休日ですね
本日2話目
後半のほうが暗いかな
・・・2年生になってから数カ月たち、学園の生活にレイたちは慣れていた。
学園内の喫茶店のバイトで稼ぎつつ、学業にもきちんと専念をする。
使い魔であるハクロとカトレアまで授業を受ける必要はないけど、ついでにしっかり聞いておいて、後で復習するときにレイの手助けをするのである。
そして今日は休日なので、
「せっかくだからたまには出歩こうか」
と、レイの一言によって禁書庫に入り浸らずに、学園外を歩き回ることにしたのであった。
一応、学園の外でもハクロたちを連れていると目立つのだが、すでにレイの使い魔としての事は広まっているので最初のころに比べるとずいぶんと落ち着いた状態である。
たまに見とれてしまって、彼女と思わしき人に殴られたり折られたりしている男性がいるのも慣れた光景だ。
「こうやって何の目的もなく、ただ出歩くのもいいよね」
「はい、今日は晴れていますし絶好の散歩日和ですね」
「光合成も忘れずにしておく」
「「それはカトレアしかできないからね?」」
自然に会話に入れようとしたカトレアのその一言に、レイとハクロはツッコミを入れた。
光合成できるのは植物系のモンスターだけだろ。俺とハクロは葉緑素とかないからね?
しかし、光合成って・・なんかカトレアってあの某ゲームの技も撃てそうだな。太陽の光を集めてぶっ放すアレ。
のんびり適当に歩くけど、心地よい感じの風が吹き、結構気持ちがいい日だなぁ。
あと2,3ヶ月ほどで夏とはいえ、こういう今のような心地よさを保ってほしい。
「貴族籍から抜けたとはいえ、あんまり変わらない生活を遅れているからいいよな」
「むしろ今の方がのびのびしているように見えますけどね」
「自由気ままに生きる、これすなわち一番いいこと」
ぐーっと体を伸ばしつつ、休日の適当な散歩を楽しむのであった。
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SIDEガウン国王
「なるほど・・・もうすでにまずい状況になっているのか」
「その通りです」
王城にある客室にて、ガウン国王とデーン伯爵は互に話し合っていた。
「まさかここまで我が息子であった・・・レイの影響があったとは思いませんでしたよ」
「予想以上ともいえるな」
デーン伯爵が頭を抱えて悩み事を言うのを見て、ガウン国王はやれやれと肩をすくめた。
レイがアルス家の籍を抜けるのとほぼ同時に、衰退をし始めたそうである。
作物は今年はだめになるものが多そうだという予測があり、モンスターが湧き始めて畑を荒らしてくそうだ。
そのため、今年は完全に領地の税収は愕然と下がるのを予想できた。
数年もすれば落ち着く可能性があるが、それでもやはり税収は最盛期の頃・・・・レイたちがいたころに比べると落ちるように思われる。
「プリンセスドリアードの恵みの効果は断ち切られ、アラクネの罠を避けていたモンスターたちが寄ってきて、レイ自身の魔力とかにさけていた者たちも次第に集まっていくか・・・・。絵にかくようなあっという間の出来事だな」
「このままだと、あと10年もつかどうかもさえ怪しいのです」
というか、それよりも早くつぶれるのではないかとデーン伯爵は予想で来ていた。
今年で長男のバルトも15となっており、無事卒業できていれば徐々に実権をシフトしていって隠居していこうかと考えていた。
だが、その考えを裏切ってバルトは超ポンコツで卒業できていないどころか留年をし続け、その次男のザッハも同じく留年だという悲しいことになっていた。
学業にまじめに取り組まないことによる自業自得とはいえ、余りにも情けないその姿に頭も抱えたくなる。
また、レイの方から残されていた手紙にあったことを、本気になって徹底的に調べると、デーン伯爵の正妻であるアレクサンドリ・フォン・アルスの身辺が、実家のところよりも隠ぺいが浅くて、様々なやばいことが露見してきたのである。
「・・・・しかも、とんでもない真実まで見つけてしまいました」
