第三七話 死霊術師ね
ベルカリュース。
それは魔法と特殊な能力のある、異世界。
俗にいうファンタジーな世界、人間がいて、妖精がいて、他にも様々な種族がいる。
空想の世界にしかいないと思っていた物が当たり前、それがこのベルカリュース。
無気力系男子佐藤勇気は、トラックに轢かれて死にかけていたのだが、なんの因果かこの世界に転移して来てしまった。
それも、『死なない』というチート能力を手に入れて――。
「随分歩くんだな」
「あともう少しで森は終わりよ」
勇気とリリィは二日、深い森の中を歩いていた。
太陽の光があまり届かないこの森は、鬱蒼としていて日暮れの様に暗い、こんなじめじめしたところから、とっとと外に出たい。
「異世界って言うから、もっとすげー光景期待してたんだけどなぁ、森じゃあなぁ」
「なによ、アタシの森になんか文句でもあるっていうの!」
「アタシのって、お前の森なのかよ!」
「そうよ、ここいらはアタシ達妖精族の森、マグニの森は妖精の森、よそ者が入っていい場所じゃないのよ!」
二日歩いても終わらない森、迷子になっているのでなければ、この森はかなり広いのではないだろうか。
それがこんな妖精の所有地と言うのは、信じられない。
「へぇ~ポンコツなのにな」
「ぽっポンコツ! 万物の創造神より『空間』の統治を賜りし原始の存在が一人にして、妖精族の女王で――」
「あ~もう分かったよ、なげぇんだよリリィ」
いちいち肩書きをフルで言われたらたまったもんじゃない。
勇気は呆れながら、適当に流す。
「そう言えば、お前女王って言ってるけど、他の妖精はどうしたんだよ?」
女王と言うからには、他にも妖精がいて国家として成り立っているのだろう。
しかし妖精の森を、この二日間ずっと歩いているが、妖精なんてちっとも見ていない。
「……そっそれは、みっ皆隠れてるのよ! 妖精はよそ者が嫌いなんだから!」
「へぇ……妖精は人懐っこいのかと思ってたよ」
そんなおとぎ話の様にはいかない様だ。
いい加減異世界らしい、エルフとかドワーフとかに会ってみたい物だ。
「そう言えば、聞こうと思ってたんだけどよ、あのでっけぇトカゲを倒した雷って、もしかして魔法だったりするのか?」
「そんなの当たり前じゃない、なにアンタ魔法も知らない訳?」
白い雷など妙だとは思ったし、勇気を貫いたあの光の槍ももしかすると魔法なのだろう。
「俺の世界じゃ魔法はねぇんだよ」
「魔法が無い~、何ソレ異世界ってとんでもなく低レベルな文明なのね」
なぜだろう、物凄くムカつく。
勇気は握った拳をどうにか抑える、こんなの物を知らない子供の戯言だ。
「魔法は、文明と共に成長して来たこのベルカリュースの文化の一つよ、世界の理を知り術式を組み立て、己の魔力を消費して現象を引き起こすのよ」
「……魔力?」
「魔力はこの世界の生物全てに宿ってて、大気や植物、更には無機物にもあって、このベルカリュースを形作っている大いなる力なのよ!」
「……ようは粒子みたいなもんか」
つまり魔力はガソリンで、術式が車と言う事なのだろう。
これくらいは漫画やアニメのおかげか、すんなりと順応出来た。
「魔法はその威力と難易度によって、一型から一〇型までのランクに別けられていて、高ければ高いほど消費する魔力の量が増えるの、まぁ例外はあるけど」
「へぇ~そうなのか」
この世界については無知なので、リリィの話は興味深く面白い。
彼女が話してくれる事の何もかもが新鮮で、リアクションも自然と大きくなる。
だから素直に驚いてくれるのが嬉しくて、彼女も上機嫌で話を続けた。
「更に魔法には色魔法と呼ばれる属性魔法と、補助魔法の二種類があるの! 主に攻撃で使うのが色魔法で、サポートで使うのは補助魔法ね!」
「色……魔法?」
「魔法陣の色よ、炎だったら赤って感じで属性や効果によって、色が決まっているの」
なるほどそれは覚えやすい、学校のテストより簡単に覚えられるかもしれない。
「そして、そして! その二つ以外に魔法使いでもほんの一握りしか出来ないのが、その名も『複合魔法』よ!」
「……複合、魔法?」
リリィの興奮は最高潮に達して、声を荒げて説明を始める。
「そう、文字通り複数の術式を組み合わせて一つの術式にするの、アタシが大蜥蜴を倒したのは、光と雷の複合魔法よ!」
「……へぇそれって強い魔法なのか?」
「もちろんよ! 白魔法と黒魔法は打ち消し合う性質があるけど、紫魔法を白魔法に合せる事によってその弱点を克服したのよ! しかも紫魔法は数ある色魔法に中でも高威力でで知られているの! 世界に数いる魔法使いの中でも、白魔法と紫魔法に精通した、『光の超越者』である、アタシしか出来ないんだから!」
この世界の基本はまだ分からないが、あんな大きなトカゲを一撃で倒すのだからきっと物凄い威力に違いない。
