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地味女子ですが、異世界来ちゃいました!  作者: フランスパン
アルバート編
34/100

第三一話 オレ様サイッコォォォ!

ようやく出せたギルベルトの特殊技能。

いずれ全特殊技能をまとめ……る!



 君子は、連れて行かれるまま廊下を歩いていた。

 食堂でもお風呂でもない、一体どこに向かっているのだろう。

 君子が不安に思っていると、広い空間に出た。

 そこは三階まで吹き抜けで、高価なガラスをふんだんに使った巨大なステンドグラスが印象的な、真っ赤な絨毯が敷かれた物凄く広い玉座の間。

 豪華な装飾が施された玉座は、高い階段を上がった先にある。

「ふぁっ……」

 連れて来られたのはその玉座の真後ろ、その広い部屋全体が見下ろせる特等席。

 辺りを見渡す君子の視界に、見覚えのある人影。

 短い金髪に黒い二本の角、一四〇センチある剣を携えた、紅の魔人――。

 マグニから来てくれたんだ、迎えに来てくれた。

 君子は嬉しそうに、彼の名を呼ぶ。




************************************************************





「…………」

 ギルベルトは異様なほど静かにしている。

 ヴィルムとアンネと共に、玉座の間で待っていると、アルバートが貴族の女の手を引いてやって来た。

 この期に及んで女遊びなど、ムカつく事この上無いのだが、その女はどこかで見た事がある様な気がする、一体どこで見たのだろう、記憶を掘り起こしてみる。

「――ギルっ!」

 その声は迎えに来た少女の物、聞き間違えなどではない。

 まさかあの貴族の令嬢に見える女は――。




「きっ……キーコ?」




 いつものセーラー服ではなく上質なドレスを着て、いつもおさげにしていた黒髪は巻き髪で、何よりも眼鏡が無い。

 そこにはいつもの君子の面影は無く、どこかの貴族の令嬢と見紛うほどの可愛らしい彼女がいた。

「なっなっななな、なんだとおおおおおおおおっ!」

 大人しくしていたギルベルトが、初めてシューデンベル城で大声を上げた。

 眼鏡をかけていないたれ眼の君子、それは自分だけが知っているはずの可愛い彼女だったのに――それが、アルバートの手に引かれてやって来た。

 しかも物凄くお似合いで――ギルベルトの感情は一気に燃え上がる。

「アルバートぉ! てめぇ俺の所有物に、かっ勝手にぃめっ眼鏡おぉ!」

 もはや言語になっているかさえ怪しい、それぐらい動揺していた。

「ギルっ! ギルぅ!」

 君子は駆け寄ろうとするのだが、アルバートが手を握っていて動けない。

 それどころか、君子を抱き寄せてしっかりとホールドする。

「ギルっ、ギルっ、ギルぅ!」

 それでも君子はギルベルトの名を呼び続け、こちらに向かって来ようとしている。

 身なりは変わってしまっても、やはり君子は君子だ。

 ギルベルトは感情を静め、冷静さを取り戻していった。

「……キーコを返せ、アルバート」

 憎いはずのアルバートを前にしても激高していない、二週間前までは無かった事だ。

 ギルベルトを見下ろすと、アルバートは静かに口を開く。

「遅かったな、諦めたかと思ったぞ」

「キーコを返せ」

「…………ふっ、なら奪い取って見せろ」

 アルバートは玉座に座ると、膝の上に君子を乗せ、腰にしっかりと手を回して逃げられない様にする。

 そして指を鳴らすと、綺麗になったフェルクスと綺麗にしたルールアがやって来た。

「アルバート様ぁ、呼んだかぁ~」

「……フェルクス、あの馬鹿の相手をしろ」

 ギルベルトと戦うのはアルバートではなく、補佐官である軍人フェルクス。

 その命令を聞いてフェルクスはにまりと笑うと、指を鳴らす。

「オレ様がやるって事は、ぶっ殺しちまってもいいんだろぉ~、あるばぁぁとさまぁ~」

「…………ああ、思い切りやれ」

「ひゃっほぉおいっ、ぶっ殺してやるぜぇ!」

 嬉しそうに階段を下りて行き、ギルベルトを余裕の表情で見る。

「私が相手をするまでもない、フェルクスを倒せたら、私と戦う許可をくれてやろう」

「……このクソ野郎をぶっ倒したら、そこから引きずり降ろしてやるからな」

「ギルっ、ギルぅっ!」

「キーコ」

 アルバートの手を剥がそうと暴れる君子にギルベルトは、真っ直ぐな眼差しと共に言葉を投げる。