「真実とは?」
「・・・レイの母親、私の妾でもあり、正妻よりも断然愛せていた人の死についてです」
・・・レイの母親は、デーン伯爵の妾である。
平民出身であったが、レイが生まれる以前にであって、当時正妻の嫌な感じに悩まされていたデーン伯爵は彼女のやさしさに恋して、その結果レイが生まれた。
妾と言う立場になったのだが、彼女には年老いた両親がいて別居のような形でありながらもデーン伯爵はたまに彼女のところに訪れていたのである。
しかし、レイが生まれてからしばらくたったある日、突然彼女の家は盗賊に襲われたらしく、皆殺しにされていた。
幼かったレイにはその事実を話せずに、妾の立場だ田から今は遠いところにいるような話をして、それからほとんど母親の話をしてこなかったので聞かないのかと悩んでいたりもした。
・・・だけど、今回正妻の事を調べているうちにとある真実を見つけてしまったのだ。
正妻・・・アレクサンドリの実家だが、今回の件で調べていると様々な後ろ暗いことが露見してきた。
「妾であった彼女の家は、実は大昔に正妻の実家の祖先によって策略で平民の身分にまで落とされた大貴族の家だったのです」
「ふむ・・・なるほど」
貴族が罪を犯して、貴族籍を剥奪されて平民の身分に落ちることがある。
そして今回、デーン伯爵の妾は実はとある貴族が平民に落とされて、その身分に落ち着いていたところだとわかったのだ。
策略で貴族家が平民に落とされるということはあるのだが、普通はそれ以降は手出しをしないことになっている。
下手に手出しをして、過去の事で糾弾されるようなことをおびえるようなものだとか。
「そして、正妻の実家ですが、何をきっかけにかはまだわかりませんが、私のその妾の事を知ったようで・・・・」
調べようと思えば割と簡単に調べられるほどの財力と権力があった正妻の実家。
そして、その事実を知った時に・・・・・手出しをつい出してしまったようなのだ。
「本来であれば、そのままにしていても何も起こるはずがなかったはずでした。ですが・・・」
「用心を重ねていたその家は、さらに重ねすぎて・・か」
家系図なども妾の家の方にあり、その証拠を処分するために盗賊を仕向けた。
そのため、レイの母親は殺されたのだとわかったのだ。
「・・・レイも普通は狙いそうなものですが、正妻やバルトとザッハたちが押さえつけるから大丈夫だろうと考えていたのかもしれません。そのため、妾の家が襲撃されるだけで終わっていたようです」
話し終えると同時に、その場には重い空気が漂った。
正妻の薬物の疑いの件をレイがデーン伯爵に教え、調べた結果出てきた様々な事実の数々。
まるで、要石が抜け落ちて崩落する石橋のごとく、たった一つの証拠からどんどんとあっという間にこれまでガウンが調べても調べきれなかったその正妻の実家の後ろ暗い事さえも露出していった。
そして、その中にあったその真実を知り、デーン伯爵の目に涙が流れる。
過去を知っても、もうこのことは変えることができない。
そして、この真実をレイに教えたくとも・・・・かなりの危険性がある。
「レイ自身は自覚して来ている可能性がありますが、あの子の魔法の腕はもうとっくの前に宮廷魔導士を超えています。また、仕えている使い魔たちも相当な実力があるのです」
「事実を知って、暴れ狂わられたら相当な被害が出ることが目に見えているからな・・・」
できれば被害を出さずにひっそりとその家をつぶしたい。
だけど、いつかは伝えなければいけない真実なのだ。
「すでに貴族籍を抜けて、絶縁をされてしまいましたが・・・・それでも、私はレイの事が心配なのです」
「子を思う親の気持ちはわかるぞデーン。こっちだって娘と息子がいるのだし・・・」
暗い気分になりながらも、見つかってきた証拠の数々をもとにガウン国王はデーン伯爵の正妻の実家の貴族家をつぶす用意をし始め、デーン伯爵の方はせめてもの償いに隠居をする用意をし始めるのであった。
年月をそろそろ一気に進めたくなる。学園にずっと通わせるのも大変だからね




