いざ敵陣へ:その2
花粉症
マスクが欠かせぬ今日この頃である。
SIDE暗殺部隊:部隊長
・・・・自身の名前は正確には答えられない。
ただ、我等はこの国に使える暗殺部隊であり、どのような王でも仕えてきた古い歴史を持つ。
先日、数日ぶりにフゥーリッシュ国王からの暗殺命令及び、とある物の捕獲を命令され、我々は動いた。
狙うのはどうやらある冒険者魔物使いの所持する使い魔にある魔石をという事らしい。
なんでも、現在ベスタリーニァ王国内にてフゥーリッシュ国王は、研究班たちを速攻で結成させ、現在戦争中であり、物凄く相手が有利なため、その一発逆転を狙って禁忌の研究を行わせているのだとか。
その禁忌の研究は思った以上に手早く進んだそうだが、材料として最高品質クラスの魔石が要求され、そのような者が国内に現在ないため、我々を利用して、その魔物使いが持つ使い魔を殺害・・・口封じも兼ねてその魔の使いも殺害し、魔石を手に入れようという事のようだ。
魔石がダメであるならば人の魔力も代替品としては可能らしいが、要求される量が魔力だとさらに馬鹿にならないほどであり、魔石を狙った方がいいらしい。
・・・・この命令を受け、我々はあらかじめストラクト王国側に出張させていたスパイと連絡を取った結果、その目的である魔物使いが、なんとこのベスタリーニァ王国へ向かったのだという。
速度も以上に早いそうで、目的はいまだ不明だがこれは好都合。
その魔物使いはストラクト王国側にいたので手を出すにはより綿密に計画を練らねばならなかったが、わざわざベスタリーニァ王国内へ侵入してくれるなら、こちらの庭のようなものだから、いつでもどこからでも奇襲をかけ、暗殺をしやすいのである。
そして今晩、確認した場所へ向かい、反撃もさせないうちに静かに襲いかかって目的を果たすつもりだったのだが・・・・・。
「どうしてこうなった・・・」
現在、我々は予想外の逆の奇襲をかけられ、あっという間に皆捕縛されたのである。
そして、目的を話さぬようにあらかじめ口内に仕掛けていた毒物を飲みこもうとしたら、どういうわけか目的である魔物使いはそれを知っていたかのように我々の口を無理やりこじ開け、毒物を取り出し、さらには舌を噛んで死なない様に魔法で細工されてしまった。
・・・我々にはどこか慢心したところがあったのだろう。
そうでなければ、このような失敗を招くことはなかった。
ただ、時すでに遅かったようだ・・・・・・
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SIDEレイ
「レイ様、こいつらの口内から出てきたこれらって毒物のようですよ」
「んー、こういう輩って自決するために何か仕込んでたりするのを予測できていたけど、まさか本当に仕込んでいたとはちょっと思わなかったんだよね」
漫画やアニメの様な感じだけど、まさか本当に口内に毒物が仕掛けられていたとはな・・・・
なかったらなかったで、舌を噛んで自決しないように、水魔法でぬるぬるんのぬめんぬめんしたものをまとわりつかせて、歯を立てようにも滑ってしまうようにしたのである。
これはアイラとの関係ができたのがよかったね。こういうコーティングする魔法は禁書庫で読んだことがあるけど、実際にやってみたら水魔法で精密性が必要だったからな。
「ふむ、主君よ。こやつらの持ち物を探ってみたのでありますが、暗器・・・要は暗殺用の道具が多く仕込まれているようであります」
『暗殺者ってことかなー?』
「暗殺者は潜み、そして知られぬように行動するモノ・・・・つまり、正面からの戦闘は専門外でもあるッシャから、楽に捕縛できたッシャね」
現在、レイたちの目の前には、カトレアによって急速に育てられた木に、深夜こっそりと襲い掛かって来た全身黒タイツ姿でなんか不気味な者たちが縛り上げられていた。
縛り上げに使用したのはハクロ製のロープで、そんじょそこいらのロープとは違って簡単にはほどけない、切れない、焼けないの高性能なものである。
・・・・暗殺者のようなモノだとしたら、今のユリの言葉でも納得できるな。
正面からの戦闘は不得意な様で、案外あっさり倒せたもん。
ハクロの糸でからめとり、
サクラの剣で横なぎに払い、
ユリの蛇の部分でたたきつける。
俺、カトレア、アイラは縛り上げに少々力を使った程度だし、出番なかったよ。
前衛をする人たち、結構強いからね。あ、ハクロは後衛にもなるか。
「さてと・・・こういう人たちがいるってことはないか仕掛けてきたんだろうけど、話してくれないかな?」
「こういう輩って、そう簡単には話しませんよね」
口をつぐんでいる黒タイツの不審人物共に対して、俺たちはどうすべきか考える。
「・・・だったら、いい方法がある」
と、カトレアが何か思いついたようである。
「何かあるのか?」
「自白剤を作って、投与すればいい・・・・使用した後は全身物凄く痒くなるという副作用付きだけど」
何だその副作用。廃人になるとかの方ならまだわかるけど、それはそれでいやな副作用だな。
「作れるんですか?」
「マイロード、預けていた薬草箱を出してほしい」
「ん?出発前に預けてきたこれか?」
カトレアが預けてきた薬草箱を俺はとりだす。
プリンセスドリアードであるカトレアは、植物に関して物凄く詳しく、ある程度の薬までなら調合できるようだ。
「薬草と・・・こっちの毒草を混ぜて・・・」
「今さらっと毒草って言わなかった?」
薬草箱なのに、なんで毒草が入っているんだ。薬と毒は表裏一体とかいう感じだからか?
