなので

風にのせて、闘技場全体へと香りを流した。

微かに香る程度だろうけど。


あちらこちらで、香りについての感想が囁かれていた。

魅了香の香りの方が、好きという人間ももちろんいるが

獣人族から、距離を取られているのが面白かった。




『セツナ、もうすぐかな!』


『なにが、もうすぐなんですか?』


『さっき、教えてあげたかな』


何か教えてもらっただろうか?

首を傾げて、考えていると


お腹と腰に、衝撃が走り目線を下げるとアルトが耳をペタン、と

今までにない程寝かせ、尻尾の動きは完全に止まり

足の間に入れている。体全体をこれでもかというほど

震わせ、僕に抱き付きながら激しく怯えていた。


なにが? と思いながら周りを見ると

黒達が、顔を蒼白にしながら次の瞬間

全員が武器を抜いて、一歩下がり武器を構える。


その表情は怖いほど真剣で、何時も余裕で笑っている

アギトさんですら、微かに剣先を震わせている。


小さく体を震わせているのは、アギトさんだけでなく

エレノアさんも、サフィールさんやバルタスさんも同様で。


オウカさんやオウルさんは

顔色を失くしながらも、マリアさん達を背中に庇い

今、この瞬間にも魔法を発動できるように準備していた。


ヤトさんに庇われている、リオウさんも

オウルさん達に庇われている、マリアさん達も

魔法を発動する準備はできていた。


そして、クオードさんは

戦うすべを持っていないだろうに

震えて腰が抜けた見習いの前に庇うように立っていた。


恐怖で震えながらも、クオードさんの背中を見上げ

見習いが、嗚咽を必死に堪えながら涙を落としていく。


舞台の近くに居る、黒達の行動に

観客席にいる冒険者達が、僕と同じように唖然として

彼等を見ていたけれど、次の瞬間全員が、そう全員が

体を震わせながらも、ピタリと口を閉じ


顔色を失くしながら、気配を消し

自分達の命を守る行動をとった。


冒険者の行動を不思議に思いながら眺める。

冒険者志望の子供達が、口を開こうとするのを

優しく手で塞いで、声を出すのを止め

ぎゅっと、自分の胸の中へ入れて抱きしめる。


自分の体を震わせながらも、子供を守るように抱きしめ

そして、子供を守る冒険者ごと守るようにゆっくりと

位置を変える冒険者達が居た。


だがその手に、武器を握ることはしていない。

戦意が、恐怖で抑え込まれているらしい。

逆らうなと。逃げろと。本能が警鐘を鳴らしているのだろう。


怯えて全く動けない冒険者は、頭を抱えて蹲り

涙を落としながらも、声を出さずに神に祈っている。


なるほど、と水槽に視線を向け

彼等を怯えさせている存在の出現を待つ。


時間差があったのは、舞台から観客席までの

距離の問題だったのかもしれない。


僕は、威圧であるとか殺気であるとか

そういったものを、全く気にしないから気が付かなかった。

魔物の気配は感じていたけれど、さほど興味もなかったから。


精霊の大変というのは、この事だったようだ。


転移魔法陣から姿を現したのは

超大型といわれる魔物。


威圧を放ちながら、ゆっくり、ゆっくりと闘技場の

水槽の中を泳ぐ。広い広い闘技場が、狭く見えるほどのその巨体。


その姿は、二階建ての家を三軒ほど一気に

丸呑みしてしまいそうなほど巨大だ。

小さな島なら、飲み込めてしまうんじゃないだろうか?