まだ全て理解した訳ではないが、もしかすると、リリィはこんなポンコツでも自ら色々な肩書を言うだけあって、強いのかもしれない。
「へぇ~リリィって、すごい奴なんだな」
だから素直にそう言ったのだが、そんな言葉が返ってくるなど思わなかったリリィはとても驚いた様子で、次第に恥ずかしそうに頬を赤くする。
「べっ、別にこれくらい普通なんだから……おっおだてたってアンタはアタシの奴隷なんだからね、自由になんかしないわよ!」
「だから奴隷になった覚えはねぇっての……」
本当に体は小さい癖に態度は数千倍も大きいのだから嫌になる。
黙っていれば可愛い妖精なのに、勇気はため息を付く。
「……そう言えば、俺もあんな風に魔法を使える様になれるのか?」
先ほどの言い様だと、勇気にも魔力が宿っている様な感じだった。
魔力あるなら、是非魔法を使ってみたい。
「まぁ出来なくはないけど、アンタには無理ね」
「なんでだよ……」
数学と物理のテストは万年一桁だったが、魔法の勉強だったら本気出す。
「言ったでしょ、魔法を使うには魔力が必要だって、その魔力は人によって保有してる量が違うの、アンタの場合は……」
リリィはそう言って勇気に右手を向けると、浅葱色の魔法陣が展開された。
「索敵魔法『調査』」
サトウ ユウキ
特殊技能 『不死』 ランク6
職種 なし
攻撃 D+ 耐久 C- 魔力 E- 耐魔 D 敏捷 D+ 幸運 D
総合技量 D
「魔力E-、こんな最低値じゃ、到底複合魔法は使えないわ、一型を数回使っただけで魔力が枯渇して、魔力切れを起こすわ」
到底魔法を勧められる魔力量ではない。
せめてB-からCくらいなければ、魔法使いには向いていない。
「へぇステータスとか見れるんだな……なんかゲームみてぇ」
「遊びじゃないわよ、こうやって相手の力量を知って弱点を突くのは大事な戦法よ!」
「へぇ~、なぁもしかしてDランクって事は、俺ってもしかして結構弱い?」
「まっ、役職で例えるなら歩兵が無難って言った所かしらね」
やはり異世界に来た所で、急に才能が開花したり、眠れる力が覚醒したりする――という展開は無い様だ。
(まぁ、そんな漫画やアニメの主人公の様なもん、めんどくさそうだからいいんだけどな)
自分はやる気のないただの男子高校生なのだ。
異世界でものらりくらりとやれれば十分である。
「でも、ステータスが全てじゃないわよ、アンタの場合、破格にもほどがある特殊技能があるじゃない」
勇気の場合、ステータスなど関係ない。
あまりにも桁外れで、ベルカリュースでも稀有なランク6の特殊技能を持っているのだ。
「アンタの場合は死なないんだから、考えるだけ無駄よ」
「そう言うもんなのか? あんますごいって実感わかねぇんだけどな~」
「この罰当り、もうっなんで万物の創造神がアンタみたいな奴に、こんな特殊技能を授けたのか全く理解出来ないわ……」
そんな事言われても、気が付いたら授けられてしまっていたのだから仕方がない。
「アンタ、こっちの世界に来る時何か考えて無かった?」
「考えるって?」
「特殊技能って言うのは、所有者の気質とかに影響されるのよ、力馬鹿みたいな奴には『剛力』とか、四六時中なんか考えている奴には『思案者』とか、感情の上がり下がりが激しい奴には『調子者』とか……でも見た所アンタは『不死』が宿る様な性格してないし」
「……まぁしてねぇな」
「そうなるともう一つ、強い思いや強い願いが神に聞き届けられた時よ、その場合本人の気質とは関係なく特殊技能が宿るわ」
「……強い、願い?」
そう言われると思い当たる節がある。
この世界に来る前、勇気はある事を強く願った。
「俺、こっちに転移する前死にかけてて、それで『死にたくない』って思ったっけ……」
「なるほど……なら納得ね、アンタの思いは天理を凌駕したのよ、神はアンタの願いを聞き届けて、アンタを『死ななく』してくれたのね」
暴走トラックに轢かれて死にかけて、まさか異世界の神様に願い事を聞いてもらえるとは、思いもしなかった。
「もしこっちの世界に来なかったら、アンタ向こうで死んでたかもね」
「こえぇ事言うなよ……」
本当に命が尽きる前に、勇気はベルカリュースにやって来た。
そして神が授けた特殊技能によって蘇生したのだ。
実際死んでも可笑しくない怪我だったので、リリィの言う通り本当に運が良い事だった。
「まぁ何にせよ、アンタはその破格の特殊技能を持ってるんだから、ランクはこの際関係ないわ」
「良いのか? 俺歩兵くらいだぞ?」
歩兵で十分なのだが、異世界なら『勇者』とか『魔法使い』とか、それくらいのレベルでなければ生きていけない気がする。
