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魔法少女ラスカル・ミーナ  作者: 南文堂
第6話 どうしても メイド?
16/20

Aパート 美奈子の反乱

品質には万全を尽くしておりますが、希に体質に合われて笑われる方もございますので、職場での読書はお控えください。


前回までのあらすじ

存在自体がトラブルメーカー、皆瀬和久は自分が悪の魔法少女ラスカル☆ミーナである事を隠して白瀬美奈子として生活していたが、臨時雇いで悪の秘密結社の女幹部となり、デパートの屋上で大立ち回り。怪我人続出の大騒動を巻き起こしたが、ファンシー・リリーと陰陽戦隊の活躍によって、退散させられた。

さて、今回、ラスカル☆ミーナはどんな騒ぎを起こすのやら……

(本編とは若干異なる点もございますので、前作をお読みになられることをお勧めいたします)

 皆瀬家の朝食は基本的に和食である。和食といっても、メニューはご飯と味噌汁だけで、あとは何か佃煮、漬物があったら鉢に盛られて、岩海苔とフリカケ、鮭フレークがテーブルの上に載っているので、各自自由にトッピングするのが慣わしである。

 非常に簡単な朝食ではあるが、たとえ一分でも長く惰眠を貪りたい朝にそれを用意するのは大変苦痛である事は言うまでもない。しかも、朝は涼しいと言っても夏へ向かって最低気温も鰻のぼりのこの時期に、好き好んで火の近くに立ちたいと思う人間はかなりの変わり者だろう。

 そういう意味で、白瀬美奈子は普通の感覚を持った人間だった。

「熱い! 暑い! 熱い、暑いぃぃぃ!!」

 豆腐を手の平の上で角切りにして鍋の中に入れながら美奈子は雄たけびを上げた。

 本日のお味噌汁の具は豆腐とえのき。昨日が豆腐と葱だったので豆腐が二日続くが、一昨日のスーパーの安売りで買い込んだ分を早めに胃袋に収めてもらうために、少々我慢してもらうつもりであった。

「大体、ここのところ、ずーと、わたしが朝食当番じゃない。割に合わないよ」

 美奈子の朝食当番は今日で連続一週間になる。当番は順番で回るはずだったが、美奈子のバイト、琉璃香の留守や賢治の早出、ローテーションの狭間にできた変則パターンが重なって、朝食当番連続一週間という事になってしまっていた。

「お手当て安い割に大変なんだから!」

 朝食は献立を考える必要がなく、買い物をしなくていいという理由で労力の割にはお手当ての額面が低い。しかも、和久は、何かと理由をつけられて、朝食当番がよく回ってくるので、毎年春に行われる家族会議、通称、春闘で朝食当番手当ての増額を要求してきたが経済成長率を超える増額は認められなかった。

「あつい!」

「美奈子お姉ちゃん。お弁当まで作るから、余計暑いんだよ」

 文句を言いながらもだし巻きを手馴れた手付きで焼いている美奈子を少し感心しつつ、大半呆れて芽衣美が呟いた。

『ご主人様はお昼代を節約しようと必死なんだよ、芽衣美ちゃん』

 銀鱗の声が芽衣美と美奈子の頭の中に響いた。

 先日デパートで見かけた『魔法少女 ラスカル☆ミーナ』のビデオを出演料代わりに一本譲ってもらおうと真琴に電話をしたが、

『あの物語はフィクションであり、登場する実際の人物団体とは一切関係ありません』

 という事でモデル料は払う必要なんてないと言われ、にべもなく断られてしまったため、自腹を切って購入する事になり、せっかく稼いだバイト代の残金は寂しいものになっていた。

「でも、賢治さんのお弁当も作ってるし……」

『愛娘弁当は見返りが大きいからね。世の中のお父さんは自分の娘に「はい、お父さん。これお弁当。お仕事頑張ってね」なんて笑顔でお弁当渡された日には過労死するほど働いちゃうもんだよ、芽衣美ちゃん。当然、給料アップもありえるから、そうなれば臨時収入も期待できるしね』

「ふーん、じゃあ、あたしもお父さんが帰ってきたら、やってみよおっと」

『……あのお父さんなら泣いて喜ぶよ、きっと。だけど、食べるのが勿体無い。どうして、観賞用と保存用と食事用がないんだ! とか言って床の上を転がるかも』

「はははは、そこまでならないって、リン君、それ言い過ぎ」

 芽衣美は笑いながら銀鱗との会話を楽しみつつ、食器をテーブルの上に運んで美奈子を手伝っていた。芽衣美はまだ慣れていないので役割を割り振られていないが、自ら積極的に手伝ってくれるので美奈子にとっては大助かりであった。