「ぜってぇ勝つから、待ってろ」

 力強く自信に満ちた言葉は、君子の心にしっかりと響いた。

 暴れるのを止めて、大人しくアルバートの膝に座る。

「うん……」

「…………」

 ギルベルトを真っ直ぐ見る君子を、アルバートは黙って見詰めていた。





 フェルクスとギルベルトは、睨みあっていた。

「うお~いバァカァ、このオレ様が相手してやるぜぇ」

「…………」

「汚れも落としてすっきりしたぜぇ、今のオレ様はサイッコーだぁ!」

「…………」

 フェルクスは腰のホルスターから、ナックルダスターを取り出す。

 いくつもの突起がある凶器を、両手にしっかりと両手に嵌める。

 ギルベルトもそれに応じる様に、グラムを引き抜く。

 両者それぞれ拳と剣を構え、睨みあった。

 その時間はほんの一瞬だったはずなのに、あまりにも張り詰めた空気のせいで、長い時間が過ぎた様に感じた。

「ひゃっほぉおおおおおおいっ!」

 先にその空気を破ったのはフェルクス。

 床を蹴り一気に間合いを詰めると、拳を放つ。

 速く重いその一撃は、まるでハンマーにでも殴られた様な衝撃を生む。

「――っ!」

 グラムでそれを受け止めるが――衝撃は体を駆け抜ける。

 ギルベルトは後方に大きく吹き飛ばされた。

 立て直す隙なんて与えさせない、フェルクスは更に間合いを詰めると追撃する。

「どっりゃああああっ!」

「らあっ!」

 ギルベルトは吹き飛ばされながらも、迫りくるフェルクスに向かってグラムを振るった。

 しかし、しっかりと踏み込めなかった一撃に迎撃する力はない。

 フェルクスは右手で斬撃を防ぐと、無防備の顔面へと左手を叩き込む。

「――ぐっ」

 ギルベルトは顔を傾け、フェルクスの渾身のパンチを避けた。

 金髪の髪の毛が数本はらはらと落ちていく。

 拳のスピードはそのまま威力へと反映される、フェルクスのパンチのはプロボクサーを軽く超える時速七〇キロメートル。

 こんなものを喰らえば、Aランカーのギルベルトでも怪我を負う。

 懐に入られれば圧倒的にこちらが不利、一旦彼と距離を取る他ない。

「るあっ!」

 ギルベルトはフェルグスの脇腹を蹴る。

 パンチを放ちがら空きだった腹部、防ぐ間もなくフェルクスは蹴り飛ばされた。

「ごわっ!」

 足で踏ん張って、数メートル先でどうにか止まったフェルクス。

 両者共に力量は互角、勝負は過熱を極めていた。

「――っ!」

 しかしギルベルトは異変に気が付き、自らの足を見た。

 さっきフェルグスを蹴り飛ばした右足、そのブーツから煙が出ていて、熱い。

 まるで足だけ暖炉にでも突っ込んだ様な、そんな熱量だ。

「…………へっ、へへっ」

 フェルクスが不敵に笑う。

 すると彼の体からも煙が上がって、周りの景色が揺らいで見える。

 まるで空間がねじ曲がっている様な、そんな感じだった。

「来た来たぁ……温まって来たぁぁ」

 今は冬、それなのに春の様な暖かさだ。

 この玉座の間には暖房設備はない、それなのに部屋全体の温度がどんどん上昇している。

 真夏の様な温度の熱風が吹く、真冬のシューデンベル領では絶対にありえない現象だ。

「今のオレ様は、もう誰にも止められねぇぇぇぇぇんだぜぇぇぇぇ!」

 自信満々に、高らかと叫んだその瞬間――。




 フェルクスの体が発火した。




 熱を帯びたその火炎は本当に燃えている。

 手品などではない、本当にフェルクスの体から炎が出て、彼を燃やしていた。

 それなのに顔色一つ変えず、不敵に笑う。

「ウォーミングアップは終わりだぁ」




************************************************************





 炎の魔人。

 炎人種(フレアノイド)と呼ばれていた彼らが、魔人に併合されたのは一八〇〇年ほど前の事。

 彼らは氷の魔人と対になる存在であり、炎と熱を自在に操る事が出来る。

 二つの種族は、テンションによって力を引き出す事が出来る。

 氷の魔人であるヴィルムが冷気を使う時に感情を静める、逆に炎の魔人は感情を高ぶらせるのだ。

 身体の奥底、魂の炎を燃焼させ、業火を生み出す彼らは、一度テンションが上がってしまうと高温の炎を纏いながら、周囲にあるありとあらゆる物を燃やしつくし、焼け野原にすると言う。

