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回帰○(リターン・ゼロ)~平凡な俺の前世が『神』だった~  作者: トランス☆ミル
第五章 恐怖の根源編

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第32話 魔法の歴史

みんなは一通り本部を見て周り、会議室のような場所でちょっとした座学が始まった。


「それでは、先程申し上げたように、魔法の歴史について少しだけお話させていただきます。」


アラスターは少し部屋を暗くし、前に画面を表示させる。


「まず始めに、本来魔力は地界ヘル由来の力で、神力しんりょく天界ヘブン由来の力だというのはご存知ですよね。」


みんなはコクリとうなずく。


「この話をするにあたって大切なのは『基本的三位概念』を理解することです。」


「あぁ、現世うつしよ常世とこよがそれぞれ司っているあれですよね。」


この言葉は、前に仮想宇宙メタバースに行った時に知ったのを覚えたいたので、ヴィジは相槌をとった。


「その通りです。少し難しい話になりますが、三位概念を理解するために、少し世界の歴史についてお話しましょう。」


そう言うと、アラスターは画面に資料を表示させる。


「まずは創世神話です。この世界は創世の時代に、原初の存在、すなわち創造主ペアレントによって創造されました。


そして最初の人類を現世と常世に作り、それぞれに世界を管理するための権限と役割を与えた。この役割が基本的三位概念であり、この世の全ての根源となっています。


それから創造主は天越宇宙オメガバースを雛形とし、全越宇宙オムニバースを創造しました。


ここまでが創世神話の大まかな内容です。」


「その創造主っていうのは本当にいるんですか?」


「現時点ではいると考えるのが一般です。ですが、創造主は天界、地界、現世の狭間にいるため、我々には認識、干渉できません。しかし、各階層には『原初神体』と呼ばれる超越的な力を宿した物があり、それが創造主と繋がっていると言われています。」


アラスターは資料や立体映像を見せながら、淡々と説明を続ける。


「この基本的三位概念である『創造』『破壊』『観測』のうち、『破壊』を司っているのが地界です。魔力は地界由来の力であり、破壊の力です。現実を歪め、事象を改変することのできるプログラム。その権限を獲得したのが我々、地者ちしゃです。


少し余談ですが、本来なら大君主オーバーロードのように、地界なら魔法、天界なら加護を扱うのが普通なのですが、いわゆる混血という形でその2つが混ざってしまったのですよ。それがウェントくんのように天者てんじゃなのに魔法を扱える所以です。」


「あぁ、そういえば前にウェントが同じこと言ってたな。貴族とかしか持ってないんだっけ?」


レイは隣のウェントにそう話しかけた。ウェントはコクリとうなずく。


「貴族しか持って無いというより、魔法を使えるから権力を持ったって感じかな。」


「そうですね。逆に地界では加護使いの貴族が多いです。


そしてここからが本題ですが、魔法に様々な制約や条件がある理由。それは、簡単に言いますと拡張性があるが、扱いが難しいからです。


魔力は破壊の力。基底プログラムへの干渉力は神力しんりょくよりも強く、様々な形に拡張できます。しかし、その分扱いが難しいため、本来は魔法陣や詠唱、魔法の杖といったもので発動に大切なイメージを補完します。」


5人は話を聞きながら、なるほどとメモをとる。


「能力に杖がデフォルトで組み込まれているのはこれが理由であり、魔法を極めると、詠唱を簡略、または省略し、魔法の杖を使わずに発動できるまでになります。


ちなみに技を発動する前に『~~魔法』と言っているのは詠唱の簡略です。


そして、拡張性があるという特徴を活かし、自身の魔力の形を強制的にねじ曲げる手段を書いた物が、『魔法書マジックブック』なのです。」


アラスターは話を終えると一礼をした。


「いやぁ〜、ご丁寧にどうもありがとうございます。」


「質問が無いようでしたら、昼休憩でもしましょうか。」


5人も満足したように礼を言って、その場を後にした。




一方その頃、ミルとモートはお忍びで来たザイオンと一緒にお茶会をしていた。


この3人組は上級隊士の中でも有名な最強最悪のトリオだ。


「お前、暇なのか?」


ミルはザイオンに尋ねる。


「それに関しては吾輩も同意見だ。」


「いや、大君主って結構暇なもんでしょ。」


「貴様やミルほどでは無い。」


モートはそう言うとカップをカチャンと置く。それを見てミルは、


「それで、お前が興味を持ったのはヴィジの暴走形態か?」


と、話の本題を聞き始めた。


モートは一息ついて、ゆっくりと話し始める。


「そうだな。形態変化トランスフォーメーションとも違う雰囲気...あの時(・・・)のお前みたいだなと思って。一体どういうことなんだ?」


「どういうことかと言われてもねぇ、俺にもわからんよ。あの時の『完全殺戮形態ジェノサイドフォーム』は、怒りを根源とした『完璧なる法典(パーフェクトコード)』の暴走だったからなぁ。それに追放以降、怒りなどの一部の感情は失われてしまったし、もうお手上げ状態だよ。」


