油断・・・
珍しくシリアスになるのか?
SIDEレイ
・・・アリス・フォン・ストラクト王女の護衛をレイたちが開始し始めて2日目、今のところ特に王女の周辺では異常が起きなかった。
「そして同時に失踪なども起きていないか・・・」
「どう考えてもこれ狙われているようにしか思えないですね」
護衛をし始めてすぐに、首都内で起きていたという若い女性たちを攫う事件がぴたりとやんでいたのである。
犯人が警戒をしているのだろうかと思ったが、どちらかと言えば狙いを定めてチャンスをうかがっていると考えたほうが良いのかもしれない。
「こういう静かな沈黙が一番危険」
「決定的な隙を見つけるつもりの可能性もあるでありますな」
『共犯者が潜んでいる可能性もあるよー』
「今のところ怪しげな熱源は感知できていないッシャけどね」
「空から見ても異常なしなのん!!」
全員それぞれが護衛についてみて回ってきているけど、特に今のところ怪しい動きとかは周囲に見られないらしい。
「こういう時が一番怖いんだよなあ・・・なんていうんだっけ」
「嵐の前の静けさってことですか?」
「そういう事でありますね」
王女本人を狙ってくる可能性が高いけど、なかなかそんな兆しが見えない。
「そもそも誰が、どのような手段で、そんな目的で、何処に女性たちを攫うのかが不明ですよね?」
「用心するに越したことはないだろうけど、被害として公爵家とか伯爵家とかもあるらしい。草言った貴族家とかでも警備は厳重にされているのに、ある日いきなりいなくなったそうだからね」
「それって護衛している意味ありますかね・・・・」
護衛しようと、いくら厳重な見張りをしようともいともたやすく女性たちが攫われる。
けれども、今のところ可能なのはこの周辺の見回りやら情報調査ぐらいである。
「一応、ハクロたち自信も用心しておいたほうが良いからな。使い魔と言えども、ハクロたちって見た目綺麗だし、狙ってきているかもしれないからね」
「まぁ流石に私たちを狙うようなことはないでしょう。攫おうにも体格的な問題が・・・・うん、ちょっと自分で言うのもなんですけど」
「体重とかを言われたり」
「体が大きいとか言われると乙女心的には・・・」
「複雑ッシャね」
ハクロのつぶやきに、カトレア、サクラ、ユリがちょっとずーんと落ち込んだ。
彼女達でも乙女心はあり、女性らしさを求めることがある。
そんな彼女たちにとってのNGワードは、人間の女性たちとあまり変わらないのだろう。
『体重とかは気にしないけどねー。むしろ私の場合はひれの状態とかが気になるんだよ―』
「私は翼の状態なのん。・・・・というか、むしろ皆の体重とかってその胸囲だと思うなの・・・・ちょっとよこしてほしいなのーーーーーーん!!」
セラフィムの沈痛な叫びは城内に響き渡り、ちょうど働いていた女性騎士やメイドなどの侍女たち、女性たちにとってうんうんとうなずくほどのものだったという。
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SIDEハクロ
「ふぅ、セラフィムのあの心の叫びにはなんか申し訳なく思えますよね」
時刻は夕暮れ時となり、城内を見回って不審者がいないか探していたハクロは、先ほどのセラフィムの心からの叫びに対して、ぽつりとそうつぶやいた。
自分の胸囲とかそう言うのはほぼ生まれつきのような者であり、セラフィムにあのような叫びを聞かされると申し訳なく思えるのである。
そもそも、ハクロ自身にとって自分の容姿は昔から厄介事を引き起こしているように思っていた。
何しろアラクネというモンスターの中でも、極稀の美貌を持つ者として生まれたようなのである。
そのせいで昔から狙われたりして、毎日がサバイバルな逃亡生活だったと言えるだろう。
けれどもあの日、森の中でレイの使い魔となってからは、そのような事から縁が切れたかのように平穏な暮らしを手に入れていた。
レイと一緒に過ごし、綺麗だねと言われた時にはうれしかった。
そこから自身の容姿は特に気にすることもなくなったのだが・・・・セラフィムにとってのコンプレックスの対象になったのはちょっとだけ申し訳なく思えるのである。
「そういえば、ユリは元々白いでっかい蛇でしたよね・・・アレが今の姿になったのは『進化のきっかけ薬』でしたっけ?あれを見つけたら今度はセラフィムに使用するようにレイ様に言って見ましょうかね」
仲間内の事できちんと皆の心配もハクロはしている。
けれども、彼女にとって最も大事なのは自身の主であるレイだけだろう。
「さてと、そろそろ食事時でしたね」
もうそろそろ夕食の時間なのを自身の腹時計でなんとなく察して、皆のところに向かおうとした時であった。
・・・・・・・・・ズブリ
「・・・・え?」
足元に、何か妙な違和感をハクロは感じた。
城の床のような硬質な感じではなくて、泥を踏みつけたかのような感触である。
そのまま足元を見て見ると・・・・
「っ!?」
そこにあったのは、まるで闇のように真っ黒な沼のような何かであった。
そしてすぐさまハクロは気がつく。
自身の体がその中にズブリズブリと沈んでいっていることに。
足を動かそうにも、素手に足元いっぱいに広がっており、粘着性があるのか全く動かせない。
直感でハクロは悟る。
この存在こそが、あの女性たちを攫っていく噂の根源であり、その犯人であるという事を。
また、狙ってきたのは王女ではなく、ハクロ自身という事を・・・・
「れ、レイさむぐぉぅ!?」
慌てて声に出して叫ぼうとしたが、その沼のような何かから触手のようなものが飛び出し、ハクロの口元に巻き付いて声をふさぐ。
糸を出してちょっとでも抵抗しようとしたが、下半身の蜘蛛の部分はすでに埋まり、手から出そうとしたが、自身の身体に力が入らないことにハクロは気がついた。
巻き付かれた瞬間、もしくはこの真っ黒い沼のような何かに足を踏み入れた瞬間に痺れ薬の様なものを付けられた可能性がある。
必死に抵抗しようにも、時すでに遅し。
思った以上に彼女を飲み込む速度が速いようで、もうすぐ完全に飲み込まれる。
(れ、レイ様・・・・・)
飲み込まれる寸前にハクロが思ったのはレイの事であり、そのまま彼女は飲みこまれて姿を消したのであった・・・・・・
姿を消したハクロ。
何に飲み込まれ、何処へ連れていかれようというのか。
そして、そのハクロの事態にレイたちは・・・・
次回に続く!!
・・・・R18になったらやだな。ほどほどの加減が必要だろう。




