いざ敵陣へ:その3
無双してもよかったかもしれませんけど、ここはちょっと頭を使いました。
SIDE:ベスタリーニァ王国:王城内
・・・暗殺部隊を送って3日、フゥーリッシュ国王は未だに届かぬ任務完了にいら立ちを募らせていた。
「・・・遅い!!早くせねばあの研究は完成しないというのにあいつらは何をしているのか!!」
「落ち着いてください陛下!!いくら何でも彼の者が居る地から往復してくるには時間がかかります!!」
「そのうえ、現在侵攻してきているストラクト王国軍に出くわさぬようにしているため、それなりには・・・」
「えええぃ!なんでもいいから早く戻ってこぬかあのバカ者どもはぁぁぁ!!」
待つことができないと叫びまくる愚王に、他の者たちは何とかなだめる。
「くそぅ!!早くせねばあの禁忌の研究完成の前に、だめになってしまう!!」
すでにダメなような気が皆していたが、ご機嫌を取るために言わないのであった・・・・
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SIDEレイ
「・・・・うわぁ、セキュリティ面ひどいな」
「あっさり城内に入り込めましたもんね」
「いや、マイロードの魔法もあるけど・・・」
「流石に人を戦場に送り過ぎでありますな」
『ダメダメだねー。あ、このダメ具合を元にして新しい歌でも作ってみようかなー』
「愚王協奏曲とかそう言うのが良いかもッシャ」
現在、レイたちは思いっきりベスタリーニァ王国の首都にある王城へ侵入していた。
あの縛り上げてかゆみに悶え苦しんでいる暗殺者たちから、確実にばれないように城内へ侵入できそうなルートを教えてもらう代わりに、かゆみ止めを処方したのである。
まだあの木に縛り上げたままだが、かゆみがひどいのに比べればましだともはや痒さに達観した目でそう答えていた暗殺者たちを思うと、どれだけやばい状態だったのだろうかと考えてしまう。
とにもかくにも、そのルートで入りこんだのだが・・・・
「地下からならそりゃバレないよな」
「というか、ベスタリーニァ王国中にここまでの地下通路があるって時点でセキュリティもなにもあったものじゃないですよね」
大丈夫かこの国。
いや、心配しなくてもいいか・・・・・どうせ俺たちにとっては滅びようが関係はない。
けれども、流石に暗殺者を仕向けてきたうえに、ハクロたちを殺害して体内から魔石を抜き取り、それを自分たちの禁忌の研究とやらに当てようとした行為は・・・・さすがに許せないからな。
直接手を下してやろうかと思ったが、ここでふと思いついた。
・・・・その禁忌の研究とやらのすべてを奪ってやろうと。
「一発逆転とかほざいているらしいけど、その研究ぜーんぶ無くなったらそれこそ笑い話に出来そうだしね」
「ついでに、その証拠を持ち帰って諸国へ発表すればあっというまにベスタリーニァ王国へ非難殺到」
「ついでに汚職とかの証拠もあれば、この国の国民たちへ大々的に公表して」
「大反乱待ったなしでありますな」
『やるなら徹底的に根っこから♪』
「立て直せぬぐらいまでに痛めつけるッシャ」
「「「「『「ふふふふふふふふふふふふふふ」』」」」」
全員そろって、思わず真っ黒な笑みをレイたちは浮かべた。
そう言えば、せっかく城内に入り込んだが、警備兵とかの数が少ないようで、戦力として戦場へ送り込まれている可能性がうかがえる。
まあ、それでもわずかに残っているやつがいたりしたが、眠ってもらいました。縛り上げて隠しておいたし、問題はないだろう。
「宝物庫とかあればいいけどな。そうすれば空間収納の魔法があるし、根こそぎ奪えるし」
「財源を絶つのはまあいい手段ですよね」
「破産、借金、不満爆裂っと」
禁忌の研究とやらがなされているのは、情報によると城のどこかから、あの親友時に使った地下通路とは違う方にある地下の隠し部屋らしい。
その城内で、あっさり宝物庫を見つけて証拠を残さずに奪ったのは・・・・まあ、臨時報酬という事で。
国民の血税とかだろうけど、明らかに無駄な使い道をされそうだしね。この国が滅亡でもしたらその復興資金に充ててやるか。
「にしても、なかなか禁忌の研究とやらが行われているところを見つけにくいな・・・・」
「この国の愚王だけがそこを知っているようですので、そのあとを付ければいいのでは?」
「なるほど」
そうと決まれば、愚王を探しましょう、後を付けましょう、ついでにボコりましょう。
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SIDEフゥーリッシュ国王
