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6-3:コルトの森編3

誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。

「うわぁ、嫌な予感って当たるもんだね」


「これはちょっとなんともならないですね」


「先程のオーガの出現で、もしかしたらとは思いましたけどね」


あたし達は、またも地面にうつ伏せになって前方を覗いていました。

その前方には、およそ3分の1の高さにまで壊れている塔がありました。そして、その周りには多数のオーガがいます。


「18、19、20っと見えている数だけでも20体はいるね。塔の中にもいるかは確認できないね」


「あれ全部新種?想像したくないですねえ」


レイムーンさんの言葉に激しく同意です。

これは何ともならないな、純粋にそう思います。先程の3体のオーガヴォリアーですら結構危険だったんですから、20体を相手に出きるほどの余力はないですね。

その後も、観察を続けるとオーガは頻繁に塔周辺にて出入りを繰り返しています。ただ、塔の奥は確認が出来ません。この為、オーガの正確な数は確認ができませんでした。


「これは一度引きかえそう。ちょっと無理です」


「だね、キュアちゃんには申し訳ないけど、これは突っ込めないわ」


「はい、今目の前にいる数以上のオーガが居そうです。でも、かれらはどうやって生活しているんでしょう?」


「え?生活?」


あたしの言葉に二人は不思議そうな顔をします。


「はい、あれだけの数のオーガを維持するのに、どれだけの食料や物資がいるのかを考えるとこの荒野となってしまった場所でよく生活がなりたつなぁって」


だって、ここは荒野なんだから食料確保だけをとってもすっごく大変だと思いますよね?

それなのに、あんなにいっぱいのオーガがこの場所でどうやってくらしているんでしょう?


「言われてみるとそうですね、ただ、今見る限りでは特に畑とか牧場は見当たりませんね。まぁオーガの生活なんて考えた事もないですけどね」


レイムーンさんの言葉に、わたしとトモエさんが頷きます。


「どうする?塔の後方も確認しとくかい?」


「いえ、現状では危険が高すぎですよね。ここはまずナイガラに戻って対策を考えたほうがいいと思う」


このまま此処に居ても危険が増すだけです。先程の戦闘で倒した3体が見張りの可能性だってあります。

突撃や侵入が不可能な場所に、のんびりと待機していられるほどこの地は安全ではありません。


「引きあげるなら早く引き上げよう、いつ発見されてもおかしくない。そして、もし発見されたら全滅必至だよね」


トモエさんの言葉にあたし達は後方で待つエリィさん達の所へと戻り状況を説明しました。


「そうですか、それでは急ぎ馬車の所に戻らないとですね。運がよければまだ無傷だと思います」


「ですね、でも馬車に戻った所でそろそろ暗くなりそうだな」


「うん、でも可能な限り離れた方がいい」


「では急ぎましょう」


あたし達は急ぎ馬車のあった場所まで慎重に戻り始めました。今此処で慌てた結果、オーガに見つかってしまえば意味がないですから。戻ってみると幸いにして馬車は無傷で残っていました。この為、馬車に馬を繋ぐ為に若干時間をロスした以外は順調にナイガラへと移動を開始しました。


「暗くなる前になんとか森からは出たいね。ライトなどの魔法は目立つ為使えないから今は急ぐしかない」


「他の人は周囲の警戒を御願いします」


トモエさんの指示の元、あたし達は日が落ちきる前に森への境界線に移動しました。

そして、翌日より一気にナイガラへと向かいました。


◆◆◆


「やっと見えてきた!」


遠くにナイガラの街が見え始め、あたしは思わず叫んでいました。

戻りに入ってから3日、行きとは違い戻りでは10回もの魔物の襲撃を受けていました。

これが、急いでいた為に起きた事なのか、それとも何らかの理由で魔物が増え始めているのか、そこは判断がつきません。

エンカウントした魔物は、どれもみな中級以下の弱い魔物ばかりでしたが、日夜現れるため予想以上にあたし達は疲れていました。結界石をいくら使用しても、いつ現れるかわからない魔物を警戒してのキャンプはジワジワと精神を圧迫していたように思います。


「一先ずゆっくり寝たいぞ!」


トモエさんの叫び声に、みんなが頷きます。それこそ、みんなの共通した思いなんです。美味しいご飯より、暖かいお風呂で綺麗になるより、まずは安心してゆっくりと眠りたいです!