「あのね、強さって言うのはランクで決まる物じゃないのよ、力も魔力も無いけど特殊技能がとんでもなく強い奴もいれば、特殊技能は日常生活でしか使えないけど力も魔力も桁外れ剣と魔法で敵を瞬殺~~、なんて奴もいるし、まぁ気合いと根性だけで勝つ化物みたいな奴もいるわ……」
強さというのは十人十色。
ステータスはあくまでもそれぞれの力を数値化した物であって、力量の目安にはなるが特殊技能の力は繁栄されていないので、やはり正確ではない。
かといって特殊技能だけでもそれは同じ事、結局の所特殊技能も使う者次第なのである。
「だから見た目とかステータスだけで相手を判断するのは、駄目な奴のやる事よ……本当に出来る奴って言うのは、相手を外見だけで判断しないのよ……」
そう言ったリリィの顔は、いつものポンコツが無く、ちょっとだけ悲しそうにも見えた。
「……なら、俺の事も見た目で判断しないでくれよ」
「なに馬鹿な事言ってんのよ、アンタみたいな奴は外見で全部分かるわよ!」
「ひっでぇ、お前言ってる事が違うじゃねぇかよ!」
「アンタみたいなだらだらしてる、やる気なし男なんて、外見も中身もある訳ない、ペラペラな男に決まってるのよ!」
やる気なし男は許せても、ペラペラは酷すぎる。
こんなにも中身のある男は他にいないというのに。
「なんだとぉこのポンコツ妖精!」
「なっ、誰がポンコツよぉ~~、この駄目人間めぇぇぇ!」
怒ったリリィは、右手を勇気へと向け魔法を放とうとする。
別に死なないのだが――勇気はこの間トカゲに食われた時、制服のブレザーとワイシャツを失くし、今はジャージを着ている。
もうコレしか長袖が無いので、服を破かれるのは困るのだ。
とにかく服を守る為にも逃げるしかない、勇気は走るのだが――茂みの中から甲冑に身を包んだ騎士が現れた。
「――えっ?」
それはあまりにも突然で、瞬間的に騎士は剣を振り上げる。
そしてDランクの勇気は、それに反応出来なかった。
刹那、勇気は斬られた。
左肩から右脇腹を裂き、更に右手を斬り落とされた。
同時にとんでもない激痛が全身を駆け抜け、勇気は崩れる様に倒れる。
「――ごふぁっ」
口から血を吐き、傷口からは大量の血が噴水の様に溢れ出た。
肺を斬られたからなのか、吸った息がヒューヒューと出て、呼吸も出来ない。
苦しさから痙攣する勇気だが――魔法を放とうとしていたリリィは冷静だった。
「――っ人間!」
甲冑に身を包み剣を構える騎士から距離を取り、警戒する。
幾ら人間の街に近づいているとはいえども、ここはまだ森の深部である事に違いない。
こんな所に人間がいるなど――可笑しい。
「ここは妖精の森よ! アタシの領域に勝手に入り込んで、ただで済むと思ってんじゃないわよぉ!」
リリィが右手を向けると掌が眩く光輝き、それが一段と強くなった時―――光の槍が放たれた。
槍は騎士の鎧を貫通し、右肩ごと腕を吹き飛ばす。
『光の超越者』の一撃に慈悲など無く、詠唱も魔法陣も破棄した、高テクニックの三型魔法が炸裂した。
治癒魔法か回復薬ですぐさま治療しなければ、死は確実。
痛みと死の恐怖で悶え苦しむだろうと思ったのだが――。
『ギシャアアアアアアアア』
騎士は唸りながら、リリィに向かって剣を振るう。
腕を吹き飛ばしたというのに、まるで痛みを感じていない様に普通に動いている。
「なっ――」
リリィは空を飛んで攻撃を避ける。
だが、アレほどの怪我を追っていながら、人間が平然と動ける訳がない。
一体、コレはなんだというのだ――。
「くっ、これでも喰らいなさい!」
リリィが右手を向けると、紫色の魔法陣が展開される。
「紫魔法『稲妻』!」
雷が発射され、騎士を貫く。
全身を電流が駆け抜け、騎士の体を焼く。
衝撃で吹っ飛んだ騎士、出力は最高、確実に仕留めた。
「アタシをなめんじゃないわよ!」
人間の騎士程度に遅れは取らない、リリィは自信満々にそう言い放った。
『ぎっ……ギガアア』
しかし、騎士は再び起き上がった。
流石に腕が吹き飛び、雷魔法を食らっても平然と立ち上がるなど可笑しい。
リリィが驚いていると、雷で留め具が壊れた兜がずれ地面へと落下する。
そして更なる衝撃がやって来た。
その顔は、腐っていた。
眼が腐り落ち、ウジが湧き、皮膚は血の気の無い青紫色に変色していた。
誰がどう見ても、そいつは生きていない、死んでいる。
「なっ……死人!」
リリィは急いで距離を取り辺りを見渡した。
屍が一人でに動く事は無い、つまりこの騎士は何者かが動かしている。
死体を使役出来る者はただ一人――。
「……死霊術師ね」
死霊術師。
死人使い、死霊呪術師などとも呼ばれる魔法使いである。
彼等は、死体を魔力で操り土人形の様に使役すると言う。
常に屍と共に行動する彼等を、人々は恐れ、同じ魔法使いでも彼らだけはこの様に呼ばれていた。
(死霊術師が死人を動かせる距離には限界があるはず、こいつを動かしている術師は必ずこの近くにいる!)