「ありがとう、芽衣美ちゃん。助かったよ」

 美奈子はお味噌汁の味を最終確認して、頷くとテーブルのなべ敷きの上に鍋を置いた。お弁当の方もちゃんと出来上がって、大した手際のよさである。ちなみに、本日のお弁当のおかずは塩鮭、インゲンの胡麻和え、だし巻き、焼いた万願寺獅子唐に醤油をかけて、かつおをまぶしたもの。

「美奈子お姉ちゃん、これだけできたら、もう、どこへお嫁さんに行っても大丈夫だね」

 芽衣美は出来上がったお弁当を覗き込みながら、毎度のことながら感心して言った。

「芽衣美ちゃん、忘れていないと思うけど、僕は男なんだよ」

 美奈子はご飯を弁当箱によそって、梅干を真中に一粒入れて、エプロンを外した。

「もう諦めて、いっそのこと女の子になっちゃえばいいのに」

「芽衣美ちゃん、自分のこと忘れていない?」

「あたしのことは気長に別の方法を探せばいいんだし、のーぷろぶれむ!」

『僕も気にしてませんよ、ご主人様』

「芽衣美ちゃん、リン君……あんたらって子は……」

「ほらほら。そんなことよりも、お味噌汁冷めちゃうよ、美奈子お姉ちゃん」

「あ、そうだ。――賢治さーん、琉璃香さーん。朝食できましたぁ!」

 美奈子は「父さん」、「母さん」だと美奈子の正体が和久であるとばれるかも知れないので、二人の事は名前で呼ぶようにした。最初はかなりぎこちなかったものの、最近はだいぶスムーズに言えるようになってきていたし、呼ばれている二人の受けもよかったので、和久に戻れても、この呼び方はそのまま定着するかもしれないなと、何気なく美奈子は考えていると、賢治がパジャマのまま食卓に姿を現した。

「ふぁあーあ、今日の具は何かな?」

「豆腐とえのきだよ」

「豆腐? 昨日も豆腐だったんじゃないのか? 昨日の晩も冷奴出てたし」

「昨日は豆腐と葱よ。冷奴は冷奴」

「やっぱり豆腐じゃないか」

「だから、今日は豆腐とえのきだってば」

「まあ、暑いからな。うっかり重なる事もある。別に気にすることはないんだよ」

「昨日のお味噌汁の具ぐらい覚えてるよ!」

「なんだ、具を考えるのがめんどくさくなったんなら素直にそう言えばいいのに、何を意固地になってるんだ?」

「意固地になんてなってないって!」

 豆腐をこれだけ連発、今朝のお味噌汁の具に使っても、まだ余っていたので、豆腐を生クリームと砂糖と香りつけのオレンジの皮を擦ったものとオレンジの果汁少しを一緒にミキサーに放り込んでかき混ぜさせて、冷凍庫に放り込んで、豆腐ジェラードにしたのである。豆腐を無駄にしないでおこうと、そこまでしているのに、具を考えるのが面倒だと言われるのは美奈子にとっては心外であった。責めるのなら、安いの一言で大量に買い込んだ瑠璃香に文句を言って欲しかった。

「何をそんなに苛ついてるんだ? まったく、おかしな美奈子だな……もしかして?」

「?」

「かあさん。今日は赤飯だ」

 賢治は遅れて食堂に姿を現した琉璃香に親指を立てて暑い朝には勿体無いぐらい爽やかに言った。

「莫迦ぁ! セクハラで訴えてやる!」

「あれ? 美奈子ちゃん、何処行くの?」

「汗かいたから、シャワー浴びるの!」

 火の傍にいたこともあるが、最近妙に汗をかくので、身体がべとついて、不快さがイライラを募らせて、ここのところ、美奈子の機嫌はよくなかった。

「そんなに苛ついちゃ、皆にばれるわよ」

「琉璃香さん!」

『ご主人様……』

「なに? リン君!」

『……は魔法制御能力が落ちますから気をつけてくださいね』

「美奈子お姉ちゃん、恥ずかしがらずに、わからないことは聞いたほうがいいよ。これはあたしの方が先輩だね」

「リン君も芽衣美ちゃんも大っ嫌いだ!」


「……実際に県知事を木に吊るして鞭打ったのは劉備で、張飛ではないということは、今ではかなり有名な話だな。この張飛は五虎将軍などと言われながらも、個人的な武術の技量はすごかった以外は、武将としての能力にはかなり問題があって、たいした活躍はしていない。いてもいなくても歴史上はどうでもいい人物と評されることもある。そのせいで張飛架空人物説などというものまである。つまり、張飛の存在意義は劉備の悪行を肩代わりするためだけというわけだ」

 社会の授業ではあったが、世界史ではなかったはずが、いつの間にかに話は三国志になっていた。男子生徒たちは大半が某ゲームのせいで三国志には詳しく、こういった話は大歓迎らしく、興味津々で聞いている。