 フェルクスはそんな炎の魔人の中でも、数百度という劫火を纏う、数少ない逸材であった。

「……あっ熱い」

「アンネ、私の後ろに下がっていなさい」

 熱気にやられたアンネを、ヴィルムは自らの後ろにやり庇う。

 先ほどから冷気を出して周囲の温度を調整しているのだが、それでもアンネの額からは玉のような汗がにじみ出て来る。

 コレだけ広い玉座の間の温度を、たった一人の炎の魔人がこれほどまで変えるというののは、かなりすごい事だ。

 それだけフェルクスの炎は高温であるという事だった。

「あんな物凄く燃えてるのに……王子は勝てるんですか?」

 近づく事さえ困難な熱気、ギルベルトの武器は魔剣グラムだけだ、近づかなければ刃を振るう事が出来ない。

 あまりにも分が悪い勝負だった。

(フェルクスは強い、騒がしさは難点だがアルバート様の補佐官に選ばれだけあって、魔王候補の補佐官に相応しい腕を持つ……)

 ヴィルムは、右手をフェルクスとギルベルトへと向けると、それぞれのステータスを見る。





 ギルベルト=ヴィンツェンツ・ヴェルハルガルド

 特殊技能『覇者気質』 ランク4

 職業 魔王子

 攻撃 A+ 耐久 A 魔力 B 耐魔 B- 敏捷 A 幸運 A+

 総合技量 A





 フェルクス・ローリィ

 特殊技能『調子者』 ランク3

 職業 軍人

 攻撃 A 耐久 A- 魔力 E 耐魔 D+ 敏捷 B 幸運 A-

 総合技量 A




(ステータスならばギルベルト様の方が上、しかしフェルクスには炎と熱がある、勝負は五分と五分)

 ヴィルムは分析しながら眉を顰める。

 今はこの戦いを、見守るしかない。

(ギルベルト様……どう戦いますか……)