死霊術師が死人を操れるのは眼で見える範囲くらいだ、それ以上離れると繰りが甘くなり、これほど緻密には動けなくなる。
「ここが妖精の女王である、アタシが治める森と知っての狼藉か死霊術師! 我が森に人間の屍を持ち込むなど、万死に値する!」
ここは妖精の森、例え死体であろうとも人間が入って来ていい領域ではない。
リリィは術師を探すのだが、茂った木々や草が邪魔で術師を見付けるのは至難の業。
『ウウウウウ』
『ガアアアアア』
『ギシャアアア』
しかも、更に三体の死人騎士が茂みから出て来た。
それぞれ剣や槍や弓を持ち、空を飛ぶリリィに向かって
複数の死体を操るなど、どうやら相手の死霊術師はかなりの力量を持った奴らしい。
「ちっ!」
リリィは囲まれるのを防ぐ為に上空へと飛び、真下に群がる死人共へと右手を向ける。
「紫魔法『雷霆撃破』!」
紫色の魔法陣が展開され、雷が射出される。
四型の魔法は死人共を吹き飛ばすのだが、相手は痛覚も感じないただの操り人形。
電流を喰らった所で、当たり前の様に立ち上がる。
「もうっ、めんどくさい!」
『シャアアア』
弓を持つ死人が、空を飛ぶリリィに向かって矢を放つ。
それくらい簡単に避けられるが、四体に同時に攻撃されると手こずる。
リリィは劣勢だった。
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死霊術師は、茂みの中で息を殺して、身を隠している。
まさかこんな森の中に人がいるなど思いもしなかった。
やられる前にやるしかない、そう思って人間の騎士の死体を操って、攻撃を仕掛けたのだが、妖精が一緒にいた事を見落としていた。
妖精は女王と名乗り、強力な魔法を使ってくる。
(……どうする?)
妖精に見つかったら殺されるかもしれない、だから見つかる前に倒すしかない。
(…………あっ)
視界に入ったのは、さっき殺した人間の死体。
四体では足りないなら五体で、しかも一緒にいたのなら仲間に違いない。
死体とはいえ、仲間を倒すなんて事出来る訳がない。
影は隠れながら、転がっている死体へと近寄る。
「…………」
見るとまだ少年だ、コレでどれくらい戦えるか分からないが他に方法はない。
腕を切り落としたのは失敗だった、これでは余計に弱くなってしまった。
(腕を、つなげよう)
死体を操る死霊術師にとって、欠損した腕を魔力でつなげるのは簡単な事だ、しかし余計な魔力の消費は惜しい、もっと考えるべきだった。
辺りを見渡すと、先ほど切り落とした腕が離れた所に落ちていた。
這う様に移動してそれを拾い上げると、急いで接着させようとしたのだが――。
(……?)