 元男の美奈子も三国志は嫌いではなかったが、さほど詳しくもないのと今朝の出来事で機嫌が悪い上に、身体がしなだるく、集中力が続かなかったので、あくびをかみ殺しながら教壇に立っている男の話を聞いていた。

「だがな、先生はこの張飛は実在したと思う。張飛という名であったかは定かではないにしても、劉備に古くから仕えていた古参の武将がいた。それが張飛だ。武術は強いが、能力は低く、野盗の親分というのがいつまでも抜けない人物だったのだろう。最初のうちはそれでもいいのだが、戦局が政治的判断を孕んでくるとそんなわけにはいかない。他の武将も古くからいるという事で扱いが難しかった事だろう。劉備も頭を悩ましていた事だろう」

 ますますヒートアップする教師の話に冷めた視線を送っていた美奈子の下へ手紙が回ってきた。

(相原さんから白瀬さんに)

 隣の席の篠原が手紙を美奈子の机の上においてにこりと笑った。和久だった頃に話した感じでは篠原は無愛想な男だったが、美奈子にはやたら親切にしてくれていたので、美奈子は一応ぎこちないが、笑顔でそれに応えて、手紙を広げた。

『ご機嫌斜めなご様子。どうかされました?』

 ちらりと庸子の方を見ると心配そうな表情を浮かべている。

「そこへ関羽の死があり、その弔い合戦をしようとする張飛を劉備が快く思っていたとはとても思えない。劉備はおそらく張飛を暗殺した。記録では張飛は日頃乱暴な扱いをされていた部下に、酔って寝ているところを暗殺されたとある」

『ありがとう。ちょっと、家で嫌な事があったから。ごめんね』

 美奈子は返事を手早く書くと庸子へと送った。

「その部下は劉備の手のものだ。なぜなら、その報告を受けたときの劉備の態度があまりにもそっけない。ただ、そうか。と答えただけという。暗殺した部下を追撃する事も甘く、結局、呉に逃げられている。これはおかしいと思わないか?」

 庸子に手紙が届いて、それを読んだ事を確認してから美奈子は庸子に向かってにっこりと笑ってみせた。庸子の方も少し心配そうな顔はしていたが、笑顔を返した。

「劉備の暗殺と考えれば、『そうか、成功したか』という、『そうか』であることになる。それ以上の言葉を出さなかったのは、やはり、困った存在といえども長年修羅場を共に潜り抜けてきた仲、心のどこかで失敗してくれないかと願っていたのかもしれないな。だから、演出好きの劉備もこの件でそれ以上は何もしなかったのだろうと先生は思う。劉備は張飛の他にもホウ……」キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン「ああ、もう、チャイムか。今日はここまで」

 学級委員長の平田が終礼の号令をかけて、授業は終了した。教壇の上に広げた手荷物をまとめながら渡辺先生はちらりと視線を上げ、生徒の名前を呼んだ。

「白瀬、相原。授業に関係のない話でさぞ退屈だっただろう。お詫びに宿題をプレゼントしてやるから、後で職員室にプリントを取りに来い」

 少し怒りの粒子を含んだ声で二人にそう告げると、渡辺先生は教室を出て行った。手紙のやり取りを責めるというよりも退屈そうに話を聞いていた自分への報復だなと美奈子は感じて、とばっちりを食らった庸子に申し訳ない気になった。

「ごめんね、わたしのせいで」

「悪いのはわたくしの方ですわ。手紙を回さなければ……」

「ううん、こっちこそ、ホントにごめんね」

「それでしたら、お互い様という事にいたしましょ。でも、美奈子ちゃん、本当に元気がありませんけど、大丈夫ですか?」

「うん、平気平気」

 美奈子は元気にガッツポーズをして見せた。

「美奈子はなんでも一人で抱え込む癖があるからな」

 里美も心配そうに美奈子のところへやってきた。

「そうだよね。橘先輩とか丹羽さんに呼び出された時も誰にも相談しなかったしね、美奈ちゃんは」

 恵子が不服そうに美奈子に文句を言った。

「まあ、だけど、心配かけまいとする美奈子ちゃんらしい行動といえば、行動なんだけど。もっと、私らのことを頼って欲しいな」

 美穂が恵子を宥めながらも美奈子に一言注意した。

「う、うん、ごめんね。わたし、みんながいてくれるだけで、心強いから……その、何とかできるかなって……みんなのこと、ものすごく頼りにしているんだよ、ほんとに」

「わたくし達も美奈子ちゃんをすごく頼りにしているんですのよ。だから、持ちつ持たれつでいきましょう。さあ、それでは渡辺先生特製のプレゼントを戴きに参りましょうか」


「それでは、また明日、学校で。ごきげんよう」

「うん、また、明日ね」

 庸子はいつもの角で優雅にお辞儀をすると美奈子と別れ、家路についた。

「さて、急いで帰って夕飯のお買い物に行かなくっちゃ。ちょっと、おしゃべりしすぎちゃったかな? でも、一緒にプリントやったおかげで、ほとんど終わったし……いいよね」

