愚者は滅亡の道を歩む
主人公不在回
今回はちょっとシリアス&ダークかも?
SIDEベスタリーニァ王国
・・・・ベスタリーニァ王国、王城内で国王フゥーリッシュ・フォン・ベスタリーニァは狂乱していた。
「うぐわぁぁぁぁぁぁ!!金ねぇ!!切り札ねぇ!!軍勢もねぇ!!」
「陛下!!どうか気を確かに!!」
「そんなことを言う暇があるなら、この絶望しかない状況を考えだせぇぇぇぇひぃぃぃはぁぁぁぁ!!」
城内の宝物庫から軍資金兼自分たちの贅沢用のお金が消失。
重税をかけまくったことにより国民の不満が大爆発寸前。
ストラクト王国との戦争中だが、もう圧倒的不利で後数日もしないうちに確実に軍勢が城へ押しかけてくる。
切り札にしようとしていた人工生命体(兵器化して隷属させる)も、いつの間にか奪われていた。
・・・・そしてこの状況で敗戦となってしまえば、後はどうなるのかはこの愚王にも明白である。
「この王座もおりたくないし、せっかく手に入れた権力を・・・追い落としまくって、汚いことをやりまくって手に入れたこの権力を奪われるのは嫌だぁぁぁぁぁ!!」
狂人のように泣き叫ぶフゥーリッシュ国王に、周囲にいた他の取りまきでもあった貴族たちも沈んだ気持ちになっていた。
この愚王を生贄に差し出して自分たちの保身も考えていたのだが・・・・さすがにもう逃れられないのが分かるし、そもそもこんな愚王を差し出しても何にもならないのが分かっているからだ。
自分たちが推し進め、色々工作を進め、この愚王を国王の座につけるという選択を彼らはしていた。
だが、もう時すでに遅いのだが、ようやく彼らはその選択が間違っていたことを理解し、飲みこめたのである。
・・・・愚王を除く、取りまきでもあった貴族たちはそこで決意した。
今までやりたい放題の好き放題を自分たちはやって来た。
だが、ここまできてようやく目が覚め、自分たちがどれだけダメダメな存在なのかようやく理解できた。
ならば、最期はきちんと責任を取るのが良いのではないだろうかと。
各々の貴族たちは自身の家族や、今まで迷惑をかけて来た者たちに頭を下げ、どうにか他国へ亡命を指せたり、攻めてきているストラクト王国軍に自ら出頭して、その縁者の命乞いをし、自分の命を差し出したりなどもした。
愚王フゥーリッシュを除く、その周囲にいた者たちは皆、自らの過ちを悟り、最期には改心した。
だが、愚王は狂乱したまま戻らない。
彼は自らの過ちも、愚行もわからないほど中身が空っぽの者であった。
周囲の者たちは目が覚め、自身の行いを悔い、そのことに関してせめてもの行動を起こしているのというのに、愚王フゥーリッシュは狂乱し続ける。
・・・・そして、その狂気はついにあるモノまで引き寄せてしまった。
「うわぐぁぁぁぁぁ!!もうだめだぁ!!死にたくはない!!処刑されたくはない!!まだまだ贅沢や権力を振りかざしたりしたい!!」
もはや誰もかも愚王を見捨てていなくなった城内で、フゥーリッシュが叫び狂気にのまれている時であった。
『・・・・・へぇ、ここまで欲望を固執している人って初めて見たよ』
「何者だ!?この状況を覆せるほどの者なのか!!」
突如として聞こえた声に、フゥーリッシュは反応した。
周囲を見渡すが、誰もいない。
だが、その声ははっきりとしていたのだ。
『んーーーーーさすがに無理だね。でも、だったら最後の悪あがきとかはしてみたくないかなぁ?ある方法を使えば、うまくいけばもしかしたらいけるかもしれないよ』
「ならばさっさとその方法とやらを実行しろ!!まだここで終わるような器ではなく、世界すら手に入れるほどのこの優秀なわたしを手助けしろぅ!!」
『・・・うわぁ、物凄い上から目線だけど、まあいいかなくひひひひひひひひひひ!!』
その不気味な声の主に、わらにもすがるような気持でフゥーリッシュが叫んで命令をすると、その声の主は笑い・・・
『ま、この方法だと確実に化け物になるから人間やめちゃうよ。まぁ今さら遅いけどね、歴史上稀に見る大馬鹿愚王のフゥーリッシュやい』
「な?化け物にな、ぐべけぇぇぇぇぇぇl!?」
化け物になるという発言を聞き、フゥーリッシュが尋ねようとしたとたん、彼の全身がとんでもない激痛に襲われた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁl!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!」
『全身の細胞を無理やり作り変えているからねぇ。でもま、命を落とさないように微調整をしているから安心してね?目覚めたときにはものすっごい怪物になっているだろうけど、ここでおさらばするね!!貴重な実験の御協力に感謝いたします!!初めてやっと人の役に立てましたね愚王さん!!』
狂いそうな・・・・いや、もう狂ったフゥーリッシュの最後に耳にした言葉はその言葉だけであった。
いったい何者が彼にそのような事をしたのかはわからない。
ただ、最期にフゥーリッシュが思ったのは、自身の王座につけたときのあの幸せな時であった・・・・・
人間だった身体が崩れ、あちこちの細胞が分裂・増殖・改造されて異形の者へと変化していく。
そこに出来上がるのは・・・・・もはや、狂気に呑まれて知性を失った、モンスター以上の怪物だけであった・・・・・・・・・・・・・
・・・周囲の者たちは、ようやく自身のこれまで行ったことを受け入れ、会心できた。
だが、愚王フゥーリッシュは自身の過ちに気がつくこともなく、最期まで救いようの無かった者だと、後世の歴史には記されている。
愚者が変化するのは異形の怪物、果たしてどうなる事なのやら・・・・・・・




