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魔物使いでチート野郎!!  作者: 志位斗 茂家波
面倒ごとはやってくる
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それぞれの動き

本日2話目!!



SIDEベスタリーニァ王国



「・・・・ほぅ、つまりはルンベルドンに送った者たちは予定以上に早く瓦解し、捕虜にされたのか」

「その通りでございます」


 ベスタリーニァ王国、王城にある一室にて、今回の予定以上に早く瓦解した迷宮都市(ダンジョンシティー)ルンベルドンを落とすはずだった軍の一報の報告を受け、静かに考えながらそのベスタリーニァ王国軍のトップ、ビスマトル元帥は深く息を吐いた。


「それで、本来の目的である2つはどうなった?」


 そうビスマトル元帥は報告をしてきた部下に尋ねた。




・・・・今このベスタリーニァ王国の王座には、ビスマトル元帥にとっては愚王と呼ぶべきものが立っている。


 その愚王はまだ政権も安定していない中、急きょ自身の実績を高めるために今回のストラクト王国への侵攻を決定したのである。


 それも、攻める役である軍のトップであるビスマトル元帥に相談せず、取りまきでもある愚か者たちに乗せられて。



 そのことを元帥が知ったのは、すでに宣戦布告がなされた時であり、こういう時に限って愚王は素早かったのだ。


 このことに関してビスマトル元帥及び、ベスタリーニァ王国軍のトップたちは激怒したが時すでに遅し。


 この愚王は反抗しようとした者たちを速攻で牢に入れたりして聞く耳を持たない。



 かといって、ついていけないという理由で職を離れようにしても、その取り巻き共が反乱分子の種になるとか言って取り押さえてくるのは目に見えている。


 また、ビスマトル元帥たちが辞めたところで、この宣戦布告はすでになされた事であり、もはや戦争は回避できない。



 ここで軍を離れようとも、そうすればあの愚王とその愉快で愚かな仲間たちは別の者たち、しか賄賂とかでトップになろうとしている者達をそこに置くだけであり、そんなことをしたら明らかにダメな采配をして、この国は滅びてしまう。


 いくらなんでも、この国生まれであるビスマトル元帥たちにとって、国が亡びるという事は避けたい。

 


・・・・そこで、ビスマトル元帥たちは考えた。


 クーデターを起こすことも提案されたが、こちらだと国がボロボロになり過ぎてしまうので却下。


 なので、いっそのこと負け戦になる可能性は大きくあるが、この戦争を利用して国内の掃除をしてみようと。


 負けたら負けたで、あの愚王の首を取ればいい。もはや死ぬ覚悟である。




 

 そして、軍をまず仕向けたのだが、ここでストラクト王国の戦力も確かめてみようと思い、今回のルンベルドン侵攻を企んだのである。


 その進行には、2つの目的があった。



 まず一つは、当然ストラクト王国側の戦力の情報を入手することだ。


 もしかしたらこっちが勝利する可能性も無きにしも非ずだったからである。



 二つ目、こちらが今回の最も重要な目的で・・・・・・軍内部の浄化だ。


 ルンベルドンに向かわせたのは、あの愚王に媚びを売るような奴らであり、軍内部でも何かと問題ごとを起こすような奴らであった。


 どこかの貴族家で、当主になれなかった者が入隊し、そこで実家の権力を振りかざしたりなどという面倒な奴らである。


 そこで、この戦争にて相手の戦力を確かめるための捨て駒として、役に立ってもらうという事であった。



 重要な、質の高い兵士たちは元帥たちの下に置いたままであり、問題児どもを先に戦地へと送り出したのである。


 このルンベルドンでの失敗を聞けば、あの愚王は激怒してさらに戦力を投下するように言うだろうが、その戦力にはあの愚王の取りまきたちの家からの者たちものせる予定である。


 さらに、戦争が長引けば国内の物資の流れも滞り、あの愚王に対する不満も高まる。


 自身も軍のトップ故に狙われるかもしれないが、それは覚悟の上だ。



 あんな愚王に国は任せられないと考えつつ、報告をビスマトル元帥は聞く。



「それが、ものの見事にルンベルドン内の冒険者たちが反撃にしてきたそうで、ストラクト王国側の兵士たちの実力は不明でした。しかし、そこに滞在する冒険者たちの方が強いことから、反撃の手にストラクト王国側が雇うかと思われます」

「ふむ・・・・まあ、冒険者たち側からの反撃は予想で来ていただろう。迂回コースをとるという決断も取れただろうが、利益を目の前にしてやはり逃したくなかったと思える」


 その指揮官の顔を思い出し、唾をビスマトル元帥は吐きたくなった。



「それで、一応聞くが冒険者たちで要注意だと思われるような者たちはいたか?」


 ストラクト王国側について、こっちのベスタリーニァ王国へ攻撃してくるのは構わない。


 冒険者は冒険者、実質的にどこにも属するわけでもないし、雇われるなら雇われるだろうが、今回のこの戦争の初手の段階で、確実にベスタリーニァ王国へはつかないことは予想できた。