 美奈子は帰宅すると、そのまま着替えずにカバンを買い物バックに持ち替えて、商店街へと向かった。あまり遅いといいものが出払ってしまうので、少し速歩で商店街へと急いだ。

「あら、美奈子ちゃん、今からお買い物?」

 商店街の入り口で帰ろうとする主婦の一人に美奈子は呼び止められた。

「え、ええ。ちょっと、用事で遅くなっちゃって。何かありました?」

「魚柾さんのところにむつの味噌漬が有ったわよ」

「え! ほんとう? ありがとう。あそこのは外れがないから……よし、焼き魚を増やせば品数も寂しくなくなるし……」

「本当にいいお嫁さんになれるわよ、美奈子ちゃんは。どう? うちのバカ息子のお嫁さんになってくれない?」

「おばさん。わたし、まだ中学二年ですよ。そんな先の事なんか話したら鬼が笑い死にしちゃうよ。それじゃあ」

 美奈子は立ち話もそこそこに足早に商店街を、愛敬を振り撒き、必要なものを少しおまけしてもらいながら買い物しつつ通り抜けた。

「ただいまぁ」

 美奈子は額にじっとりと汗を滲ませて、食卓の上に買い物したものを並べていった。

 今日の献立はささみの梅肉はさみ揚げ、アスパラのフライ、むつの味噌焼き、きゅうりの胡麻和え。

「美奈子お姉ちゃん、お酢がないよ。それと梅肉も」

「にゃに?!」

「お酢は昨日、使い切ったって言ってたよ」

「あっ、そうだった! ああ、もう、こんな時に! ごめん! 芽衣美ちゃん、きゅうりのごま和え、きゅうりを輪切りにして、ごま擦っておいて、お願い。すぐに戻ってくるから!」

「了解。いってらっしゃーい」

 美奈子は再び、今度はスーパーへダッシュして店内に転がり込み、最短経路で店内を駆け抜けてお酢と梅肉を持ってレジへと持っていった。

「あら、美奈子ちゃん、今日は随分と遅い買い物ね」

「お酢を、切らせて、たの、忘れてて、走ってきた。でも、よかった、まだ残ってて。今朝、特売、確認してたのに」

「ふふふ、何だか、中学二年生とは思えない台詞ね。今から所帯ずれしてたら、いい女になれないわよ」

「忠告ありがとう、佐々木さん。明日からはいいお嫁さんは諦めて、いい女を目指すようにする」

 そこからダッシュで家に戻り、夕飯の支度に取り掛かった。芽衣美が美奈子の指示で下ごしらえなどをしていてくれたが、それでも、準備がいつもより遅いことは変わらなかった。


「もう、たくさんよ! もう、充分! やってられないわ、こんな生活! わたしが何したと言うのよ! 全く、なんでもかんでもわたしのせいなの!」

 夕飯が終わって、自分の部屋に戻った美奈子は大きめのカバンに何やら荷物を詰め込みながらぶつぶつ呟いていた。

「最近、少したるんでるんじゃないか、美奈子は」

 夕飯のときに何気なく言った賢治のその一言で美奈子の怒りは爆発した。確かに夕飯の支度が遅くなったのは事実だが、食卓に夕飯が並んだのはいつもよりも10分と遅れていなかった。だが、今日はたまたま早く帰ってきた賢治がいつもよりも待たされたように感じたのは美奈子の責任ではなかった。

「美奈子お姉ちゃん……何やってるの?」

 廊下までにじみ出るような近寄りがたい険悪なオーラに耐えながら芽衣美は部屋に入って、後ろ手で扉を閉じて美奈子におそるおそる声をかけた。

「家出する」

「へ?」

『ほ、本気なの、ご主人様?』

「本気よ」

「でも、こんな夜遅くに……」

「心配してくれてありがとう、芽衣美ちゃん。今晩はしないわよ。安心して。だけど、二人には内緒にしてね」

「う、うん、わかった。黙っておく」

 美奈子は優しい笑顔を芽衣美に向けたが、目には絶対に譲らないという強い意志の光が宿っていることは芽衣美にも充分感じ取られた。

 それに、例え琉璃香たちに知らせたところで、止めてくれる可能性は低い事はなんとなく、芽衣美にもわかっていた。そっと部屋を出るとため息を一つついた。

『下手すると、横断幕を持ってお見送りしかねないからね』

 銀鱗も同じことを思っていたらしく、ため息混じりにそう言い、芽衣美もそれに同意した。


 翌朝、美奈子はいつもより早く起きて家出かばんを庭先に隠して平然と朝食の用意を済ませ、日直当番だと偽って、いつもより早く家を出た。もちろん、隠していたかばんを持って。

