285話
そいつの見た目は、鋏が4本(通常2本)足の数が約20本。わしゃわしゃと動くそれには気持ち悪さしか出てこない。今回のそれは、棘というよりは毛が生えている。柔らかいのか、移動するたびにゆらゆらと揺れ動いている。気持ち悪い要素が多すぎる。
それが2体とか吐き気が出るわ。とりあえず、切るか。あの蟹と同じぐらいの魔力を刀に込めてきる。
「うぜー」
毛のせいで刀が滑り上手く切ることができなかった。とりあえず、焼くか。
「ファイヤーランス」
よー、燃えとる燃えとる。毛がなくなり、口から泡を噴き出している。
「ちょっと失礼。」
鋏をこじ開け、中の身を鷲掴みにして口の中に放り込む。やっぱ、蟹って美味しいなー。ドロップに変わる前であれば食うことができる。だが、生で食うとなぜか食当たりをするらしい。食うのであれば、魔法で焼いてから食べなさいだ。鋏を切り落とし、食ってみろと言い放つ。
その鋏を食べた全員の目つきが変わった。それはもう、捕食者の目だ。変異蟹は数歩下がり怖気ずく。騎士が真っ先に殴りにいく。その殴る場所は目玉だ。甲羅上を走りながら登り、目玉を殴りつける。これで両目が消失だ。
暴れ出す。だが、それは魔術師のファイヤーチェーンによって体を拘束され、どうすることもできない。足を全て固定され、待っているのは火炙りと腕の切り落としだ。足を破壊し、切り落とした。そして、反対側から、白色の筋?を取り出す。
身がぎっしり詰まったそれの真ん中をパキっと折り優しく殻を抜けば、蟹かまのような一本の身が出てきた。かぶりつく。甘みが口の中いっぱいに広がる。いつも食べている蟹とは比べ物にならないほどだ。一口、もう一口と食が進んでしまう。
他の召喚獣も同様だ。白狼なんかは爪で半分に切り、片方を皿がわりにして食らいついている。騎士は失敗して身が切れてしまい。食べるのに悪戦苦闘をしている。魔術師は、白狼にしてもらっているようだ。性格が分かれるなー。そんなことを思いながら、まだ火炙りにされている蟹を眺める。
まだ焦げついていないのでその頑丈さがわかるだろう。マジックバッグに入れてもドロップに変わるだけなので、食うのであれば今のうちだ、もし食べれば、胃から消えることはない。そのまま消化され栄養と化す。
限界があるので、その残りはドロップへと変化する。といった感じだ。料理人をここまで連れてきて料理をさせるわけにもいかないので、ここで料理をするのは狩った人の特権だな。
さて俺は満足したようだが、他のメンバーは満足していないようだ。満足するまで食べていると、途中でドロップへと変わっていった。その目はまだ食べたいと残念そうな目だった。だが、その目には闘志もみなぎっている。頑張れ、蟹たちよ・・・。
もちろんドロップは蟹だった。このドロップにも毛が生えていたらしい跡が見える。
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その後も蟹を狩っていたのだが、この蟹に出会うことはなかった。
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