闇に紛れて
本日3話目!!
ちょっと裏話というか、秘密の事である。
・・・・レイとハクロが互いに求めあっているその頃、上空でセラフィムが翼を羽ばたかせてホバリングしていた。
「・・・・・やはり、そうなったようなのん」
ぽつりとセラフィムが言葉を漏らし、その目に見えているのは王城の客室の寝床で行われている事。
壁も何もかも貫通して透視しているかのようであり、何が起きているのか彼女はきちんと把握していた。
《・・・・やっぱり、何か理解して見ていますねセラフィムさん》
「・・・・・ワゼなのんか」
突如聞こえてきた声にセラフィムが振り向くと、そこには同様に飛んで・・・いや、浮いているワゼの姿があった。
だが、セラフィムは動じることもなく平静であった。
いつもの彼女であればはきはきと明るいのだが、今この場にいるセラフィムは・・・・・どこか違った雰囲気を纏っていたのである。
《なんと言いますか、貴方だけ他の方々と雰囲気が異なるのですよネ。まるで、マスターとあのハクロさんがくっつくのが見えていたかのように振る舞い、自身はまるでその様子を誰かに知らせるかのように傍観している様子でしたからネ》
「やれやれ、バレていたようなのんね」
ワゼの言葉に、セラフィムは肩をすくめた。
そして、空中で話し合うのも何なので、一旦二人とも地上に降りて、城内で目立たな一角で話すことにした。
《さてと、何を話してくれるんですかネ?》
「うーん、私の事について答えられる分なら全部なのん」
そして、セラフィムは語りだす。
「・・・・まず、私は親様の魔力によって生み出された人工生命体なのだけれども・・・・そもそも、人工生命体と言ってもその魂がどこからきたのかわかるなのんか?」
《・・・魂デスカ?わかりませんね》
「ま、いきなり言われてもよくわからないとは思うなのん。けれども、0からは何も生まれないという事はわかるなのんね?それはつまり・・・・」
《・・・どこからか、あなた自身の魂がその体にあるという事ですカ?》
「そういう事なのん。そして・・・・・私が生まれる時、その魂はとあるところからある使命を持ってこの身体に来たのなのん」
《・・・・『使命』ですか?》
セラフィムの言葉に、ワゼは首をかしげる。
「親様の動向の監視及びに死後のその魂の案内をつかさどる・・・・死神の様な使命を帯びているのなのん」
そうけららと笑いながら言うセラフィム。
だが、その言葉に嘘が含まれていないことをワゼは理解していた。
《なぜ、そのような事を貴女がしているのデスカ?》
「それは・・・・元々、親様の魂そのものは力が強く、ぶっちゃけて言えば神々にも匹敵するほどにまであったのなのん」
だが、神々にとってはそれはあまりいいことではない。
「神々としては危険と判断したなのん。強すぎる力に、自分たちも脅かされるのではないかと言う恐怖心は持っていたからなのんね。魂の消去という方法もあったけれども、力が強すぎてできなかったのなのん。そこで何度も転生させて魂の力をを消耗させていく予定だったのんが・・・・・・」
なかなか魂そのものは衰えず、むしろ何度も繰り返し転生させ過ぎたがゆえに余計に何故か力を増させてしまったようである。
「そして、今の親様・・・・レイとしての転生をさせる際に、当時の転生に担当だった人はやらかしたなのん」
《やらかしタ?》
「力を削ぐためにしていたはずが、神が定めてもいない運命というか、余計に力を増させて現世・・・・今の親様、レイとして転生させちゃったのんね」
力を減少させて、せめて通常のレベルにまで落ち込ませるはずだったのだが、そのせいでもう神以上の力を備えさせてしまったのである。
「現状、親様の全力はできないようになっているなのん。というか、やったらやばいことになるので封印処理で押さえているなのんね。けれども、どうしても力が強くなってしまって・・・・そこで、監視を送ろうとしていた矢先に、あのベスタリーニァ王国での人工生命体の作成があったのなのん」
《・・・つまり、貴女は生まれる前から知っていたという事デスネ》
「そういう事なのん。まぁ、予定が狂って親様の家族の一員となったのなのんが・・・・・まあ心配ないのはもう理解できているし、後は使命どうこうではなくて、親様がいかに幸せに過ごせるようになるかのサポートだけで済む状態になったなのん」
そう笑いながら言うセラフィムに、危険なものはないと判断してワゼは肩の力を抜いた。
《・・・そういえば、ハクロさんの方はどうなのでしょうカ?必ずくっ付くみたいなことが分かっていた感じでしたガ》
「ん?それは単純明快なのん。親様の転生の繰り返しの途中・・・・どこかでハクロはその親様の魂に惹かれて、ずっとそばにいることを決めているのなのん。生まれ変わっても、必ず親様の元へつけるように・・・愛というか、物凄く深い絆のおかげなのんね」
そう言うと、セラフィムは何処かうらやましく思えているかのような表情をした。
「私の様な親様を監視する魂や、その他使い魔の皆は死後にまた別々のバラバラになったりするなのん。けれども、ハクロだけは未来永劫、輪廻転生を繰り返しても、ずっと親様のそばに居続ける。それがうらやましいように思えるのは、私も親様に惹かれている事なのんかね?」
《・・・なるほど、よくわかりましタ》
ハクロはずっと、生まれ変わる以前から、そして生まれ変わっても未来永劫レイの・・・・・魂のそばに仕える者だったらしい。
それを知り、セラフィムはハクロをうらやましがるのも無理はない。
ワゼにとっても、自身の前機・・・・・・もっと以前からレイを知っているかのようなメモリーはあるのだが、それでもその機体は自分ではない。
ずっと一緒にいたい相手に寄り添えるハクロがうらやましく思えることは、セラフィム同様ワゼも思うのであった。
真夜中密かに行われたこの会話。
この先互にこのことを話すつもりはなかったが、どこか自分もその座に・・・・レイと共に居続けたいと思う気持ちが二人とも強く思えたのであった。
・・・なお、この後ワゼはそのうらやましいような気持ちを紛らわすために、こっそりとサクラたちと共にレイとハクロの寝床での行動を一緒に見ていたのは言うまでもない。
もうそろそろというか、この魔物使いの話も終盤かな。次回作を考え出す頃合いである。