************************************************************





「ひゃっほ~い、盛り上がって来たぜぇぇぇ」

 メラメラと燃えているフェルグスは、大声を出しながらシャドーボクシングをしている。

 動けば動くほど部屋全体の温度が上がり、更にフェルクスは騒ぐ。

 炎でテンションが上がり、テンションで更に炎の温度が上がる。

 高温の炎を身に纏ったフェルクスは、ギルベルトへと襲い掛かった。

「ひゃあああああああほおおおおおおいっ!」

「――くっ!」

 迫りくる熱風が熱く、火に当たっていないのに燃えている様に痛い。

 あまり接近されると熱風だけで火傷を負う、ギルベルトはとっさの判断で逃げる。

「逃がさねぇっぜっ!」

 フェルクスがそれを追うがスピードはギルベルトの方が上、追いつけない。

「これでも喰らえぇっ!」

 フェルクスは燃える右腕を放つと、炎がまるで砲弾の様に飛んで来た。

 ギルベルトは身を翻してそれを避けるのだが――炎は床に着弾すると同時に爆発する。

「ぐっ!」

 熱風が背後からも襲い掛かる、フェルクスの熱と爆発の熱が、ギルベルトの体力を確実に奪っていく。

 これはフェルクスの温度が上がり切る前に、彼を仕留めなければ、ここにいる全員が焼け死んでしまうだろう。

「おらおらぁ~~、逃げんな腰抜けぇぇぇぇ!」

 フェルクスは炎を放ちながらギルベルトを追いかける。

 炎によって温度が上がったこの部屋では、炎の魔人である彼の方が圧倒的に有利、いつの間にか壁際へと追い込まれてしまった。

「へっへぇ~、隅で炭にしてやるぜぇ!」

「…………つまんねぇぞ、馬鹿」

「あんだとぉこの野郎ぉぉぉ」

 個人的に頭が良さそうな事を言ったつもりのフェルクスは、馬鹿にされた事に対して怒り、より一層炎が燃え上がる。

 これ以上接近されれば、ギルベルトが焼け死んでしまうのだが、逃げ場がない。

「馬鹿って言う方が馬鹿なんだからなぁぁぁ」

 フェルクスは右腕に炎を集約して、それを放とうと腕を引く。

 彼がそれを放てば、確実にギルベルトに当たる、例え避けられたとしても熱風で大やけどを負うだろう、それくらい二人の距離は無い。

 最早ギルベルトの敗北は決まったも同然。

 ヴィルムもアンネも、ルールアもファニアも、アルバートも君子もスラりんも、そしてフェルクスも、誰もがそう確信した。

 その時――。


 ばっと音を立てて絨毯が捲り上がった。


 玉座の間には、真っ赤な絨毯が敷き詰められていた。

 それをギルベルトが足で蹴り上げたのだ、しかもそれはただの絨毯ではない、分厚く物凄くお高い絨毯だ。

「なっなんだぁぁぁっ!」

 炎を放とうとした瞬間、突然視界が真っ赤になり驚き戸惑うフェルクス。

 あまりに突然の事で、どう対応すればいいのか分からなかった、故に彼に隙が生まれた。

 その一瞬を、ギルベルトは見逃しはしなかった。

「――――だぁっ!」

 めくりあがった絨毯に身を隠すと、そのまま燃え盛るフェルクスへと特攻する。

 分厚い絨毯が、熱風を防ぐ盾になったのだ。

 それは一瞬の事、脆い盾が燃える前に、ギルベルトは絨毯ごと彼を蹴った。

「うごぉっ!」

 絨毯が目隠しになって見えなかったフェルクスは、避ける事など出来ず腹を蹴り飛ばされ、後方へと倒れる。

 しかしその時、彼の右腕には今放つつもりだった炎。

 後方に倒れたその衝撃で、うっかり天井に向かって放ってしまった。

 炎の砲弾は着弾と同時に爆発して、衝撃が部屋全体へと伝わり、そして――。




 爆風でステンドグラスが割れた。




 明り取りとして取り付けてあった、ステンドグラスの全長は一〇メートルを超える。

 それが爆風で細かく割れて、落下して来た。

 そう、頭上にあったステンドグラスが、まるで雨の様に降り注ぐ。

「わっわっわあっ!」

 日本ならば割れても鋭くならないガラス、車のフロントガラスの様な物があるが、ここは異世界はベルカリュース、ガラスは製造が難しく未だ高価、そんな世界のガラスはその辺の刃物よりも圧倒的に切れ味が良い。

 言うならば、大量のナイフが地上三階分の高さから降り注いでくるのと同意であるのだ。

 危険を察知したヴィルムは、アンネを庇いながら急いで安全圏へと逃げる。

 そしてギルベルトも、蹴った後すぐにその場から逃げていた。

 つまり、ステンドグラスのシャワーの下にいるのは、フェルクスただ一人。

 起き上がる暇など無く、彼目掛けて死の雨が降り注ぐ。

 フェルクスはただ、悲鳴を上げる事しか出来なかった。

「ぎゃわあああああああああああああああああああああ――――――っ!」





 埃が煙の様に辺りに立ち込めている。

 ステンドグラスに溜まった土埃や天井の埃が、モクモクと辺りを包み隠す。

「……あっありがとう御座います、ヴィルムさん」

「いえ……、それにしてもギルベルト様は無茶をする」

 気が付くのが遅かったら今頃アンネもヴィルムも、どうなっていた事か。

 元から安全圏にいたルールアも君子も、眼を丸くして驚いている様子だ。

 正直、決闘と言うより事故か災害クラスだ。

(しかし近づけないならば、近づかずに攻撃すればいい……突拍子もない話だが、実にギルベルト様らしい)

 ステンドグラスが割れ、外気が流れ込み真夏の様な温度だった室内が冷やされる。

 風が埃を流し、徐々状況が見えて来た。

 フェルクスは頑丈だが、あのガラスのシャワーを浴びて無事とはとても思えない、アンネと君子はぐしょぐしょになった彼を想像して眼を背ける。


「ふぁ~~びっくりしたぁ」


 しかし――そこにいたのは全くの無傷のフェルクスだった。

 床に倒れたままで、ガラスを回避した訳ではない。

 そもそもあの量のガラスを、全て避ける事は不可能だろう。

 倒れているフェルクスを避ける様に、ガラスは床に突き刺さっていて、まるでガラスに意思があって自ら避けた様に、たった一つも当たっていない。

「ちょっとびっくりしたけど、今のオレ様サイッコーだぜぇ!」

 立ち上がり、服に付いた埃を払いのけると、フェルクスは不敵に笑う。

「そんな、なんでガラスが当たってないんですか!」

「……フェルクスの強みはあの灼熱の炎以外にもう一つあるんですよ」

 アンネの問いにヴィルムが説明をする。

 力とは何も関係ない、その強さを――。

「フェルクスは、今物凄く運がいいんですよ」

 



