銭湯内での悩み
サービス回・・・・なのか?
SIDE女湯
「はふぅ・・・・いい湯ですねぇ」
都市ベタリアンにある銭湯の女湯にて、風呂に浸かりながらハクロはそうつぶやいた。
指名依頼報告のための道中だが、経由地点としてこの都市で宿泊することにして、そのついでにここに入りに来たのである。
この銭湯はかつて、ここにハクロたちが滞在していた時の事もあってか、肩まで疲れるほどの深く掘られた風呂もあって、そこに入浴しているのだ。
「木の根がふやける・・・・でも暖かい・・・」
「こういうところは足の裏までしっかり洗わないといけないでありますな」
半身浴をしているカトレアに、風呂に入る前に丁寧に足の裏まで洗う桜。
『長湯すると茹るから水でちょっと薄めたーい』
「ダメッシャよ。茹で上がるならその前に上がればいい話ッシャ」
風呂の中でビチビチはねようとするアイラを抑えるユリ。
そんな彼女たちを見ていて、湯船につかっていたセラフィムはふと思った。
「ねー、ちょっと聞いてみて良いかなのん?」
「んー?なんでしょうか?」
「あのね、どうやったら皆のように私の胸を大きく出来るかなのん?」
その何気ない質問に、ちょうど入浴していたこの都市の女性たちがピクッと耳を動かした。
自身の胸に自身を持てない人は意外とおり、その回答を聞きたくなったのである。
何しろ、ハクロたちはセラフィムを除く全員が胸が大きいのだから・・・・・
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SIDE男湯
「えーっと、何で全員壁に耳を立てているんですかね?」
「しー!!良いだろうこのぐらいは!!」
「美女を増やしてきたお前にはいいだろう!!」
「俺達だってこのぐらいは楽しみたいんだよ!!」
そのころ、男湯では女湯との仕切りの壁に張り付くおっさんたちの姿が見られた。
覗きとかまでにいかないのは、この銭湯はきちんと対策がされているようで、穴をあけようにも子の仕切りには鉄板が何重にも詰まっているそうなのだ。
どれだけののぞき対策だよとツッコミを入れたいが、別にする側ではないので気にすることはなかった。
ただ、この都市にはレイの使い魔たちのファンクラブが多くおり、銭湯に入浴するところを見かけた者が声をかけ、こうして集まってセミのように壁際に張り付いているのであった。
むさくるしいなぁとレイは思いつつも、あえて何もしない。
なぜなら、その対策と思わしき魔道具の様な・・・天井から狙いを定めている存在に気がついたからである。
レーザーでも発射しそうな・・・・・いや、よく見ればとがった棒のようなものが装填されており、壁に張り付いているむさいおっさん共の・・・・
この銭湯、噂では持ち主がどうも元すんごい冒険者だったようで、このように覗き見・壁について聞き耳を立てるような輩に対して徹底的に懲らしめるような仕掛けが施されているらしい。
惨状を予測できたので、レイは巻き込まれぬように暖まってから、さっさとその場を離れたのであった。
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SIDE女湯
「・・・えっと、胸を大きくする方法ですか?」
「そうなのん!!私だけぺったりんとしているのはなんか仲間外れのようなのでいやだもんなのん!!」
頬を引きつらせつつ、ハクロが確認を取ると、切実なようにセラフィムが叫ぶ。
その言葉に、その場にいた他の女性入浴者たちもうんうんとうなずいていた。
「とは言ってもですね・・・・私は元からこの体型ですし・・・」
ハクロは答えようとしたが、答えられない。
何度かレイをその脅威の胸囲で窒息死させかけたことはあったのだが、そういうことを考えたことがなかったからである。
「そういう類の事なら某はある程度の返答ができるでありますな」
と、ハクロが悩んでいると体を洗い終えたサクラが湯に入りながらそう言った。
「本当なのん?」
「とは言っても、望みの回答にはならないでありますよ。某だってある程度の予測とかしかできないでありますし」
