愚者が弾くのは絶望の旋律
序曲的な感じですかね
SIDE:ベスタリーニァ王国:王城内
「ちくしょう!!なかなかいい戦果が出ないではないかボケなすびども!!」
ベスタリーニァ王国、王城内で国王フゥーリッシュ・フォン・ベスタリーニァはダァン!!と勢いよく椅子のひじ掛け部分を叩き、機嫌の悪さをあらわにしていた。
この国王の座を手に入れるために、彼は様々案事を画策し、次々と継承権がある者たちを亡き者にして、今の座に就いたのである。
その亡き者にするまでのことは、誰にも悟られずに済んでいたのだが、国王の座についてから彼はさらに野心を燃やしてしまった。
それは、この今自分がいる国だけではなく、世界をすべて征服しようと目論んだ愚かな計画であった。
自分の功績を高め、歴史に残るような偉大な王としてこの世界征服計画を彼は練ったのである。
そして、軍の上層部にいる彼にとっては都合がよくない頭の固い奴らの隙をついて、宣戦布告をまずはストラクト王国に出したのであった。
当初、フゥーリッシュ国王はすぐにでもストラクト王国があっという間にやられてしまうだろうと高をくくっていた。
しかし、彼自身の計画性の甘さか、情報の重要性を軽視してろくに調べなかったのが原因か・・・・・・そのせいで、初戦の迷宮都市ルンべルドンにてベスタリーニァ王国軍は大敗の結果に終わった。
捕虜の代金を請求され、それを無視して彼は新たに戦力を投下するように各地から無理やり徴兵し、それでもあっという間に負け戦が重なったのである。
そして、次第にストラクト王国側が攻め込み始め、あっという間にフゥーリッシュがいる城まで間近に迫ってきていた。
「くそう、軍がもう少ししっかりしていればここまで惨敗はなかっただろうに!!」
「中には攻められて即降参なんてひどいところもあったのですがね」
「兵たちの訓練をもっと厳しくすべきだったのだろう」
「だが、このままでは確実に・・・」
敗北する未来しか見えないと誰もが思った。
しかも、国民たちの不満も高まってきているようであり、最悪の場合は・・・・・
「愚民共が押し寄せてくる可能性がありますな。いや、もう秒読みと言ってもいいでしょう」
「どうにかならんのかお前たち!!」
フゥーリッシュ国王が叫ぶも、状況が状況だけに普段ご機嫌取りをする貴族たちもしんとしてしまう。
「・・・ちっ。まあよいがな。今、余の命令によってある研究が急いで行われておる。それさえ成功すれば一発逆転も夢ではないわ!!」
舌打ちをしながらも堂々とその研究が行われていることをフゥーリッシュ国王はいい、他の貴族たちもその研究が何のかを知っており、話しを合わす。
「せめてここに攻め入られる前に出来ればいいのですが・・・・どのぐらい研究がは進んでいるのでしょうか?」
「研究班によると、後材料がすべてそろえばという事らしい。禁忌に触れるような研究のはずだが、案外その材料とやらは禁忌に触れない物で済むのが意外だがな」
「肉、骨、モンスターの外皮、石炭、硫黄・・・・・・・確かに材料面だけで言うなら全く禁忌に触れないような気がします」
「ただ、それで作り出す・・・・いや、呼び出すと言った物が禁忌だからな。だが、勝てばいいのだ。いくら禁忌の事だろうと、今はもうこの一手しかないのである!!」
ばぁん!!とひじ掛けに手をたたきつけ、叫ぶフゥーリッシュ国王。
もはや今の状況から考えるに、戦力の増加を進めるよりも、その材料をそろえるのが一番重要なのだ。
「ただ、残るは魔石・・・・それも物凄く上質なものが必要とありますが、現在国内にはないはずです」
・・・・その材料にひとつだけ問題があった。
他の材料ならばまだ密輸などでギリギリ入手が可能だが、最期の重要な材料・・・モンスターから得ることができる魔石だけが、どうしても手に入れにくい状況であった。
計算上、必要とされている高純度の魔石はもはやレアな類であり、そんじょそこらのモンスターでは取れないものだ。
「・・・そういえば、ふとこんな話がありましたな」
と、その話しを聞いて貴族の一人が何かを思い出したかのようにつぶやいた。
「なんだ?」
「いえ、現在敵対しているストラクト王国・・・・そこにですが、魔物使いのとある少年の噂がありまして、その人物の使い魔であるモンスターは通常見かけることができないほどレアなものが多いらしいのです。そのモンスターの魔石ならあるいは・・」
「よし!!すぐにその者の元へ暗殺部隊を向かわせろ!!目的はそのモンスターの魔石確保だが、この計画を知られぬようについでに口封じもさせてだ!!」
すぐさま、フゥーリッシュ国王は命令を下し、この不利な戦況を形勢逆転できる最後の手段である禁忌の研究の完成のために、そのモンスターの魔石を捕獲しに行くことを、現在ベスタリーニァ王国内で最も優れた暗殺部隊に取りにいかせることにした。
モンスターは使い魔であり、その主人もいるようだが・・・・今は関係ない。
どんな奴だろうが、その高純度であろうと考えられる魔石を求めるフゥーリッシュ国王。
・・・・・だが、これは自らの首を絞める最も愚かな行為だったと後の歴史に刻まれることになる。
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SIDEレイ
「・・・・指名依頼ですか?」
「はい、それも・・・・王族からです」
・・・・その頃、ギルドにてレイは指名依頼が来たことを受付嬢から聞いていた。
戦争に参戦したくはないので迷宮に潜って何とか逃れていたのだが、まさかの指名依頼が届いてきたのである。
「依頼者は・・・・ガウン国王か」
まさかの国王だよ。
以前、小さい時に一度出会った時があるけど・・・・・まさか来るとは思わなかった。
「指名依頼内容は・・・『ベスタリーニァ王国内の視察』?」
「今戦争中であるベスタリーニァ王国の方でなにか怪しい動きがあり、戦争に参戦しなくてもいいから調べてみてほしいという内容ですね」
「参戦抜きでありますが、敵陣の中に探りに行くという依頼でありますか」
『腹の中を探るって言うのかなー』
指名依頼だから断ることも可能である。
だけど、内容の中に・・・
「『何か問題が起きたら、自己判断で存分に暴れても構わない』・・・って書かれているな」
国際的な面倒事にもならないそうだし、こっそり隠れながらなら問題はないかな。
「どうする?うけてみようか?」
「うーん、このメンバーだと・・・・・特に問題ないですね」
「何が来ようとも、肥料と化す」
「主君は某がきちんと守るであります」
『いざとなればドーン!!って暴れることができるしねー』
「よからぬことだろうと、探知できるッシャ!!」
皆特に反対はないようだし、この指名依頼を受けてみようかね。
受注手続きを経て、レイたちはベスタリーニァ王国に訪れることにしたのであった・・・・・・
・・・・ベスタリーニァ王国破滅へのカウントダウン開始!!
賽は投げられたとでもいうべきだろうかね