 特殊技能(スキル)『調子者』。

 ランク3のこの特殊技能(スキル)は、魔力を必要とせず、常にその効果が発揮される常用型の特殊技能(スキル)だ。

 その効果は――運気の増減の幅が大きくなる、という事。

 運気は幸運のステータスに分類され、第六感の様な勘や、宝くじが当たる様な運の良さに直結しており、高ければ高いほど運が良く、低ければ低いほど運が悪い。

 そしてこの『調子者』は、普段は緩やかに変わるその運気を、上がる時は猛烈に上がり、下がる時は滅茶苦茶下げる、特殊技能(スキル)だ。

 コレは所有者の意思で上げ下げが出来ない、博打の様な特殊技能(スキル)である。

「フェルクスの幸運はA-、『調子者』の効果で今の彼は幸運のステータスで図れないほど、運が良い状態です」

「えっじゃっじゃあ、あの人はその運の良さだけで、あのガラスを全部避けたんですか」

「避けたというより、当たらなかったというのが正しいです」

 偶然当たらなかった、たまたま全部外れた。

 隕石がピンポイントに落ちて来る確率よりも低い事を引き起こすのが、このサイッコーに運の良い状態のフェルクスである。

「……こうなると、ますますまずいですね」

 ヴィルムの呟きにアンネは首を傾げる。

「フェルクス最大の弱点を、ギルベルト様が気が付けば……あるいは……」

「弱点……あんな強くて滅茶苦茶運が良い人に、弱点なんかあるんですか!」

「……ええ、しかし」

 ヴィルムは玉座に座るアルバートを見る。

 君子を抱きながら、勝負を黙って見つめていた。

 弱点を突けばギルベルトは絶対に勝てる、それを伝えたいがアルバートはそれを許さないだろう。

「ギルベルト様……」

 外野は黙って傍観するしかなかった。

 立ち上がったフェルクスは、軽くストレッチをして体に不調が無いかを確かめると、笑みを浮かべながらギルベルトを見る。

「今のオレ様はサイッコーなんだ、おめぇに負ける訳がねぇ! おめぇに勝ってヴィルムをぶっ倒して、オレ様がいかにサイッコーかをアルバート様に見てもらうんだ!」

 フェルクスは再び体温が上昇して、体から煙が上がり始める。

 一旦は大人しくなった炎が、再び燃え上がる前に、フェルクスを倒さなければまたあの熱波によって近づけなくなる。

「ちっ!」

 ギルベルトは一か八か、フェルクスへとグラムを振るう。

 熱いが近づけない熱量ではない、倒すなら今しかない。

「――うおっ!」

 スピードはギルベルトの方が上、最大速度で瞬時に間合いを詰める。

 完璧に油断していたフェルクスは、突然眼前まで間合いを詰めたギルベルトに驚き、迎撃する事が出来ない。

「――――っ!」

 フェルクスの胴体を断ち斬る為に、右から左へ真一文字にグラムを振るう。

 その眼は到底人の物とは思えないほど、恐ろしかった。

「いっいいいっ」

 軍人であるフェルクスさえも、一瞬たじろぐ。

 ただ生物の反射として迫りくる者から逃れる為、後ろに下がろうと半歩足を動かした――その時、絨毯がずれそのまま後方に転んだ。

 仰向けに倒れる彼の顔すれすれを、ギルベルトが振るうグラムが通過していく。

「なっ――」

 たまたま絨毯に足を取られて転んで、それで幸運にも攻撃を避けられた。

 またも高すぎる幸運が、フェルクスの身を守る。

「――――っ!」

 当てるつもりで放った攻撃を、あまりにも予想しなかった方法で避けられてしまった。

 フェルクスは両足に力を込め、どうにか転倒せずに済んだ。

 だから右の拳をしっかりと握ると、全身の力をそこに込めて、放つ。

「どりゃああああああああああっ!」

 がら空きだったギルベルトのボディに、フェルクスは一撃を放った。

 グラムでガードする事が出来なかったので、腹部に直撃したその衝撃はそのまま背中へと突き抜けて行く。

「――ぐはっ」

 胃液が逆流し、意識が遠のく。

 さっきまでの彼の拳とは明らかに違う、最強の一撃を受けたギルベルトは、なす術もなくそのまま吹っ飛ばされる。

「まずい、クリティカルヒットだ!」

 ヴィルムもその一撃には声を荒げた。

 フェルクスの高すぎる幸運は、攻撃の時にもその力を発揮する。

 生物には弱点つまり急所がある、そこを突かれると通常の数倍のダメージを負う。

 もちろん頭や心臓もそうなのだが、そう言う重要器官はガードが固く狙いにくい、そしてそれ以外の急所を突くにはそれなりの鍛錬が必要で、簡単に出来る事では無い。

 しかし高すぎる幸運は、ただ適当に放った拳さえもその急所を突かせてくれる。

 頑丈が獣人ブルスを一撃で倒したのも、あの攻撃が急所を見事に突いていたからだ。

「まだまだぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 フェルクスは更に追い討ちをかける為、吹っ飛んだギルベルトへと走る。