 とりあえず、かばんを駅のロッカーに放り込んで、学校へ向かうことにしたが、今晩どこに泊まるかなどは全く決まっていなかった。

「家出するとは言ったものの、今晩どうしよう。ホテルには泊めてくれないだろうしなあ。泊めてくれても、一泊したらお金も尽きるけど……ああ、わたしって、なんでこんなに計画性がないんだろう。これじゃあ、ファンシー・リリーと同じよね」

 美奈子は自分の行き当たりばったり直情的猪突猛進の行動を自嘲してはいたが、行為自体は全く反省していなかった。

「……凍死はしないだろうけど、やっぱり野宿って言うのは……体調も悪いし……一応、身体は女の子だし……」

 補導員が近くにいれば一発で補導されそうな事を呟きながら美奈子は思案に暮れていた。

「あら、美奈子ちゃんではないですか? おはようございます。こんなところで会えるなんて奇遇ですね」

 突然声をかけられた美奈子が聞き覚えのある声に振り返ると、そこには庸子が怪訝な顔で立っていた。

「おはよう、ヨーコちゃん。ちょっとね……」

「何だか、昨日にも増して元気がないご様子ですけど、何かありましたの?」

「あ……うん。あ、そうだ、ヨーコちゃん」

「はい?」

「今日、ヨーコちゃんのとこに泊めてくれない?」

「え?」

「あ、無理だったらいいのよ」

「無理ではありませんけど、どうかなされたのですか? よろしければ理由をお聞かせ願えません?」

「うん、実はね……」

 美奈子は家出のことをかいつまんでヨーコに話した。

「はあ、そうですの。それは大変ですわね。わたくしの家でよろしければ泊りに来てくれるのは全然構いませんわ。おじい様とわたくしと今は二人しか居ませんから、部屋の心配はありませんわよ」

「ありがとう! 助かったよ!」

「でも、覚悟しておいてくださいね。わたくしのおじい様はかなり変わった人ですから」

「うっ……まあ、慣れてるから……頑張るよ」

「うふふふ、それにしても楽しみですわ。美奈子ちゃんとお泊り。おじい様もタオルの一件の話をしたら、一度会ってみたいと仰ってましたから、丁度いいですわ」

(ヨーコちゃん、わたし家出してるんですけど……)

 庸子はにこやかに笑ってスキップしてもおかしくないような軽い足取りで登校し、苦笑を浮かべながら美奈子はその後を追った。


 相原財閥の総帥、相原幸雄の屋敷はまさに屋敷と呼ぶにふさわしい威風堂々たる建物であった。壁に囲まれた広い庭に噴水まであり、正面の洋館がまるでヨーロッパの宮殿を思わせるように建っていた。

「こう言うのって、漫画や小説とかにしか出てこないと思ってた」

 美奈子は庸子がカードキーで開けた通用門をくぐって感嘆の声をあげた。

「おじい様のおじい様、わたくしのひいひいおじい様の趣味ですの。建て替えるのも勿体無いからと使っていますが、少々派手で困りますわ」

 庸子は二人しか居ないのにこれほどの広さは帰って邪魔になるばかりだと愚痴を漏らしたが、一般庶民の美奈子にとってはこんな屋敷で生活できるのは夢のような贅沢に思えて仕方なかった。

「セキュリティーにはお金がかかるし、メイドも雇わなくてはならないとか、経費がかさんで非効率的この上ないとおじい様もぼやいていますわ」

「セキュリティーって、やっぱり対人レーザーとかが配置してあったりして、気品高く衛士と呼んでいるガードマンが警備してるの?」

「残念ながら、某公国の、偽金造りの伯爵のお城ではないので、オートジャイロもありませんし、北の塔にお姫様を幽閉してもいませんし、ゆで卵もちゃんと白身まで食べますわ」

「うーん、ちょっと、残念」

 美奈子は周囲をきょろきょろと余所見しながら庸子の後について行った。庸子はそんな美奈子の様子をくすくすと笑いながら屋敷の正面玄関前に立って、扉を押し開けた。

 重く重厚そうな扉がすんなりと開いて二人を中へと導いた。内装はシックにまとめてあるとはいえ外観に負けないほど高級感漂うものであり、海外の映画にしか出てこないような吹き抜けのホールを抱くように両側から階段が二階へと伸びていた。

「ひょえええ」

 素直に驚きの声を隠さずに美奈子は驚いた。何だか、ここまで来ると鹿鳴館の世界に紛れ込んだような気になっていた。

「美奈子ちゃん、ちょっと待っててくださいね。おじい様に許可をもらってきますから。あ、心配しなくても大丈夫ですわ。美奈子ちゃんの今夜の宿はわたくしが責任を持って保証しますわ」

