勧誘活動
もうそろそろ学園から出るかな
・・・・学園ももうじき卒業の時期へと近づく中、毎年恒例らしい光景がレイたちの目の前で繰り広げられていた。
「務めるならうちの商店へどうぞ!今なら有給増加サービス!!」
「村の活性化のために、誰か若い者が入ってくれんかねー」
「玉の輿を狙うなら、この嫁ぎ道場へきてくんさいなしぃ」
「馬車の手伝い待ってます。気になる方は、後日連絡を」
「・・・勧誘合戦だな」
貴族を避け、平民出身である生徒たちを狙っての勧誘が学園の外の方で行われているようであった。
貴族の子なら当主への道などがあるとはいえ、平民の方ならなにかしらの職業に就く者が多い。
レイのように冒険者として働く人もいるのだが、優秀な人材を求めて卒業の時期が近づくと学園の周囲にはこのような勧誘活動をする人が増えるようであった。
まあ、レイは冒険者としての名はすでにベタリアンでは知られているようで、勧誘は特に来なかったが。
ハクロたち使い魔目当てで来る人もいたが、そう言うのは大抵よこしまな目をしていたので全力で断る。
「宮廷魔導士になってもよさそうなものだけどな」
「それはそれでいやだけどね」
ザフォンのつぶやきに、レイは拒否する。
魔法の腕だけで考えるなら、城仕えの宮廷魔導士になるだけの実力をレイは持っている。
だが、たいていがそこそこの年齢の人が多く、派閥争いもあると聞くしね。
派閥争いとかの面倒事はNGなんだよ。どう考えてもあまりいいイメージはないしね。
「そう言うのを才能の無駄遣いというと思うのだが・・・・いやマジで、レイの魔法っていろいろおかしいだろ」
「おかしいってどこがだ?」
レイは考えるが、何処がおかしいのかいまいちわからない。
いや、いつも普通に使用できているからその感覚が分からなくなって来ているだけなのだろうけど・・・・。
・・・・ザフォンが言いたいのは、レイの魔法のすべてだという事である。
まず、全属性に適性がある事。それはすなわちほとんどの魔法が使用可能であり、どれだけ恵まれているのだとツッコミを入れたい。
次に、魔力の量もおかしい事。アイラを包み込む水球の魔法がいい例だ。ずっと長時間顕現させ続けているし、魔力が多いせいでその魔法の規模もすでにいる宮廷魔導士達よりもはるかに超えている事が分かる。
また、その魔法の精度やコントロール力、組み合わせの仕方、詠唱破棄が自然過ぎることなどと、魔法使いにとっては桁外れに恵まれ過ぎだろとツッコミを入れたい要素が数多くあった。
もともとそういう素質を持っているのだろうが、魔物使いをしていることから使い魔が増えるにつれて、互いの関係によって与える影響も官益しているのだろう。
まあ、レイの使い魔のモンスターたちが美女だらけかつ、誰もが相当な実力を持っている時点で魔法がおまけのようにも感じられることはあるが。
とにもかくにも、これだけの才能を持って、それでいて冒険者業だけで働かせるのはどことなく勿体ないようにザフォンは思えた。
その力は強大だし、他国へ渡って敵対されたらまずいものになることも理解している。
けれども、それでも親友なレイをどうこうするかは、ザフォンには決めることができないのであった。
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SIDEガウン国王
・・・ちょうどその頃、ストラクト王国の首都にある城にて、ガウン国王は国王で考え事をしていた。
その考え事というのはレイの事である。
友の息子・・・絶縁をしたらしいが、それでもレイの力の事はガウン国王も報告などでよく知っている。
息子であるザフォンからも話として出てくることもあり、その力の大きさについて頭を悩ませてもいるのだ。
他国へ渡り、この王国と敵対される可能性を考えると結構悩むところである。
レイ自身はそういう面倒ごとを嫌うようだが、それでも不安なことは不安なのだ。
魔法の腕が優れていることから、宮廷魔導士として勧誘するという事も出来そうだが、冒険者として活動をしているらしく現時点ではまだ不可能であるのは考えられた。
何か功績を遺すとか、そう言ったことをするまでは簡単にできないのが歯がゆいところである。
そのあたりをどうするべきか考えつつ、現状維持を選択していくのであった・・・・・
そう簡単に事を進ませられないのが歯がゆいところ。
でも卒業後無職になりにくい世界でもあるのでそこは良いのかな。




