7-1:帰還者達
なんか書いていて変な方向に進んでいってしまいました。
リアルへと帰還した人たちが何かドタバタとし始めそうです。
帰還者達のその後っていう感じでエピローグ的にあっさり終わらせるつもりだったのに・・・
誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
トモカが駅の改札口の前で降りてくる人の波を眺めていると、改札を抜けた一人が小走りに友香の方へと走ってきました。
「トモカさんごめんね~おまたせです」
「いいよ、時間通りだし。他のみんなは?」
「先に移動してるって、たぶん先行でVRネカフェでも入ってるんじゃないかな?」
「懲りてないね」
「うん」
トモカが異界への扉によって異世界へと飛ばされ、そして戻ってきてからすでに2ヶ月が過ぎています。
驚いた事に、あの異世界での経過時間はリアルの世界では1時間程しか経過していませんでした。
ただ、自分の記憶と経験がこちらの世界の体に何らかの影響を与えたのか、二日ほど高熱を出して寝込む事になりました。ただ、回復してからは急いでネットによる情報収集と、あちらの世界で一緒にいたメンバーの捜索、但しこれはMMORPGの異界への扉へ接続した所であっという間に解決しました。
INした途端一斉にフレンドチャットやギルドチャットの呼びかけで溢れたのです。
そして、その後早急に一度みんなでオフ会を開こうという話になり、そして、今回はその定例になったオフ会の第三回目となります。
「エリーは最近MMOも来なくなったけどゲームはもう引退するの?」
トモカは最近MMOでもエリーがINしていない事を気にして尋ねました。
「うん、そろそろ受験の事も考えないとだし、それになんとなく気力が沸かないっていうか」
その言葉に友香もなんとなくエリーが言いたい事がわかる気がしました。
二人が待ち合わせのファミリーレストランへと辿り着くと、そこでは既にシロー、ダイブツ、コジロウ、ユーパンドラ、コヒナといったメンバーが揃っていました。
「よ~~、遅いぞ!」
「時間どおりでしょう?」
「ですね、時間ピッタリですね」
「とにかく、トモカさんもエリーさんもまずドリンクバーでいいですよね?何か食べますか?」
ワイワイと騒ぎ出すみんなに合わせて、最年長者であるユーパンドラが場を仕切り始めます。
「あ、食事はいいです、飲み物取って来ますね。トモカさんはアイスコーヒーですよね?」
「あ、ごめん、御願いする~」
トモカは飲み物を取りに行ったエリーと自分の席を確保し、とりあえず着席しました。
「で、その後は何かわかった?」
トモカがまず聞きたかった話をユーパンドラへと確認します。
「う~ん、確定情報はありませんね。ただ、いくつか解った事はあります。まず第一に遙はこっちへと戻ってきていません。そして、一番重要なのは、VRユニットドーアが遙の部屋にはありませんでした」
その言葉に、みんなが一斉にユーパンドラの顔を見ます。
「それって、どういう事?あと遙さんの家がわかったの?」
「はい、遙さんとリアルで知り合いだという人に辿り付きました。そして、その人に説明をしたのですがやはり信じて貰えなくてまず遙さんへと連絡を取ってもらうように頼んだんです。そうしたら、遙さんが行方不明になっていて捜索願が出ている事がわかりました。その後、その人が確認してくれた所VRユニットは遙さんの部屋には無かったとのことです」
「その情報の信頼度は?」
「90パーセント以上はあると思っています。実際にお会いしていますから」
「その人は異界への扉ユーザー?」
「いえ、MMOはVRも含めてやったことが無いそうです」
その言葉にみんながしばらく黙り込みました。
「おまたせ~」
その沈黙を破るようにタイミング良くエリーさんが飲み物を持って戻ってきました。
「ん?みんな暗いよ?」
「エリー、遙さんは戻ってこなかったみたい」
トモカがエリーに対してそう告げると、エリーはしばらく沈黙したあと、クスクスと笑い始めました。
「エリーさん?」
「あ、ごめんね。さすが遙さんだなって、あの状況でもログアウトを選ばなかったんだなって思って」
その表情は今まで会った中でも見たことの無い暗い笑みでした。