斬り落としたはずの腕が、ある。
左手と勘違いしたのかと思ったのだが、斬り落としたのは間違えなく右手で、人間の死体の右手は間違えなくついている。
見間違いだったのかと思ったが、ならばこれは一体誰の腕だというのだ――。
死霊術師は、この異常な事態に驚き戸惑っていた。
「――うおいっ!」
「いっ――」
その時死んだはずの少年が、死霊術師のぼろ布のフードを掴んだ。
そして起き上がると、死霊術師を見る。
「……おいおい、パンを咥えてる時に出会い頭でお姉様とぶつかるならいいけどよぉ、いきなり斬り付けられるって展開は、流石の勇気さんも嫌だわ~~」
意識がはっきりしている、言葉もちゃんと喋っている。
操られた死人ではない、彼は――生きているのだ。
「……ひぃぃっ!」
なんだか分からないが、今自分はこの生き返った少年に捕まりかけている。
嫌だ、捕まりたくない。
死霊術師は、持っていた杖を振るう。
「うおっ、あぶねぇな!」
しかし死人を操る以外何もできない、ひ弱な自分の攻撃は簡単に避けられてしまい、木製を杖を掴まれ、そのまま奪い取られてしまった。
「てっなんとなく捕まえちまったんだけど、お前ダレなんだ? さっきの騎士の仲間か?」
何一つ状況を分かっていない少年は、そう言って首を傾げる。
「なんか、RPGとかで出て来そうだな、ぼろ布羽織って顔隠すなんて……杖持ってるし、お前は黒魔術師とか黒魔法使いとかそんな感じなのか?」
何を言っているのか全く理解できない、言葉は分かるのに、話している内容がまるで分からない。
「まぁいいや、リリィに聞けば分かるだろう……」
そう言って、先ほどの妖精を探す。
だが死人四体の相手は相当大変なのか、追い詰められているらしい。
「なぁ~リリィ、こいつってさ――」
少年がそう尋ねると――。
「だあああああっもう、めんどくさいのよぉ、この死人どもぉ!」
四体の死人を相手にしていた妖精の怒りが爆発した。
死人を睨みつけると、右手を突き出し何かを唱え始める。
「雷霆は走り聖なる光は廻る、不浄な敵を討ち、浄化せん!」
薄い紫色の魔法陣、まるで紫の絵の具に白を足した様なその色は、初めて見る魔法陣の色だった。
魔法陣から溢れ出した光、その輝きはどんどん増していき、電流を帯び始める。
そして眼を開ける事さえままならなくなった。
「複合魔法『雷霆・聖光円環』」
そして――それは放たれた。
瞬間、電流を帯びた光が、周囲へと拡散した。
全方向に向かって解放された光は、さながら迫りくる壁の様だ。
四型の雷魔法と光魔法の複合魔法は、死霊術師が操っていた死人を高威力の雷で黒こげにし、光で跡形も無く消し飛ばす。
しかしそれだけではこの高威力の魔法は止まらず、木々をなぎ倒しながらこちらへ迫る。
「ひっ――」
電流はかすっただけで草木を黒こげにし、光は死霊術師の胴よりも太い木々をなぎ倒す。
そんな物を防ぐ手立てはない、ただ驚き戸惑い、そして絶望する事しか残されてはいなかった。
「あぶねぇ!」
しかし――何もかも諦めたその時、少年が死霊術師を押し倒した。
そしてまるで庇う様に、覆い被さる。
「えっ?」
どうして、そんな事をするのか分からない。
自分は一度彼を殺したのだ、それなのにどうして――。
そして、全ては光に包まれた。
「……あっ」
死霊術師が気が付くと、何かが燃えたような焦げ臭い匂いが、鼻を突く。
一体何が起こったのか、記憶が混乱していて状況を理解できない。
どうにか今地面に横になっている事は分かるので、起き上がろうとするのだが――重くて起き上がれない。
何かが自分を押しつぶしている、上半身を起こして、死霊術師は自分の上に乗っている、それを確かめた。
それは、上半身が無くなった少年の死体だった。
「ああっ――」
思い出した、たしか妖精が放った強力な魔法を、『彼』が庇ってくれたのだ。
雷によって体は焼け焦げ、あちこち黒くなった重度の火傷を負っていて、胸から上は光魔法で完璧に消し飛ばされていた。
死霊術師は少年の下から何とかはい出ると、死んでしまった彼を見る。
「……どうして」
なぜ自分を庇ったのだろうか、『人間』が自分を守ってくれるなんて考えられない。
死霊術師は、ただ少年の前で呆然とすることしか出来なかった。
だから、もう一人いた事をすっかり忘れていた――。
「ちょっとアンタねぇ、死霊術師はぁ」
「ひっ――」
そう滅茶苦茶怖い妖精の事を、忘れてしまった。
自分の体躯よりもずっと小さいはずなのに、まがまがしい殺気を放つその存在に、死霊術師は完全に圧倒される。
「よくも手間ぁ取らせやがったわねぇ……、さぁて、どうしてやろうかしらぁ~」
指を鳴らしすっかりやる気の妖精、仲間が自らが放った攻撃で死んでしまったというのに、そんな事まるで気にしていない様子だ。
「あっああ……」
なんて冷酷な妖精なのだろうか、自分も少年の様にたやすく殺されてしまうに違いない。
死霊術師が震えていると、隣に転がっていた少年の死体に変化があった。
先ほどまで胸まで無くなっていたはずなのに、首位までの背骨がある、いや――それは生えて来ているのだ。