「それでもなんとかできるのならお願いするのん!!」
物凄いキラキラした目でセラフィムは懇願した。
「う~ん、まず言っちゃなんでありますが・・・・・体形に関してのみで言えば、種族的要因と環境要因がありますな」
「種族的要因と環境要因?」
「前者は某とハクロ、アイラ。後者はカトレアとユリに当てはまるでありますな」
あくまでもこれは自身の予測と経験から考えられることと、大事な事なのでサクラはもう一度そう言った。
「前者の種族的要因。これは某たちの体格であります。アラクネにケンタウロス、どちらもモンスターの中では体格が大きい方で、それに比例して・・・その胸囲も大きくなっているのだと考えられるでありますよ。アイラの場合は元々のその体形に近い種族とも言うかもしれないでありますな。その例に従って言えば・・・・その、セラフィムの場合は小型というか、小さいのでその胸囲でありますかな・・・」
口を濁しつつ、何とかその言葉をサクラは言った。
「・・・つまり、私のは種族的要因ってことなのん?絶望というしかないのん?」
「あー・・・・多分でありますからな!!環境要因を考えればまだ望みが少々・・・」
「環境要因は何なのん?」
やや黒いオーラを出したセラフィムの様子を見て、慌ててサクラは次の解説に話を変えた。
「環境要因は、言うなれば周囲の環境が影響を与える事であります。カトレアの場合、その生まれた当初に某がいなかったので主君たちからの話によってでありますが、周囲の土壌の栄養が十分豊富だったがゆえに成熟して生まれたのではないかと思われるのでありますよ。プリンセスドリアードゆえに、もしかしたら種族的要因もあるかもしれないでありますがね」
「あれ?ユリはどうなのん?」
「ユリの場合、元はでっかい白い大蛇の見た目だったでありますよ。ただ、『進化のきっかけ薬』というのを飲み、某たちが近くにいた結果、進化時の姿が某たちに近くなった・・・・いわば、周囲の環境が影響を与えたという事になるであります」
「・・・つまり、サクラたちの胸囲がでかいからユリもでかくなれたという事なのん?」
話を聞き、自身の胸囲の解決に役に立たないことをセラフィムは悟った。
「えっとその・・・」
「なんというか・・・」
「そういう事でありますかな」
『不可抗力不可抗力だよー!!』
「自然な流れッシャよ!!」
セラフィムから感じとれる負のオーラに、慌ててハクロたちはフォローする。
「なのなのなのなの・・・なのーん!!ずるいなのん!!」
だが、どうにもならずセラフィムのコンプレックスによる思いが爆発した。
「よこせなのん!!攻めて余っている分揉ませてよこせなのーん!!」
「ちょっと!?セラフィムやめてってひゃぁっつ!?」
「落ち着くのが良いと・・・・んっ!?」
「タンマタンマでありま、ひゃぁぁぁぁぁ!?」
『不可効力だよーーーーーー!!』
「やめるッシャせらふぃむぅっつ!?」
・・・・・女湯にて、しばしの間セラフィムが暴走し、落ち着いたころには皆満身創痍な状態になっているのであった。
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SIDEレイ
「・・・何をやっているんだろうかハクロたちは」
湯船から上がり、宿へ向かうためにも皆を待っていたレイは、女湯の入り口からも聞こえる悲鳴・・・なんか色っぽい声にどきりとしていた。
そして同じタイミングで男湯からは恐怖の悲鳴が上がっていたのは言うまでもない。
「な、なんだあれはぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!電撃がぁぁぁ!!」
「はぅわぁ!?」
「新しい扉が開きそうでもうやめてぇぇぇ!!」
「ああああああああああああああああああああああっつ!!」
男湯では地獄、女湯でも地獄が起きているようだけど、恐怖の度合いとしては男湯の方が大きいだろう。
後日談として、この後覗きをしようとする者たちがいなくなったとか、新たないけない扉が開いちゃったとか・・・・・




