いざ敵陣へ:その1
本日2話目!!
ベスタリーニァ王国の方で、何やらよからぬ企みがあるそうだからその調査を指名依頼で受けたレイたちは現在、ルンべルドンを離れていた。
自宅の方はきちんと施錠し、貴重品等は空間収納の魔法によって保存してある。
「とは言っても、通常のルートだとストラクト王国軍に混じるからな」
「その為少し先回りできるルートなんですよね」
カタコトと揺られながら、毎度おなじみとなったサクラとハクロがカトレアをけん引する馬車モドキの移動方法を取っていた。
新たにユリも加わってけん引しているので、列車で例えるなら重連の様な感じになっているだろう。
まあ、アイラの方はけん引できないので真横を水球に入りながら泳いでいるという感じだけどね。
でもこの移動方法は通常の馬車よりもかなり速い。
改善が進み、より速度が出るような形態へと変貌しているのだ。
「でもさ、速いのはいいけどきちんと休憩を欲しくなったら言ってよ。別に急ぎの用事でもないし、何か怪しいことがないかの調査だからさ」
「大丈夫ですよ!」
「まだまだいけるのであります!!」
「問題ないッシャ!」
けん引しているハクロたちが振り返ってぐっと指を立ててきたけど、これ傍目から見たらやっぱり異様な集団だろうな・・・・
「まあ、マイロードは私の膝の上に座っていればいいのです。主は使い魔に守られ、使い魔は主を守る。そんな関係ですからね」
『でも実力で言えばその主の方が魔法で圧倒的に強いけどねー』
水球で泳ぎながらアイラは笑って言った。
何も言い返せないな・・・・でも、カトレアの膝の上は流石に遠慮してその横に俺は座っているのであった。
どんどん勢いよく進んでいると、段々あたりが暗くなってきた。
日が沈んできて、もうすぐ真夜中になるのだろう。
さすがに暗い中の走行は危険なので、今日は一旦ここで野宿をすることにした。
周囲にハクロの糸で警戒用の物を張り巡らせ、寝る際には交代制で見張りをして万が一の奇襲に備える。
この世界、盗賊とかも普通にいるし、こういう用心は必要なのだ。
・・・まあ、返り討ちできるだろうし、盗賊を捕らえたところで運ぶ手間が嫌なのでその場に埋めるけどね。
深夜、交代で寝て見張るために起きて、先に周囲を警戒して見張っていたサクラとアイラの二人と交代する。
一緒なのはハクロであり、糸をちょっと調整しているようだった。
「うーん、糸の細さはもう少し細くてもよかったですかね・・・?」
「こだわっているねー」
「こういう糸とかに関してのプライドがあるんですよ。アラクネの性分のせいかもしれませんけど、やっぱりできるだけ質のいいものを使いたいですからね」
ぐににと目を細めて糸を調節するハクロ。
そう言うところにこだわるのは彼女らしいというか、なんというか。
「糸だって伸ばし方やその日のコンディション、もしくは材質によってその性質が微妙に変化するんです。粘着性のある罠用や、衣服にするためのさらりとした触り心地などと、さらに細かく分けられますしね」
「そりゃまた大変な分け方だよね」
「でも、その分出したい糸を出せたら物凄く達成感がありますよ。たまにこんがらがってしまいますが・・・」
たまーにハクロがやる失敗として、自分の糸に自身が絡めとられることがある。
しかも手だけならまだしも、足とかにまで行くとかなり複雑化するからね。胸もなんか強調されるし・・・・
「でもこういう意図の調節が・・・・・ん?」
ふと、ハクロが言葉を途切れさせる。
「・・・レイ様、今糸に反応がありました」
「・・・・わかった」
ハクロが真剣な顔になってそう告げる。
どうやら今彼女が周囲に張っていた警戒用の糸に反応があったらしい。
(数は・・・4、いや6人ほどです。盗賊にしては動きが良さそうですから只者ではないでしょう)
(とりあえず皆を起こす。その間に時間を稼いでくれ)
(了解です!!)
小声で素早く話し、皆をゆすって起こす。
まだ距離はあるようなので、相手の方からしてみればこちらがすでに臨戦態勢に入っているとはわかりにくいだろう。
(左右及び正面へ散開。囲んできて攻めるようです)
(ちょうど2人づつなら、こちらも同じぐらいで対応可能か?)
糸でハクロが状況を把握し、皆に伝わる。
どうやら盗賊とかそう言った類ではなく、本当にやばめの人物たちの様だ。
・・・・にしても、なんでいきなり俺たちを狙うのやら。どこかから俺たちがベスタリーニァ王国へ探りに行く情報が漏れていたとか?
とにもかくにも、襲撃にレイたちは備え、それぞれ戦闘のための用意をするのであった・・・・・・
・・・・真夜中の戦闘。
光は少ないが、それでも状況は把握しやすい。というか、たまにはまじめにやるんですよ。