頭蓋骨が生え始めた時には、内臓が出来て、血管は蛇の様に伸びて、筋肉がそれらを包み込んでゆく。
そして肩に肉が付いた頃には、頭蓋の中に脳があり、眼には二つの眼球がしっかりと納められていて、瞬く間に皮膚皮膚が出来て、骨も肉も内臓も包み込んで、最後には髪の毛が生えて来た。
そしてただその光景を見ている事しか出来なかった死霊術師の前で――少年は何もかも元通りに再生してしまった。
「あっああ……」
死者が蘇生するなどありえない。
それは死体を操る死霊術師が一番よく知っている事で、死体というグロテスクな物を使役する存在であっても、その光景はショッキングな物だった。
「あっ――」
そして死霊術師はそのあまりの衝撃で、失神した。
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「……っと、ちょっと起きなさいよぉ、アンタ!」
リリィが起こす声で、勇気は眼を覚ました。
「……んあっ?」
まだはっきりとしない意識で、何が起こったのかを考える。
流石に四回目となると――すぐに思い出せた。
「ああっ、そうだリリィの魔法で!」
勇気はすぐに飛び起きた。
そうだ、死人の相手をしていたリリィがブチ切れて、とんでもなく強そうな魔法を放ったのだった。
自身の体を見ると――。
「だあああっ! 服がぁぁぁぁ!」
上ジャージは胸から上が欠損していて、まるで腹巻とアームカバーの様に見える。
しかも制服のズボンはあちこち穴が開いていて、まるで尖りすぎているダメージジーンズである。
勇気はこの怒りを、犯人へと向けた――。
「リリィこのやろおおおお、服が台無しじゃねぇかぁ! もう上着半袖しかのこってねぇんだぞぉぉぉぉぉ!」
特殊技能『不死』は残念ながら服には適応されていない。
だから服を破かれると、もう本当に眼も当てられない状況になってしまう。
「べっ別に服ぐらいいいじゃないよぉ! アンタ死なないんだから!」
「死なねぇから服の心配してんだよぉ! どーすんだよぉこのまま全裸になっちまったら、嫌だからな俺、戦う度に全裸とか、響鬼か!」
「なっなによ、その辺の葉っぱで隠せばいいじゃない……」
「アダムじゃねぇんだぞ、このポンコツ!」
ランク6の特殊技能とはいえ、使用者が逐一全裸になったらたまったものではない。
この問題は早急に解決しなければならない事案だ。
「そんな事より、ほらコイツ」
そう言ってリリィが指をさしたのは、地面に倒れている死霊術師である。
勇気の再生に驚いて、まだ意識が回復しない。
「……どうすんだ?」
「とりあえずここにいた理由を聞くわ、あとなんで襲って来たのかもね」
「……殺さないでくれよ、まだ子供みたいだし」
「それは話を聞いてから考えるわ…………あっ!」
死霊術師の顔を覗き込んだリリィは、そう大きな声を出した。
一体どうしたというのだろうか、勇気も覗き込もうとした時、死霊術師は眼を覚ました。
「ん……あ……」
意識が戻った死霊術師は、身体を起こした。
その時、フードの様に被っていたぼろ布がずれて顔が露わになる。
「……あっ!」
それは、トカゲだった。
いやトカゲと言っても、目鼻立ちは人間の様で、どちらかと言えば皮膚ではなく紫の鱗というだけでほとんど人間だ。
「……蜥蜴人、ね」
「あっああっ!」
死霊術師は、急いでフードを被り顔を隠すと、うずくまって震えだしてしまった。
一体何が怖いというのだろか、びっくりはしたが、睨んだりはしていなかったのに。
「アンタが人間だからよ……」
「えっ?」
リリィは怯えている死霊術師に、問いかける。
「アンタ、このあたりの奴じゃないわね……一体どこから来た誰なの?」
死霊術師はとても怖がり、震えながら答えた。
「あっ……アステのねっネネリ」
「……アステって?」
「マグニより北、同じシャヘラザーンだけど随分遠いわ……アンタ一人で来たの?」
死霊術師のネネリは、首を横に振った。
それだけで黙ってしまう、困っているとボロ布の合間から手足が見える。
所々に斬り傷や殴られた様な跡がある、それもつい最近ついたような傷だ。
「……アンタ、人間に捕まったのね」
リリィの言葉にネネリは顔を背けた。
否定をしない所を見ると、どうやらその様だ。
「人間に捕まるって、なんか悪い事でもしたのか?」
「…………さあね、冤罪じゃないの?」
リリィはそう言って見下ろし、ネネリは黙った。
「まぁ、そこまで聞けばなんとなく分かったわ……アンタはアステからここまでさっきの人間の騎士に連れて来られて、隙を見て殺して使役してアタシ達を襲ったと、そう言う事で良い訳?」
「ちっ……ちが」
「はぁ~何が違う訳? アンタはアタシの森で妖精族の女王であるアタシを襲ったのよ、分かってんの?」
リリィはそう強い口調でネネリに詰め寄る。
体は小さくとも、その迫力はまだ幼いネネリを怖がらせるのに十分だった。
これでは話が進まない、勇気はリリィをつまむとネネリから離す。
「ちょっとぉ、なにすんのよぉ!」
「怖がってるだろう、お前はちょっとはその威圧的な態度をどうにかしろよ」