 ただ、あの愚王がその価値を見つけて、無理やりにでもという可能性もあったので、念のためにビスマトル元帥は聞きたくなったのである。



「元から迷宮都市(ダンジョンシティー)ルンベルドンですので、普段迷宮(ダンジョン)に潜る者たちが多く、戦闘慣れしていたので物凄い攻撃をしてました。その中でも目立つのは高ランク冒険者だったり、そこのギルドマスターもいましたが・・・・・気になる者もいます」

「それはだれだ?」

「ルンベルドンに現在拠点を構えているらしい、冒険者Aランクで魔物使いをメインとしたレイという輩です」

「ふむ、魔物使いのレイ・・か」


 どこかでその名前を聞いたような気がして、ビスマトル元帥は思い出す。


「・・・そうか、確かストラクト王国の学園祭時によく噂になっていたやつか」


 いわく、その魔物使いが仕えさせている使い魔たちの見た目が美しく、その魔物使い自身も魔法に長けているという話である。


 噂であり、そこまで気にはしていなかったが・・・・他国でもわずかに流れてきていたその情報に、ビスマトル元帥は思い出したのである。



「今回の戦いに関しましても、その使い魔の中で種族がマーメイドの奴に歌わせ、ルンべルドンの方の式を挙げ、わが軍の方の士気を下降させたり、ケンタウロスの使い魔が総大将にしていた奴を生け捕ったとも聞きます」

「ふむ・・・多種多様な使い魔がいるのか」

「それに、そのレイ自身の方も魔法に関しては相当な者らしく、今回は特に目立ちはしませんでしたが、自身を悟られぬようにわざとそのようにしていたのではないかと思われます」



・・・・実際には周囲の冒険者たちの気迫に押されてレイはハクロと共に敵の陣営にはいって情報を盗み出していただけなのが、ビスマトル元帥はそのわざと目立たぬようにしているのではないかという疑いを持った。



「なるほど・・・・思わぬダークホースがいたものだ」

「ついでに、最近では二つ名に『魅了の魔王』なんてのも付いています。理由としては、レイにつく使い魔たちの容姿がだれも美しく、なおかつレイ自身の魔法の力も優れているためだそうです」

「実力も高く、その使い魔の能力も優れているか・・・・あの愚王が気がついたら容姿の方で手を出してきそうだがな」


 とにもかくにも、うかつに関われば不味いと彼らの勘が警鐘を鳴らしていた。


 今回は目立ちはしていないが、年齢が若いながら高いランクを所持・・・・・・


 それが、どれだけの実力を示すのかわかったからである。


 いや、もしかしたら想像以上なのかもしれないとビスマトル元帥は思いながら、今後の作戦を練っていくのであった・・・・・・。




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SIDEレイ




「・・・というわけで、敵本陣内を探ったらこれが出て来たんですよね」


 ・・・・ちょうどそのこと、ルンべルドンでは防衛戦の勝利を祝って酒場で飲んでいる者達が多かったのだが、レイたちはギルドマスターのバリドスゲーフに、今回手に入れてしまった書類を見せた。


「その通りならば、今回の侵攻で生け捕りにしたやつらは全て捨て駒です」

「なるほどぅ・・・・なかなか敵の方にも相当頭がいい奴がいるんだべな」


 書類を一瞥した後、バリドスゲーフさんはふぅっと息を吐いた。


「だが、ちょっと気になることもあるんだべ」

「といいますと?」

「どうもこの戦闘の楽さや・・・この切り捨てともいえる内容を見る限り、別の思惑があるように思えるんだぃ」

「別の思惑ですか」


 なにかあるのか?



「どうも敵側の方で切り捨てはしているが、敗北を前提に入れているようにも思えるんだべぇさ」

「敗北って・・・どちらの?」

「ベスタリーニァ王国の方だべ。軍の捨て駒を切り捨てるというのはよぉぅくわかる。だけど、これはいささか多いようだし・・・・兵力差で負けていくだろうに、そうすることをするならば・・・もしかすると・・・」

「ベスタリーニァ王国の軍が、わざと負けようとしていると?」

「んだ。王国内の方で、もしかしたら争いが起き、軍が離反しようとしているのかもしれねぇ」

「となれば・・・クーデターの可能性もあるという事ですか」

「もしくは、いっそのこと敗北をして、責任をそのトップにとらせようと・・・」




 目測を出ないが、それでも今回の戦争がいかに奇妙なのかはレイたちもわかった。


 ただ、参戦は防衛以外するつもりはないし、もし何かあるとすれば・・・・その時に全力を出すべきかと考え、その場を退出するのであった・・・・・・・

・・・愚王って言ってますけど、きちんと名前もあります。

でもまあ、ビスマトル元帥のような有能な人たちがいるからこそまだいいけどね・・・・・・

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