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海賊・・・ですが

今一つな感じ

SIDEマッコウ海賊団



・・・海賊。それはいつの時代、どこの海に隣接する国にも現れる者達である。


 基本的に商戦を襲い、略奪し、海辺の方にある村にも襲撃をしていく者たちの総称であるのだ。


 とはいえ、数は盗賊などに比べると少なく、対処不可能というわけでもない。



 彼らの生命線はその乗っている船そのものであり、沈没すればあっという間に路頭に迷い、牢に投獄される運命にあるのだ。


 魔法とかもあり、海賊を営む者たちにとっては毎日が厳しいのだが、それでも生き抜けていることからそれなりに実力はあるという証明にもなるのであった。


 


「いやっほふぉーーーーー!!やっと陸地が見えたぜ!!」

「嵐に巻き込まれ、本拠地に戻れずして1週間・・・・ようやく略奪という名の補給が行えるぜ野郎共!!」

「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」


 

 現在、レイたちがいる沖合の方に現れた海賊は「マッコウ海賊団」。


 本当はこのあたりの海域には出没はしなかったのだが、つい最近あった嵐のせいで帆は破れ、船はボロボロ。


 その修理と食糧調達とむさくるしい男だけなのでたまった欲望の掃き出し地として、何とかこの海岸にまで彼らは到達したのである。


 海賊として3隻ほどの船団を組んでおり、1隻だけでも大変なのに3隻もの船にいる野郎どもにとっては、ようやく到達したうっぷん晴らしの地でもあった。



 ようやく陸につき、ここで略奪などを行い、船を修理して再び海へ出て海賊行為を本格的に再開できる・・・・・そう彼らが考えていた時であった。



「船長!!浜辺の方に人影を確認!!」

「なぁにぃ!?知らされる前に大砲を撃って命中させて黙らせろ!!」

「あらほらさっさー!!」


 マッコウ海賊団船長、マッコーウノは直ぐに命令を出し、砲撃をさせる。


 船に積まれているのは大砲という武器であり、魔法が飛び道具として重宝されているこの世界にしては珍しく最先端を導入する海賊団でもあった。



 砲弾が次々と打ち出され、浜辺にいる目撃者を抹殺して安全に上陸できると考えていたのだが・・・・現実は甘くなかった。



「大変です船長!!最初の1発は着弾しましたが、残りの砲弾がすべて・・・・浜からの魔法によって消滅させられました!!」

「ぬわぁにぃ!?」


 驚いて慌てて見て見ると、撃ちだしている砲弾が次々と飛来してくる火の玉や氷の玉、水の玉等によって撃ち落とされていくのをマッコーウノは確認した。


「あれは魔法使いか!」

「いえ!!よく見れば背後の方にモンスターもいます!!魔物使いのようですが結構やばいですよあれ!!」


 みれば、背後の方にいるのは・・・・・


「上玉ばかりじゃねぇか馬鹿野郎!!むしろ俺たちの欲望を満たせそうな美女ばかりだろ!!」

「相手はモンスターですが!?」

「あほか!!モンスターだろうと美女なら美女として扱うのが俺たちの流儀って奴だろうが!!」


見た目が美しいモンスターたちばかりだったので、マッコーウノはむしろ略奪対象として見ていた。



 だが、ここで彼らは逃亡という手段をしておくべきであった。



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SIDEレイたち


「今物凄く不快な視線を感じましたね・・・」

「多分だけど、ハクロたちの事をいやらしい目で見たんじゃない?」

「うわぁ・・・最悪」

「ぶっ飛ばしたいでありますな」


 海賊船からまだ距離はあるけど、何となく不快になるような視線を皆感じたらしい。


「というか、なんでここに海賊船が?」

「さっきから砲弾を撃ってきますし迷惑ですよね」


 魔法で応戦できるし、いっその事ここで沈めるということも可能なのだろうが・・・そうすればこの浜辺に漂着してきて面倒ごとになるのは目に見えている。


「沈めるのもダメだし、かと言ってこのまま逃げてもなぁ・・あ、そうだ」


 ここで思いついたのは、良い一手ともいえるだろう。



この世界の船・・・エンジンとかはないし、帆船、つまり帆に風を受けて進む仕組みの物ばかりである。


 目の前の海賊戦も例外ではなく、ちょっとぼろいかなと思えるけどしっかりと帆を張っている状態、つまりは風を受けて進む・・・・・ならば。



「帆を狙って・・・・・風を起こして無理やり動かせばいいか」


 出来るだけ長時間帆に風を受けて進むようにしてやって、遠くの方まで流すのだ。


 その行先に被害が出るかもしれないが、それはそれ、これはこれ。



 とはいっても、強風を拭き起こすレベルの物を考えると・・・結構疲れそうだな。


 反動もあるので後ろの方をハクロたちに支えてもらう。



「行くよ!!」


 狙いを定め、魔法を放つ!!


「『熱風(ホットエアー)衝撃波(インパクト)』!!」


 火の魔法で、炎を起こすのではなく、その熱風のみを直撃させる魔法である。


 名前の通り超高温の熱風を直撃させるのだが、加減して死なない程度の熱量でなおかつ、砂漠並みの暑さをもたらす嫌な効果付き。


 持続して熱による上昇気流が横方向へと働き、帆に思いっきり風を当てていっきに海賊船を押し出していく。


「「「「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」


 急加速して海賊船が流されていき、その地獄のような暑さの悲鳴が聞こえて・・・・そのうち遠くなって聞こえなくなった。




「ふぅ、悪は去った」

「一度はそのセリフ言ってみたいですよね」



 見えなくなった海賊船を後に、その言葉をついつぶやいちゃった。



「あ、そう言えばあの歌っていた謎の影・・・どこへいった?」



 海賊でドタバタしていたせいで、いつの間にか姿を消していたよ。



・・・まあ、今日はもう眠いし、このまま放置かな。害するわけでもなさそうだしね。


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SIDE???



・・・ソレは、海の中に潜りながらも海上の様子を見ていた。


 突然の襲撃に驚いて潜ったのだが、特に問題もなくあっという間に襲撃してきた船を、浜辺の方にいつの間にかいた人たちが、苦も無く撃退していたのである。



 魔法の威力や加減調整などが常識外とも思え、あっけにとられたのであった。



 けど、それと同時になんとなく惹かれるような感覚もソレは覚える。


 足りなかったような、いまひとつはまらない自分にようやく見つかったかのようなそんな感情があるのだ。



・・・元々、ソレが歌っていたのはその感覚によるものとも言える。


 つい最近、ソレの親友であった魚が亡くなり、友がいなくなった寂しさゆえに歌を深夜に歌い続けていたのだ。

 

 昼間に歌わないのは、どことなく恥ずかしいのがあるからである。


 その寂しさのもとをただせば・・・・その感覚もあったのではないだろうか。


 

 海上にこっそり顔を出すと、その撃退した者たちは陸の方にある宿屋に戻るようである。


 もしかすると、この出会いは最初で最後のチャンスかもしれない。



 そう思い、ソレは根性で海から出てみることにしたのであった・・・・・・・・結構きついけど。




 

後日、その海賊たちが別の海岸に流れ着いて、そこで御用となったことをレイたちが知るのはまだ先の話であった。

流れ着いたときには、全員からっからのぐでっぐでな状態で、捕縛するのが容易かったようである。

海に飛び込んで逃げないのかと思ったのだが、そこまで頭が回らなかったという。

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