 庸子はそう言って美奈子をホールに残して、階段を上がって建物の奥へと姿を消した。

 美奈子は一人、広いホールに残されたが、不安よりも好奇心が勝っていたのか、ホールに置いてあるものをぶらぶらと見て回っていた。透かし彫りのしてある薄い青みのある磁器の花瓶や重厚でどっしりとした見るからにアンティークな机に、複雑な模様を織り込んだレースがかぶせてあり、壁にかかっている油絵も高級感を漂わせていた。

 美奈子はとあるテーブルの上においてあるもので目を留めた。

「……そろばんだ。しかも五つ玉の……」

 テーブルの上に置かれた古びたそろばんがなんともそこにはミスマッチだったが、かなり使い込まれているのは一目瞭然だった。

「そんなにそれが珍しいかね?」

 美奈子はいきなり背後から声をかけられて飛び上がらんばかりに驚いて振り向いた。振り向いた先には初老の男性が白髪の混じった砂色の髭をしごきながらにこやかに笑っていた。

「あ、えーと、その、五つ玉のは初めて見ました。家にあるのは四つ玉だったから」

「ふむ、確かに、今では滅多にお目にかかれん代物だな」

「そうですね、そろばん自体も習っている人ができるぐらいで、わたしも学校の授業でちょっとやっただけですし」

「じゃが、馬鹿にしてはいかんぞ。これでも、デジタル計算機なんじゃからな」

「デジタルって……」

「それに玉を下にして上に乗ればローラースケートにもなるし、名前を聞くときにも便利じゃよ」

「名前。って、そう言えば、わたし……」

「そうじゃ。まだ、お前さんの名前を聞いていなかったな。どれ、一つ実演をして見よう」

 そう言うと老人はそろばんを手に取り、小気味よくそれを振った。玉どうし、または枠に当たってそろばんがマラカスのような音を出した。

 チャッチャッチャッチャッチャ♪

「♪あっなたの おっ名前 なんてーのっ?」

「♪しらせみなこ ともーしますっ」

「おじい様!」

 いつの間にかに戻ってきた庸子が階段の上から二人の会話(?)に割り込んだ。

「何をなさっているんです!」

 階段を急いで駆け下りて来て庸子は美奈子を抱えるように抱き寄せた。

「何もしておらんよ。ただ名前を聞いただけじゃよ。のう、美奈子ちゃん?」

 老人は少々面白くなさそうな表情をしてから美奈子に笑顔で同意を求めた。

「本当ですの? 美奈子ちゃん」

「うん、ちょっと変わった訊き方だったけど……」

「しかし、美奈子ちゃんは若いのによく知っておるな。普通は知らんぞ」

「はははは……なんででしょう?」

 答え、南文堂のキャラだからです。

「それよりも、丁度おじい様を探していたところですのよ」

 庸子はそう言って美奈子の事情をかいつまんで話した。

「かくかくしかじかと言うわけか、なるほどな。しかし、下宿先から家出しては皆瀬さんのところも面目が立たないじゃろう。悪いことは言わないから帰りなさい」

 しかし、老人の反応は庸子が思っていたよりも渋いものであった。

「そんな、おじい様!」

「お願いします。今日だけでもいいんです。泊めてください」

 美奈子も頭を下げてお願いした。

「そうですわ。せめて今晩だけでも。喧嘩してすぐに顔を合わすよりも少し冷静になる時間も必要とおもいますわ?」

「うーん、本当は、喧嘩はすぐに仲直りするのが一番なんじゃがな。頭を冷やすと言うのも一理があるわな。まあ、わしとしてはかわいい娘さんが家にいてくれるのは願ったり叶ったりなんじゃが……ふむ、それではこうしよう」

「?」

「美奈子ちゃんは、ちゃんと皆瀬さんの家にここにいることを連絡すること。その上で、当家で二、三日預かることにする。明日、明後日と学校は休みじゃろうし、丁度よい。冷静になったら、帰って家出したことをちゃんと謝ること。どうじゃ?」

「どうしても謝らないとダメですか?」

 少し上目遣いで美奈子は、譲歩はしたくないとばかりに彼を見た。

「家出して心配をかけさせたんじゃ、その件についてはちゃんと謝らなくてはダメじゃ。家出の原因については自分でちゃんと話し合いで解決すればよい。それができる歳じゃろう?」

 老人は美奈子に微笑みかけた。

(やっぱりヨーコちゃんのおじいちゃんだな。なんだかこういう笑顔は似てるな)