 そして両拳を引くと、それを交互に放つ。

「どりゃどりゃどりゃどりゃどりゃどりゃどりゃああああああああああっ!」

 右、左、右、左、交互に高速のパンチを撃った、一発一発が速く重い。

 衝撃はギルベルトの体を突き抜け、そのまま床を砕く。

 しかしそれでもまだ攻撃は終わらない、高く飛び上がると、フェルクスは全身の熱と炎を引き出し両手へと集約する。

 光り輝くその姿は、まるで太陽を彷彿とさせる。

「骨も残さず燃やしてやるぜぇ!」

 連打を受け、ピクリとも動けないギルベルトに向かって、フェルクスは容赦なくその炎を放った。




「『超最強火炎弾(フェルクススペシャルバーニングショット)』!」




 瞬間、炎が大きな音を立てて爆発し、大広間全体を揺らした。

 熱風が部屋中に拡散し、敷かれていた絨毯や柱などを燃やし尽くす。

 ネーミングはとにかく、一個人が放った技とは思えないほどの威力だった。

 高温の熱風が、何もかも消し炭に変え、辺りには黒々とした煙が立ち込めている。

「…………へへっ!」

 フェルクスは、床に降り立つとその光景を見て笑う。

 そして何もかもを破壊つくした自分の技、そしてそれを放った自分へを称える為に、高らかに叫んだ――。

「いえええええええいっ、オレ様サイッコオオオオオオオオオオオ!」





************************************************************





「うっうそ……そんな」

 君子はその光景を見て、ただただ唖然とする事しか出来なかった。

 ギルベルトが、あんなに強かったギルベルトがやられてしまうなんて――。

 恐怖で鼓動が速くなり、不安で胸が押し潰されそうだ。

「ぎっギル――」

 まだ死んだとは決まっていない、生きているはずだ。

 ギルベルトが死ぬなんてありえない、君子は走り出す。

「行くな」

 しかしアルバートが、手を掴んで彼女を止める。

 腰に手を回し、しっかりと自分の膝の上に抑えつけた。

「行った所でお前が怪我をするだけだ」

「でっでも、離して下さい! 離して、ギルが、ギルがぁ!」

「あの馬鹿は、補佐官に負ける程度の力量だ……コレでお前も分かっただろう、あの男はお前に相応しくない」

 アルバートの言葉など耳に入らない、ただ怖くて、悲しくて、涙が勝手に出て来た。

「ギル……、ギルぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~」

 必死で叫んだ、傍に駆け寄る事も出来ず、無事を確認する事も出来ない。

もう喉を枯らせるくらい名を呼ぶ事しか、君子には出来なかった。



「泣くな、キーコ!」



 何よりも良く響く声だった。

 そして何よりも君子に届く声だった。

「あっ……」

 黒煙が風に流されて、徐々に晴れて行く。

 そして皆の眼前に現れたのは――全てを斬り裂く漆黒の刃。



 そこにはグラムを構えたギルベルトが立っていた。



 アレだけの攻撃を受けたというのに、重症の怪我は追っていない。

 どれもかすり傷程度の物で、重度の損傷と言うのは裾が燃えてしまった赤いコートくらいだ。

「――ギルぅ!」

 無事な姿を見て、君子は歓喜の表情を浮かべる。

 ギルベルトはグラムに付いた煤を振り払うと、目の前のフェルクスを見た。

「なっなんで……なんで生きてやがんだてめぇ!」

 クリティカルヒットしたパンチに本気の連打、更にフェルクスの最強の技を喰らったにもかかわらず、生きていられるなんてあり得ない。

 戸惑うフェルクスへ、ギルベルトは言い放つ。

「おめぇ、よえーンだよ」

「なっ!」

 炎の魔人でありAランクの軍人であり、次期魔王候補であるアルバートの補佐官であるフェルクスに弱い――、そう言った。

 軍人としてのプライドに泥を塗られ、フェルクスは怒る。

「オレ様のどこがよえ―ってんだよぉぉぉぉ!」

 騒ぐフェルクス、頭からまるで火山でも噴火した様な噴煙が出て、渾身の一撃を放とうと殴りかかった。