「なっ、こんな美しくて愛らしい妖精のどこが威圧的なのよぉ!」
勇気はしゃがんで、怯えているネネリに話しかける。
「なぁ、何が違うんだ?」
「……うっ」
しかしすっかり怯えてしまっているネネリは、うずくまってしまう。
男の子なのに怖がりとは困った物だ、とりあえず警戒を解きたい。
「あっ……そーだ」
勇気は何か思い出した様に、死人に斬られた時に落としたリュック取りに向かう。
そしてしばらく中身を漁ると、何かを取り出した。
「ほいっ、これやるよ」
そう言って取り出したのは、トンボ玉のストラップだった。
青色のトンボ玉は、まるで宝石の様に光っていて、それはネネリを一瞬で魅了した。
「ふぁ……綺麗」
「なにコレ……アンタ宝石なんて持ってたの!」
「ちげぇよ、ただのガラスだよ」
「ガラス! ガラスでこんなモノ作れるの?」
この時代ベルカリュースのガラスの製造技術はまだまだ未熟。
日本では普通に売っているし、これもどこかの観光地のお土産として貰ったストラップなので、別にどうでもいい。
「ほら、ネネリ」
「へっ――」
勇気は平然とネネリの鱗で覆われた手を掴むと、トンボ玉を握らせる。
それには手渡されたネネリも、それを見ていたリリィも、とても驚いていた。
「ほら、光にかざすと綺麗だぜ?」
「……ふぁ、綺麗」
光にかざしたトンボ玉を見て、ネネリはとても喜んでいた。
こんなに喜んでもらうと、かえって数百円の安物で悪いと思う。
トンボ玉のおかげで恐怖が和らいだのか、震えが止まっていて、今なら話が聞けそうだ。
「さてネネリ、違うってどういう事なんだ? 俺達に話を聞かせてくれよ」
ネネリはしばらく黙っていたが、勇気の顔を見て話し始めた。
「家に……人間が来て、怖くて逃げたけど捕まって、無理矢理人間の街に連れて行かれそうになって、近道だって騎士が言ってこの森を通ったら……妖獣が出たん、です」
「妖獣?」
「アンタを二回食った大蜥蜴みたいな奴よ、獰猛で人を襲う奴らの事」
つまりモンスターという事か、勇気はそう納得する。
「たくさん群れで来て……怖くて木のうろに隠れてたら、人間達は妖獣に襲われて死んで、それで……妖獣も森も皆怖くて、一人で泣いてたら……人が来て……」
ネネリはそう言って勇気を見た。
どうやら同じ人間の彼を見て、捕まえられると勘違いした様だ。
だからいきなり襲い掛かって来たのだろう。
「なるほど……まぁ過剰防衛だけど、状況が状況だししょーがねぇな」
「ちょっと、アンタそんな軽く流していい訳!」
特殊技能が無ければ確実に死んでいたのだ、そんな簡単に許せることではないはずなのだが――勇気は頭を掻きながら、軽い感じで話す。
「だってこんな薄暗い森で一人なんて、男の子とはいえ怖すぎるだろう、それにあのでっけぇトカゲみてぇな奴もいるんだろう? んなもん俺だってこえーよ、多分発狂とかする、それに俺死なないし、別にいーんじゃねぇの?」
「なっ……」
不死故か、それとも元来の性格なのか、勇気は良く言えばおおらか、悪く言えば何事もやる気が無いように見受ける。
死なないにしても斬られたのだから、もっと怒ればよいというのに――。
「んで、リリィはこの誘拐の被害者であるネネリをどうすんだ?」
「そっそれは……」
リリィが見下ろすと、彼女はすっかり怯えてまた震え出してしまった。
まだ子供だし、話を聞く限り襲った状況も情状酌量の余地がないという訳でもない。
それにそんな彼女を殺したら、まるでリリィが悪者の様だ、それは嫌だ。
「……分かったわよ、森に入ったのも攻撃して来たのも許すわ」
「おっ、流石は支配者で女王で超越者のリリィ、懐がふか~い」
拍手をして称える勇気を、リリィは不服そうに睨みつける。
「でも一つだけ答えて、アンタが見た妖獣の群れは、どの方角から来たの?」
「えっ……えっとぉ、太陽が沈んだから……西、です」
「……やっぱり、ヴェルハルガルドね」
「ヴェっ、ヴェルハ……? なっなんだソレ?」
勇気が首を傾げると、リリィは少し真剣な表情で答えた。
「ヴェルハルガルドは国よ、シャヘラザーンの隣で、今この二国家は戦争をしてるのよ」
「せっ戦争……物騒だな」
「戦況はシャヘラザーンの圧倒的有利らしいけど、正直疑わしいわ、なんたって軍を率いるのは、魔王だって噂だから」
「まっ魔王……また随分定番な奴が出て来たなぁ」
異世界だし、いても不思議ではないだろうしいた方が良い。
流石は異世界だ、テンプレはしっかりと守ってくれている。
「このマグニはちょうど国境で、妖獣がヴェルハルガルドから逃げて来てるらしいのよ」
「モンスターがか、なんで?」
「分からないわよ……、戦争をしてる所は何処も不安定だから妖獣の動きも予測できない、でもこんな風に逃げて来るっていうのは、アタシも初めての経験だわ」
国家間の戦争と言うのは、自然に悪影響を及ぼすもの。
妖獣だって自然の一部、戦争で身の危険を感じて大移動をしても可笑しくないのだが、初めての事で、驚いていたのだ。
(魔王がいるなら……勇者もいるのかなぁ?)