本を読んで知ってはいたけれど

正直、ここまで巨大だとは思わなかった。

きっと、地球にいた恐竜よりはるかに大きいんだろうなと

そんな呑気な事を考えていた。


大型とは次元が違う、魔力量を保持し

中型や大型を従わせるだけの、知能を持ち合わせ

出現すれば、国を滅ぼす厄災といわれている魔物。

過去、超大型に滅ぼされ地図から消えた国は数えきれないほどある。


黒達や、オウカさん達が息をのむ音が耳に届く。

これだけの人が、闘技場に居ながらその気配はとても希薄で

僕にしがみついているアルトも、必死に自分の気配を消しながら

僕のマントの中に潜り込むように、ゆっくりと移動していた。


『超大型が姿を見せたのは

 久しぶりかな。最後は確か

 ジャックが変なエンブレムを背負って

 元黒のザルツとカルーシア達と倒したのが最後かな』


アルトの背中を、ゆっくりと撫でながら

精霊と会話を交わす。


『どうして、そこまで詳しいんですか?』


『超大型が出て来たら、浄化するのに

 力のある上位精霊が、浄化に向かうからかな』


魔物も人も沢山死ぬし、とぼそっと零す。


『貴方方が、魔物を殺せば楽なのでは?』


『襲われない限り、殺さないかな。

 魔物は……』


そこで、上位精霊が口を閉じ小さく首を横に振った。


『知るべきことではないかな』


『そうですか』


『だから、ここで超大型を見た事があるのは

 ザルツとカルーシア。そしてクオードぐらいかな』


『え? アギトさん達は超大型を見たことがない?』


『こんなのが、ほいほい出て来たら

 今頃、人間も獣人族も生きてはいなかったかな』


確かにそうかもしれない。


軽く視線を黒達に向け、なるほどと納得できた。

初見なのに、武器を抜いて構え対峙するだけの

精神力が、やっぱり黒なんだなと思った。


その震えも今はもう止まっていて

恐怖を、飲み込み。

そのまま、受け入れ。

恐怖を乗り越えた……。


そして今、恐怖を強敵と戦えるという歓喜に変えた。

頭がおかしい……。本気でそう思った。

彼等は、真の戦闘狂だ。


そんな、黒達をじっと見つめていた黒のチームもまた

笑みを浮かべて、堂々と立つその姿に精神を立て直す。


顔色は悪いけれど、それでも怯えを見せることなく

真直ぐに、超大型を睨みつけていた。


ミッシェルとロイールは家族に

セイル達は、酒肴の女性達に抱きしめられている。

クロージャを抱きしめているのが

三番隊のシルキナさんだったことに少し驚いた。



『しかし、なぜ超大型がここに?』


この魔物は、竜国近くに居る魔物のはずなのに。


『偶然、セツナが転移魔法陣を置いた辺りに

 いたんじゃないかな?』


『いたとしても、魔力の濃い場所にしか……』


精霊が、さりげなく僕から視線を逸らす。


『何かしましたか?』


『してないかな! 濡れ衣かな!

 ただ……私だけが祈っていたわけじゃないかな?』


『……』


『周りには精霊が沢山いて

 浄化するために祈ったり

 セツナの為に祈ったりしたかな?』


それは、この場所に集中して

極上の魔力が満ちているという事だ。


『セツナが、舞台に埋め込んだ

 精霊玉も、関係があるかなーって思うかな?』


色々と魔法を維持するためだったり

僕の魔力の変わりにするために

杖に精霊玉を数個嵌めて舞台に埋めてある。


『今すぐ、返してきてください!』


『無理かな!』


『できるでしょう!?』


『んー。今はもう、姿を見せてないから

 手を出すと、おかしいと思われるかな?』


『……』


僕が転移魔法で戻してもいいけれど

それでは、不安は消えないだろうな。

特に、漁業の関係者は海に出るのを

忌避するかもしれない。


姿を見せるのを待つことなく

飛ばせばよかった。


ここで、殺すしかないか……。

はぁ。やっとチェイルが退場したのに……。


もう、早く大会を終わらせたい。



肩を落としている僕に、精霊が話題を変えるように

アルトが隠れているマントへと視線を向けて

不思議そうに、口を開いた。


『アルトは、珍しく怯えているのかな』


『誰のせいですか』


今までは、大型だろうと食欲の方が勝っていたのに

超大型を目にする余裕もなく、唯々体を震わせている。

それほど、大型と超大型では強さがかけ離れている。

次元が違うと言ってもいい。


これ以上、この状態が続けば疲れ切ってしまうかな、と考え

威圧が届かないように、結界を張ろうかと考えたがやめた。


恐怖は、命を守るために必要なものだ。

アルトは、無謀なことはしないけど。

僕といることで、その恐怖心が

少し甘くなっているように感じた。


闘技場の外にも、街にも魔物の威圧が届き

恐怖が広がりつつある。恐怖を引き金に

暴動が起きるかもしれない。


ヤトさんが、動き出す気配を見せたのを

僕が先に口を開くことで、留める。


そういえば、ヤトさんは超大型を見ても

驚きはしていたけれど、震えてはいなかった。

どこかで、超大型と対峙したことがあったのだろうか?


「アルト」


アルトに語り掛けると同時に

僕の声に魔力を込め、闘技場と街中に飛ばした鳥を

使って、魔力の籠った声を流す。


恐怖を少し緩和し、僕へと意識が向くように。


僕の声に、超大型に全意識を持っていかれていた人達が

息を殺し、気配を殺しながらも僕へと意識を向けた。


静まり返った、闘技場はある意味不気味だ。


「僕は、アルトに何と教えたかな?」


「……」


「大型や超大型と出会ってしまった時

 どうすればいいと教えたかな?」


僕の腰にしがみついている

アルトがさらに力を込めている。


「アルト」


「ししょうにくっつく」


「え?」


アルトから、よくわからない言葉が返ってきた。


「し、しょうにくっついて、にげる」


「えー……」


ガタガタと震えるアルトに、視線を落として

間違ってはいないと思う。


僕の傍が一番安全なのは、言うまでもない。

僕が教えた事とは違うけれど……。


だけど……。小さな体を震わせて

必死に恐怖を訴えるアルトに

まだ12歳の少年に、守られてしかるべき子供に

正論を告げるのは、酷なことかもしれないと

脳裏をよぎったのだった。



* 高橋泥舟 『欲深き人の心と降る雪は、積もるにつれて道を失う』

  を参考にしています。

※ 八魔導師→八聖魔に変更しました。

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