 しかしギルベルトは動じず、グラムを構えると声を張り上げた。




「がああああああああああああああああああああああああああああああああああ――っ」




 それは最早人の出せる物ではない。

 化物の唸り声、騒がしいフェルクスの声もかき消し、城中へと響き渡る。

 その場にいる全ての者の体の芯を揺さぶる様な――そんな声。

「……なっああ……なんだよ、きゅ急におっきな声出しやがってぇ!」

 吃驚するだろうと抗議すると、拳を構え直し今度は炎を纏いながら殴りかかる。

 今度は絶対に殺す、手加減など一切なく拳を放つ。

 がしかし――、その一撃はグラムによって軽々と防がれてしまった。

「――んなっ」

 例えグラムで防がれても、ギルベルトを吹っ飛ばしていたはずなのに、なぜかそれが出来ない。

 しかも高温の炎を纏っているのに、ちっとも熱がるそぶりがない、さっきは熱から逃げ回っていたと言うのに――。

「なっなんだよ……なんで燃えねーんだよ、なんでぶっとばねーんだよぉぉぉ!」

 一体何が起こっているのか解らない、ギルベルトがなぜこんなにも強くなったのか理由が解らない。

 戸惑うフェルクス、彼へ口を開いたのはギルベルトではなく憎きヴィルムだった。

「ギルベルト様は、貴方の弱点に気付かれたんですよ」

「じゃっ弱点? ふっふざけるんじゃねーぞぉ、オレ様に弱点なんかねぇ!」

 声を荒げるフェルクス、しかしヴィルムは眉ひとつ動かさない。

 すると隣にいたアンネが、ある事に気が付いた。

「……あっアレ、あんまり熱くない」

 フェルクスが熱と炎を出すと真夏の様に熱くてたまらなかったのに、今はほどよい温度で、まるでちょうど良い温度に保たれた寝室の様な心地よさだ。

 だが、彼は変わらず炎を出している、それなのになぜ温度が上がらないのだ。

「気が付いていない様ですが今の貴方の炎は、せいぜい蝋燭の火と言った所です」

「そっそんな訳ねぇだろう! おっオレ様はサイッコーなんだぞぉ! こんなよえー馬鹿王子に負けるはずがねぇんだよぉおおおお!」

 声を張り上げるフェルクスに向かって、ヴィルムは冷静に口を開く。

「まさか、ギルベルト様がこの二週間、何の対策も取っていなかった思っているのですか」

 怪我は確かに酷かったが、二、三日すれば治る。

 それにも関わらず、二週間も君子を取り戻しに来なかったのは、先に対策を取っていたのである。




************************************************************





 数日前、エルゴン・パラン砦。

「……アルバート殿下に勝ちたい、ですか」

 パラン砦はギルベルトが制圧した後、ヴェルハルガルド軍が拠点として占拠している。

 マリノフは、ギルベルトがマグニに戻っている間、このパラン砦で補給を整え、次の軍略を練っているのだ。

 ギルベルトは、アルバートに勝つ為の方法を聞きに、わざわざマリノフの元を訪れたのだった。

「また、随分厄介なお方に絡まれましたな」

「いいから、あのクソ野郎をぶっ倒す方法を教えろ!」

 到底人に教えを乞う態度ではないのだが、マリノフは冷静な口調で話し始める。

「正直申し上げて、ギルベルト様ではアルバート殿下には勝てないでしょう」

「あンだとぉこのやろぉ!」

 声を荒げるギルベルト、今にも殴りかかりそうな彼に向かってマリノフは指をさす。

「それがいけません」

「あン……?」

「ギルベルト殿下は、直ぐに頭に血が上り周りの物が見えなくなります、そんな事では兄殿下に勝つ所か、その補佐官であるフェルクスにも負けるでしょう」

 怒りに任せて無鉄砲に突っ込んでいくのは、ギルベルトの悪い癖である。

 流石は様々な将を教育して来ただけあって、彼の意見は的確だ、現にギルベルトはアルバートに一太刀も浴びせる事無く、完膚なきまでに叩きのめされたのだ。

「まずは怒らず冷静でいる事です、殿下は兄殿下にも負けぬ物をお持ちです、激情に身を委ねる訳ではなく、一度冷静になり相手をしっかりと見るのです、さすれば勝機もありましょうぞ」