数分後、カトレアは早くも自白剤を創り上げたようである。
「『単純型自白剤』。飲み薬ではなく塗り薬であり、全身にぶっかけて使用するタイプのモノ。質問されたことに素直に答えてしまうが、しばらく全身に地獄の様なかゆみを生じさせてしまう」
「素直にか・・・・嘘とかも吐かないよな?」
「大丈夫。ただ、聞いた以上に余計なことを話す可能性もある」
まあ、単純明快にこの黒タイツ共にかければいい話か。
「そーれっと」
一気に全部ぶちまけ、きちんと全員薬漬けになったようだ。言い方なんか悪いけどな。
かけてから数秒後・・・
「うぐわぁぁ!?」
「かゆい!!めっちゃくっちゃかゆい!!」
「ふぐぉぉぉお!!目がぁぁぁぁ!!」
「口の中に入ったのか歯茎が、歯が、舌がかゆい!!」
「ぎぇぇぇぇ!!」
「かゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆい」
かゆみ地獄へと黒タイツ共は陥ったようである。効果はすごい抜群のようで、何処が痒いのかも聞いてみたらあっさりとその場所を詳しく話したりもする。
「というか、この状態で素直に話してくれるのかな?」
「いやこれは・・・・・どうでしょうかね」
・・・・ちょっと何も聞かずに問答無用で薬を速攻で使ったのは間違っていたかな。
でも、特に問題なく質問して返事が返ってきたのでよかったと言えばよかったであろう。
聞くと、暗殺者とかのようで、目的が・・・・・使い魔たちの体内にある魔石。
その魔石を利用しようとするのは、なにやらベスタリーニァ王国王城の地下の方にて禁忌の研究がされており、現在戦争中のストラクト王国に反撃するために使用するらしい。
ただ、そこまで詳しいことは聞けなかったようで、この暗殺者たちはベスタリーニァ王国に長年仕えてきた者たちであり、愚王と呼ばれているようなやつでも、きちんと従う奴らだったようだ。
主が無能で、その部下が有能ってあるんだな。
「ただ・・・かゆいかゆい、今のフゥーリッシュ国王周囲にいるのは我々から見てもかゆいかゆいかゆいかゆい、無能であり、早かれ遅かれ国が亡びるのは時間の問題であろうかゆいわぁぁぁぁ!!」
「喋るかかきむしりたいのかどっちかを優先しろよ」
根性で喋れていた暗殺部隊とやらのリーダーである人はそう言い、後はものすごく痒そうにしていた。
「・・・・しかしまぁ、愚王というかなんというか。俺の使い魔たちを狙っていたという事か」
そう考えると、イラっとなんかむかつく。
容姿とかではなく、純粋にその魔石だけを狙っていたとしても・・・・・・ハクロたちを狙ったのは間違いない。
「あの・・・レイ様怒っていますか?」
「ああ、怒っているさ。流石にね」
そんなくだらないようなことで狙ってきたからには、それ相応の覚悟もあってしかるべきだよね?
今、俺たちはベスタリーニァ王国内の調査を指名依頼で受けているけど、内容に『何か問題が起きたら、自己判断で存分に暴れても構わない』ともあったよな?
・・・・・・よし、そうさせてもらうか。「何か」というのは俺たちが狙われた事であり、何かしらの禁忌の研究とやらをしているのは確定のようだし、自己判断で暴れさせてもらいますかね。
プチ怒り
愚王がとったのは、まさに逆鱗に触れたような行為でもあった・・・・・