「ちくしょう!!遅いだろアノ無能な部隊どもめが!!」
・・・・会議を終え、自身の自室へと愚王・・・・もといフゥーリッシュ国王は戻っていた。
そして、送り出したはいいが帰ってこない暗殺部隊にいら立ちを募らせて、暴れまわっていた。
「このままでは我が功績を残せぬばかりか、下手すりゃ打ち首拷問縛り首みたいになるだろうに!!あいつらが代わりになってくれればいいのに!!」
激怒に駆られながらも、とりあえず自身をなだめて気持ちを落ち着かせる。
今こうして激怒しても何もならないことを、愚王でもわかっているのだ。
「はぁ・・・いかんいかん、あの禁忌の研究の方の様子を見に行かねば・・・」
自室の一部にある壁の前に愚王は立った。
そして、その横にかかっている絵画に手を伸ばし、どかすとボタンがあるのでいつものようにそれを押した。
・・・ゴゴゴゴゴゴゴ
ボタンを押すと、その壁が左右に分かれ、地下へと続く階段が現れる。
それは代々ベスタリーニァ王国の国王だけが使用する秘密の隠し部屋であり、その代の国王によって使用される用途が異なる。
ある国王は植物が咲き誇る庭園に、とある国王は国民のために上水道の整備のための実験場に、またとある国王は国民の生活がより豊かにできるような様々な魔道具の研究へと使用していた。
そして、今の国王であるフゥーリッシュは、己の野望をかなえるために、禁忌の物を研究するための場所へと改装していたのである。
研究班を作製し、その研究者たちをこの部屋へ軟禁に近い除隊で閉じ込めてやらせていたのだ。
「おい、研究はどうなっている」
室内へ入ると、そこにいた研究員の一人にフゥーリッシュ国王は話しかけた。
「はっつ!!言われたとおりの禁忌にあたる研究ですが、あとは高純度・高品質な魔石さえあれば完成いたします!!」
材料も何もかもそろっているのだが、残るはその魔石のみである。
だが、現状未だに手に入っていないのがフゥーリッシュ国王にとっては悩みの種であった。
と、ここでフゥーリッシュ国王は思いつく。
「魔石以外で可能なものはないか?」
「代用品ですか?そうですね・・・・・いや、理論上はあるのですが、流石に無理かと」
魔石が手に入らぬのなら、その代用品があるのではないかと、愚王にしては珍しく閃いたのである。
そして問いかけてみたところ、その研究員は言葉を逃がしながらもその可能性があるような言葉を出した。
「答えろ!!魔石以外で可能だとしたら何がある!!」
命令として思いっきり声を荒げて問い詰めるフゥーリッシュ国王。
その気迫に圧倒されながらも、研究員は答えた。
「魔石以外ですと・・・・そりゃその高純度で高品質なモノの代わりですから、同じようなものとしては・・・莫大な魔力があればと」
「魔力か?」
「はい、魔法を行使する際に使用する力です。ですが、理論上宮廷魔導士クラスを超え・・・いや、ぶっちゃけ言って化け物クラスの量がないと無理ですね。奴隷を購入して大量に注ぎ込んだとしても雀の涙ほどにしかならないでしょう」
「くっつ!!だめかやっぱり!!」
そう吐き捨てて、国王は地下室から出ていく。
やりようのないこの憤怒の気持ちを抑えるためにも、後宮へ自身の身体を慰めに向かうのであった・・・・・。
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SIDEレイ
「・・・・あそこに隠し部屋があったのかよ」
窓の方からこっそりとレイたちはその様子をうかがっていた。
外から丸見えになりそうだが、そこは水魔法を少々利用して光の屈折を元に何とかごまかせるような状態にしているのである。
魔法「水隠れ」・・・・水魔法を精密に扱えないとかなり難しいモノではあるのだが、難なくこなせている時点でレイは相当な規格外であろう。
まあ、禁忌の研究とやらを行っている場所の情報は特定できたし、あの愚王ともいえるような奴が後宮で色欲にまみれている間にいただきましょうかね。
というか、ここまでバレないのならここで愚王を倒してもよかったかな。
いや、直接手を下すよりも、間接的に長く苦しめたほうがいいだろうしねぇ・・・・・・・・・
さて、その禁忌とやらの正体も気になるな。
人が触れてはいけないようなものがそう言うのに該当するだろうし、何があるんかね?
生命創造、圧倒的殺戮・破壊兵器、バイ○ハザードの〇ウイルスみたいな細菌兵器、倫理的なところがアウトな奴・・・・・いろいろ考えられるな。