馬車がナイガラの門に近づくと、何か様子が変わっています。


「おや?門が閉ざされていますね。まだ日中なのに門が閉ざされているなんて変ですね」


レイムーンさんの言葉に、あたしは違和感を感じた理由がわかりました。

普段は街の外と中で多くの人が出入りしているはずなのに、今は門は閉ざされたままで人の動きが確認できないんです。


「やばいね、何かあったかな?」


「このまま進まずに正面の南門に回りましょう。そうすれば状況ももしかしたらわかるかも」


馬車の進路を南へと向け、南門が視認できる位置まで移動します。

すると、南門付近ではまさに無数のテントが張られています。そして、あちらこちらで叫び声が響き渡っています。


「やば!また攻められたか?」


「いえ、戦っているわけではなさそうだ。あれは・・・難民か?」


サイアスさんの言葉に、テント付近の人々を見ると、確かに家財道具と思われる馬車を引いた人たちが何人も見受けられます。そして、様々な場所で炊き出しのようなものが行われていて、その炊き出しの前に多くの人達が並んでいます。

先ほどから聞こえる怒鳴り声は、どうやらその列から聞こえているようです。


「わけがわからないわね、ギルマスどうする?」


「まぁこのまま門へと向かおう、ただ速度を落として慎重にね」


そして、南門へと向かうと、そこはまさに大渋滞の様相を呈していました。

わたし達は、その渋滞を避けるようにして南門へと向かうと、突然怒鳴り声が聞こえてきます。


「おい!そこの馬車!きちんと列に並べ!」


前方から、衛兵と思われる男達が3人こちらへと向かってきました。


「われわれは推定淑女ギルドの者だ、早急に領主ユーパンドラ殿に報告しなければならない、急ぎ通してもらおう」


御者台からトモエさんがそう声を掛けますが、その衛兵達はニヤニヤと悪い笑みを浮かべます。

その顔を見た途端、あたしは嫌な気分になりました。


「申し訳ないが、それはできないな。俺達は門を通過する者たちの身元を確認する使命がある」


「ああ、きちんと順番を守れよ、そうでないと容赦しないぜ、お嬢ちゃん」


「こんな豪勢な馬車に乗ってるんだ、どうしてもって言うなら考えてやってもいいぜ、まぁ誠意しだいだがね」


相変わらずニヤニヤ笑いながらもその兵士達は馬車の前に立ちふさがります。なんか典型的すぎて、あたし達は逆に呆然としました。

そして、それを見てトモエさんが馬車から降りました。


「あのさぁ、あんたら馬鹿?」


「なんだと!お前達俺たちに逆らう気か!」


「俺らに逆らうってことはイグリアに逆らう事だぞ!わかってるんだろうな!」


「女子供が!教育しなおしてやる!」


だから、あまりにベタすぎるんですって!


あたしは思わず心の中で叫びました。

そして、他の人たちも溜息を付きます。


「なんでこんな馬鹿達がいるんだ?」


「わたし、はじめて見ました、いるんですねぇ・・・こんな馬鹿!」


「すごいな、エルフの森では見たことが無い、珍種だな、良い土産話ができた」


なんか皆さんも散々に言ってますね。気持ちはわかるんですけど。


「こっちは急いでるんだ!さっさと寝とけ!」


そう言った途端、トモエさんは先頭の男を剣の鞘で殴り倒しました。


「がふっ」 ドサッ


あ、脆い


お約束ですけど、あっけなく倒れる男をみて思います。


「貴様!」


「ちっ!」 


ピイィィーーーー


男が、首から下げていた笛を吹くと、甲高い笛の音が響き渡ります。

そして、その瞬間、門の付近から複数の兵士達が飛び出してきました。


「馬鹿め!俺達に逆らった事を後悔ぐへっ」


「な!なにをグヒョ」


笛の音もまったく気にせずにトモエさんはさっさと残り二人を殴り倒してしまいました。


「誰だよ、こんな粗悪品を門番にしたの」


そんな事を呟きながら、抜刀して近づいてくる衛兵を見つめます。


「うわぁ、どいつもこいつも錬度不足が感じられる動きだ」


「ですね、これって王都からの応援でしょうか?」


「新兵にしては年いってますよね、この人たち」


「これ、多分どこかの貴族の私兵だぞ、たぶん」


サイアスさんの言葉に、みんなが顔を見合わせます。


「ああ、あの噂の、なるほどね」


のんびりと会話をしているあたし達の前には10人近い衛兵が抜刀して立ちふさがりました。


「こっちは早くゆっくりしたいのですけどね」


エリィさんの言葉に、みんなが一斉に頷きました。

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