海についてやることは
メンバー的に見れば、誰も海中に対して心得がまだない。
魔法で何とか出来そうなものだけど、魔法に頼りきりだと何もできなくなるのだよ。
・・・・デッポンニー商会の人達の護衛も兼ねて数日後、道中で別れて進み、レイたちはようやく目的の海へと到達した。
サクラの走りもあって予定よりも数日ほど早く到着しちゃったが、泳ぎの練習もできる時間が増えたと思えばいいことであろう。
・・・何せ、全員海で泳ぐのは初めてだからね。
川とかは経験あるけど、淡水と海水ではいろいろと違う。そこを注意しないと溺れるからなぁ・・・。
あ、依頼の事はしっかりと念頭に入れてますよ。でもその依頼実行中に溺れるのも問題になるし、しっかり泳げるようになってからじゃないとね。
到着後、とりあえず先に宿を確保することにした。
海にもモンスターはいることはいるし、安全の為でも、休息の場を作るのが第一であるからだ。
・・・部屋は全員同じ部屋の大部屋にしたよ。料金的にはバラバラで宿泊するよりも安いからね。
「そしてやっと海だぁぁ!!」
着替えをして、海に向かってそう叫ぶ。
この夏の時期、やはり海に入りたいと思う人は多くて海岸は人が多い・・・・・
「・・・わけでもないな」
「なんでも最近妙な噂があるようですからね」
ほとんど人がいない光景につぶやくと、着替えを終えたハクロが後ろに立っていた。
スリリングショット・・・・とはいってもパチンコとかあの紐の部分ではなく、水着でそういうやつを着ている。
カトレアは普通の黒いビキニで、サクラはセパレート・・・うん、皆よく似あうけどさ、やっぱ強調されるよね。どこがとは言わないけどちょっと目のやり場に困るというか。
なお、水着はハクロの糸製でオーダーメイドである。サイズが問題なんだよ。
「妙な噂って・・・宿の人が話していた奴か」
ここの宿屋を取った時に、宿の主人が話していたことがあった。
いわく・・・・
『深夜に鳴き声が聞こえてくるが、姿が見えない』
『悲しそうな気持になる歌が聞こえてくる』
『幽霊ではないかと思い、その手の専門家が呼ばれたことがあったが、翌日なぜかわかめまみれで漂着して気絶し、あぶくをだしていた。気がつくと、何か恐ろしいものを見たかのようにガクブルと震えてそのまま衰弱して去っていった』
・・・・海の怪談話の様だ。
その幽霊のような怪談話なので客が来なくなり、困っているのだとか。
「ギルドに依頼を出したいですが、相手が幽霊だとまともに掛け合ってくれそうにもなく・・・」
この世界、アンデッド系モンスターとしてゾンビとかリッチとかデュラハンなどはいるらしいけど、なぜか幽霊だけはモンスター扱いにならないのである。
いや、扱いにならないというよりも信じられていないというべきか。
ゾンビとかはいるのに、幽霊はいない・・・・変な話だなぁ。
「モンスターである某たちが聞いても眉唾物でありますな」
「幽霊とかそう言うのは信じない」
「そもそも、モンスター以上に恐怖を感じ取れますかね?」
全員幽霊はいないと思っている派のようである。まあ、襲撃をしてくるモンスターとか盗賊の方が実害があって恐ろしいからな。恐ろしさの基準から考えても負けているんだよ。
その話は置いておいて、とりあえずまずはここに来た目的の一つ・・・泳ぎの練習だ。
「その前に準備運動をするぞ。いきなりだと体がつったりするしね」
「「「了解!!」」」
準備運動をした後、泳ぐ用意をする。
「ゆっくりと海に入って、ある程度のところで泳ぎ始めてみよう。体の力を抜けば、自然と浮くだろうし、そこは感覚的にやっていかないとね」
「勢いよく飛び込むのはだめでしょうか?」
「まともに泳げる前に勢いで行くのはよした方がいいと思うんだよね。下手にやるとお腹をうって結構辛いことになるだろうし・・・・」
飛び込みって、失敗すると腹打つからね・・・・って、ハクロたちのお腹の定義ってどこだろうか。
上半身の人の姿の部分にもお腹はあるし、ハクロは蜘蛛の下半身、サクラは馬の下半身がお腹でもあるから・・・・ううむ。
カトレアはキチンと木の椅子と分かれているからわかりやすくていいんだよな。一番体の構造としてはわかりやすいモンスターだと思える。
ゆっくりと海に入り込み、ある程度まで進んでから、身体の力を抜いて浮いてみる。
海の塩水はしょっぱいのはどこの世界でも共通だけど、噂では甘い海もあるそうな。なんだそれ。
数十分後、案外あっけなく皆普通に泳げ・・・・てはいなかった。
というか、まともに泳いでいない。
「こ、腰のあたりに結構負担がありますね」
ハクロの場合、上半身の人の部分は浮くのだが、下半身の蜘蛛の部分の方が浮力があるようで、すんごい沿った姿勢になっている。蜘蛛じゃなくてエビみたい。
ちょっと笑いたくなるけど一生懸命なのでここは我慢。
「これは泳いでいるのでありますか、それとも水中歩行をしているというのでありますか?」
「どっちかと言えば後者か?」
サクラの場合、上半身の人の部分だけが水面から出て、下半身の馬の部分が水中を蹴って泳いでいる。
でも、水中歩行のようにも見えるな。
「ブクブクブクブク・・・・」
「・・・・それって溺れているの?」
「ブクォゥ、ブククブク(大丈夫、問題ない)」
カトレアの場合、水上の方に葉っぱを出して・・・・光合成しているようだ。
全身は水の中に使っているけど、光合成によって海中の呼吸はできている模様。
・・・このメンバーの中で、昼間限定になるだろうけど一番水中の活動ができるんじゃ?
泳ぎの定義そのものが怪しくなりつつも、とりあえず何とか全員海は大丈夫になったようだった。
あとは依頼をこなすだけだけど・・・・・・泳ぎって本当に何だろうか。こっちのほうが分からなくなったよ。
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SIDE???
「・・・・・・・・」
ソレは、深い深い海の底でふと感じ取った。
まだ真夜中の、ある行為をしていたせいで眠気に襲われているが、それでもなんとなく気になるような存在を感じ取ったのである。
とはいえまだ眠いソレは、その存在が気になったけど二度寝をし始めるのであった・・・・・
・・・このメンツに泳ぎを求めたらこうなった。
一番海に順応できたのってカトレアだけど、もはや泳いでいないような。
水着の描写ってやっぱ難しいな。イメージはできても、実際に文章で表すと表現がなかなか難しい。漫画とかだと絵を載せれるけど、それがない分、詳細が求められるというか・・・・。