「はい、わかりました。帰ったら、家出した事は謝ります」

 美奈子は老人が言いたいことを理解して今度は素直に頷いた。

 家出が単に自分の立場に甘えていると言うこともわかっていた。そうやって自分の立場に甘えて、相手に心配させて要求を通そうとすることは、単なる我侭に過ぎないのだと言うことも。わかっているはずなのに、何故かこんな事をしている自分にどうしようもなく苛立ちを覚えるが、どうしようもない衝動に駆られてしまったのである。今こうしている自分が美奈子にはよくわからなかった。

「よし。それでこそ、聡明をもって知る美奈子ちゃんじゃ。ん? そう言えば、まだわしの自己紹介をしておらなんだな。わしは相原幸雄(あいはら ゆきお)68歳独身、お嫁さん募集中じゃ。呼び方は強制はせんが、無理にとはいわんが、絶対ではないが、ユッキーと呼んでくれると嬉しいのじゃがな」

「お、おじい様……」

「えーと、よろしくお願いします……ユッキー」

「ほーほっほほ、さすが、わかった娘さんだ。自分の家だと思ってゆっくりしていきなさい」

 幸雄は満足そうに頷くと自室へ戻っていった。

「ごめんなさいね、変なこと言わせてしまって」

 庸子は困った笑顔を浮かべて、美奈子に謝った。

「ううん、気にしないで。楽しいおじいちゃんで面白かったよ。それに相原財閥の総帥をユッキーと呼べるなんてそうあることじゃないもの」

 美奈子は庸子にウィンクしてそう答えた。


「それで、家の方はどう仰っていた?」

 幸雄は美奈子達と一緒に食事をとりながら口を開いた。完全に洋風の部屋でテーブルに並べられたものはほぼ一般的な家庭料理だった。あまりにものイメージとのギャップに少々、美奈子は面喰らったが、素材は一級、調理も一流で日頃食べているものと同じものかと少し疑いたくなった。

「はい。申し訳ありませんが、よろしくお願いします。と仰ってましたわ」

 庸子が証人代わりにそれに答えた。

 美奈子は案内された部屋に落ち着いて、すぐに庸子を伴って家へ連絡を入れたのであった。さすがに電話しにくいので庸子にしてもらったのだが、庸子が何か言う前に

「うちのバカ美奈子がそちらにお邪魔しているのでしょう? ご迷惑だったら、たたき出してくださいね。なに、一週間ぐらいだったら、死にはしませんよ。嫌なら帰ってくればいいんですから」

 と言われたことも苦笑を浮かべながら付け加えた。

「全てお見通しか。まあ、それぐらいでなければ人の親は務まらんからな」

 幸雄はかかっと本当に愉快そうに笑って食事を続けた。

「そう言えば、美奈子ちゃんはどうして、下宿先を飛び出してご実家の方へお戻りにならなかったんですの?」

「え? ……あ。ああ、えーとね、実家に戻っても結局、追い出されるのがオチだから……」

 実家なんて物は存在しないが、美奈子の設定がそうなっている事を思い出して、美奈子は庸子の疑問に何とか理由をつけた。せっかく、仲良くなった友達に嘘を重ねていくのは心苦しかったが、まさか本当の事も言えず、美奈子は嘘をつき通すことにした。

「そうですの。でも、たまにはご両親に会いたくなったりいたしません?」

「うーん、そう言えば、今までバタバタしていたから、そんな事考える暇もなかったわ。薄情な娘ね、わたしって」

 曖昧な苦笑を浮かべて美奈子は庸子に答えた。

「そんな事ありませんわ。きっと、おば様方も美奈子ちゃんが寂しい思いをしないようにされていたんですわ」

「そうね……そうかもしれないわね」

 本当は実の親である両親なのだから、そんな理由が成立するはずはないのだが、下宿先の親戚と喧嘩した事を何とか仲直りさせようとしている庸子に美奈子は胸が一杯になった。

「きっとそうですわ」

「うん、ありがとう。心配してくれて」

「その調子なら、明日には帰ってしまうかの?」

「ええ! それは困りましたわ。せっかく、色々とお話したりしようと思っていましたのに……」

「ユッキーおじい様とヨーコちゃんさえよければ、日曜日までご厄介になりたいんだけど。ここでは納得してても、実際、顔を合わせるとまだ自信がないから……落ち着いて考える時間も欲しいから」

「わたくしは全然、構いませんわ。むしろ大歓迎ですわ」

「わしも大歓迎だ。ゆっくりして行きなされ」

「はい。ありがとうございます」

 それからは、学校で起こった事などの話になり、楽しい夕食が続けられた。


「あ! 寝坊した! 朝ご飯の用意しなきゃ!」

 美奈子は布団を跳ね除けて飛び起き、時間を確認しようとしたが、部屋の様子がいつもと違うことに気が付いて一瞬混乱した。しかし、すぐに記憶の糸が繋がって落ち着いた。

「そっか、ヨーコちゃんの家に泊めてもらったんだ……家、朝ご飯どうしてるかな? 瑠璃香さんが作ってるのかな?」

 美奈子は家のことに思いを馳せた。自分がいなくても何の支障もなく潤滑に日常をこなせるだろう事は想像に難くない。そうなると自分の存在って一体何なんだろう? と、うら寂しくなり、誰も自分を必要としていないのじゃないか、そんな不安に襲われていた。