 山の様に動じぬ心、それが今のギルベルトに必要な物だった。

 故にそれを身に着ける必要があるのだ。

「では、殿下の罵詈雑言を絶え間なく言いますので、どうかお心を静めて聞いて下さい」

「あン?」

「殿下の馬鹿、阿保、間抜け――」

「あンだとこんちくしょおおおおおおおっ!」




************************************************************





 冷静さを身に着けるのにこれほどの時間がかかってしまったのだ。

 何を言われても怒らず、山の様に動じないギルベルト。

それは二週間前の彼とは全く違う。

「炎の魔人の火炎は、感情の昂りによって左右されるのですよ」

 高温の熱と炎を操る炎の魔人は、テンションの上がり下がりによって炎を操る。

 テンションが上がれば上がるほど、高熱になり灼熱の炎を纏う事が出来るのだが、それは同時に、テンションが低いほど温度が上がらず、炎も低温の物になってしまう。

「つまり、貴方は今物凄く弱いのですよ」

「なっ何言ってやがんだぁ、おっオレ様は今無茶苦茶テンションが上がってんだよぉ!」

「空元気で気持ちを盛り上げようとしても、自身の炎に嘘は付けません……足、震えていますよ、フェルクス」

 ヴィルムの言葉通り、フェルクスの足は小さくだが小刻みに震えていた。

 Aランクの軍人である彼が恐怖を抱いている、あのギルベルトに――。

「そっ……そんな訳、そんな訳ねぇぞぉ! おっオレ様はこっ怖がってなんかいねぇ!」

「貴方はギルベルト様の気迫に負け一瞬たじろいだ、それだけで十分だったのですよ」

 確かにフェルクスはギルベルトの攻撃に一瞬怯んだ、しかしすぐに攻撃を避けて反撃した、あんな一瞬で一体何が出来るというのだ。

「それがギルベルト様の特殊技能(スキル)、『覇者気質』です」



 特殊技能(スキル)『覇者気質』。

 ランク4のこの特殊技能は、眼に見えない力、『覇気』を操れる。

 自分より弱い者を圧倒し、時には圧だけで意識を奪ったり心臓を止めたり出来る。

 そして同等あるいは強い者でも、一瞬でも自分に『畏れ』を抱けば、同じ様に威圧する事が出来るのだ。

 流石にAランクのフェルクスの意識を奪う事は出来なくとも、彼の抱いた『畏れ』を増幅させ、パンチ力をなくし、炎を操れないくらいにテンションを下げる事は可能だった。

 冷静さを身に着けたギルベルトは、フェルクスの力はテンションに支えられている事に気が付き、自身の特殊技能(スキル)によってこれを完全に無効化したのだ。

「貴方が、自称必殺技を放つ前から、炎は大分低温になっていたんですよ」

「そっ……そんな、わけ」

 否定しようとしたが、いつものあの馬鹿でかい声が出ない。

 あのテンションをどうやって出していたのかさえ分からなくなって来た。

「あっ……」

 フェルクスは宿敵ヴィルムから、眼の前にいるギルベルトへと視線を戻す。

 その時初めて脈が速くなって、心臓が恐怖で張り裂けそうになっている事に気が付いた。

 ギルベルトは、ただ睨んでいた。

 ただそれだけだというのに、覇気に当てられた彼には、その姿が恐ろしい。

 心臓を握りしめられた様な恐怖が全身を伝って、脳が警鐘を鳴らす。

 こいつには勝てない、自分は恐怖を抱いていると、フェルクスは初めて思い知った。

「ひっ――」

 体が、本能が、自然とギルベルトから逃げる事を選択する。

 しかし強張った体は思う様に言う事を効かない――だからなのか、一歩後ろに下がった瞬間、足の小指をつった。

「うぎょおおっ!」

 電流に打たれた様な激痛で悶え苦しむフェルクス。

 先ほどまでの絶好調は、どこかへ吹き飛んで行ってしまった様だ。

 それを遠くから見ていたルールアは、どこか諦めた様子で溜め息を付いた。

「えっ……つっつるって、どういう事……」

「『調子者』の特殊技能(スキル)は、運気の増減の幅を大きくする物であって、常に運が良い状態にするものではありません、その逆の状態にもなる、という事ですよ」

 常用型の『調子者』は、フェルクスの意思によって調節できない。

 故に、唐突に運気が上がる事があれば下がる事もある。

 そしてこの『調子者』、上がる時は猛烈に上がり、下がる時は滅茶苦茶下がる。

 つまり今、フェルクスはとんでもなく運が悪い状態に突入したのだ。

「うぎゃあっ、こむら返りっ!」

 更にもう片方の足の脹脛にも激痛が走る。

 足の小指をつり、更に脹脛をこむら返りするなど、普通は有り得ない事なのだが、今のフェルクスの幸運はE-以下の最悪な状態。

 通常ならありえないほど、悪い事が次々に起こる。




 ステンドグラスの欠片が、フェルクスの頭に直撃した。




 先ほどの衝撃で落ちなかった物が、今更になって落っこちて来たのだ。

 横で落ちて来たので、鋭利な切断面は当たらなかったが、それでも三階相当の高さから落ちて来た衝撃はすさまじい。

「ふぁ~~うはぁ~、星がぁ、くるくる~~」

 眼を回し、足元がふらついているフェルクスは到底戦える状況ではない。

 ギルベルトはとりあえず殴り飛ばして終わりにしよう、そう思い拳を握る。

 しかし更にフェルクスに向かって、窓枠が落っこちて来た。

「うぎょぶっ!」

 木製とはいえ頑丈に造られていて大きく重い、フェルクスはそれに押し潰された。

 ガラスの後の窓枠は随分効いた様で、立ち上がる事も出来ない。

「……おっオレしゃまぁ……しゃっ、しゃいっへ~」


 フェルクス、自爆。戦闘不能。


 勝敗は決した。

「ギルぅ!」

 君子は嬉しそうに勝者の名を呼ぶ、心から勝利を望んだその名を呼んだ。

 ギルベルトは玉座を見上げると、君子を見つめる。

「あとちょっとだ、待ってろ」

「……うん、うんっ!」

 もう少しでギルベルトの所へ帰れる、君子は力強く頷いた。

 ギルベルトは視線をアルバートへと移すと、グラムを構える。

「後はてめぇだけだぁ、そっから降りて来やがれ!」

 アルバートは黙ってそれを見降ろすと、今度は自分の膝の上でギルベルトを応援する君子へと視線を移す。

 その表情は彼が見た事ないくらい嬉しそうだった。

「…………」

 ギルベルトは言い放った。

 力強く、猛々しく、黒い刃を向けながら、アルバートへと言い放つ。



「勝負だ、アルバート!」





今年最後の更新でした。

思えば半年、長い様な短いような地味(略)来ちゃ! (実質)三四話でした。

二〇一七年も、まだまだ更新いたします! 暇がある時にでも、この小説を読んでいたらければ幸いです。

それでは皆様良いお年を! 作者 フランスパン 

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