お手柄だよ
花粉症にとってつらい季節
「・・・・シャァァ?」
「ん?どうしたユリ?」
ユリが進化してから数日、今日は休日として拠点でおとなしくしていようかなと思っていたら、ユリがこの屋敷の柱の一本を見ていぶかしげな顔をしていた。
「この柱、何度見ても違和感を感じるのシャ」
「違和感?」
言葉を早くも覚え、進化前の名残を残しつつもそのユリの話にレイは首を傾げた。
「何もないはずなのに・・・・こう、生暖かいような、生ものではないようなものが埋まっているッシャよ」
「具体的な表現だけど・・・・いつから感じているんだ?」
「いや、こうして進化した後に気がついてからッシャ」
割と最近気がついたようだけど・・・・・まあ、気になるな。
なので、思い切ってその柱をいったん壊して中を見てみることにした。
大黒柱ではないけど、一応安全のためにその違和感の個所のみを抉り出す。
一応、何らかの危険性も考慮して全員で集まって作業をすると・・・
「あ、なんか出てきた」
転がりだしてきたのは、真っ黒な球体。
「・・・・これ、魔道具ですね。しかも結構厳重に隠されている感じがしますよ」
ハクロはこういうのを見て大体どういうのかわかるらしいけど、どうもろくでもなさそうなものだという。
「何と言いますかね・・・・人払い?のような効果があると思われます。じわりじわりとゆっくりかけていくような・・・精神系ですかね」
「もしかして、この屋敷の人が居つかないのってこれが原因か・・・・?」
思い出すのは、この今いる屋敷の購入時の話である。
なぜか長期間住み着く人がおらず、自然と出ていく人が多いらしい。
そして、この魔道具が原因だとすれば・・・・・説明はつくだろう。
柱の中に埋め込み、出来るだけバレないように細工を施しておく。
あとは、勝手に少しづつ出ていくように仕向ける効果を発信し続け、住民へ精神的に作用し、そして限界は来た時にようやく効果が表れて、ここを住民が放棄するのだ。
「効果が弱いようですけど、チリも積もれば山となるという言葉があります。積み重ねていけば、いつかは限界が来るのです」
「明らかに仕組まれたものでありますな」
で、今までこの魔道具は厳重に、見つからないように細工を施されていたようだったけど、稼働し続けていたので微弱な発熱をしていたようだ。
そして、熱を感知することができたユリが、進化によってさらにその能力が向上し、それによって発見できたという事のようである。
なんというか、ユリを使い魔に出来て良かったな。いなかったら俺たちも自然に影響をうけて、いつか出ていこうと思っていたのかもしれん。
念のため、この魔道具を持ってギルドに向かう。
こういうやつは大抵迷宮からのものだろうし、売却記録とか残っていないか調べてもらうためにね。
「これは『払い人の結界』という魔道具ですね・・・・間違いないでしょう」
第1ギルドの方にて、買い取りの方で調べてもらった。
第2でもよかったけど、今の時間帯ならそこそこ空いているからね。
そして、出したこの魔道具を調べてもらうと、案の定人払いの効果がある魔道具だった。
「これがうちの柱に埋まっていたので、下手すりゃ犯罪の可能性があるので持ってきたんです」
「確かに、これをあらかじめおけば、買ってもらった時のお金と、そこを引き払う時のお金を指しい引いてもそこそこの利益がありますからね。ですが、その方法は確か違法です」
やっぱり違法だったのか。
後日調べてもらうと、あの屋敷を紹介してくれた不動産は今は普通に綺麗な感じらしいが、何代か前の経営者の方で真っ黒な噂があったらしい。
その時に使用されていたのがおそらくこの魔道具なのだろうけど、経営者が捕まって、不動産そのものをいろいろと入れ替えた際に、そのごたごたでこの事実が分からなくなっていたそうだ。
そのため、今の不動産屋は捕まえられないが、引退している当時の経営陣の方がしょっ引かれたようである。
あと、ついでにこの魔道具の売却記録などからさらにいろいろとやばいことが判明して、少しだけ大ごとになった。
とにもかくにも、ユリのお手柄だったわけだし別にいいか。
もうそんな面倒ごと来るなよ・・・・絶対来るなよ・・・・・・
ちなみに、柱の壊した部分はその魔道具を売却して修理した結果、プラスマイナスややプラスでした。今一つ高く売れなかったのは、もうだいぶボロボロで、今こうやって稼働し続けていることが奇跡レベルだったのだとか。