この二つはセットメニューだ、そろっていなければいけない。
ヴェルハルガルドに魔王がいるなら、シャヘラザーンに勇者がいるのだろう。
(ロト的な勇者かな? 天空的な勇者かな? 何はともあれ会えるならあってみたいな)
「ちょっと聞いてんの、異邦人!」
返事をしない勇気に向かって、リリィは叫んだ。
今は空想世界に思いをふけってる場合では無かった、とりあえず不機嫌なリリィを見る。
「全くもうっ、ぼさっとしてないでさっさと行くわよ」
「えっ、あっああ」
勇気は立ち上がって辺りを見ると、リリィが放った魔法のせいで十数メートルの木々が黒こげになってなぎ倒されている。
「……ここお前の森なんだよな? 家壊すなよ」
「うっうっさいわね! ちょっと力んじゃったんだからしょうがないでしょう!」
「ホント、お前ポンコツだなぁ~」
勇気はリュックを背負うと、リリィと共に街に向かって歩き出したのだが――その後をなぜかネネリもついて来た。
「ちょっと……危ないから早く自分の家に帰りなさい!」
「うっ……」
ネネリはリリィの言葉から逃げる様に、勇気の後ろに隠れてしまった。
怖がっていたのに、勇気のズボンにしがみついて、トカゲだけどなんだかコアラの様だ。
「……アンタどーすんのよ、完璧になつかれてるじゃない」
「え~俺なの?」
人間の街に行こうとしているのだから、ネネリを連れて行ける訳がない。
リリィは深いため息を付くと詰め寄る。
「ほら、さっさと帰れって言ってるでしょう」
「……ひっ」
「帰りなさい……ほら早く!」
リリィの顔がよほど怖かったのか、ネネリは彼女から逃げ様と背を向けて走り出す。
しかしネネリが頭からかぶっていたボロ布を勇気が踏みつけていた様で、ネネリは引っ張られてそのままスッ転んでしまった。
「ああっ! わっわりぃ」
「もう……何やってんのよぉ」
勇気は急いでネネリを立ち上がらせようとするのだが――掴んでいたのはぼろ布だけで、布だけ剥ぎ取ってしまった。
「うえぇぇぇっ!」
勇気は驚いて声を上げた、ぼろ布を取られたネネリは下に何も着ておらず、まさかの全裸だった。
しかし、なによりも驚いたのは別の事――。
ネネリは女の子だった。
腹の鱗は色が薄く、ほんのりと胸部は膨らんでいて、何よりもあるべきものがない。
いや、もしかするとトカゲの様に、体内にあるのかもしれない、勇気は一縷の望みを賭ける。
「えっ……いやっえっ? おっ、女なのか?」
勇気の問いに、ネネリは女性として隠すべき所を両手で覆い、小さく頷いて答えた。
その衝撃はあまりにも大きすぎた、なんと言う展開なのだろうか、なぜ名前で気が付かなかったのだろう、いやそもそも蜥蜴人を初めて見たのだから、性別を判断しろというのは難しいし、あんなボロ布では余計に判別できない。
そうコレは事故だ、悪意など一欠けらも無い、ただの事故、防ぎようのない事故だ。
雷に打たれた様な衝撃に襲われた勇気は、どうにかその衝撃から立ち直ろうと、必死に心の整理をしていた。
しかし――その真後ろで、本物の雷鳴が轟く。
「あっアンタぁぁ、なにやってんのよぉぉ」
ネネリを脅かした時の何十倍も怖い顔をしている、般若とか鬼とかそんな感じの顔だ。
だが顔よりも恐ろしいのは今すぐにでも放たれそうな、雷魔法の方。
なぜか――裸を見られたネネリではなく、リリィの怒りの一撃が炸裂する。
「このど変態いいいいいいいいいいいいいいっ!」
そして、妖精の森に勇気の悲鳴が響き渡ったのだった。