ミルはズズッと紅茶をすすった。


「僕達にもわからない事があるなんてねぇ。いや、本気を出せば(・・・・・・)わかるんだろうけど、不思議だ。今度ラプラスにでも聞いてみたら?」


「そうだなぁ...」


「まぁ、それについては吾輩との特訓で探っていくさ。」


「程々にしろよ。」


なんだかんだ言いながら、3人は仲良くお茶会を続けた。




昼休憩が終わったプリムンズは、次に本部の近くにある教会へと案内された。


そこには、黒い壁に金色の装飾が輝いている、なんとも不気味で美しい建物がそびえ立っていた。


「ここは北炎教の教会であり、北炎教はこの地界第七階層の根源である原初の悪魔の一柱、『ルシファー』を崇拝する宗教です。」


「おぉ〜、前に行った日曜教の教会とは違う雰囲気だ。」


「地界にもこういう教会って存在するんですね。」


「えぇ、教会というものは我々天地者(てんちしゃ)からすれば大切なものですよ。隊士の昇級の儀式や王族、貴族のみそぎなど、様々な儀式や行為で使います。貴方達もそのうち、自身の神系象徴デウスシンボルに応じて、各階層の教会に行くことでしょう。」


アラスターは優しい声で説明しながら、扉をギギィッと開けた。


教会の造りは基本的にどの階層も同じようで、中央に本堂、右が食堂、左が寮、後ろには聖域がある。


「それでは中へ。」


アラスターに案内され、5人は教会の中へと足を踏み入れた。


教会の中は静かで、黒と金を基調とした荘厳な装飾が広がっている。


中央の本堂には、巨大なステンドグラスが設置され、そこにルシファーの象徴と思われるものが描かれている。


「うわぁ...なんだか圧倒されるな。」


レイが小声で呟く。


「ここのステンドグラスは主に魔鉱石から作られているため、教会内は魔力が満ちてるんですよ。」


アラスターは解説をしながら本堂を抜け、右側の食堂へと向かう。


そこは意外にも温かい雰囲気で、大きなテーブルがいくつも並び、整然と配置された食器や木製の椅子からは生活感が漂っている。


「教会の食事って、やっぱり質素なんですか?」


ヴィジの質問に、アラスターはフフッと笑った。


「質素と言えば質素ですが、地界は意外にも食材の宝庫なので、実は意外と豪華ですよ。特に第六階層は、暴食の大罪を司っていますからそれはもうすごいです。」


「大罪...確かここは傲慢でしたっけ?天界みたいに大罪の教えでもあるんですか?」


「いえ、特にありません。大罪とは本来、人々を衰退させ破滅に導く概念として、各階層にその名が与えられたに過ぎません。逆に美徳は、人を成長させ人徳を創造する概念として信仰されてますね。」


「なるほど...ただ名前がつけられているだけで、悪い人達という訳では無いのか。」


アラスターの話を聞いて、レイは1人で納得した。


アラスターは案内を続けながら、次に左側の寮へ向かう。


寮も黒っぽい色で、落ち着いた雰囲気だった。廊下にはが燭台しょくだいの炎が等間隔で並び、淡い金色の光を放っている。


「ここには主に司祭や見習いが寝泊まりしています。貴族の子弟が修行に来ることもあり、意外と賑やかですよ。」


ネリンは壁の装飾に触れながら、


「寮と言っても、なんだか高級ホテルみたいね...」


と、感心していた。




そして最後に奥の聖域へと足を運ぶ。


聖域は他の区画と違い、空気がひんやりとしていて、声を出すのもためらわれるほど神聖な空気が漂っていた。


中央には黒曜石で造られた祭壇が鎮座し、その上には御神体である小さな黒い魔石が置かれている。


「ここが教会の聖域。儀式などを行う、一般人では立ち入ることができない神聖な場所です。」


アラスターが静かに説明すると、フラクタは無意識に息を飲んだ。


「なんというか、見えない圧がありますね。」


「地界の聖域は、より強い魔力で満たされています。慣れていないと気圧されるのも当然ですよ。」


「僕はあまり感じないな。魔力を持ってるからかな?」


「そうですね。同じ魔力同士だと、そこまで圧を感じることはないでしょう。」


どうやら、ウェントは魔法使い故に圧を感じにくいらしい。


その後、しばらく聖域の空気を味わったあと、アラスターが振り返る。


「さて、地界の教会についてはこんなところです。時間があれば、他の階層の教会がどんな感じかお見せしましょう。」


「色んな教会があるんだな...見てみたいかも。」


レイの言葉に、他の4人も頷く。


こうして、プリムンズは北炎教の教会を一通り見て回り、地界の宗教や歴史の雰囲気を肌で感じることができたのだった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


ヴィジ〈神ノ加護:霊力支配〉:今作の主人公


レイ〈神ノ加護:神線〉:陽気な性格。意外とまじめ。


フラクタ〈神ノ加護:波動〉:穏やかな性格をしている。


ウェント〈神ノ加護:炎魔法〉:優しい性格の持ち主。頭が良く、判断力に優れている。


ネリン〈神ノ加護:サイコキネシス〉:天真爛漫で活発な性格の女の子。頭はあまりよろしくないが、攻撃力はピカイチ。


アラスター:地界第七階層の主地者であり、モートの側近。とても真面目な性格をしている。


ミル:常世零階層を統べる大君主。厨二病でお調子者。とても寛大。


モート:地界第7階層の大君主。『最恐』を冠する四天王の1人で、序列2位。


ザイオン:天界第七階層を統べる序列1位の『最強』の大君主。その実力とは裏腹に内気で超臆病な性格。

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