「みんなも戻ってきてから思わなかった?なんで戻ってきちゃったんだろう、こんなやつあっちの世界だったら殺してやるのに、そして、殺してやろうか、なんて事」
「ちょ、エリーさん」
「ふふふ、本当にそんな事しないよ?でも、なんで戻ってきちゃったかなぁ」
「そうですね、でもエリーさん、わたし達は帰ってきたんです。多くの人が経験する事の無い殺し合いがあたりまえの世界から。そして、これからは又この平和な世界で生きていかなければいけないのです、だからみんなで助け合いましょう」
エリーの独白にみんなが圧倒されます。でも、そんな中でもユーパンドラがエリーさんに向かって語り掛けました。
「そうだね、助け合わないとね」
「ああ、そうだな」
「ですね」
エリーは先程までの表情を一転させ、笑顔でユーパンドラを見返します。
「ユパさんは相変わらず真面目だね、で、コヒナさんとはいつ結婚するの?」
先程から、雰囲気を破壊するのが楽しいかのように爆弾を破裂させまくっているエリーが、更なる爆弾を破裂させました。
「ぶっ!」
「ゴホゴホ」
ユーパンドラさんは噴出し、コヒナさんは飲み物を気管に入れてしまったのか咽ています。そして、その様子をニマニマとエリーさんが眺めていました。そして、周りのみんなは驚いた表情で二人を見詰めます。
「ちょ!いつの間にそんな話になってるの?」
「くぅ、このリア充め!」
「おめでとうです!」
みんなそれぞれの思いで祝福の言葉?を送る中、コヒナは顔を赤くして、それでも嬉しそうにユーパンドラを見詰めました。
「いや、まだそうと決まったわけでわ」
ユーパンドラがそう言い訳をすると、コヒナさんが表情を曇らせます。そして、それを見て更に慌てて言い訳をします。
「いや、しないという訳ではなくですね、まだご両親にご挨拶もしてないですし」
もうなにやらぐでんぐでんになっています。
「そっか、ついに射止めたんだ、こっちに戻ってから頑張ってたもんね」
「うん、頑張った!」
トモカがそう言うと、コヒナは嬉しそうな顔をして頷きました。そして、そんな姿を見てみんなも自然と口元が綻んで来ます。
「くそ!まじ羨ましいぞ!リア充め!」
「ですねぇ、羨ましいです」
そうして会合は最初の雰囲気とは違った祝福ムードで進む中、それぞれの情報交換へと話が進みます。
「そっかキュアちゃんもエリーティアさんもいないか」
「あと、きゅまぁちゃんもいないみたい」
「それは何か意外かな、残るよりは帰ってきそうなのにね。両親の心配してたし」
「そうだな、ただうっかり寝てて知らなかったとかありそうだよな、きゅまぁさんの場合」
「「「ありそう」」」
みんなが一斉に呟き、顔を見合わせて笑い出しました。
「そういえばユパさんはVRのほうでラブリーラビット作ったんだって?」
「はい、みんなの状況を把握する為にもVRでギルドを作ったほうが把握しやすいかと、ただ一番気になっていた事がそのお蔭で見えてきました」
ユーパンドラは、それまでとは違って真剣な顔に戻りました。
「VRの中にムラマサもチルチルもいません。誰もVRへINしたのを見ていません」
「そっか、ドワーフはまだあの世界から帰ってきてないんだね」
「100%では無いですけどその可能性が高いですね」
「誰かGMへは何か問合せした?」
「俺が掲示板にそれとなく行方不明者がいるってスレ立てたが、あんまり反応はないな」
トモカの問いにコジロウが答えました。
「ねぇ運営元のアナザーって所在地どこだっけ?」
「確か愛知県だったな」
「遠いねぇ」
東京に住んでいるましてや学生の彼らにはすぐ行こうといって行ける距離ではありません。
「行くとしたら社会人のわたし達かな?」
「動きやすさはあたしらの方が社会人より動けそうだけどね」
「ふむ、問題は資金面かな?」
「うん、面目ないけどバイト代もしれてるし」
そういってトモカは苦笑を浮かべました。
「行ったとして誰に会うか、会えるかも問題です。空振りになったら目も当てられませんよ?」
「だな、あっちに誰かいないか?」
「把握出来てる転移メンバーに聞いてみるか」
「だな」
そして、みんなで誰に会うか、会えるか、切欠をどう作るかなどを話し始めました。
7章からはキュアリー不在で進んでいきます。
拙いです!主人公不在です!
主人公は一応コルトの森の隠者の方でお話が進んでいますので、ちょっと頭を抱えています。




