禁忌の正体
さてと、何が研究されていたかな?
・・・・愚王と呼ばれるようなふーなんとかって国王が退出した後、レイたちはこっそりその隠し部屋へと侵入した。
幸いにして、中にいたのは研究員とかで非戦闘的な人たちであり、眠り薬でぐっすりしてもらう程度で済んだのはよかっただろう。
楽だった。ここまで楽だったから逆に問いたい。
「この城のセキュリティ本当に改善したほうがいいよな・・・・侵入してきた側が言うのもなんだけどね」
「確かに、これ敵でもある私たちの方が心配したくなるレベルですよね」
がばがばすぎて本気で心配したくなったよ。
まあ、とりあえず研究員たちは眠らせたので、その場にある禁忌の研究とやらの調査をさっさとレイたちは行うことにした。
いつあの愚王が戻ってきてもおかしくないし、早期撤収のほうが良さそうだからね。
探すこと数分、案外あっさりと禁忌の研究とやらの証拠が見つかった。
「お、主君よこれが禁忌の研究とやらの書類ではないでありますかな?」
「確かにそれっぽいな。中身も確認しないとね」
サクラが見つけたのは分厚い書類の束なので、ちょっと端折って読んでみることに。
研究に関してのレポートのようだが・・・・・・・
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「人工生命体式生物兵器製作研究」
・本研究は、現在我が国と戦争中であるストラクト王国に対して一発逆転の切り札となる重要研究。
・生命創造は神の領域でもあり、禁忌の研究ともされるがこの研究をすることをあの愚王は決断。
・優れた者たちが集められ、半強制的におしすすめられる。
・人工生命体を生みだし、兵器化するという時点で倫理として外れているようだが、一切の責任は負うつもりはない。
・そもそも生みだした人工生命体がいう事を聞くのか不明なため、「隷属の首輪」の改造物を使用してムリヤリ国の管理下に置く予定。国際法的にも違法すぎるのは承知の上である。
・魔道具も組み込み、半サイボーグ状態にする予定もあった。
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「人工生命体・・・人造人間ってところか?」
何処の鋼の世界だよ。
そしてこれに愚王って書かれている時点で、このベスタリーニァ王国国王がいかに人望がないのかがよくわかった。
「内容を見る限り、人以上の・・・・モンスターと言ってもいいような生物兵器を生みだそうとしていたようですね」
「一個体だけを作製し、その性能を見てから量産の予定があったみたい」
「ぬぅ、確かに禁忌のようなものでありますが・・・・こんなものどうやって思いつくのでありましょうか」
『人工の生命体・・・・モンスター的に見てもやばいモノだと予想できるねー』
「しかも、国際法的にも違法である「隷属の首輪」の改造物を装着予定ッシャ・・・・・この時点で救いようのない国ともいえるッシャね」
ぱらぱらっと中身を見て意見を言いつつ、この隠し部屋の中にある物をすべて仕舞っていく。
「生まれたときから兵器としてしか見られないっているのは・・・・倫理的にもなぁ」
モンスターとかはまだいい。
兵器とかではなく、人に対して純粋に攻撃を仕掛けてきたり、中には魔物使いに仕えて使い魔になって友にも家族にもなるのだから。
だが、この人工生命体の研究は生きた者として見るのではなく、兵器としてのみ見るというモノだから・・・・なんかやるせないような気になるな。
くまなく探すと、構成のための材料置き場も見つける。
木炭、硫黄、肉、骨の残骸・・・・・・いやもう、人の体にある成分をしこたまため込んでいるのか。
「あ、レイ様。これ人工生命体作成用の容器って書いていますよ」
と、ハクロが見つけたのは何やら怪しい装置と、設置されて中に謎の液体が貯まっているドラム缶をガラスのような形にしたものであった。
その内部にはなにやら小さな黒い球体がぷかぷか浮いており・・・・・
「ふむ、この中に材料を投下して作成するって感じだったのかな」
「最後の仕上げとして、雷が落ちるのを待つか、雷の魔法を使って電気を供給して起動する奴のようでありますな」
なんかもう、ここまできたら狂気の科学者の実験のようにも思える。
「この中に浮いている黒い小さな球体は人工生命体の核の一部らしいですね。魔石もしくは魔力を取り込んで完全な核となるようです」
なるほど・・・・魔石とか魔力とかが必要だったのはこの核とやらの為だったのか。
詳しく調べると、生み出すにはさらに魔力も必要であり、高品質・高純度な魔石が最適のようだが・・・
「他に膨大な魔力とか、膨大な数の死者も代用できるのか」
「どっちも無茶苦茶ですね・・・・」
そこで一番まだ可能性のある魔石を狙って、襲うように仕向けてきたという事か。
しかしまぁ、魔石以外の材料をきちんと全部そろえているとはこれはこれですごいのかもしれない。
しかし、このまま放っておくわけにもいかないだろう。
「この小さな核そのものは、どうやら偶然の産物らしいですね。ですからここで破壊してしまえばまた同じような研究をしようにもすることがほぼ不可能になりそうですが・・・・」
「とは言ってもなぁ、生まれる目的が兵器化かつ、それでいて生まれるのが不必要みたいにされるのは・・・・」
これはこれで倫理的に問題がありそうだし、生まれること自体が否定されているようで可哀想にもなる。
「・・・・待てよ?魔石以外でも魔力でもいいんだよな?」
ふと、思いついたことがあったのだが、ハクロたちの表情が微妙なモノへと変わった。
「・・・レイ様、何を思いついたのかは今物凄ーくわかりますよ」
「表情だけでもうわかる」
「主君、流石にその方法は・・・・いや、まあ某たちは主君の方針に従うでありますが・・・」
『出来るのかなー?』
「まあ、膨大な・・・・という点では大丈夫ッシャ・・・・多分」
もう長い付き合いなだけに、皆俺が何をしようとしているのかわかったようである。
「まあ、倫理的な問題で、禁忌だとしても・・・・どうせこの国にわたってもろくでもないし、今ここで解決したほうがいいからね」
そうニヤリとレイは微笑むと、ハクロたちはその考えが変わらないことにため息をつくのであった。
(反対はしないけど、流石に規模が禁忌のものだと心配はするのですよね・・・・)
・・・なお、当初の予定は某天空にいたロボのようなモノにするつもりであった。
どうしてこうなった?