「……キャベツが萎びかけてきてるから、使ってくれてるといいなあ」

 せめて、自分がいたら少しだけ効率的に日常をこなせるだろうと納得させるためか、冷蔵庫の残り物の心配を口にした。もはや、気分は長期の休暇をもらい、自分がいなくても会社が滞りなく運営されていく様を見せ付けられている中年サラリーマンのそれに似ていた。

「ああ! もう! じっとしていたら気が滅入っちゃう」

 美奈子は陰鬱な気分を振り払うかのように首は激しく左右に振ると、顔を洗い、Tシャツにショートパンツという動きやすい格好になって部屋を飛び出した。相変わらず体調は優れなかったが、身体を動かしている方が、気が紛れるような気がした。

「おはようございます」

 美奈子は厨房で朝食の用意をしているメイドさんに声をかけた。

「あら。おはようございます、白瀬様。随分と早くにお目覚めされたのですね? ぐっすりお休みになれなかったのですか?」

「いえ。あんなふかふかの蒲団で寝たのは初めてで、いつもよりぐっすり寝れたから、早く目が覚めちゃいました」

「ふふふ、何だか、ありがたいのか勿体無いのかわからない蒲団ですわね。もうしばらくしたら大旦那様も起きてこられますから、朝食はもう少しお待ちください、白瀬様」

「美奈子でいいですよ。何だか、様とかつけられるとくすぐったいです。えーと……」

「私は土井純子(どい すみこ)と申します。(じゅん)って、みんな呼んでますから、そう呼んでくださいね、……美奈子ちゃん、でいいかしら?」

「はい。もちろん、いいです、純さん」

「何か御用かしら、美奈子ちゃん?」

「あの、何か手伝うことありませんか? じっとしていると落ち着かなくって……」

「あらあら、お客様だからゆっくりされたらいいのに。でも、そう仰るのでしたら……そこのゆで卵の殻をむいて潰しておいてくれます?」

 美奈子は手を洗ってすぐに作業に取り掛かった。

 美奈子が丁寧に手早く作業をするのを見て、手馴れていることがわかってか、純子は次々と美奈子に作業を命じていった。

「おはようございます、純さん」

 美奈子が食パンの耳を落としているところへ庸子が厨房に顔を出した。

「おはようございます、お嬢様」

「おはよう、ヨーコちゃん」

「え? 美奈子ちゃん、何をなさっていますの?」

 そこにいるとは思っていない相手から朝の挨拶されて庸子は目を丸くした。

「何って、朝食の用意のお手伝い。何だかじっとしてるのは性に合わないらしくって、貧乏性ね、わたしって」

 美奈子はチロリと舌を出して上目使いで笑って答えた。

「いけませんわ、美奈子ちゃん!」

「気にしないで、ヨーコちゃん。好きでやってることだし、居候としてはこれぐらいは当然……」

「違いますわ!」

 庸子は美奈子の言葉を遮って否定し、

「家事をお手伝いするのでしたら、それなりの格好をしなくてはなりませんわ。確かに、ショートパンツからすらりと伸びた脚は綺麗――贅沢を言えばニーソックスなら、なお良かったのに――ですけど、家事のお手伝いをする時はやっぱり、定番のメイド服を着なくてはなりませんわ!  美奈子ちゃん!」

「……よ、ヨーコちゃん」

 拳を固めて力説する庸子に美奈子はたじろいだ。毎度のこととはいえ、真正面からの押しに弱い美奈子であった。

「と言うわけで着替えに行きましょう。純さん、少しお借りします」

「じゅ、純さーん」

 そして、毎度の事ながら、美奈子は誰かに助けを求めた。日頃は求めないくせに、こういう時だけは安易に助けを求めるのである。もっとも、今までそれで助かったことはないが、諦めが悪いのも毎度のことだった。

「お嬢様」

 純子のよく通る静かな声が厨房に響いて、空気が少し緊張した。珍しく覗いた希望の光に美奈子は喜びを通り越して驚いた。

「なんですか? 純さん」

 庸子も少し緊張している。庸子にとってはこの純子という存在はそれなりに大きいのだろう。

「とびっきり可愛いのにしてあげてくださいね♪」

 しかし、希望の光はどこか他所を照らしているらしく、純子は親指を立ててウィンクしていた。

「任して! おじ様の名にかけて」

 庸子は同じように親指を立てて応え、美奈子は可愛いメイド服を着ることが決定された。


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